「恐竜と遊ぼう」

博物館で恐竜を100倍楽しむ方法

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定価:1200円(+税)

著者:北村雄一 

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出版:誠文堂新光社 

2002.07.05 出版

A4サイズ、80ページ、オールカラー

80ページなので背表紙は薄めで、7mmです。本屋では棚に入っていたら分かりづらいかもしれません^^;)。白地に赤いタイトルを探して下さい。

対象年齢:10才以上

(生物と科学に興味を持つ子供と、そんな子供を持つお母さん、そして、子供の時に好きだった恐竜のことをふと思い出した大人たちのために)

 

 本の内容と恐竜学の現状、私達が置かれた立場:

そもそも恐竜とは何か?。実は、恐竜とは”類”というものなのです。では類とは何か?。類というものは○○類という言葉があるように、生き物のグループ、あるいは仲間であると言ってもいいでしょう。

 この本では恐竜をモチーフに、類とは何か?。類をどのように探せばいいのか?、という問いかけから始まって、類というものが実は”生命の樹”を反映したものであることを明らかにしていきます。

 では、生命の樹とはなんでしょうか?。この言葉はTree of Life 、かの進化学者チャールズ・ダーウィンが言った言葉です。普通、生命の樹は系統樹と呼ばれています。言ってみれば、地球上の全生物が作り出す命の家系図であると考えてください。

 要するに”生命の樹”とは”進化の歴史”のことです。

 生命の樹を身近なもので見てみよう!! 

 

 現在の進化学は生命の樹を推定する方法として分岐学(なぜか分岐分類学と和訳されることが多いです)を編み出しました。この手法を使うと、私達は過去の生物がどのようにして進化してきたのか、それを知ることができます。

 EVOLUTIONのコンテンツを参考のこと 

 この本は恐竜も含めて生物の理解に欠かせなくなった分岐学の本です。分岐学を知らなければ恐竜を理解することはもはやできません。事実、1986年に分岐学が恐竜に本格的に導入されて以来、一般の人々と研究者のギャップは広がる一方のようですし、旧世代は変化についていけなくなりました。その一方では新しい世代が育ちつつあります。

 恐竜にまつわる科学とエトセトラを参考のこと 

 

 進化と系統のページ/分岐学のエトセトラ/分岐学にありがちな誤解、を参考のこと  

 

 

 この本は次代をになう子供達のために書いた本で、分岐学の手法を使って、ティラノサウルスを中心に恐竜の進化をやさしく語っていきます。

 恐竜とはいかなる動物でどんな特徴を持っているのか?

 ティラノサウルスがいかにしてこの地球上に現れたのか?

 ティラノサウルスとアロサウルスはどんな関係にあるのか

 鳥がいかにして空を飛ぶようになったのか?

 鳥とティラノサウルスはどういった関係にあるのか?

この本を読んでそうしたことを考えて下さい。文章はわっかりやすく、2時間ぐらいで読めます。専門用語はほとんど皆無です。専門用語を並べ立てると、それを覚えてそれでよし(<つまり理解していない)、となる場合が多いこともあって、使用をひかえました。それに、そんな面倒くさいもの覚えたくないですよね^^)。

 

 利用方法:

本を見れば分かりますが、国立科学博物館の展示標本をおもに取り上げています。とはいえ、取り上げた動物はいずれもスタンダードな種類です。ですから本で取り上げた恐竜そのものでなくても、近い仲間がなにかしら大きな博物館に展示されています。皆さんの身近にある博物館にもあるかもしれません。

 博物館内でこの本を読みながら実物の標本を見て色々考えて下さい。そのためにこの本は片手で持って、さらにページをめくれるように軽い造りにしてあります。

 

 目的:

現在、教育指導要領の改定で学校の授業から”進化”が削られつつあります。ですから、北村はこの本を、”子供に人気のある恐竜を使って進化を考えるためのものとして”作りました^^)。

 また、1950年に提案されて以来、分岐学は進化の研究に欠かせないものになっています。しかし、分岐学は一般にはほとんど知られていませんし、知っている人も非常に初歩的な誤解をしてしまうようです。

