木星 その2

 予想L-1を拡張した予想L-2を提示しました。π/22代入も確認。出現する分身の個数に関する規則性を調べました。


2004/6/30        <予想L-1を拡張した”予想L-2”の提示>

 「その1」で発見した美しい規則性と組み合わせ、予想L−1をさらに拡張(強化)します。

 まず、その規則性(厳密にはこれも予想です)を書きます。
  cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)  -----@

@を中心母等式とした場合、「偶奇性の規則」は次のようになっている。
[偶奇性の規則]
 奇数回の微分・積分の所に----->2次体に関するL(χ,s)の特殊値が出現する
 偶数回の微分・積分の所に----->2次体に関するL(χ,s)の特殊値が出現する


 さらに、予想L-1を書きます。

[私の予想L-1]
  mが4n+2 または 4n+3の整数のとき、k=2|m|とおく。(mは整数で、1以外の平方数で割り切れないものである)
 @式の重回積分-重回微分の結果に q π/k を代入すると、導手NがN=2k (つまりN=4|m|)である2次体Q(√m)
に対応するディリクレのL関数L(χ,s)か、あるいはその分身(複数)が、必ず出現する。

 ここで分身(複数)とは、それらを適当に足したり引いたりするだけで上の条件を満たすL(χ,s)を構成できる級数を指す。
なおk, q は整数で、0 <|q π/k|< 2π 且つ kとq は互いに素。

  cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)  -----@
                             (0 <|x|< 2π)


 これら二つを組み合わせることで、次の予想L-2が生まれました。

[私の予想L-2](非明示の場合)

  mが4n+2 または 4n+3の整数のとき、k=2|m|とおく。(mは整数で、1以外の平方数で割り切れないものである)
 @式の重回積分-重回微分の結果に q π/k を代入すると、導手NがN=2k (つまりN=4|m|)である2次体Q(√m)
に対応するディリクレのL関数L(χ,s)か、あるいはその分身(複数)が、必ず出現する。

 ここで分身(複数)とは、それらを適当に足したり引いたりするだけで上の条件を満たすL(χ,s)を構成できる級数を指す。
なおk, q は整数で、0 <|q π/k|< 2π 且つ kとq は互いに素。

 そして、上の2次体Q(√m)が2次体であるならばそれに対応するL(χ,s)は偶数回の微分・積分の所に現れ、
2次体であるならば対応するL(χ,s)は奇数回の微分・積分の所に現れる。

  cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)  -----@
                                   (0 <|x|< 2π)


 予想L−2を検証した具体例をのせた表Bも再度掲げておきましょう。
L(χ,s)本体が露に出現する場合を◎で、分身を経由して出現する場合を○で表現しています。
◎、○どちらでも”予想が成り立っている”ことを意味します。(予想が破綻した場合は×を挿入するつもりです。)
これまでの例ではすべて成立しています。

表B
Q(√m)

m=4n+2
or
m=4n+3
・・・ -13 -10 -6 -5 -2 -1 2 3 6 7 10 11 14 ・・
導手N ・・・ 52 40 24 20 8 4 8 12 24 28 40 44 56 ・・
L(χ,s)
Lk1(s)
Lk2(s)
Lk3(s)
Lk4(s)
LE(s)
LG(s)
LC(s)
LD(s)
L1(s)
L2(s)
L(s) L1(s)
L2(s)
LB(s) LE(s)
LG(s)
LI(s)
LJ(s)
Lk1(s)
Lk2(s)
Lk3(s)
Lk4(s)
本体->◎
分身->○
代入した
qπ/k
π/20 π/12 π/10 π/4

3π/4

5π/4
π/2

3π/2
π/4

3π/4

5π/4
π/6 π/12 π/14 π/20
n回積分

n->偶数
 or
n->奇数

注意1:青字は、各々の2次体に対応するL(χ,s)を示す。
注意2:一番下の行の「偶,奇」は、Q(√m)に対応するL(χ,s)特殊値が偶数回の積分(微分)の所に現れた場合に「偶」、
 奇数回の積分(微分)の所に現れた場合に「奇」と記しています。


 ここまでやったのですから、さらに、もう一つQ(√11)の具体例(π/22代入)も調べておきましょう。
次に記します。




2004/7/3 <cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x +・・ )の重回積分-重回微分にπ/22を代入>

