Coelurosauria

コエルロサウリア

 定義:カルノサウルス類よりも鳥に近いすべてのテタヌーラ

Definition of Coelurosauria : Neornithes and all tetanurans closer to Neornithes than to Carnosauria. ( Padian et al 99, pp73 )

コンプソグナトス

Compsognathus.longipes

※このイラストは2004年1月10日発売の「子供の科学」の記事で使用されました^^)

 代表的なコエルロサウリア:

 コンプソグナトスはジュラ紀後期、およそ1億5000万年前のヨーロッパにいました。ドイツのゾルーンホーヘンなどから知られています。大きさは60センチくらいから1メートルぐらい

 コンプソグナトスは古くから知られたコエルロサウリアで、鳥と多くの共通点をもっています。150年前、ダーウィンの友人であるハックスリーは鳥が恐竜に非常に近い動物ではないか?、そういうアイデアを提案しました。コンプソグナトスはそのアイデアのヒントになった動物です。

 

 コエルロサウリアの系統:

 冒頭のコエルロサウリアの定義とは事実上、アロサウルスよりも鳥に近い、という意味ですね。ようするに生命の樹のなかで、アロサウルスより鳥に近い部分を示す名前、それがコエルロサウリアなのです。コエルロサウリアはオルニトミムス+鳥で構成されるマニラプトリフォームスと、その他でなりたっています。コンプソグナトスやオルニトレステスは原始的なコエルロサウリアであると考えられています。

 

____________コンプソグナトス

   |_________オルニトレステス

     |

     |_______Maniraptoriformes:マニラプトリフォームス 

            (オルニトミムス、ティラノサウルス、オヴィラプトル、

             ディノニクス、鳥など)

 コエルロサウリアの恐竜は化石がたくさん見つかっていて、系統関係がとても詳しく分かっています。ここではショートカットの意味もこめてコエルロサウリア全体の系統を少し詳しく表示しましょう。

____________________コンプソグナトス

  |_________________オルニトレステス

      |       ?_____Tyrannosauroidea:ティラノサウロイディア(ティラノサウルスなど) 

      |_____________Arctometatarsalia:アルクトメタターサリア(オルニトミムスなど)

      |_____________オヴィラプトロサウリア(オヴィラプトルなど)

          |_________Deinonychosauria:ディノニコサウリア(ディノニクスなど)

            | ?_____Troodontidae:トロオドンティダ(トロオドンなど) 

            |_______Aves:鳥類 

 

 コエルロサウリアの意味とありがちな誤解:

 コエルロサウリア(Coelurosauria)という名前には”中空の尻尾を持つ爬虫類”という意味があります。しばしば使われる”コエルロサウルス類”の方が通りがよいかもしれません。

 コエルロサウリアという名前は、古典的には身体の小さな獣脚類のことを指していましたが、1986年、現在、イェール大学にいるゴーティエ教授によって上のように定義しなおされました。

............ As defined here, Coelurosauria includes birds and all other theropods that are closer to birds than they are to carnosauria. (Gauthier 1986. Memoirs of the California Academy of Science. No.8. The Origin of Birds and the Evolution of Flight. pp26 )を参考のこと

 時々、コエルロサウルス類(=コエルロサウリア)が人為分類である、つまり人間が生命の樹の枝を適当に切り集めて作った生け花である、という人がいます。しかし、それは古典的な定義について言っているのでしょう。ゴーティエ教授の定義したCoelurosauria は古典的な分類群でも、人為分類でもありません。いまやコエルロサウリアとは生命の樹のある部分につけられた名称です。現代の恐竜学ではコエルロサウリアをこの意味で使います。コエルロサウリアと呼ばれる枝はかなり研究が進んでいます。大部分は比較的小さな動物で、胴体の長さが数cmにしかならないマイクロラプトル(ミクロラプトル)や、カリプテ・ヘレナ(ハチドリの一種)のように恐竜の中で最小の種類もいました。

 しかしティラノサウルスのように全長が12m以上にもなる種類もいます。

 

 コエルロサウリアの特徴:

 最近の発見から、コエルロサウリアには羽毛があったと考えられています。ティラノサウルスのような大型種の身体が羽毛で覆われていたとは考えにくいですが、小さな個体や種類なら羽毛を持っていたでしょう。コエルロサウリアに含まれると考えられる動物たちは、アロサウルスよりもさらに多く、鳥との共通点を持っています。

 

 

 ヴェロキラプトル(上)とティラノサウルス(下)の頭骨:

国立科学博物館・新館地下1階の標本をスケッチ:

 

 以上の画像を見て下さい。ヴェロキラプトルもティラノサウルスの頭骨にはアロサウルスには見られないが、鳥と共通する特徴が幾つか見られます例えば、例えば上のスケッチで、fenestora between quadratejugal and quadrate と書いてある部分がそれですね。頭骨や身体の特徴の分布を検討すると、彼らがアロサウルスよりも鳥にちかい枝に束ねられることが分かります。

 コエルロサウリアに束ねられる動物たちが共通の祖先から受け継いだ特徴として、以下のようなものが上げられます。

 1:腕の三本目の指(中指)が極めて細いこと

 2:距骨の突起がより高く

 3:距骨の前の部分にははっきりとした溝があること

 4:全体として後ろ足がほっそりしていること

 などです。

 これがこの枝を束ねる特徴です。

  

 ヴェロキラプトルの肩と腕:国立科学博物館の新館地下1階の標本をスケッチ:中指、上から数えて3番目の指が細いことに注意してください。ちなみに、ティラノサウルスでは3番目の指は退化してほとんど消失しています^^)。まあ、”細い”という範疇には入りますね、結果的には。

 

 

 

 ティラノサウルスの左後ろ足:国立科学博物館の標本です:アロサウルスなどにくらべると全体がほっそりとしていて、距骨の突起が高く、前にははっきりした溝があります。これもコエルロサウリアの特徴です。

 

 コエルロサウリアに束ねられる代表的な動物としては、

コンプソグナツス・オルニトミムス・ティラノサウルス・オヴィラプトル・ディノニクス・鳥など

を上げることができます。

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