BOOK BOOK こんにちは  2003.5月

我々はもしかして東京でいちばん読書量の多いバンドなのでは?

このコーナーは、3人の精鋭が日々読んだ本の感想を書いていくものです。

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       アオウ        コマツ       スヤマ

★5月26日(月)更新★★★★★★★★★★

YONDA CLUBの景品「川端康成腕時計」が届いた。前回に続き、2個目の川端時計。我ながらおかしいと思う。他に漱石、芥川があったのだが…川端はどう考えても不人気商品だろうな。

『作家の花道』(室井佑月 集英社文庫)「女の人」としては好感。それにしても女性のエッセイストには読者の興味をひくため、これでもかと自分の恥をさらけ出す人が多いが、室井氏もがんばってます、いろいろ。女性作家ならではの「赤裸々」は昔から立派に「武器」であるが、あまりにも恥じらいがないと、なんだか安いなあ。

『鉤』(ドナルド・E・ウエストレイク 文春文庫)スランプ中のベストセラー作家が、売れない中堅作家ウエインに「おまえの小説をオレの名前で出版させてくれないか」ともちかける…。アメリカ小説界の裏を暴く(?)作品。いい! この小説のモデルになったかもしれない小説家のイニシャルを明かす、訳者による後書きも意味シン。すぐさま『海外ミステリー事典』(新潮社)を開いてみて、だいたい推測がついたにゃー。

『ネバーランド』(恩田陸 集英社文庫)久世光彦がベタぼめしてたので、期待して読んだ。期待しすぎたかな?ガラガラの冬休みの男子寮に残った4人の男子高校生が、少しずつ自分の「秘密」を告白していく…という話。ただ、告白してくだけじゃなく、何か終盤にもうひとひねり用意してあるんじゃないかと思ってたら、あっさり終わってしまったのでやや物足りない感が残る。4人のキャラはそこそこいいのだが、「激昂のしかた」がみんな一様に同じなあたりに「マンガっぽさ(テレビドラマっぽさ?)」が垣間見えてしまう。

『将棋の子』(大崎善生 講談社文庫)将棋の天才たちが集う奨励会を描いたノンフィクション。入ってきた時はみな天才少年なのに、年齢制限までに昇段できずに去っていく者もまた多い、厳しい世界。はじめのうち、「この文章は私の好みからするとあまりにセンチメンタルすぎるなあ」と思いながら読んでいたが、ひきこまれてくると気にならなくなってしまう。これが力というものかな。

『リストラ大王』上下巻(立原あゆみ 集英社)リストラされたオッサンがホームレスになる話。主人公がヤクザじゃない立原マンガ、新鮮。キャラも新しい気がした。

『金魚堂古書店出納帳』(芳崎せいむ 少年画報社)だいぶ前に、W氏から単行本情報を聞いていたのに、なかなか見つからず。渋谷のブックファーストでやっと手に入れた。雑誌『アワーズガール』がなくなった時は、立ち消えになるのを心配したが『アワーズライト』で続行。よかった〜。古いマンガを、アホみたいに高い値段ではなく…でもそれなりの価値を認めたうえで「その本を愛してくれる人に」良心的な価格で売る古本マンガ専門店のお話。マンガ好きにはたまらん。

『怪盗ニック』(エドワード・D・ホック ハヤカワポケットミステリ)このたび文庫になるらしく…そこで持ってる事を確認すべく探し出したついでに、パラパラ読む。怪盗ニックは価値のないものだけを盗むことに応じる泥棒である。報酬は2万ドル。盗むものは虎とか大リーグのチームとか、カレンダーとか…。

そうそう、ハヤカワ文庫からオベールの新作が出たらしいから買わなくっちゃ。あとさあ、チャールズ・パリサーの『五輪の薔薇』って3巻まで文庫になってたんだね、知らなんだ! これは古本屋で探そうかな。長いし(全5巻!)、すでにくじけた人も多いだろうから。

あとねー、来月にはパヴェーゼの『故郷』が岩波文庫で出るですよー!楽しみ楽しみ。だいたい晶文社の「チェーザレ・パヴェーゼ全集 全17巻」はどうなってんじゃ!1969年からの刊行で、目録を見るとまだ一応「刊行中」ってことになってる。でも、今手に入るのは2冊だけで、すでに4冊は品切れだって。そのうちの1冊が『故郷』。古本屋で探してました。やっと読める…。全集の残り11冊はいつ出るんだろー? もう無理? 岩波、頼りにしてるよ〜。