分岐学にありがちな誤解へ→  

 ですから生き物や恐竜に関心を持った子供たちのために、分岐学を簡単に取り上げたこの本を作りました。

 この本は知識を暗記するための資料集でも暗記本でもありません。この本を持って博物館へいってください。そして考えてください。単純に眺めるだけでもかまいません。復元と称するイラストや造型を眺めていては、けっして分からないものをあなたは見ることができるはずです。

 博物館にいったらそこでの一期一会を楽しみましょう^^)

 ところで北村は最近、”最新知識をフォローすることは科学を知るために必要”という文章を見て目をむきました。それはたしかに必要なことかもしれませんが、それだけでは意味がありません。例えば最新の自動車を輸入しても道路がなくては使い物にはならないでしょう。自動車を走らせるためには、ガソリンスタンドや整備士、整備士を教育する学校、その他モロモロのものも必要になります。

 インフラが整備されていなかったから最新の機械を輸入しても受け入れる素地がない。そもそもそれらの輸入品を荷揚げする施設さえも港にはなかった。これは実際にあった悲惨な話です。

 科学の考え方をしらないまま最新知識を集めたら、その人の頭の中では奇妙で悲惨なことが起こるでしょう。ですから、この本では恐竜の最新知識を特に書いていません。そうではなくて、この本は実物の標本を見て考えてもらうように作りました。

 あなたは知識を集めるコレクターになりたいですか?。それとも”考えることのプロである科学者”になりたいですか?。

 率直にいうと、恐竜の研究者になるのだったら進化学、分岐学、数学、ダーウィンのことを知ってないとまともな論文なんて書けないでしょうね。知識を網羅した、ただの恐竜博士で終わることになるでしょう(よーするに研究者にはなれない)。恐竜の研究者にならないにしても、分岐学などを知らないと恐竜のこと自体が分からなくなりますよ。進化への理解がなければいかなる知見も無意味です。それならむしろ何も知らない方が無害でしょう。

 最新情報を収集してもそれだけだったら無駄ですよ・・・・。

  

 

 さて、ここでクイズです

「恐竜で遊ぼう」の43ページに”整理するための生命の樹”がありますよね?。この生命の樹は本文にあるようなかたちで整理されています。

 ところで、この生命の樹、他に整理の仕方はないでしょうか?。あるとしたらそれはどんな形で整理されるでしょうか?。そしてその生命の樹と本文で紹介した生命の樹の”違い”はなんでしょうか?。ヒントはマイナス輪ゴムです。

 

     

 

 

 

 参考文献:

この本を書くのにあたって以下の文献を使いました。あるいは、もっと詳しいことを知りたい人、北村の著作が妥当なのかどうなのか、それを検討したい人は参考にしてください。幾つかの本には簡単な注釈をつけました^^)。恐竜学者になりたいあなたには以下の参考図書をおすすめします。

 

 系統分類学入門ー分岐分類の基礎と応用ー E・O・ワイリー他 宮正樹訳 1992 文一総合出版

 ↑生命の樹を作るための入門書です。とはいえ、入門という割にはかなり難解な本です。子供向きではないかもしれません・・・・。しかし、この本を参考にして生命の樹を作ってみることをおすすめします(北村の本も参考にしてみてください^^;)。生命の樹(分岐図)は恐竜研究には欠かせないものですが、かなり誤解されています。例えば、

 分岐図は毎回形が変わる、いい加減なものだ

 コンピューターのプログラムで何かしているだけ

 コンピューターで何が分かるのか?

などがそうです。

 しかし、もしあなたが簡単でもいいから生命の樹を作れば、これらの誤解がまるで無意味でつまらないものであることが分かるでしょう。

 

 

 系統分類学 E・O・ワイリー 宮正樹・西田周平・沖山宗雄共訳 1991 文一総合出版

 ↑これまた生命の樹を作るための本です。具体的な例が多いので「系統分類学入門」よりはすんなり頭にはいるかもしれません。でも絶版状態らしいです・・・・・。残念。

 

 種の起源(上下) ダーウィン 岩波文庫

 ↑ダーウィンが進化論を明らかにした最初の本です。彼は生命の樹を推定する方法を現代のような形で提案しているわけではありませんが、ほとんどその基礎となることを言っています。生命の樹の意味、分岐学の基礎、進化の理解のために参考になります。恐竜の研究者になりたい人は読まなきゃね^^)

