「その7」で導いた式をさらに変形し、ゼータの調和を好む性質を調べます。世にも美しい式が出ました。
2004/3/11 <∫0〜π/2 sinhx・cosx/sinxdx の式 > まず「その7」の<等式1-2と等式1B-2から導かれる式>で出した次式に注目してみます。 ∫0〜π/2 sinhx・cosx/sinxdx =sinh(π/2)・{log2 - (1-1/2^2)ζ(3)/2^2 + (1-1/2^4)ζ(5)/2^4 - (1-1/2^6)ζ(7)/2^6 + ・・・} ----@ coshx=(e^x + e^(-x))/2、sinhx=(e^x - e^(-x))/2です。 さて、@の右辺を変形していきましょう。 「いくつかの点」シリーズの「その3」の<πx/sinhπx と πx/sinπx の2式を追加>で導いていた次式を用い ます。 πx/sinh(πx)= 2{(1-2^1)ζ(0)x^0 - (1-2^(-1))ζ(2) x^2 + (1-2^(-3))ζ(4)x^4 - (1-2^(-5))ζ(6)x^6 +・・・ } ----A ( 0 < |x| < 1 ) この式にx=1/2を代入して、 sinh(π/2)=(π/4)/{(1-2)ζ(0) - (1-2^(-1))ζ(2)/2^2 + (1-2^(-3))ζ(4) /2^4 - (1-2^(-5))ζ(6)/2^6 +・・・} よって、これを@の右辺に代入して整理すると次式が出ます。 ∫0〜π/2 sinhx・cosx/sinxdx =(π/2){(log2)/2 - (1-1/2^2)ζ(3)/2^3 + (1-1/2^4)ζ(5)/2^5 - (1-1/2^6)ζ(7)/2^7 + ・・・} ×{(1-2)ζ(0) - (1-1/2))ζ(2)/2^2 + (1-1/2^3)ζ(4) /2^4 - (1-1/2^5)ζ(6)/2^6 +・・・}^(-1) ---@ 右辺の調和がなんとも美しい式です。極ζ(1)を除く全てのリーマン・ゼータ特殊値が出ています。 左辺の三角関数(類似物)がゼータを生み出している式と読めるでしょう。 この式などを見ると、「いくつかの点」シリーズのまとめの最後で表現した 「三角関数のある所、ゼータ関数あり!」 という言葉をもう一度噛みしめたくなります。 2004/3/11 <∫0〜π/2 sinhx/sinx dx の式> 次に「その7」の<等式2-2と等式2B-2から導かれる式>で出していた次の式に注目してみましょう。 ∫0〜π/2 sinhx/sinx dx =2cosh(π/2)・{-(L(0)-1) + (L(2)-1) - (L(4)-1) + (L(6)-1) - (L(8)-1) + ・・・} ----@ さて、この右辺の変形をする前に、次の式に注目しましょう。 これは<∫0〜π/2 coshx・log{cot(x/2)}dx の式>で先に導いたものですが、詳細はそちらをご覧ください。 (πx/2)/cosh(πx/2) = 2{x/(1+x^2) + (L(1)-1)x - (L(3)-1)x^3 + (L(5)-1)x^5 - (L(7)-1)x^7 + ・・・ } ----A ( 0 < |x| < 3 ) さて、Aでx=1を代入すると、
2cosh(π/2)=(π/2)/{1/2 + (L(1)-1) - (L(3)-1) + (L(5)-1) - (L(7)-1) + ・・・ } ----B
これを@に代入すると、
∫0〜π/2 sinhx/sinx dx
=(π/2){-(L(0)-1) + (L(2)-1) - (L(4)-1) + (L(6)-1) - (L(8)-1) + ・・・} ×{1/2 + (L(1)-1) - (L(3)-1) + (L(5)-1) - (L(7)-1) + ・・・ }^(-1) ----C なんと美しい式でしょうか。 ゼータの調和を好む性質が現れた式といえるでしょう( L(s)はゼータ関数の一種です)。 またこの式は、「左辺の三角関数(類似物)がL関数を生み出している式」と読めると考えられます。 一つ上で出したものと対比的な式といえるかもしれません。
一つ上の式と合わせて、まとめておきます。
そして・・・、あることに気付きました。
「その4」の<∫0〜π/2 coshx・log{cot(x/2)}dx の式>で導いた次式の右辺が、上のCの右辺と完全に一致して いるのです! ∫0〜π/2 coshx・log{cot(x/2)}dx =(π/2){-(L(0)-1) + (L(2)-1) - (L(4)-1) + (L(6)-1) - (L(8)-1) + ・・・} × {1/2 + (L(1)-1) - (L(3)-1) + (L(5)-1) - (L(7)-1) + ・・・ }^(-1)
つまり、
∫0〜π/2 coshx・log{cot(x/2)}dx =∫0〜π/2 sinhx/sinx dx ----D
が、成り立っています。
一つ上のDの等式が成立したことに興味が湧き、一般的な場合はどうなっているのか調べましたのでそれを
示します。(ここでの結果は、本質的な意味があるのかないのか判断できかねますが参考までに記しておきます。)
∫0〜π/2 sinhx/sinx dxの一般的な形は、もちろん∫0〜x sinhx/sinx dx ですが、「その5」の等式2-2と、
「その6」の等式2B-2を組み合わせて計算すると(途中は略)、次のようになりました。
∫0〜x sinhx/sinx dx
=2[-sinhx(cosx/2 + 3cos3x/(3^2+1)+ 5cos5x/(5^2+1) + ・・・)
+ coshx(sinx/2 + sin3x/(3^2+1)+ sin5x/(5^2+1) + ・・・)] ----@
( 0 =< |x| < π )
次に∫0〜π/2 coshx・log{cot(x/2)}dxの一般的な場合を見ます。すなわち、∫0〜x coshx・log{cot(x/2)}dx
次のようになります。
∫0〜x coshx・log{cot(x/2)}dx
=2[coshx(sinx/2 + sin3x/(3^2+1)+ sin5x/(5^2+1) + ・・・)
+ sinhx(cosx/2 + cos3x/3(3^2+1)+ cos5x/5(5^2+1) + ・・・)] ----A
( 0 =< |x| < π )
@もAも、途中の計算は一番きれいな形に帰着させるように変形したいったのであり(定数項を落とすように)、
必然的な計算の流れがあってそれを選択した、というわけではありません。
@とAは、右辺は形は似ていますが、少し違っています。
さらに、@、Aは次のように変形することもできます。
∫0〜x sinhx/sinx dx
=2[-D(coshx)・D(sinx/2 + sin3x/(3^2+1)+ sin5x/(5^2+1) + ・・・)
+ coshx(sinx/2 + sin3x/(3^2+1)+ sin5x/(5^2+1) + ・・・)] ----B
( 0 =< |x| < π )
∫0〜x coshx・log{cot(x/2)}dx
=2[-D(sinhx)・D(cosx/2 + cos3x/3(3^2+1)+ cos5x/5(5^2+1) + ・・・)
+ sinhx(cosx/2 + cos3x/3(3^2+1)+ cos5x/5(5^2+1) + ・・・)] -----C
( 0 =< |x| < π )
Dは一回微分の意味で用いました(′やd/dxは、webでは書きにくいので)。
このように、面白い形で表現することもできるのです。
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