前に、書店の袋問題について書いたが、輪ゴム問題についてもひとこと。みなさんは、文庫を買った時輪ゴムでくくるのってどう思いますか? カバーがはずれないようにかけるのだろうが…。アレが嫌いな理由をずっと考えてたのだが、本じゃなくて薩摩揚げかなんかを渡されたみたいな気分がしてイヤなんだと思う。

★5月19日(月)更新★★★★★★★★★★

『美妙、消えた。』(嵐山光三郎 朝日新聞社)売れっ子作家でありつつも、スキャンダルから闇に葬られた山田美妙の評伝。読みごたえあり。硯友社の仲間である尾崎紅葉とは、幼なじみでもあったとはしらなんだ。

『象の耳鳴り』(恩田陸 祥伝社文庫)短編集。オビでは「パズラー短編の奇蹟」と絶賛されている。あとがきでは都築道夫の後継などと書かれている。刊行時、ミステリのランキング本でも上位に入ったらしい。しかし、私はちーともおもしろくなかった。この本にはロマンが感じられなかった。あっ、ロマンってのは「なんとか館」で殺人事件が起こる、とかそーいうことじゃないのよ。パズラーには「そんなのムリかも? こんなトリックは偶然すぎるかも?」と思わせても・・・「いや、こんな偶然があったらおもしろいじゃないか」と思わせるトリックの夢がなければならない。それを提供するには、論理的つじつまだけではなく、トリックを構築する世界観(文体を含めた)が必要ではないか。アイデアには良いものがあるかもしれないが、文学的になんら香り立つものがないこの手合いを、都築道夫の後継とはホメすぎであろう。ミステリ評論家であり作家でもあった故・小泉喜美子がミステリの「ムード」の大切さについて口うるさく書いていたのを思い出す。恩田陸の本を読んだのはたぶんこれが初めてで、きっとほかにもっとおもしろいものがあるんじゃないかと思うがなあ。

『永遠の夏姉妹』(ジュディ・ブルーム 扶桑社)おもしろかった。もっとマセた少女バナシみたいなのを想像していたが、ワキをかためるワケありな登場人物たちが多彩かつ幅があり、それらとの人間関係において2人の少女の性質・関係がくっきり出ているなあと思った。

『こちら「ランドリー新聞」編集部』(アンドリュー・クレメンツ 講談社)最近、かなり注目している児童文学作家。これで日本で刊行されてるのは全部読んだかな。いつも、なんらかの形で子どもが大人と戦う構図が出てくるところが好き。これを小学生くらいの時に読むと、自由の所在にワクワクするであろう。

『ドアのむこう』(渋谷愛子 学習研究社)、『グローリア』(石神悦子 学習研究社)、『消えた化石事件』(B.B.カルホーン 小峰書店)、以上児童図書。

『算盤王』(長谷川光太 ポプラ社)主人公が越してきた町は異常にそろばんが盛んで、毎年町をあげてのそろばん大会がある。・・・すべるとキツイなと心配しながら読んだけど、おもしろかった。大会の時の鶴亀算の出題で「こたつ500台なり、かかし41体なり、ねこ足テーブル88台なり、たこ焼き屋のおばさん9人なり、ミヤマクワガタのつがい入りの虫かごを持った少年3人ではっ」・・・てな出題にウケた。

『回想の江戸川乱歩』(小林信彦 メタローグ)、『乱歩おじさん 松村喜雄 晶文社)、どっちもいまいち。

今週より風呂本は『邪魔』(奥田英朗)。まだ最初のほうだけどおもしろそう。

★5月12日(月)更新★★★★★★★★★★

『ドミノのお告げ』(久坂葉子 勉誠出版)。新書サイズで、4編収録。とはいえ、うち2編はエッセイ『久坂葉子の誕生と死亡』、“遺書”とも言われる遺稿『幾度目かの最期』なので、もう少し小説読みたかったなー。ま、廉価版のボリュームとしては致し方あるまい。いやいや、でもフィクションかノンフィクションかなんてことは、どうでもいいや、この人の場合。まず、状況説明がさほどていねいでないところがいい。視点、感情の動きにまっすぐすぎるほど忠実で、ぶっきらぼうなムスメらしい語り口には、爽快さすら感じる。「女太宰治」などとも呼ばれている久坂葉子は21歳で自殺した神戸の作家。島尾敏雄や庄野潤三と同人仲間だったそうです。『ドミノのお告げ』は芥川賞候補になった作。たしか書簡集も出ていたはずだが…。