 

 

 生物系統学 三中信宏 1997 東京大学出版会

 ↑難解(<北村にとってはということです・・・)ですが、生命の樹を作る方法に関する激しい議論の歴史、その背景にある数学的な問題などを理解する助けになるでしょう。分類学/系統学のあり方についても参考にしてください。系統学をやりたい人は以上の文献と合わせて読みましょう^^)

 

 岩波生物学辞典 第4版 2000 岩波書店

 

 動物誌(上下) アリストテレース 岩波文庫

 

 科学の歴史(上下) メイスン 岩波書店

 ↑最節約については三中さんの「生物系統学」とこの本(上巻)の、pp125~128. pp138. pp204~207を参考にしました。

 

 バイオディバーシティ・シリーズ1 生物の種多様性 第2版 裳華房

 ↑系統学について非常に参考になる本です^^)

 

 国立科学博物館 新館地下1階 タッチパネル

 ↑恐竜のことを知りたい人は国立科学博物館のここを利用してみましょう。一般向けにアレンジしてあるけどしっかりした仮説や、研究者どうしの異なる意見、考え方を知ることが出来ます。ちなみに北村の本でもふれているサンディーサイトの化石も見ることができます。なお、北村が恐竜の絶滅の参考にしたのはサンディーサイトの発掘を行っているDr.カーク・ジョンソンの意見。この人、すごいやり手なんですよね^^)

 

 [The Dinosauria ]: University of California Press

 ↑各種の恐竜の身体の特徴が詳しく記述されている本です。

 

 Chiappe. L.M, 1995. The first 85million years of avian evolution. nature vol.378 pp349~355

 ↑鳥類の初期の進化を総括したわかりやすいレポートです^^)

 

 Carr,T.D. 1999. Craniofacial ontogeny in Tyrannosauridae (Dinosauria,Coelurosauria): Journal of Vertebrate Paleontology 19(3) pp497~520

 ↑ナノティランヌスなどがティラノサウルスの幼体であることを示した論文です。ティラノサウルス類の頭骨の特徴の参考にもしています。

 

 de Queiroz, K & Gauthier, J. 1990. Phylogeny as a central principle in Taxonomy : Phylogenetic definitions of Taxon names. Systematic Zoology. 39(4) pp307~322

  

 Holtz,T.R.,Jr. 1994. The phylogenetic position of the Tyrannosauridae: implications for theropod systematics. Journal of Paleontology 68 pp1100~1117

 ↑メリーランド大学にいるDr.ホルツの論文です。ティラノサウルスがアロサウルスよりも鳥に近いことを明らかにした初めての論文です。

 

 Holtz,T.R.,Jr & Brett-Surman, M.K. 1997. The Taxonomy and Systematics of the Dinosaurs. THE Complete DINOSAUR. Indiana University Press. pp92~106

 ↑三中さんによる「生物系統学」とならんで、北村が分類と系統のありかたについての理解の参考にした文章です^^) 

 

 Holtz,T.R.,Jr. 1998. Large Theropod Comparative Cranial Function: A New "Twist" for Tyrannosaurs. Journal of Vertebrate Paleontology 18(3) 51A

 ↑ティラノサウルス類の狩りについての要旨です。

 

 Horner,J E et al. 1992. Marine transgressions and the evolution of Cretaceous dinosaurs. nature Vol.358 pp59~61

 ↑ロッキー博物館のホーナーたちによる、恐竜時代末期の恐竜達のうつりかわりを化石記録で見たレポート。

 

 Sereno, P. C. 1999. The Evolution of Dinosaurs. Science vol.284 no.5423 pp2137~2147

 

 Sereno et al. 1996. Predatory Dinosaurs from the Sahara and Late Cretaceous Faunal Differentiation. Science Vol.272 pp986~991

 

 Xing Xu , Xiao-Lin Wang & Xiao-Chun Wu 1999. A dromaeosaurid dinosaur with a filamentous integument from the Yixian Formation of China. Nature vol 401 pp262~266

 

 

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