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先程、蝶槍や蝶ヶ岳が見えたのが、6時30分頃。
登りはそれからも続く。周囲のササがかなり多くなってきたなと思われ始めた頃、それと呼応するように徐々に傾斜が緩み始める。
やがて、上方を見ると、樹林の隙間から青空がチラチラ覗き出し、稜線の形を浮き上がらせ始めている。この登りもようやく目処がついたという感じである。
7時を少し回ると、完全に傾斜は無くなり始め、やがて尾根の上を歩くこととなる。
道は左に折れて、ほぼ平らな道を進むことになる。足下にはヌタ場のようなぬかるみがしばしば現れる。先の方が明るいので、
このまま森林限界かと思ったら、それ程甘くはなかった。 |
一旦樹林帯を抜けると、目の前に大きな高みが見えてきた。
恐らく前常念岳であろう。
ハイマツによる緑の斜面に白い岩が顔を出していてアルペンムード一杯。背景には雲一つ無い青空が広がっており、弥が上にも気持ちが高ぶる。
足下を見ると、標高点の跡らしきコンクリートがあったので、ここが 2,207m地点なのかもしれない。時刻は 7時10分、
丁度 出発してから 2時間である。
西を見れば、先程 樹林越しに見えた蝶槍らしき高みがハッキリ見える。
また、南東には 北岳らしき三角錐が雲海の向こうにシルエットのように見える。
疲れが出始めてはいたが、気分が高揚し、休むのももったいないと先に進む。 | |
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先にも述べたように、すぐに森林限界かと思ったのだが、そう甘くはなかった。
道は、ササの中を進み、再び 樹林の中を登っていくようになる。
左を見れば、樹林越しに蝶槍とその右にある高みが見える。
常念岳から蝶ヶ岳までは、
起伏のない尾根歩きだとばかり思っていたのだが、どうやらそうではないようだ。蝶槍手前のピーク (おそらく 2,592m峰) から下って、
蝶槍への登り返しはかなりきつそうである。
また、ほんのチラリとではあるが、前方には常念岳らしき高みも見えたのであった。 |
早く 樹林帯を抜け出したい一心で、
足を速める。足下は結構 ムキだしの根があり、少々歩きにくい。
20分弱で樹林帯を抜け出す。
目の前には再び 前常念岳。三角錐をした姿が美しい。
やがて、大きな岩が積み重なっている場所に出る。岩にはシラビソの木で作られた梯子がかかっている。
この梯子を登り、岩に立った所から岩稜帯の登りが始まった。 | |
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岩稜帯を登り出す前に大きく広がった展望を楽しむことにする。
西には、蝶槍の姿。稜線は 蝶槍に登ってしまえば後は蝶ヶ岳までそれほど起伏はないものの、先程気づいた通り、蝶槍より右には登り下りしなければならないいくつかのピークがあり、
特に最後に 2,592mピークから大きく下った後、蝶槍に登り返すところは厳しそうである。
南西方面を見れば、先程の 北岳に続いて、
塩見岳、
荒川三山らしき山々が雲海の向こうにうっすらと浮かんでいるのが見える。
そしてそのさらに右には、中央アルプスらしき山々も見える。 |
岩稜帯といっても、
最初のうちは写真の様に、岩よりも シャクナゲ、ハイマツ等々の低木の方が目立つ。
踏み跡は明瞭、ペンキ印もしっかり付けられているので、迷うことはない。事実、20年前にここを登った時は完全にガスの中であった。
それでも問題なく道を辿れたのであったから、ましてや快晴のもと、迷うはずがない。
左を見れば、常念岳から蝶ヶ岳へと続く稜線の向こうに
奥穂高岳らしき岩峰がほんの少し顔を出し始めている。 | |