長年読みたかったミステリの古典『緑は危険』(クリスチアナ・ブランド ハヤカワ文庫)を読み始める。しかし、こういうクラシックなパズラーミステリって、環境を選ぶなあ。「この本を読むことしか考えないぞ!」っていう状況が欲しい・・・。

本屋に行ったら、雑誌連載中から「早く単行本出ないかにゃー」と楽しみにしてた『蜂起には至らず 新左翼死人列伝』(小嵐九八郎 講談社)が出てたので即購入!登場する27名のトップを切るのは、アイドル樺美智子さん。その他奥浩平やら、あさま山荘事件関連の面々から田宮高麿まで有名どころがわんさか・・・ワクワクするわー。

この日は、いろんな本がキラキラしていて「ねえさん、オレとつきあわねえか?」「いいえ、あたくしとよ!」「あちきが先じゃけえ」と、私を次々に誘惑してくるので、あまりじっくり見ないようにした。結果、ほか2冊のハードカバーを購入。『生命40億年全史』(リチャード・フォーティ 草思社)はまさにタイトルのごとし。1冊で、生物進化の歴史40億年分を語ってしまう壮大な本らしい。でも、かといって「ざっくりした教科書」という雰囲気ではもちろんなく、おもしろそうであります。

もう1冊は『安全学の現在』(村上陽一郎 青土社)。タイトルを見た瞬間、「コレよコレ、こーいう本が読みたかったんじゃん!」と即座にわしづかみ。よく見たら、対談集だ。テロ、医療事故、自然災害、原子力etc、日常を取り巻く危機克服の道を探る本なのだ。探るよ、私は。こないだ、防煙&防炎マスクを購入しようかと思ったら2万円くらいすることがわかって、断念した。

★5月5日(月)更新★★★★★★★★★★

『聖の青春』(大崎善生 講談社)拾った本。風呂で読み始めたら止まらなくなってその日のうちに一気読み。幼いころからネフローゼを患い、29歳で他界したA級棋士・村山聖の一生を追ったノンフィクション。「病気と闘いながら・・・」という雰囲気がつきまとっているのじゃないかと思ってこれまで敬遠してたのだが、そんな印象はまったくナシに読めた。村山の素のキャラクターの魅力に惹かれながら読んだ。ライバルでありつつも「どんなに疲れていても弱音を吐かず、悔しくても飄々とし、そしていっさい偉そうなことを言わず、そんなそぶりも見せない羽生」のことが好きで仕方ない、というのもカワイイ。羽生を食事に誘い、「おいしいものは食べ慣れているだろうから…」と、自分の行きつけのひなびた定食屋に連れていくエピソードがキュートでグッとくる。

『“It”(それ)と呼ばれた子 少年期』(デイヴ・ペルザー ヴィレッジブックス)著者が自らの人生体験を語るシリーズ第2作。ようやく鬼のような母の虐待から逃れ、里親のやっかいになるデイヴだが、まだまだ多くの困難が待ち受ける。いっしょに住んでないにも関わらず、デイヴを脅かす鬼母の影がおっとろしい!第3弾も楽しみ。マンガの『はみだしっこ』が無性に読みたくなった。

『トワイライト』(重松清 文藝春秋)どこまでもノスタル爺ックな小説。かつての同級生たちが集まり、小学校に埋めたタイムカプセルを掘り出す…という導入。「小学生の時に憧れていたような大人になっていない」ことに溜息をつく39歳たち…ですか、ふーむ。ま、それだけ主人公らの子ども時代は美しく、人生はすすける一方なのですか…? 表紙には太陽の塔。

『黄色い目の魚』(佐藤多佳子 新潮社)Nさんから借りてた本。私の後にも貸し出し希望者が控えているはずなので、早く読まなきゃと思っていたがずいぶん寝かせてしまった。『新潮現代童話館』(新潮文庫)に書き下ろされた表題作を中心とした連作集。初出より10年が経過していたのね。『麦ちゃんのヰタ・セクスアリス』時代の立原あゆみの絵を頭に浮かべながら読んだ。ちょっとゆるいかなー、ちょっとキレイすぎかなーとも思ったが、終盤、「恋が成就した幸福と、それに一点の染みがある不幸」に主人公が戸惑うsceneにはハッとさせられたりして。

