予想M1と予想M2の付加的な注記を述べました。これまでの予想M1〜M4をまとめました。
予想M3と予想M4は、Q(√m)のmが素数以外の場合から、素数の場合にも延長できることを示しました。
後から気付いたのですが、予想M1と予想M2に関しても、同じように延長(接続)できることに気付きましたので、
それを述べておきます。
[4n+1]型実2次体Q(√m)のmが「素数以外の場合」では、次が成り立っているのでした。
詳しくは、「その6」の予想M1を見てください。
発見した規則性(予想M1)
外分割ゼータの個数ExZの中で一つでも偶数のものがあると、そのとき2次体の類数hは偶数となる。
一つもなければ、類数hは奇数となる。
しかし、これは、[4n+1]型実2次体Q(√m)のmが「素数の場合」の表で示したのを見ると、こちらでも成り立って
いることに気付きます。この場合、外分割ゼータは一つも現れないのですから、すべてExZ=0であり、予想M1の
「一つもなければ、」を「ExZが奇数ばかりかまたはExZが0であるならば」と意味を拡張すれば、先の表ではすべて
ExZが0であり、且つすべて類数(h)は奇数となっておりOKとなります。
すなわち、予想M1は、[4n+1]型実2次体Q(√m)のmが、素数の場合でも、素数以外の場合でもどちらでも成り
立っているといえるのです。いまの場合を包含するように、厳密に表現を変更しておきましょう。
発見した規則性(予想M1)
外分割ゼータの個数ExZの中で一つでも偶数のものがあると、そのとき2次体の類数hは偶数となる。
「ExZが0である」または「ExZが奇数ばかり」ならば、類数hは奇数となる。
次に、予想M2を拡張しましょう。
この予想は次のように不思議な予想です。
発見した規則性(予想M2)
[4n+2,4n+3]型実2次体Q(√m)についてmを素因数分解したとき、mの素因数(2を除く)の個数が
N個ならば類数はN以上の値をとる。
これは、[4n+2,4n+3]型実2次体Q(√m)のmが「素数以外の場合」を調べて得た予想でした。
詳しくは、「その7」の予想M2を見てください。
しかし、これも、[4n+2,4n+3]型実2次体Q(√m)のmが「素数の場合」の表で示したのを見ると、こちらでも成り
立っていることに気付きます。この場合、mは素数ですから、これを素因数分解すると当然その素因数は1個で
あり、よって、予想M1はそっくりそのまま成り立っているのです。表を見ると、面白いことに、類数(h)はすべて
h=1,3,5,・・となっていますが、もちろんOKですね。
すなわち、予想M2も、[4n+2,4n+3]型実2次体Q(√m)のmが、素数の場合でも、素数以外の場合でもどちら
でも成り立っているといえるのです。
以上、予想M1も予想M2も「素数の場合」へと接続しているのでした。
ここで4つの予想をまとめておくことにしましょう。
この予想M1に関して詳しくは、「その6」の予想M1を見てください。
この予想M2に関して詳しくは、「その7」の予想M2を見てください。
この予想M3に関して詳しくは、「その7」の予想M3を見てください。
この予想M4に関して詳しくは、「その8」の予想M4を見てください。
これらは、とても興味深いものに見えます。
一見てんでバラバラに見える2次体の類数(h)の並びにこんな秩序が存在しているなんて、不思議な気がします。
はたして、これらはすべて正しのでしょうか?
それとも、あるものは正しく、あるものは間違っているのでしょうか?
±500までのmのQ(√m)で成り立っているので、正しいような気がするのですが、もちろんまだわかりません。
もし読者でなにかわかれば教えてください。お願いします。
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追記2005/1/5
じつは、はじめは分割ゼータの個数(Z)と類数(h)の関係を調べていたのに、2次体Q(√m)のmの素因数と類数(h)
の関係に比重がうつっていることにお気づきと思います(「その4」〜「その8」)。
分割ゼータの個数(Z)と類数(h)の関係にもなんらかの関係性がありそうなのですが、まだ漠然としていて本当の
ところはよくわからないというのが正直なところです。
よって、上では、Zと類数(h)の関係については一切記さなかったのです。
ただ、予想M1に関しては、外分割ゼータの個数(ExZ)が出ているところがとにかく驚きます。
(この予想M1は、「予想」と呼ぶにふさわしい)
じつは、この外分割ゼータというのは、Q(√m)のmの素因数と密接に関係しており、よって、予想M1〜M4は
すべて同じ精神に則っているといえるものなのです。
(外分割ゼータの定義をもう一度、見直してください。納得されると思います。)
さらに、もう少しいえば、2次体Q(√m)のmは2次体の導手Nとも密接に関っていることはこれまでいろいろと述べて
きたので、既にご存知でしょう。 すなわち、
[4n+1]型2次体Q(√m)では、N=|m|の関係がある。
[4n+2,4n+3]型2次体Q(√m)では、N=4|m|の関係がある。
というふうになっています。
結局、mの素因数を見るということは、導手Nの素因数を見ることと本質的に同値なのです。
この導手Nが、2次体Q(√m)において非常に重要なものなのです。
どう重要なのか私もその根本のところはつかみきれていないのですが、私の好きな加藤和也さん(京大教授)が
比喩もまじえてうまく解説してくれていますので、一緒に味わいましょう。
「解決!フェルマーの最終定理」(加藤和也著、日本評論社)p.77
註:適当な空白行は杉岡が入れました。
なんという素晴らしい説明でしょうか!
「解決!フェルマーの最終定理」(加藤和也著、日本評論社)は私がもっとも愛読している書物ですが
(高度ですから理解は不十分です)、上の部分は、私がいちばん好きな記述の一つです。
ああなるほどそういうことか・・とまず感覚的にわかってしまいます(論理はあとでいい)。
こんな説明のできる数学者はほかにはいません。加藤先生には、今後もいろいろな場所で、数学の解説をおねがい
したいものです。
さて、これが導手というものであり、とても大切なものとわかるでしょう。
2次体Q(√m)のmすなわち導手Nの素因数が、類数(h)というこれまた非常に重要な量を統制しているというのも
頷けます。ディリクレの類数公式も導手と類数の密接な結びつきを示していますが(詳しくはこちら)、予想M1〜M4も
別の側面からそういう状況を写しているのだと思います。
ちなみに、楕円曲線の導手はワイルスがフェルマーの最終定理を証明する過程で決定的な役割を果したものです。
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