発明や学者に関する短編集。中でもヒットは「鼎談 日本遺跡考古学の世界」と「野良愛慕異聞」。
「鼎談 日本遺跡考古学の世界」
今から約1万年後の12068年、日本の古代史を研究する学者が3人が発掘された
20世紀の遺跡から当時の日本文化を検討するという設定。
この中では、日本列島は西暦2000年前後に一度海中に没して、一万年後に再浮上したことになっているらしい。この日本沈没については、“コマツ卿”という人物が書いた記録が残っている(笑)
また、新宿遺跡の“トチョーシャ跡”の調査では、この建造物が地上25mの高さを誇っていたことがわかり、これが太陽を崇拝する神殿ではないかと推理されている(゚o゚)
さらにさらに、博多遺跡から見つかった「王さん。ありがとう」の落書きによって、古代九州に“王”と呼ばれる人物がいたことがわかり、この人物こそ卑弥呼ではないかという説が出て来たりする。
爆笑ではないけど、もう笑いっぱなしの1編でした。誰でも一度は考える、古代遺跡のとんでもない解釈を思い出して楽しめます。
「野良愛慕異聞」
大量生産されブームになった子犬型のロボット。しかしすぐ飽きて捨てられてしまう。
ゴミとして捨てるのにはお金がかかるので、無責任に道端に捨てられる。そんなロボット達は最後の力を振り絞って人間に愛嬌を振り撒くが、やがては力尽きて路地の奥などでゴミにまみれて死んでいく。
そんな人間に腹が立ったある技術者が、ロボット達のプログラムを自力で生きていけるように改造する。しかしそのことがやがて彼らの悲しい運命につながってしまう・・・。
無責任にペットを飼い、無責任に捨てる人々。ペットがロボットだろうが生きていようが、無責任な人はやっぱり無責任なんですよね
。
日本史上の事件、エピソードを様々にアレンジしたパロディ本。
なかでも「人殺し将軍」は、八代将軍吉宗が将軍位に登り詰めるまでに、吉宗の周りで起きた不可解な死を扱った内容で、日本史ファンには「さすが」と思わせる着眼点です。(吉宗のまわりで起こった、彼にとってひたすら都合のよい連続死については江戸時代からいろいろな噂があったらしいですが)
お薦めは「大騒ぎの日」。蘇我入鹿暗殺当日の刻々と移り変わる状況を、ニュースやワイドショーのパロディで中継して行く内容なのですが、歴史の面白さが凝縮されてるような一編です。
歴史を楽しめるかどうかという時に、事件のひとつひとつの経過を、その時その時の視点で見ることが出来るかどうかという事は大きいと思います。既に結果のわかっている話と思ってしまうと、つまらなくなってしまうんですよね。
ミステリーを主に集めた短編集。
いきなり「読者への挑戦」があるところなんぞはやってくれます(笑)
タイトル作の「茶色い部屋の謎」は、名探偵もどきが集まったパーティーで家の主人が撲殺される話。他にも凶器になりそうなものがたくさんあるにも関わらずノートという不可思議な凶器が使われていた。ここまでで、詳しい方なら有名なミステリーのパロディとわかりますよね(^_-)
「また盗まれた手紙」も、もちろんパロディですが、この方法は某乱歩賞受賞作にありますよね。
「領収書ください」は森村誠一作品であったような気がします。
「バイライフ」は人生を途中からやり直せる話なんですが、その間に小説を書いて貯めておくと言う発想が面白いです。
「誘拐屋繁盛記」が1番面白かったですね。
おなじみパスティーシュから人生スケッチまで13編を収録。
「トイレット・シンドローム」
旅先でつい気になるのがトイレのこと。それも海外旅行で長い移動があるとなれば、
トイレのある場所が気になる。その結果・・・
「バス旅行はスリルとサスペンスに満ちていた。(略) 雄大なアタルクの高原地方をひたすらバスで行きながら、常に、次のトイレはどこだという問題を抱えているのだ。」となってしまう。だれでもちょっとは思い当たる、旅のトイレ騒動記。
「算数の呪い」
小学校の算数の文章問題は謎に満ちている。ある問題は「私は12歳です。あるとき、北山、南川、東野の3家族の子供3人づつ合計9人が私の家に集まりました。あともうひとりいたら、私の12歳をいちばん上にして3歳までのすべての年齢がそろうところでした。各家の子供の年齢の合計は・・・(略)」
これに対して問いが「私はどの家の子供ですか?」(笑) 「自分の家に集まってるんだからわかるだろうが〜」というように、おかしな算数問題が紹介されてます。 ここに載っている問題のひっかけは根性悪い(笑)
「一見の価値」
マスコミで話題になることがあると、必ず現場に行って、実際に見てみないと気がすまない男の話。
普通の人なら、近くならちょっと見に行くけど、遠くまで行くことはないですね。でも考えてみると、縄文遺跡に何十万人と集まるのだから、一見の価値に重きを置く人は多いのかもしれないですね。あれはすごいパワーだと思います。なにしろ普段、縄文遺跡の話をする人に出会わないのに、あれだけ集まるんだものね。
「町営博物館」
40億円もかけて博物館を作ったのはいいが、展示するものが何もなく、おまけに予算が25万円しかない町の博物館会議の様子。最後の使い道は・・・?
