ここでは、「その5」に準じて「その2」で出した式を、リーマン・ゼータの極ζ(1)を含む美しい形に全面的に書き換えて
で美しい形にします。ここでは<作用素別定理と統一的法則性の結合 その1>を全面的に書き換えていくわけですが、
最終的に到達する式を先に書いておきましょう。ここで導いた式は、次のものです。
e^(-x)∫0〜x e^x・cosx/sinx dx
=2[{1/(2^2+1)・(-2cos2x + sin2x) + 1/(4^2+1)・(-4cos4x + sin4x)
+ 1/(6^2+1)・(-6cos6x + sin6x) + 1/(8^2+1)・(-8cos8x + sin8x) +・・・}
+ e^(-x){-(log2)/2 + ζ(1)/2 - ζ(3)/2^3 + ζ(5)/2^5 - ζ(7)/2^7 + ζ(9)/2^9 - ・・・}] --@
これも極ζ(1)まで含んだ不思議な式となっています。
上は次の奇数ゼータの中心母等式Aに重回積分を重ねた一連の式を足し合わせ、それに作用素の定理(下の
定理4)を適用すると出てきます。
cosx/sinx=2(sin2x + sin4x + sin6x + sin8x + ・・・・) ------A
「その2」では、Aを1回積分した式を次のような形で表現していました。
log(2sinx)=-2(cos2x/2 + cos4x/4 + cos6x/6 + ・・・)
もちろん、これは正しいのですが、次のように∫を残した形で書いておく方がより美しい形にできると気付いたの
です。
∫cosx/sinx=-2(cos2x/2 + cos4x/4 + cos6x/6 + ・・・) + 2{1/2 + 1/4 +1/6 + 1/8 + ・・・・}
=-2(cos2x/2 + cos4x/4 + cos6x/6 + ・・・) + ζ(1) - log2 -------B
この式に延々と重回積分を重ねていけばよいわけですが、この辺は、「その5」での議論と同じです。
以下で@の導出を示しますが、前準備として、定理4をかかげておきましょう。
(∫-∫^2+∫^3-・・・)G(x)とは、つまり、∫G(x)dx-∫^2G(x)dxdx+∫^3G(x)dxdxdx-・・・のことですが、この定理
は、作用素(∫-∫^2+∫^3 -・・・)が作用素e^(-x)∫e^xに等しいという面白い定理です。
なお∫^2は2回積分∫∫・・dxdxを、∫^3は3回積分∫∫∫・・dxdxdxを表しています。
なおこの定理はe^xに関する公式の発見 その3 で私が見つけていたものですが、証明などはそちらをご覧ください。
以下で、@式の導出過程を示します。
[@式の導出]
「その4」と類似の議論を行います。
まずもう一度、奇数ゼータの中心母等式を書きますと、次のようになります。
cosx/sinx=2(sin2x + sin4x + sin6x + sin8x + ・・・・) ------A
このAをひたすら重回積分した式を書いていきます。すべての∫は0〜xの定積分、またdx・・dxは略しました。
偶数回積分の式には、両辺に-1を掛けています。
1回積分
∫cosx/sinx=-2(cos2x/2 + cos4x/4 + cos6x/6 + ・・・) + ζ(1) - log2
2回積分
-∫∫cosx/sinx=2(sin2x/2^2 + sin4x/4^2 + sin6x/6^2 + ・・・) - {ζ(1) - log2}x
3回積分
∫∫∫cosx/sinx=2(cos2x/2^3 + cos4x/4^3 + cos6x/6^3 + ・・・)
- ζ(3)/2^2 + {ζ(1) - log2}x^2/2!
4回積分
-∫∫∫∫cosx/sinx=-2(sin2x/2^4 + sin4x/4^4 + sin6x/6^4 + ・・・)
+ ζ(3)/2^2・x - {ζ(1) - log2}x^3/3!
5回積分
∫∫∫∫∫cosx/sinx=-2(cos2x/2^5 + cos4x/4^5 + cos6x/6^5 + ・・・)
+ ζ(5)/2^4 - ζ(3)/2^2・x^2/2!+ {ζ(1) - log2}x^4/4!
6回積分
-∫∫∫∫∫∫cosx/sinx=2(sin2x/2^6 + sin4x/4^6 + sin6x/6^6 + ・・・)
- ζ(5)/2^4 ・x + ζ(3)/2^2・x^3/3!- {ζ(1) - log2}x^5/5!
7回積分
∫∫∫∫∫∫∫cosx/sinx=2(cos2x/2^7 + cos4x/4^7 + cos6x/6^7 + ・・・)
- ζ(7)/2^6 + ζ(5)/2^4 ・x^2/2! - ζ(3)/2^2・x^4/4! + {ζ(1) - log2}x^6/6!
