Troodontidae

トロオドンティダ

トロオドン科

All taxa that are closer to Troodon formosus than to Velociraptor mongoliensis

ベロキラプトルよりもトロオドンに近いすべての分類群

Saurornithoides juniorの頭骨模式図(図版/写真より描く)

 サウロルニトイデス・ジュニオルの頭骨を右から見たところ。側頭部の下と下顎の後ろがない。この種類はモンゴルのだいたい7000万年前の地層から見つかる。トロオドンティダの特徴としてこの模式図で見ることができるものは1:頭骨が細長い、2:歯が非常に多い、3:血管などに由来する下顎にある穴が溝のなかに並ぶ、が上げられます。

 図中の略号の表記。aof=antorbital fenestra :アントオービタルフェネストラ Groove on dentary:下顎にある溝のこと J=Jugal:ジューガー L=Lacrimal :ラクリマル mx =maxilla:マキシラmxf=maxillary fenestra:マキシラリフェネストラ pmx=Premaxilla:プレマキシラ Po=Postorbital :ポストオービタル Sq=Squamosal:スクアモーサル 

 

 トロオドンティダとは?: 

 主に白亜紀後期の地層から見つかる小さな肉食恐竜です。頭部は細長く、特徴的な小さな歯をたくさん持ち、後ろ足が非常に長くて中足骨がアルクトメタターサル状態であり左右非対称、人さし指が戦闘用と思われるかぎヅメになっていることなどが特徴です。頭が細長いところがオルニトミムス類によく似ており、歯が非常に多いところも一部の原始的なオルニトミムス類に似ています。足がアルクトメタターサル状態であることも同じで、こういう特徴はオルニトミムスやティラノサウルス、キロステノテスなどで見ることができます。

 一方で頭骨の後ろの部分は鳥などに似ており、腕も原始的な鳥やディノニクスなどとよく似ています。後ろ足の人さし指がかぎヅメであることもディノニクスなどと共通ですね。その一方では少なくとも派生的なトロオドンティダでは恥骨が前方を向くので、その点はディノニクスなどと異なります。これらの非常に簡単な図示は左の書籍pp188~189を参考のこと。

 トロオドンティダは体に対して、比較的、脳が大きいことから頭がいいのだ、と言われたり、眼が大きくて、どちらかというと前方を向くので立体視ができるとか夜行性であると言われることもあります。しかしながら実際の生態はよく分かりません。

 

 主なトロオドンティダ: 

 Sinovenator シノベナトル(あるいはシナヴェナトール)

 Mei メイ

 Troodon トロオドン(あるいはトロエドン)

 Saurornithoides サウロルニトイデス

 Borogovia ボロゴヴィア

 Tochisaurus トキサウルス

 

 トロオドンティダはどこにいくのか?:

 トロオドンほど系統上の位置が不安定な肉食恐竜は他にいないでしょう。これまで示されたトロオドンの系統上の位置は以下のようなものです。

____________アロサウルス

 |__________コンプソグナトス

  |_________オルニトミムス

   |   |____T: Holtz 1994 . Perez-Moreno etal 1994

   |________オヴィラプトル

    |  |____テリジノサウルス

    |  |____T: Xu etal 1999 他

    |_______T: Xu etal 2000 . Holtz 1998

    |_______ディノニクス

      |  |__T: Gauthier 1986. Sereno 1999. Xu 2002

      |_____鳥

Gautjier 1986. Mem.Calif.Acad.Sci, 8

Perez-Moreno etal 1994 nature370(4) pp363~367

Holtz 1994 J.Paleontol 68 pp1100~1117

Holtz 1998 Gaia 15 pp5~61

Sereno 1999 Science 284(25) pp2137~2147

Xu etal 1999 nature399(27) pp350~354

Xu etal 2000 nature408(7) pp705~708

Xu etal 2002,nature415(14) pp780~784

 

 トロエドンティダがコエルロサウリアであることには異論はありませんが、ではコエルロサウリアの何に近縁なのか?、それについては不確定な部分があります。見ての通り、アルクトメタターサリアからディノニコサウリアまで、それはもうあっちこっちに飛んでいます。

 こうなってしまう原因は良く分かりません。ただ、トロオドンティダの特徴を先にのべたことから分かるように、体の各部分がそれぞれ異なる生物群に似ているのがその原因なのでしょう。おそらく収斂などがその原因であるようです。もしかしたら原始的な形質が派生的に見えたり、あるいは派生的な形質が原始的に見えているのかもしれません。実際、最近発見されたシノベナトルやメイなどから考えると、原始的だと思われていたトロオドンティダの幾つかの形質はじつは派生的なもののように見えます。

 そうした発見があったせいか、系統上の位置は前よりも安定的になっているようです。トロオドンティダはたぶんエウマニラプトラであり、おそらくディノニコサウリアでよいようです。

 

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