ある意味ハッピーエンド(^^;)
「CM歳時記」
季節感がなくなった現代。いちばん季節感がはっきり出ているのがCMだった。
CMで季節を知ることってありますね。
毎日新聞に連載されていた「月刊しみずよしのり新聞」に雑誌の対談、書き下ろしを加えてまとめたもの。全編、言葉に関するおもしろ話です。
第1室は新聞連載なので、1つ1つが短くて掘り下げがイマイチ。
読み応えという点で不満が残りました。でも第V室の「ヘンナ語みっけ」は笑えます!
例えば、「ネコの缶詰あります」は有名ですけど、「冷蔵庫飲み放題」(旅館の広告)も
おかしい。私も「地域ごとに核を持つ」という見出しを見たことあります。うっかり読むと怖いです(笑)
言葉に関する短編12編を収録。
「日本語の乱れ」
あるラジオ番組で日本語の乱れについての投書を募集したところ、年配の男性からの投書が殺到した。現代人の言葉使いについては、ひとこと言いたい人が多いのだな〜という話。
投書の内容は、ほとんどは言い尽くされてる事ですが、「負けず嫌い」は二重否定だから負けるのが好きという意味になってしまうという指摘は納得してしまいました。「負け嫌い」になるはずですよね。
「目の言葉 耳の言葉」
サンデー毎日」が行った実験「音声入力ソフトは方言を認識できるか」に関する1編。方言がとんでもない文章に変換されるのが笑えます。福岡弁が軍事的文章になったり、津軽弁がなまめかしくなるのはなんとなく判る気がするなあ・・・
「絵のない絵本」
最近の犯罪を連想するミステリーです。
「ソクラテスVS釈迦」「コーヒーVS茶」「大岡越前守VS遠山金四郎」などなど様々なパターンで対決してます。
私としては「空海VS最澄」が面白かったですね。「ラーメンVSカレー」も身につまされて思わず笑ってしまった一篇でした。
誰でも知っている「シンデレラ」の、その後のストーリーを描いた「その後のシンデレラ」他8編を集めた短編集。
中でも、楽しかったのが「エッシャーの父」。 あのだまし絵のエッシャーの父親が明治政府の技術者として、明治6年から5年間、日本で河川の改修工事を指揮していたという内容。
その父親が持ち帰った日本の古模様に魅せられた事が、のちにあのだまし絵を描くきっかけになったのかも…? という、いろいろ夢を感じさせる話です。
超大物芸能人の突然の死。その結果起こった様々な波紋、影響、ドタバタを描く。
ワイドショーが亡くなった芸能人を取り上げてコメントを集めまくるのは、怨霊信仰の流れからかもしれない…って面白い。
SFマガジンに連載されていた作品。
私達が見ているすべての物質、現象は人間の脳が作り出した錯覚・・・かも?
と言うお話ですが、ちょっとダイジェストされた感じがあります。その割りに余計な描写もあったりして残念。
ラストはSF・宇宙ファンの夢かもしれません。「見たい!」「死んだ後でもいい、衝突する銀河をこの目で見てみたい」と思った事はありませんか?(^^)
人が生きていく上での、ちょっとしたおかしさに注目した生活喜劇。
ほのぼの楽しいです。
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