Aves 鳥類 定義:始祖鳥と現代の鳥と、それらの最も新しい共通祖先の全ての子孫 Definition of Aves : Archaeopteryx, extant (crown-group) birds, and all the descendants of their most recent common ancestor. (Padian et al 99, pp75) ミズナギドリらしい鳥の頭骨 上の鳥の頭骨は北村が江ノ島で拾った鳥の遺骸を骨格標本にしたものです。
これまでのところ最古の鳥はドイツから見つかったジュラ紀末(およそ1億4000〜5000万年前)の始祖鳥です。始祖鳥とカラスを直接比較するとかなり姿が違います。しかし、幾つかの動物とくらべて特徴を検討すると、始祖鳥とカラスがきわめて近縁であることが分かります。
始祖鳥が鳥ではない、鳥の祖先ではない、進化の傍系である、そういう情報がネットなどで散見されます。これらはかなり色々な誤解がごちゃまぜになっているようです。
例えば、始祖鳥が鳥ではない、というのは現代の鳥とは特徴が違うから産まれた誤解でしょう。例えば、始祖鳥は
1:歯がある
2:融合していない手の指
3:手に爪がある
4:恥骨の先が接触している
5:長い尻尾
という特徴を持っています。しかしこれらの特徴は現代の鳥にはありません。では始祖鳥は鳥の系統ではないのでしょうか?。そんなことはありません。始祖鳥と現在の鳥は、
6:三放射型の後眼窩骨
7:肩甲骨と烏甲骨が急角度で接する
8:風切り羽
9:手首の半月状の骨
10:大きな胸の骨
といった特徴を共有しています。多くの特徴を考慮して生命の樹を最節約に作り上げると、始祖鳥と現在の鳥は明らかに同じ系統として束ねられます。
ちなみに、以上のような誤解は実は致命的なものです。なぜなら始祖鳥と現代の鳥の違いとして上げた最初の1〜5の特徴は原始形質だからです。つまり、鳥の系統の中で後の子孫たちが失った特徴なんですよね。原始的な特徴だけで系統を復元することは誤りです。分類学では原始的な特徴だけを手がかりに”グループ”を作ってしまうことがありますが(例えば鰓を持つ一生水中生活をする脊椎動物を魚とする)、こうしてつくられたグループは系統を反映しません。
ダーウィンは分類とは系統(あるいは生命の樹)を反映したものであり、系統こそが本質なのであると考えました。逆にいうと系統を反映していないグループというのは実在しない、人間の作ったファンタジーであるということになります。
つまるところ始祖鳥が歯を持ち、長い尻尾を持っているから現代の鳥と区別して別のグループにする、こういう考え方はファンタジーであるということです。
生物の特徴が変化すること、つまり進化を考慮していないのですから、これはダーウィン以前のものの考え方です。多分、そういう発想をする人は生物学と200年くらい断絶があるのでしょう。
始祖鳥から現代の鳥まで、彼らが同じ系統であることは容易に分かります。しかし、姿や形がずいぶん変化しており、この枝全体を束ねる共通点はほとんどありません。風きり羽を持っていて、飛ぶことができるというのが数少ない共通点かもしれません(ただしそれも今となっては怪しいです)。
すくなくとも初期の鳥に見られる特徴としては
1:セレーションがなく、くびれのある歯
2:坐骨の後ろの上の方に突起がある
などが上げられます。ですが、現在の鳥はこれらの特徴を失っています。