 @の統一的法則性の結果(重回積分-重回微分の結果)に、π/22を代入した場合を調べます。

  cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)  -----@

2回積分と3回積分の場合を記すと、次のようになります。
[π/22代入の式]
   ・
   ・
2回積分
  -{A・(1/1^2 + 1/21^2 - 1/23^2 - 1/43^2 + 1/45^2 + 1/65^2 - 1/67^2 - 1/87^2 +・・・)
    + B・1/2^2・(1 + 1/10^2 - 1/12^2 - 1/21^2 + 1/23^2 + 1/32^2 - 1/34^2 - 1/43^2 +・・・)
    + C・(1/3^2 + 1/19^2 - 1/25^2 - 1/41^2 + 1/47^2 + 1/63^2 - 1/69^2 - 1/85^2 +・・・)
    + D・1/2^2・(1/2^2 + 1/9^2 - 1/13^2 - 1/20^2 + 1/24^2 + 1/31^2 - 1/35^2 - 1/42^2 +・・・)
    + E・(1/5^2 + 1/17^2 - 1/27^2 - 1/39^2 + 1/49^2 + 1/61^2 - 1/71^2 - 1/83^2 +・・・)
    + F・1/2^2・(1/3^2 + 1/8^2 - 1/14^2 - 1/19^2 + 1/25^2 + 1/30^2 - 1/36^2 - 1/41^2 +・・・)
    + G・(1/7^2 + 1/15^2 - 1/29^2 - 1/37^2 + 1/51^2 + 1/59^2 - 1/73^2 - 1/81^2 +・・・)
    + H・1/2^2・(1/4^2 + 1/7^2 - 1/15^2 - 1/18^2 + 1/26^2 + 1/29^2 - 1/37^2 - 1/40^2 +・・・)
    + I・(1/9^2 + 1/13^2 - 1/31^2 - 1/35^2 + 1/53^2 + 1/57^2 - 1/75^2 - 1/79^2 +・・・
    + J・1/2^2・(1/5^2 + 1/6^2 - 1/16^2 - 1/17^2 + 1/27^2 + 1/28^2 - 1/38^2 - 1/39^2 +・・・)
                                    + 1/11^2・L(2) }=(0〜π/22) log(2sin(x/2))

3回積分
   L・(1/1^3 - 1/21^3 - 1/23^3 + 1/43^3 + 1/45^3 - 1/65^3 - 1/67^3 + 1/87^3 +・・・)
   + M・1/2^3・(1/1^3 - 1/10^3 - 1/12^3 + 1/21^3 + 1/23^3 - 1/32^3 - 1/34^3 + 1/43^3 +・・・)
    + N・(1/3^3 - 1/19^3 - 1/25^3 + 1/41^3 + 1/47^3 - 1/63^3 - 1/69^3 + 1/85^3 +・・・)
   + P・1/2^3・(1/2^3 - 1/9^3 - 1/13^3 + 1/20^3 + 1/24^3 - 1/31^3 - 1/35^3 + 1/42^3 +・・・)
   + Q・(1/5^3 - 1/17^3 - 1/27^3 + 1/39^3 + 1/49^3 - 1/61^3 - 1/71^3 + 1/83^3 +・・・)
   + R・1/2^3・(1/3^3 - 1/8^3 - 1/14^3 + 1/19^3 + 1/25^3 - 1/30^3 - 1/36^3 + 1/41^3 +・・・)
   + S・(1/7^3 - 1/15^3 - 1/29^3 + 1/37^3 + 1/51^3 - 1/59^3 - 1/73^3 + 1/81^3 +・・・)
   + T・1/2^3・(1/4^3 - 1/7^3 - 1/15^3 + 1/18^3 + 1/26^3 - 1/29^3 - 1/37^3 + 1/40^3 +・・・)
   + U・(1/9^3 - 1/13^3 - 1/31^3 + 1/35^3 + 1/53^3 - 1/57^3 - 1/75^3 + 1/79^3 +・・・)
   + V・1/2^2・(1/5^2 - 1/6^2 - 1/16^2 + 1/17^2 + 1/27^2 + 1/28^2 - 1/38^2 - 1/39^2 +・・・)
                        - (1-1/2^2)ζ(3)/22^3 -ζ(3) =(0〜π/22)∫log(2sin(x/2))
  ・
  ・
 と、このようになりました。
上で右辺の重回積分は一番左の(最後の)∫だけが0〜π/22の定積分で、他の∫は0〜xの定積分。