8回積分
-∫∫∫∫∫∫∫∫cosx/sinx=-2(sin2x/2^8 + sin4x/4^8 + sin6x/6^8 + ・・・)
+ ζ(7)/2^6 ・x - ζ(5)/2^4 ・x^3/3! + ζ(3)/2^2・x^5/5!- {ζ(1) - log2}x^7/7!
・
・
と、このように延々と続いていきます。
さて、上を縦に全部足し合わせて整理すると(途中は略しましたが)、次のようになります。
(∫-∫^2 +∫^3-∫^4+・・・)cosx/sinx dx
=2[{1/(2^2+1)・(-2cos2x + sin2x) + 1/(4^2+1)・(-4cos4x + sin4x)
+ 1/(6^2+1)・(-6cos6x + sin6x) + 1/(8^2+1)・(-8cos8x + sin8x) +・・・}
+ e^(-x){-(log2)/2 + ζ(1)/2 - ζ(3)/2^3 + ζ(5)/2^5 - ζ(7)/2^7 + ζ(9)/2^9 + ・・・}] ----B
さて、このBの左辺に、上の「定理4」を適用すると、次のようになります。
(∫-∫^2+∫^3-∫^4・・・)cosx/sinx dx=e^(-x)∫0〜x e^x・cosx/sinx dx -----C
よって、このBとCから、次の目標の@が出ます。
e^(-x)∫0〜x e^x・cosx/sinx dx
=2[{1/(2^2+1)・(-2cos2x + sin2x) + 1/(4^2+1)・(-4cos4x + sin4x)
+ 1/(6^2+1)・(-6cos6x + sin6x) + 1/(8^2+1)・(-8cos8x + sin8x) +・・・}
+ e^(-x){-(log2)/2 + ζ(1)/2 - ζ(3)/2^3 + ζ(5)/2^5 - ζ(7)/2^7 + ζ(9)/2^9 +・・・}]
上は、e^x・cosx/sinxを無限級数に展開したときの収束半径がπであることから、0 =< |x| < πで成り立ちます。
このように@式が導けました。
導出終わり。
また、同じことですが、@式は両辺をe^(-x)で割って、もちろん次のように書くこともできます。
∫0〜x e^x・cosx/sinx dx
=2[e^x{1/(2^2+1)・(-2cos2x + sin2x) + 1/(4^2+1)・(-4cos4x + sin4x)
+ 1/(6^2+1)・(-6cos6x + sin6x) + 1/(8^2+1)・(-8cos8x + sin8x) +・・・}
+ {-(log2)/2 + ζ(1)/2 - ζ(3)/2^3 + ζ(5)/2^5 - ζ(7)/2^7 + ζ(9)/2^9 +・・・}] ---@
まとめておきます。
註:左辺は、もちろん、e^(-x)∫0〜x e^x・cotx dxでもOKです。
一つ上での等式1B-2(次式)でいくつかの具体的な計算を見てみましょう。
e^(-x)∫0〜x e^x・cosx/sinx dx
=2[{1/(2^2+1)・(-2cos2x + sin2x) + 1/(4^2+1)・(-4cos4x + sin4x)
+ 1/(6^2+1)・(-6cos6x + sin6x) + 1/(8^2+1)・(-8cos8x + sin8x) +・・・}
+ e^(-x){-(log2)/2 + ζ(1)/2 - ζ(3)/2^3 + ζ(5)/2^5 - ζ(7)/2^7 + ζ(9)/2^9 +・・・}]
( 0 =< |x| < π )
例えば、x=0を代入すればどうなるでしょうか。左辺の積分項は消え、右辺から次のような式が出ます。
-log2/2 + ζ(1)/2 - ζ(3)/2^3 + ζ(5)/2^5 - ζ(7)/2^7 + ・・・
=2/(2^2+1) + 4/(4^2+1) + 6/(6^2+1) + 8/(8^2+1) + ・・・ ---@
じつは、この式は<等式1-2での具体的計算>で導いた式と一致しています。面白いものですね。
次に、x=π/2を代入すれば、どうなるでしょうか。
e^(-π/2)∫0〜π/2 e^x・cosx/sinxdx
=2[{2/(2^2+1) - 4/(4^2+1) + 6/(6^2+1) - 8/(8^2+1) + ・・・}
+ e^(-π/2)・{-(log2)/2 + ζ(1)/2 - ζ(3)/2^3 + ζ(5)/2^5 - ζ(7)/2^7 + ・・・}]
となりますが、右辺をさらに変形することで、次のようにできます。
