▲TOP


恩田陸

   

ロミオとロミオは永遠に
まひるの月を追いかけて
チョコレートコスモス
Q&A
月の裏側
ドミノ
puzzle


(注)【 】内はネタバレ。すでに読んだ方は反転させて読んでくださいね。


◆ チョコレートコスモス  恩田陸  blog

「ガラスの仮面」へのオマージュということで、「ガラスの仮面」好きの私としてはちょっと迷ったのですが、久しぶりにワクワクしながら小説を楽しみました。
読んでよかった〜

こんなことを書いていいのかわからないけど、「ガラスの仮面」の一番面白い部分を抽出したような感じ。つまり、舞台上で演じられる、見ている人間の想像力をいい意味で裏切る演技。それが充分に楽しめます。

小説の大部分を占めるのはオーディションのシーン。
伝説的プロデューサーが仕切る新国際劇場のこけら落とし公演。演劇界の注目を集めるそのオーディションにはある仕掛けが施されていた。

呼ばれたのは4人の女優。
キャリア豊富なベテラン女優、才能豊かな若手女優、アイドル出身の女優。
そしてもう一人、演技経験2ヶ月の無名の新人。
果たして選ばれた女優たちはその難題をクリアすることが出来るのか?

女優たちが経験と才能、知恵を駆使して考え出す演技のアイデア。「謎があって解決がある」という、小説の醍醐味を味あわせてくれるシーンの連続です。

そして4人目の無名の新人、佐々木飛鳥こそが天性の才能の持ち主。今のところ演劇というものに魅せられているけれど、まだ自分の才能に気が付いてはいない。でも彼女が半ば本能に導かれて考えだす演技や脚本の解釈、これが驚き。言われてみれば納得、というパズルの回答のようで、なにやら脳がすっきりした気がします。

飛鳥が始めたレッスンの様子も気になるし、全体としては導入部のような展開なので、続編が待ち遠しいです。



◆ Q&A

「愚行録」の感想にタイトルが上がっていたので、 読んでみたんですが、
これはダメだったわ〜

恩田さんが上手い作家だというのはわかるんだけど、
いつも最後で何かひとつ物足りなさを感じてしまうんですよね。

これは大型スーパーで起こった大量死傷事件を扱ったもの。
日曜日の昼下がり、混雑するスーパーで客が突然出口に殺到し、 折り重なって倒れた客の中から死者69名、負傷者116名を出すという事件が起こる。
逃げ出した客からは「火災が起こった」「薬物がまかれた」「ナイフを持った男を見た」 など様々な証言が出たが、事故現場に入ったレスキュー隊はいっさい火災や薬物の 痕跡を見出すことが出来なかった。
ではいったい客たちは何を見て逃げ出したのか?

前半は事故現場に居合わせた客からのインタビュー形式で進む。
このあたりではまだ読者には事故のことはわからない。 でも質問を受ける人間の緊張や恐怖、懐疑が伝わって、 ただごとではない雰囲気を感じる。 この進め方は本当に上手い。

後半は、インタビューを受けた人たちの後日談になる。
といっても、はっきり誰のことか書いてあるわけではなくて、 読んでいるうちに「ああ、この人はあの時の人か」と思い当たる。 でも特に大きな展開があるわけでもない。 大事件に関わってしまった人のその後としては充分想像できる範囲。

そして・・・

ここからネタバレ



結局、結論は政府の実験と言うことで解決なんだろうか?
謎の夫婦も、つぶされた紙袋も仕掛け?
物理的力としての人間の集団の恐ろしさは想像できる。
パニックの恐ろしさ、伝言や伝聞の恐ろしさは充分わかるんだけど、
純文学ではなく、ミステリーとして読むと、
やっぱり意外な原因、確実な解決を求めてしまいます。

その点で、やっぱりすっきりしないラストでした。





 まひるの月を追いかけて   文芸春秋

奈良を取材中のフリーライターが行方不明になり、彼の恋人と異母妹が取材ルートを辿りながら探しに行くことになった。しかし、そこには意外な人物が待ち受けていた。
こう書いてしまうと、ありふれた人探しミステリーのようですが、実はもっと複雑な仕掛けになっています。ストーリーよりも細部を楽しむ小説と言えるかもしれません。

でも、ミステリーとしてもかなり面白い展開です。とにかく先が読めない。
意外性は充分。謎はたくさんありますし、伏線も見事に描かれています。
そういう意味では好みの小説なんですが、芯になるストーリーや結末はむしろ苦手かな。ただ全体の雰囲気、細かいエピソードに共感する部分が多くて、自然に物語の中に入り込めたことが、何やら心地よい時間になったのでしょう。