『20代に読みたい名作』(林真理子 文藝春秋)挙がってるのは確かにまっとうな名作ばかりなのだが…。『肉体の悪魔』(ゆーまでもなくラディゲ)を語ってシメの一文が「やはりこの作者は天才なのである」じゃあ読んでるほうは困っちまうし…。ある時には「翻訳ものの純文学、いわゆるインテリが好んで読む小説が私は苦手である。エンターテイメントという要素をわざと除外する小説は、文体の新鮮さを狙うものが多い」と一席ぶってるのをギャフンとひっくり返ったりしながら一応全部読みました。

取材で八王子に出かけ、ブックオフを発見。10分滞在する間に100円コーナーで、長年探してた本を見つけましたよ。『怪盗ルビイ・マーチンスン』(ヘンリイ・スレッサー ハヤカワミステリ)の、小泉今日子が表紙じゃないヤツを!あれは興ざめするのよね。ここ10何年かのうちに、古本屋の棚から抜いては「また小泉か…」と溜息をついて本を戻したことが7〜8回はあっただろう。この短編集はとてもおもしろいよ〜。満足。

休み明け、取材で浦和に出かける予定。浦和の古本屋情報(急いで)求ム!

★5月26日(月)更新★★★★★★★★★★

今読んでるのは、アオウに借りた「斧」(ドナルド・E・ウエストレイク 文春文庫)「狼よ、故郷を見よ」(平井和正 角川文庫)の2冊。どっちも面白いなー。で、その次は「ドリーム・キャッチャー」(スティーブン・キング 新潮文庫)を読むつもり。もう2〜4巻は忌まわしきブックオフで購入済み。1巻が見つかり次第ゴー。これは急いでいるのだ。何故かと言えば映画の「ドリーム・キャッチャー」を見たいから。やっぱり本(原作)とその映画化作品を比べると、本のほうが圧倒的に面白いことが多いワケですよ。かつて「郭公の巣」の舞台を先に見て、J・ニコルソン主演の映画を見たことがあるが、まったくのダイジェストにしか思えなかった。映画しか見てないが「ボーン・コレクター」もヒドかった。たぶん小説はそこそこ面白いのだろうが・・・(?)。

話は戻るが平井和正です。気まぐれでン10年ぶりに読んだのである。イイねー。中高生のころゴソゴソ読んだです。現在、学校教科書はたいへんつまらんことになってるらしいが、平井のウルフガイ・シリーズとか筒井康隆の七瀬シリーズを載せればたのしくなるのになあ。柴錬三国志とかさ・・・。ラブクラフトもいいねー。好きだったなー。たぶん現在のオレのホラー好きはラブクラフトから始まってる。「インスマウスの怪」とか最高!ヤバイよ!国語の授業で「名状しがたい怪物が・・・」とか読むのオモロイじゃん。名状しがたい、って何よ(笑)。ラブクラフトはよく使うんだけどさ。それって文章表現としてはスゲー反則。だけど、逆に、よくわかってんなー、この人、って感じがオレはしちゃう。そうなのよ!「名状しがたき」ものこそがオレの読みたいものなのです。

★5月19日(月)更新★★★★★★★★★★

『陰の季節』(横山秀夫 文藝春秋)大阪に帰省していた。実家の本を整理して段ボール8箱くらい処分した。家中のいろんなところから懐かしい本が一杯出てきて、とても楽しい時間をすごした。それらの本の紹介はまたにするとして、今回読んだのは警察小説である。ハゲでデブの大男である大阪の友人が「帰りの深夜バスで読め」とくれた本だ。言われたとおり深夜バスの読書灯で読んだ。そういえば以前この作家のことを、ハゲでデブの大男は「ええぞ」と推していた。いまでは直木賞を拒否したりベストセラーをものにしたり、まさに時の人となっているそうだ。そんな作家が書く作品なのだから、当然意地のあるよい小説だった。なんだろ?ていねいだ。よく書けている。面白い。それで充分だ。まだまだ読みたい。

