Arctometatarsalia

アルクトメタターサリア

定義:オルニトミムスと、鳥よりもオルニトミムスに近いすべてのコエルロサウリア

Definition of Arctometatarsalia : Ornithomimus and all coelurosaurs closer to Ornithomimus than to Aves ( Padian et al 99, pp74 )

 

  ガリミムスのイメージイラスト。ガリミムスはオルニトミムスという動物に極めて近縁であると考えられています。見た目もほとんど違いがありません。彼らはダチョウを思わせる姿をしているので、ダチョウ恐竜と呼ばれることもあります。ガリミムスのようなオルニトミムスの仲間(オルニトミムス科とも呼ばれます)は確実にアルクトメタターサリアに束ねられる動物です。

 

 アルクトメタターサリアとは?:

 アルクトメタターサリア(Arctometatarsalia)という単語は、arctus(=挟まれた)とmetatalsal(=中足骨)という二つの言葉からできていて、”挟み込まれた中足骨”という意味があります。

 中足骨とは人間で言うと足の甲の骨です。幾つかの獣脚類は特殊な構造の足をしていて、親指の方から数えて、2番目と4番目の中足骨が3番目の中足骨を左右から挟み込んでいます。これをアルクトメタターサリアン状態(The arctometatarsalian condition )と呼びます。

 アルクトメタターサリアン状態の中足骨は、ティラノサウルスやトロオドン、オルニトミムスなどで見ることができます。

 

 ストルティオミムスの中足骨:国立科学博物館・新館地下1階の標本を撮影

 ストルティオミムスはオルニトミムスの仲間です。写真はこの動物の中足骨(足の甲の骨)の部分です。青い色で塗りわけられているのが”左右から挟み込まれた3番目の中足骨”です。

 下のティラノサウルスの中足骨も同じ状態であることに注意してください。

 

 ティラノサウルスの左足:国立科学博物館・新館地下1階の標本を撮影、およびスケッチ。

 

 このことから分かるように、ティラノサウルスはアルクトメタターサリアン状態という特徴を持っています。

 

 

 ゴルゴサウルス・リブラツス:イメージ・イラスト

 ゴルゴサウルスは他のどの動物とよりもティラノサウルスやダスプレトサウルスなどと束ねられます。では、彼らティラノサウルスの仲間たちは、どんな動物と束ねられるのでしょうか?。

 ひとつの可能性ですが、ティラノサウルスの仲間はアルクトメタターサリアン状態の足を持っているので、アルクトメタターサリアに束ねられるのかもしれません。

 ただし、アルクトメタターサリアン状態の足を持つ獣脚類のすべてがアルクトメタターサリアというわけではありません。上の定義からも明らかなように、アルクトメタターサリアン状態の足は、アルクトメタターサリアに束ねられる必要条件ではありません。(<勘違いしやすいし、間違った情報を伝えている人も多いので気をつけましょう)

 実際、系統解析によってはアルクトメタターサリアン状態でない足を持つ動物がアルクトメタターサリアに入ってくることもあります(Sereno 99などを参考)

 

 実は1994年にホルツ博士によって定義された当初は、アルクトメタターサリアン状態の足を持つことがアルクトメタターサリアの定義になっていました。ですが、1996年、ホルツ博士によって上のように、改めて再定義されました。その理由は最初の定義のような”派生形質に基づいた定義は不安定である”ことが理由となっています(Holtz 94. Holtz 96. de Queiroz & Gauthier 90)。

 アルクトメタターサリアの代表的な動物には、オルニトミムス・ティラノサウルス(Holtz 94)・トロオドン(Holtz 94)などが上げられます。

 

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