 ここで、A=sin(π/22)、B=sin(2π/22)、C=sin(3π/22)、D=sin(4π/22)、E=sin(5π/22)、F=sin(6π/22)、
    G=sin(7π/22)、H=sin(8π/22)、I=sin(9π/22)、J=sin(10π/22)、
 またL=cos(π/22)、M=cos(2π/22)、N=cos(3π/22)、P=cos(4π/22)、Q=cos(5π/22)、R=cos(6π/22)、
    S=cos(7π/22)、T=cos(8π/22)、U=cos(9π/22)、V=cos(10π/22)。

 注意:上の青字以外の級数は、L(χ,s)には直接関係しない級数のように思われますが、興味がないためよく調べて
  いません。

 このように分身に分かれましたが、はたして予想L-2は成立しているのでしょうか?
結論を先にいえば、成立しているのですが、見てみましょう。

 π/22代入からいまk=22ですからmod=44で且つ導手N=44のχ(a)の2次体Q(√11)に対応するL(χ,s)が
奇数回の微分,積分の結果のところに(よって上では3回積分の所に)出現することが予想されます。
そして、その通り、そこに分身の形となってLM2(s)がひっそり顔をのぞかせているのです。
(じつは2回積分の所にはLM1(s)が出現しています。4つの青字の級数からLM1(s)を構成できます。しかし、
もはや予想L−2ではLM1(s)は興味がありません。)

 その前に、LM2(s)は初出ですので、定義を書きます。(LM1(s)は興味がないので略します)
定義は次の通りで、これはディリクレのL関数L(χ,s)です。

LM2(s)=(1/1^s - 1/3^s + 1/5^s + 1/7^s + 1/9^s - 1/13^s - 1/15^s - 1/17^s + 1/19^s - 1/21^s
   - 1/23^s + 1/25^s - 1/27^s - 1/29^s - 1/31^s + 1/35^s + 1/37^s + 1/39^s - 1/41^s + 1/43^s ) + ・・・

 (注意: + - はこの単位で延々とくり返されていきます。)

上をディリクレ指標χ(a)を用いて表現すると、次のようになります。
 LM2(s)は、mod 44に対応したχ(a)をもち、
「 a≡1 or 5 or 7 or 9 or 19 or 25 or 35 or 37 or 39 or 43 -->χ(a)=1、
  a≡3 or 13 or 15 or 17 or 21 or 23 or 27 or 29 or 31 or 41 mod 40 -->χ(a)=-1、
  それ以外のaではχ(a)=0」
というχ(a)に対応したL(χ,s)となります。このχ(a)の導手NはN=44です。

 じつは、LM2(s)は実2次体Q(√11)に対応するL(χ,s)となっているのです。
 これは平方剰余の相互法則と補充則を用い、x^2≡a mod 11 という方程式を解くことを経由して確認することが
できます。私は、手計算で確認しました。

さて、3回積分に現れた四つの級数たち(青字のもの)がLM2(s)の分身とよべる存在であることを示します。

[分身であることを示す]
 3回積分の青字に注目してください。
係数L,N,Q,S,U にかかる級数をそれぞれL1,N1,Q1,S1,U1と表すと、次のようになる。
   L1=1/1^3 - 1/21^3 - 1/23^3 + 1/43^3 + 1/45^3 - 1/65^3 - 1/67^3 + 1/87^3 +・・・
    N1=1/3^3 - 1/19^3 - 1/25^3 + 1/41^3 + 1/47^3 - 1/63^3 - 1/69^3 + 1/85^3 +・・・
   Q1=1/5^3 - 1/17^3 - 1/27^3 + 1/39^3 + 1/49^3 - 1/61^3 - 1/71^3 + 1/83^3 +・・・
   S1=1/7^3 - 1/15^3 - 1/29^3 + 1/37^3 + 1/51^3 - 1/59^3 - 1/73^3 + 1/81^3 +・・・
   U1=1/9^3 - 1/13^3 - 1/31^3 + 1/35^3 + 1/53^3 - 1/57^3 - 1/75^3 + 1/79^3 +・・・

さて、L1 - N1 + Q1 + S1 + U1 を計算すると、
L1 - N1 + Q1 + S1 + U1
=(1/1^3 - 1/3^3 + 1/5^3 + 1/7^3 + 1/9^3 - 1/13^3 - 1/15^3 - 1/17^3 + 1/19^3 - 1/21^3
   - 1/23^3 + 1/25^3 - 1/27^3 - 1/29^3 - 1/31^3 + 1/35^3 + 1/37^3 + 1/39^3 - 1/41^3 + 1/43^3 )
+ (1/45^3 - 1/47^3 + 1/49^3 + 1/51^3 + 1/53^3 - 1/57^3 - 1/59^3 - 1/61^3 + 1/63^3 - 1/65^3
   - 1/67^3 + 1/69^3 - 1/71^3 - 1/73^3 - 1/75^3 + 1/79^3 + 1/81^3 + 1/83^3 - 1/85^3 + 1/87^3 ) + ・・・