e^(-π/2)∫0〜π/2 e^x・cosx/sinxdx
={log2 - (1-1/2^2)ζ(3)/2^2 + (1-1/2^4)ζ(5)/2^4 - (1-1/2^6)ζ(7)/2^6 + ・・・}
+ e^(-π/2)・{-log2 + ζ(1) - ζ(3)/2^2 + ζ(5)/2^4 - ζ(7)/2^6 + ・・・}
あるいは、両辺をe^(-π/2)で割れば、次のようになります。
∫0〜π/2 e^x・cosx/sinxdx
=e^(π/2)・{log2 - (1-1/2^2)ζ(3)/2^2 + (1-1/2^4)ζ(5)/2^4 - (1-1/2^6)ζ(7)/2^6 + ・・・}
+ {-log2 + ζ(1) - ζ(3)/2^2 + ζ(5)/2^4 - ζ(7)/2^6 + ・・・}
この式は、関数 e^x・cosx/sinxを0〜π/2の範囲で積分すれば奇数ゼータの無限和が出現することを表していると
いえるでしょう。
次に、偶数L関数の中心母等式(次@式)も上と同様に書き換えていきましょう。
すなわち、「その2」ので<作用素別定理と統一的法則性の結合 その2>で等式2Bを導きましたが、これをもっと
シンプルで美しい形にするのです。
1/sinx=2(sinx + sin3x + sin5x + sin7x + sin9x + ・・・・・) ----@
結論からいえば、次のような興味深い式がでます。
e^(-x)∫0〜x e^x・(1/sinx)dx
=2[{1/2・(-cosx+sinx) + 1/(3^2+1)・(-3cos3x+sin3x)
+ 1/(5^2+1)・(-5cos5x+sin5x) + 1/(7^2+1)・(-7cos7x+sin7x) + ・・・}
+ e^(-x){(log2)/2 + (1-1/2^1)ζ(1) - (1-1/2^3)ζ(3) + (1-1/2^5)ζ(5) - (1-1/2^7)ζ(7) +・・}]---A
Aの導出過程を示します。
[導出方法]
もう一度、偶数L関数の中心母等式を書きます(これに関する詳細はその12参照)。
1/sinx=2(sinx + sin3x + sin5x + sin7x + sin9x + ・・・・・) ----A
このAをひたすら重回積分した式を書いていきます。すべての∫は0〜xの定積分、またdx・・dxは略しました。
偶数回積分の式には、両辺に-1を掛けています。
1回積分
∫1/sinx=-2(cosx + cos3x/3 + cos5x/5 + ・・・) + 2(1 + 1/3 + 1/5 + 1/7・・・・)
=-2(cosx + cos3x/3 + cos5x/5 + ・・・) + ζ(1) + log2 --------B
2回積分
-∫∫1/sinx=2(sinx + sin3x/3^2 + sin5x/5^2 + ・・・) - {ζ(1) + log2}x
3回積分
∫∫∫1/sinx=2(cosx + cos3x/3^3 + cos5x/5^3 + ・・・) - 2(1-1/2^3)ζ(3) + {ζ(1) + log2}x^2/2!
4回積分
-∫∫∫∫1/sinx=-2(sinx + sin3x/3^4 + sin5x/5^4 + ・・・) + 2(1-1/2^3)ζ(3)x - {ζ(1) + log2}x^3/3!
5回積分
∫∫∫∫∫1/sinx=-2(cosx + cos3x/3^5 + cos5x/5^5 + ・・・)
+ 2(1-1/2^5)ζ(5) - 2(1-1/2^3)ζ(3)x^2/2! + {ζ(1) + log2}x^4/4!
6回積分
-∫∫∫∫∫∫1/sinx=2(sinx + sin3x/3^6 + sin5x/5^6 + ・・・)
- 2(1-1/2^5)ζ(5)x + 2(1-1/2^3)ζ(3)x^3/3! - {ζ(1) + log2}x^5/5!
7回積分
∫∫∫∫∫∫∫1/sinx=2(cosx + cos3x/3^7 + cos5x/5^7 + ・・・)
-2 (1-1/2^7)ζ(7) + 2(1-1/2^5)ζ(5)x^2/2! - 2(1-1/2^3)ζ(3)x^4/4! + {ζ(1) + log2}x^6/6!
8回積分
-∫∫∫∫∫∫∫∫1/sinx=-2(sinx + sin3x/3^8 + sin5x/5^8 + ・・・)
+ 2(1-1/2^7)ζ(7)x - 2(1-1/2^5)ζ(5)x^3/3! + 2(1-1/2^3)ζ(3)x^5/5! - {ζ(1) + log2}x^7/7!