★5月12日(月)更新★★★★★★★★★★

『殺人保険』(ジェームス・ケイン 新潮文庫)深夜にねころんでミニライトの丸い灯りの中で呼んだ。そういう秘めやかなのがピッタリの本。福永武彦はミステリを楽しむには「うまいディジェスティフが一、二杯あった方がいい。煙草はふんだんに必要である」とかつてエッセイで書いていた。まさにその通り!そして後顧の憂いのない休日前の夜更かしをヒヒヒと楽しむのである。まあ本書は、どうでもいい感じのフツーのミステリだが、オレは圧倒的にこーいうのが好き。もちろん『郵便配達は…』の方がぜんぜん面白いけどさ。

★5月5日(月)更新★★★★★★★★★★

デブチンです。カタツムリ露伴の「五重塔」読みました。読みはじめたらすごくねむくなってきて、少し眠って、また起きて読んだのでした。最近酒を飲む機会が多く、けっこう睡眠不足気味。しかも頭痛薬やら睡眠導入薬など服用したせいでしょうか。なんとも不思議な眠りでした。夢か現か、のうちにツルツル読んだこの本はモチロンすごく面白いのですよ。さあまだ読んだことのない人はぜひ読みましょう。いまはマスジの「荻窪風土記」を読んでます。最近オレは阿佐ヶ谷・荻窪間に引っ越したので、ちょっと新しい興味がでた訳です。オレ的にはかなりのディスカバー中央線ブーム到来!なのです。定期も買ったので一日何度も乗り降りできるのがスゲー楽しいんですよ!!!もう、どの町もオレの町って気分です!オレ知らない町で日が暮れると、スゲー不安になる人間で、だけど定期を持ったらスゲー気が楽になった!なんでだろー?いつでも帰れるって安心なのかな?オレってサイコかなー?今年の夏は久々に善福寺公園の蛙の合唱を聴きにいくことにしようっと!

★5月26日(月)更新★★★★★★★★★★

わしにとって〈読書〉とは、思想書や外国語の本をヨムことである。今週、そうした本はちょびっとしか読まず、『立花隆秘書日記』(佐々木千賀子・ポプラ社)を読んでしまった。これは〈読書〉ではないなー。わしの勤め先の新人がこの本に出てくるので、キョーミ本位で買い求めて読んでるうちに読んじゃった、というアクシデントみたいなものである。

わしは立花隆という人の本は一冊も読んだことナシ。ノンフィクション関係余り食指が動かぬ。わし、前述のように思想書が好き。なんで? なんか、“魔法が記されているイニシエからの伝来の書”みたいでワクワクするから。「秘術を汝に説き明かそうではないか。ついてはこの術を体得し、汝自ら実践し、ひいては伝承し後世の者たちを導くがよい」と宣せられているみたいで心地が良いの。実際はすぐ忘れちゃうから伝承どころじゃないんだけれどもね。

はい。で、“秘書日記”なんだけど、40代にさしかかった段階で日本の景気がどんどん悪化して失職する羽目になった女がヒョンなコトから超有名評論家の秘書求人に応募して合格(一人だけ)してしまうことで人生どう展開していくか、というハナシなんでした。まあこの人の人生についてはこの人自身が決めればいいんでソレはソレとして、いちばん面白かったのは、立花隆という人の女性観である。著者の観察に拠ると、立花氏の好きなオンナのタイプとは:「小柄」「バイリンガル」「キャスター」「理系」「芸術家」「東大卒」だそうだ。

はい。この本のハナシは以上です。

週があらたまったら、また〈秘術の書〉に戻らなくっちゃ。やっぱり、「女の生き方ドキュメント」はわしのフィールドとは無縁だわ。今日もさっき、「スヤマさんて結局オンナのこと軽蔑してるんだからっ」って云われてしまったしね。