となる。ところが、よく見ると、これは上で定義したLM2(s)の特殊値LM2(3)と一致している。
 このようにL1,N1,Q1,S1,U1を、「L1 - N1 + Q1 + S1 + U1」と組み合わせればLM2(s)のLM2(2)を構成することが
できる。
 L1,N1,Q1,S1,U1はLM2(s)の分身と呼べる存在であることがわかった。
終わり。

 予想通り、ちゃんと実2次体Q(√11)に対応するL(χ,s)が分身の姿で出現していることがわかりました
ここでも、予想L-2は成り立っていることがわかりました。


-----------------------------------------------------------------------------------------
 さらにQ(√11)という具体例の確認が加わったわけですから、表Bに追加しておきます。

 予想L-2を検証した具体例をのせた表Bを表示します。
L(χ,s)本体が露に出現する場合を◎で、分身を経由して出現する場合を○で表現しています。
◎、○どちらでも”予想が成り立っている”ことを意味します。(予想が破綻した場合は×を挿入するつもりです。)
これまでの例ではすべて成立しています。

表B
Q(√m)

m=4n+2
or
m=4n+3
・・・ -13 -10 -6 -5 -2 -1 2 3 6 7 10 11 14 ・・
導手N ・・・ 52 40 24 20 8 4 8 12 24 28 40 44 56 ・・
L(χ,s)
Lk1(s)
Lk2(s)
Lk3(s)
Lk4(s)
LE(s)
LG(s)
LC(s)
LD(s)
L1(s)
L2(s)
L(s) L1(s)
L2(s)
LB(s) LE(s)
LG(s)
LI(s)
LJ(s)
Lk1(s)
Lk2(s)
Lk3(s)
Lk4(s)
LM1(s)
LM2(s)
本体->◎
分身->○
代入した
qπ/k
π/20 π/12 π/10 π/4

3π/4

5π/4
π/2

3π/2
π/4

3π/4

5π/4
π/6 π/12 π/14 π/20 π/22
n回積分

n->偶数
 or
n->奇数

注意1:青字は、各々の2次体に対応するL(χ,s)を示す。
注意2:一番下の行の「偶,奇」は、Q(√m)に対応するL(χ,s)特殊値が偶数回の積分(微分)の所に現れた場合に「偶」、
 奇数回の積分(微分)の所に現れた場合に「奇」と記しています。




2004/7/4       <出現する分身の個数に関する規則性>

 これまで見てきた通り、qπ/k の k が大きくなると忍者が分身の術を使うがごとく、ゼータの分身たちが草陰から現れ
その力の結集によって予想L−2が成立する、というびっくりする状況が現出しているのでした。

 一つ前「木星 その2」のπ/22代入では、3回積分の所に、5つの分身が現れました。

 出現してくる分身の個数になにか規則性はないでしょうか。
 これまでの計算過程を調べてみると、次のような規則性が成り立っているようなのです。
一度に現れる分身の個数をMとすると、

mが4n+2 または 4n+3の整数とき(ただしmは平方数でない)

 Q(√m)のmが偶数の場合 --> M=(|m| - 2)/2個の分身が現れる。

 Q(√m)のmが奇数の場合 --> M=(|m| - 1)/2個の分身が現れる。

上は、実2次体、虚2次体を問わず(Q(√m)のmの正負を問わず)成り立つ。ただし、|m| > 4。


ただし、これも当然これまでの観察から生まれたもので、予想にすぎません。

一つだけ具体例で見てみましょう。
 π/22代入はQ(√11)の実2次体に対応していました。
いまmは11ですから、奇数です。よって、Mは、(11 - 1)/2=5個となり、「5個の分身が出る!」と上は主張しています。
 π/22代入を見てください(3回積分の所)。
 きちんと、5個の分身が出現していますね。めでたしです。

念のための注意。上で「ただし、|m| > 4」としていますが、これは、もし|m| =< 4の場合は分身は現れずL(χ,s)本体が
直接顔を出すということを意味しています。
はたして、この予想は正しいのか、それともどこかで破綻が出るのか・・。

2004/12/23
 上式はmの因数が多くなると成り立たなくなることがわかりました。詳しくは、海王星 その4以降で具体的に示してい
ますのでご覧ください。





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