・
・
と、このようになります。
上のBで、ζ(1) + log2となっているのが不思議に思われるかと思いますが、
ζ(1) + log2=2(1 + 1/3 + 1/5 + 1/7 + ・・・・) が成立することからBが言えるのですが、この辺の詳細は、
「いくつかの点」シリーズの「その12」の<偶数L関数の統一的法則性 (別形式)>を参照ください。
さて、上を縦に全部足し合わせ整理すると次のようになります。
(∫-∫^2+∫^3-∫^4+ ・・・)(1/sinx)dx
=2[{L(0)(-cosx+sinx) + 1/(3^2+1)・(-3cos3x+sin3x)
+ 1/(5^2+1)・(-5cos5x+sin5x) + 1/(7^2+1)・(-7cos7x+sin7x) + ・・・}
+ e^(-x){(log2)/2 + (1-1/2^1)ζ(1) - (1-1/2^3)ζ(3) + (1-1/2^5)ζ(5) - (1-1/2^7)ζ(7) +・・}]---C
ここで∫∫=∫^2、∫∫∫=∫^3、・・としています。
さて、この左辺に「定理4」(冒頭参照)を適用すると、次のようになります。
(∫-∫^2+∫^3-∫^4+・・・)(1/sinx)=e^(-x)∫0〜x e^x・(1/sinx)dx --------D
よって、少しCを整理し、CとDから目標の次式が出ます。
e^(-x)∫0〜x e^x・(1/sinx)dx
=2[{L(0)(-cosx+sinx) + 1/(3^2+1)・(-3cos3x+sin3x)
+ 1/(5^2+1)・(-5cos5x+sin5x) + 1/(7^2+1)・(-7cos7x+sin7x) + ・・・}
+ e^(-x){(log2)/2 + (1-1/2^1)ζ(1) - (1-1/2^3)ζ(3) + (1-1/2^5)ζ(5) - (1-1/2^7)ζ(7) +・・}]---A
e^x・(1/sinx)の収束半径がπであることと冒頭の定理から、Aは0 =< |x| < πの範囲で成立します。
このようにA式が導けました。
導出終わり。
まとめておきます。L(0)=1/2ですから、それに置き換えて書きました。
一つ上での等式2B-2(次式)でいくつかの具体的な計算を見てみましょう。
e^(-x)∫0〜x e^x・(1/sinx)dx
=2[{1/2・(-cosx+sinx) + 1/(3^2+1)・(-3cos3x+sin3x)
+ 1/(5^2+1)・(-5cos5x+sin5x) + 1/(7^2+1)・(-7cos7x+sin7x) + ・・・}
+ e^(-x){(log2)/2 + (1-1/2^1)ζ(1) - (1-1/2^3)ζ(3) + (1-1/2^5)ζ(5) - (1-1/2^7)ζ(7) +・・}]
( 0 =< |x| < π )
例えば、x=0を代入すればどうなるでしょうか。左辺の積分項は消え、右辺から次のような式が出ます。
1/2はL(0)でしたので、L(0)で置き換えています。
log2/2 + (1-1/2)ζ(1) - (1-1/2^3)ζ(3) + (1-1/2^5)ζ(5) - (1-1/2^7)ζ(7) + ・・・
=L(0) + 3/(3^2+1) + 5/(5^2+1) + 7/(7^2+1) + 9/(9^2+1) + ・・・
じつは、この式は<等式2-2での具体的計算>で導いた式と一致しています。面白いものですね。
次に、x=π/2を代入すれば、どうなるでしょうか。
e^(-π/2)∫0〜π/2 e^x・(1/sinx)dx =2[{-(L(0)-1) + (L(2)-1) - (L(4)-1) + (L(6)-1) - (L(8)-1) + ・・・} + e^(-π/2){(log2)/2 + (1-1/2^1)ζ(1) - (1-1/2^3)ζ(3) + (1-1/2^5)ζ(5) - (1-1/2^7)ζ(7) + ・・・}]
あるいは、両辺をe^(-π/2)で割れば次のようになります。
∫0〜π/2 e^x・(1/sinx)dx
=2[e^(π/2){-(L(0)-1) + (L(2)-1) - (L(4)-1) + (L(6)-1) - (L(8)-1) + ・・・} + {(log2)/2 + (1-1/2^1)ζ(1) - (1-1/2^3)ζ(3) + (1-1/2^5)ζ(5) - (1-1/2^7)ζ(7) + ・・・}]
この式は、e^x・1/sinxという関数を0〜π/2の範囲で積分すれば奇数ゼータと偶数L関数の無限和が出現する
という面白いことを語っています。
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