キーワードは「旅」でしょうか。
眠気を誘うような明日香の風景。
見慣れた風景の中にあっけないくらい突然現われる史跡。
旅立つ前の期待と不安。
日常と非日常の境を越える一瞬。 
舞台が奈良であるということも、この小説の謎めいた雰囲気を盛り上げています。
背景が東京であったら、ただの2時間ドラマになりそうですからね。

もう1つの視点から見れば、子供の頃に家庭に恵まれなかった人の心の傷の話とも読めるかもしれません。
「まひるの月」とは、旅人がお姫様に贈った月なのかな?


ロミオとロミオは永遠に   早川書房

近未来、汚染された地球を捨てて人類は新地球に移住したが、なぜか日本人だけが旧地球に残って廃棄物の処理を押しつけられていた。そんな社会で、唯一出世してエリートになる手段が大東京学園を主席で卒業すること。そこで、全国から優秀な学生が集まってくるのだが、大東京学園の実態はウルトラクイズだった(?)

一言で言うと、萩尾望都と大脱走とローラーゲーム(笑)
個人的には「日本史のウメハラ」でウケてしまいました(^^)
1つ疑問なのは、大東京学園以外の日本人は普通に暮してるのかどうかということ。試験の中継なんか見てるんだから、日常生活なのかな?

・・・このタイトルを見て、ついイケナイ期待をしてしまった私(笑)
でも検索したページを見たら、恩田さんはSFマガジンのインタビューで、「『摩利と慎吾』を読み返したい」と話してらしたということなので、そんな外れてもいないよね(笑) 続きを同人誌で書きたくなる作品でした(爆)


◆ ドミノ    角川書店 

一言で言うと、「踊る大捜査線」と「ショムニ」を足して2で割ったような感じ(笑)
いきなり見返しに大きな東京駅の地図。これだけでなにか期待させるものがありますね。

そしてイラスト付きの登場人物紹介。これもコメディを予想させますが、あまりに数が多いのでちょっとめまい・・・(^^;)  こんなにたくさん覚えられるんだろうかと不安になりましたけど、印象的な登場ばかりなので、すぐ覚えられました。でも警視庁OB組は最後までわからなかったけど(^^;)

ある夏の1日、雷雨にみまわれた午後の東京駅。そこに居合わせた様々な人たちがやがて1つの事件に巻き込まれていく・・・
本当にドミノ倒しのように一つの出来事が次の騒動を引き起こしていきます。何でもないように思える小道具が、次の騒ぎのきっかけになってつながっていく展開は見事。「50cm手前」とは〜これは映像で見たいですね。しかしどうしても北条和美は江角マキコが出て来てしまった(笑)


◆ puzzle   祥伝社

無人島となった廃墟で3人の男が死んでいた。3人はそれぞれ離れた場所で、一人は餓死、一人は墜落死、一人は感電死していたのだったが、ほぼ同時に死んだと思われた。3人の共通点ははそれぞれにコピーした奇妙な記事を持っていたことだけなのだが。

いきなり「さまよえるオランダ人」の解説が書いたあったりするので、かなり期待してしまいましたが、あくまで内容は「パズル」でした。でも無人島に上陸した2人の検事の推理は面白かったです。ちょっとした時間つぶしにはちょうどいい作品ですね。

ネタバレ【でも、コピー記事の謎が「名前が入ってる」だけというのは弱い。もう少し捻って欲しかったですね。数字を合計したら自分の名前が出てきたというのもこじつけのような・・・。 世の中には数字がたくさん出ている文章は数限りなくあるはず。この人は日夜計算で疲れてししまい、それでこんな所に来たんだろうか??(笑)


 月の裏側   幻冬社

掘割が縦横に走る町箭納倉・その町で3人の人間が行方不明になった。
しかしその3人は、しばらくすると何事も無かったように戻って来た。
ただ行方不明になっていた間の記憶だけが無かった。数日間行方不明になっていた人間が帰ってくる…、しかし彼らは元の彼らではないのかもしれない…。イメージ的には不気味ですが、割りと王道のホラーです。

ただ読み終わった後が恐いです!!
このイメージ解ってもらえるかな・・・あれが恐いんです。あれが!

でも、文学しりとりは難しい〜!


▲TOP


鮎川哲也 内田康夫 清水義範 奥田英朗 杉本苑子 永井路子 東野圭吾 宮部みゆき エラリー・クイーン

**TOP**