★5月19日(月)更新★★★★★★★★★★

『期間限定の思考』(内田樹、晶文社)を読む。この人の『寝ながら学べる構造主義』を読んだ者にとって、「この内田さんていう人はもしかして構造主義がオノレの全てなのかしら」と思えてしまってニャンニャンニャン。自己を生かすには何よりも他人の存在が不可欠、という論旨が一貫している。恋愛も蓄財も労働も、ぜんぶ結局“誰かのため”なのであって、そこに「私」は無い。他の誰かが居なければ働きもしないだろうしブランド品も持たないだろうし、〈自立〉もできないだろう、というのであるウチダ氏は。〈自立〉した人間とはナニか。ソレは《支えてもらうことを求めてくるもの》を利用して立つ人間だと。しかも、「ほんとうに成長した女」とは「人間の成長には終わりがない」=《どこまでいっても人間は他者の支えなしには生きられないこと》を知った女のことである、とも言うのである。うーん。やっぱり女ってそうなのか?そう、女ってそういうトコロあると思う。「私のこと話したい。聞いてほしい。だから会って。そして会うときはオイシイものおごって…」ああ、いいんだよソレで。いつの日か、オンナも支えてくれるオトコが要らなくなることだろう。強いオトコは「どこにも堅牢な基盤などない」と信じつつ、「支えを求めてくれるオンナがいるからこそ、オトコは大人として自立できる。バランスを他者とのやりとりの中で保つことができる」んだそうだ、ウチダ氏によると。

…たしかにそんなもんなんだろう。でも…でも…わしは違うぞ。ワシはしなだれかかってくるオンナなぞ要らん。オンナはとにかくムリをしていてほしい。この生き辛いジンセーを、何がなし、シンドそうにやりすごしつつも、「ま、こんなモンよ」と諦めていてほしい。オンナだから、オトコだから、というだけで耐えるコトなど無いフリをして、ケナゲに、しかもサメきって、誰かをじっと待つことなどせず、しかもどこかウラ悲しくしていてほしい。コーヒーカップの把手につかまって、色あせたルージュを拭きとりながら、淋しく窓外の気色に目をただよわせてほしい。そのときオンナの手元に投げ出された書物の名はナニか…?やはり、林芙美子の作品か、はたまた富岡多恵子の評論か…。(後半、私的夢想に走りすぎた駄文でございました。お許しください。)…ああ、でも佐多稲子なんかもイイなあ…。

★5月12日(月)更新★★★★★★★★★★

アントニオ・ネグリ&マイケル・ハート著、以文社刊『帝国』を読んでます。しかしコレがまた600ページぐらいあるもんで、持ち運ぶのがついつい億劫になってしまってのう。なんやよう知らんが大評判になってて、フーコーやドゥルーズも時代遅れの遺物にしてしまようなコトがドドーンと論ぜられてるっちゅうハナシや。まだ50ページしか進んどらんがの。

さて、前回ご報告しました『脱構築』(守中高明 岩波書店)は読みました。ディコンストラクションの概念はフェミニズム的思考の解体や、〈共同体なき〉弔いの政治思想(なんのことやら分からんでしょうから、ま、読んでくださいな)を考えるのにも使えちゃうのだそうですよ。そういえば昨々日、デリダ主演(!)の映画もアテネフランセで見ちゃいましたよ。デリダさん家も映ってたけど、屋根裏部屋まで本だらけでしたし、お庭にはニャーのお墓がいくつかあって、「あの黒い奴はこのへんに埋めたんだっけ?」とか言いつつ、“弔い”の場(シーン)をご夫人と醸成しておられました。ジャン=リュック・ナンシー氏も友情出演するんだけど、イイ男なんだコレが! 美男の思想家っていいよね! そういう人の研究室に原稿もらいに行って、ソファーに座りながらヒザとか撫でてもらいたいよね!

 さて、岩井克人『会社はこれからどうなるのか』は、面白うござんすよ。果たして日本経済は、“ポスト産業資本主義”時代の到来をのり越え、袋小路の景気低迷を打開できるのでしょうか? 〈モノ〉のイメージ戦略と大量消費に依存しつづけてきたニッポンは経済界の「グローバリゼーション」に如何に対応するのでありましょうか?

 しかし、無力無善寺で今宵、地下に生棲する昆虫のようにモゾモゾと演奏する私たちに、“グローバルな視座”や“IT革命がもたらす脱領域化”などのタームが何かイミをもつとでも思えるだろうか?

「神々が死の塔を建てるのなら、我々はみな地下へと潜りこもう(中川敬、1991年)」

今月のお買い物:J.デリダ『友愛のポリティクス(上・下)』(みすず書房)、G.スピヴァック『サバルタンは語ることができるか』(みすず書房)、『期間限定の思考』(内田樹、晶文社)