水星 その4

 「その3」で導いた式をさらに変形し、ゼータの調和を好む性質を調べます。


2004/3/3          <∫0〜π/2 coshx・log(2sinx) の式 >

 まず「その3」の<等式1と等式1Bから導かれる式>で出していた次の式に注目してみましょう。

 ∫0〜π/2 coshx・log(2sinx) dx
   =sinh(π/2)・{(1-1/2^2)ζ(3)/2^2 - (1-1/2^4)ζ(5)/2^4
                    + (1-1/2^6)ζ(7)2^6 - (1-1/2^8)ζ(9)/2^8 + ・・・} ----@

 ここで、coshx=(e^x + e^(-x))/2、sinhx=(e^x - e^(-x))/2です。

 さて、この右辺を変形していきましょう。
「いくつかの点」シリーズのその3のπx/sinhπx と πx/sinπx の2式を追加>で導いていた次式を用い
ます。

  πx/sinh(πx)= 2{(1-2^1)ζ(0)x^0 - (1-2^(-1))ζ(2) x^2
                       + (1-2^(-3))ζ(4)x^4 - (1-2^(-5))ζ(6)x^6 +・・・ }  ----A
                                                 ( 0 < |x| < 1 )
この式にx=1/2を代入して、
 sinh(π/2)=(π/4)/{(1-2)ζ(0) - (1-2^(-1))ζ(2)/2^2 + (1-2^(-3))ζ(4) /2^4 - (1-2^(-5))ζ(6)/2^6 +・・・}

よって、これを@の右辺に代入して整理すると次式が出ます。

0〜π/2 coshx・log(2sinx) dx

=(π/2){(1-1/2^2)ζ(3)/2^3 - (1-1/2^4)ζ(5)/2^5+ (1-1/2^6)ζ(7)2^7 - (1-1/2^8)ζ(9)/2^9+・・・}
  ×{(1-2)ζ(0) - (1-1/2)ζ(2)/2^2 + (1-1/2^3)ζ(4) /2^4 - (1-1/2^5)ζ(6)/2^6 +・・・}^(-1)

 右辺の調和が見事だと思います。極ζ(1)=∞を除く全てのリーマン・ゼータ特殊値が出ています。
左辺の三角関数(類似物)がゼータを生み出している式と読めるでしょう。

 この式などを見ると、「いくつかの点」シリーズのまとめの最後で表現した
    「三角関数のある所、ゼータ関数あり!」
という言葉を思い出してしまいます。




2004/3/4         < ∫0〜π/2 coshx・log{cot(x/2)}dx の式>

 次に「その3」の等式2と等式2Bから導かれる式で出していた次の式に注目してみましょう。

0〜π/2 coshx・log{cot(x/2)}dx
    =2cosh(π/2)・{-(L(0)-1) + (L(2)-1) - (L(4)-1) + (L(6)-1) - (L(8)-1) + ・・・} ---@

 さて、この右辺の変形をする前に、次の式を出しました。

 (πx/2)/cosh(πx/2)
 = 2{x/(1+x^2) + (L(1)-1)x - (L(3)-1)x^3 + (L(5)-1)x^5 - (L(7)-1)x^7 + ・・・ }  ----A
                                                 ( 0 < |x| < 3 )

 この式は、「いくつかの点」シリーズのその3πx/sinh(πx)の場合を導いたのと同様の方法で導けます。
そこでは(πx/2)/cosh(πx/2)の式は出していなかったのですが、πx/sinh(πx)の場合と同様の方法を
用いて今回次の部分分数展開(*)を利用して導きました。

 sechx=4π{1/(π^2+4x^2) - 3/(9π^2+4x^2) + 5/(25π^2+4x^2) - 7/(49π^2+4x^2)+ ・・・・} ----B

 ここで、sechx=1/coshx=2/(e^x + e^(-x)) です。

Bの右辺の各項をひたすらテイラー展開していき、それらをまとめあげればAが得られます。
さて、Aでx=1を代入すると、

 2cosh(π/2)=(π/2)/{1/2 + (L(1)-1) - (L(3)-1) + (L(5)-1) - (L(7)-1) + ・・・ }  ----C

これを@に代入して整理すると、

0〜π/2 coshx・log{cot(x/2)}dx
    =(π/2){-(L(0)-1) + (L(2)-1) - (L(4)-1) + (L(6)-1) - (L(8)-1) + ・・・}
               × {1/2 + (L(1)-1) - (L(3)-1) + (L(5)-1) - (L(7)-1) + ・・・ }^(-1) 

 この式は、左辺の三角関数(類似物)がL関数を生み出している式と読めるでしょう。
一つ上で出したものと対比的な式といえるかもしれません。

(*)「マグロウヒル数学公式・数表ハンドブック」(Murray R. Spiegel著、氏家勝巳訳、オーム社)





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