BOOK BOOK こんにちは  2002.10月

我々はもしかして東京でいちばん読書量の多いバンドなのでは?

このコーナーは、3人の精鋭が日々読んだ本の感想を書いていくものです。

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       アオウ        コマツ       スヤマ

★10月28日(月)更新★★★★★★★

10月21日(月)

先週から読んでた『停電の夜に』、良かった。インド系イギリス人、という民族的特徴が生かされつつも、安易にオリエンタリズムうっとり感に陥ったり、それを武器にしてないところが良い。

何年かぶりに『愛のゆくえ』(リチャード・ブローティガン ハヤカワepi文庫)を再読。ハヤカワepi文庫って、なんでハンパに大きいのかなあ。装丁がいまいち。内容に値してないぞ。

10月23日(水)

友人から借りている……といってもあらかじめ「返さなくていいよ」と言われていた『コンセント』(田口ランディ 幻冬舎文庫)を読む。はじめの方はけっこうおもしろかったけど、だんだんトーンダウン。最後は出来の悪い童話みたいになっていた。だみだこりゃ。読みたい方、あげます。

10月24日(木)

近年の児童文学界では安定した評価をものにしつつある高楼方子『十一月の扉』(リビリオ出版)。14歳というものをすごく正確に、緻密に書いている部分には驚嘆す。たとえば自分が14歳くらいの時、自分の中に生じながら、見て見ぬ振りをしてすませたいような心の動きをしっかり言葉にして描かれてしまい、ドキッとするような。でも、この手の物語にありがちなんだけど、周りの「素敵な大人たち」の描かれ方がどうにもメルヘンチックでなあ。ちなみに、江國香織などにも言えるが登場人物に「爽子」「馥子」「閑」って感じの名前が並ぶのはちょっといただけない。

10月25日(金)

仕事にて『スープ』(ロバート・ニュートンペック 金の星社)『ハードル』(青木和雄 金の星社)。両方ともまずまず。

『テレプシコーラ』(山岸涼子 メディアファクトリー)3巻が出た。わーい! バレエ漫画だけど「普通の少女があっという間に秘めた才能を開花させて云々…」という腐った設定じゃないのよ! 子どもバレエ界事情など詳しく描きこんであって読みどころ多し。気弱な妹が主人公なのだけど、わたしゃー、気が強くてしっかり者のお姉ちゃんにラヴ。お姉ちゃん、がんばって〜!

『きみのいない楽園』(佐野未央子 集英社マーガレットコミックス)4巻。あまり長びかず、6〜7巻くらいでコンパクトに終わってほしい。

図書館で借りた『最後の晩餐の作り方』(ジョン・ランチェスター 新潮クレストブックス)を3分の1くらい読む。いちいち皮肉のきいた語り口調が、飽かず読ませる。

10月26日(土)

仕事にて。まだ校正紙の状態だが『ラモーナとあたらしい家族』(クリアリー 学習研究社)。前身『がんばれヘンリーくん』シリーズといい、『ラモーナ』シリーズといい、いいのよねー。あとがきを見ると、なんと次作がシリーズ最終作らしい。残念だ。

『ドナルド・E・ウェストレイクの犯罪学講座』(ドナルド・E・ウェストレイク ハヤカワミステリ文庫)を数編読みつつ寝る。

★10月21日(月)更新★★★★★★★

10月15日(火)

北朝鮮もの読みが止まらない。『めぐみ、お母さんがきっと助けてあげる』(横田早紀江 草思社)。うーん、この母(そして父)の姿勢はホントにきっぱりとしていて強い。タイトルに偽りナシな心意気を感じる。この両親の発言って、ほかの拉致被害者家族に対してもすみずみまで神経が行き届いていてるのがすごい、といつも感心する。ちなみに先週紹介した『娘をかえせ 息子をかえせ -北朝鮮拉致事件の真相』(高世仁)は、『拉致』というタイトルで講談社文庫になってました。この9月発行にして、もう2刷。

『ホーリースクール 第5の扉』(倉橋燿子 講談社青い鳥文庫)。このタイトル見て、どう思います? 宗教モノじゃないのよ。えー、いわゆる「自由な学園」を舞台に展開するローティーン向け小説、その第5巻。現在私が,やや設定的にかぶる(寄宿制の学校で音楽やらダンスを学んだりする…)学校を舞台にした物語を連載しているので、仮想敵としてマジメに読んでいたのです。が、ひどかった。やっと終わってくれてうれしい。わたしゃ、この本の第1巻にわざわざ手製のオビを着せました。コピーはこの通り。「(背)現代の奇書/(表)『違う…自由ってこういうんじゃないよ!私はホーリースクールと断固戦います《粟生こずえ・談》/(裏)退廃!no future!…そして恋ですか…??」。

 ストーリーは主人公の「実は本当の子どもじゃなかった」てな悩みから始まり、「生き甲斐探し」て全寮制の学校に入り、幼い頃運命の出会いをした少年に再会するも彼はホーリースクールと敵対するガリ勉学校の生徒で…という具合。講談社青い鳥文庫って、まずまずレベル高いんだけどな。名木田恵子の作品なんか読むと、常に感心するし。恋も家族問題もリストラもイジメもぜーんぶ入って3冊くらいできれいに完結する手腕がスゴイのさ。さすが『キャンディキャンディ』の原作者。

10月16日(水)

『北朝鮮にいる息子よ わが胸に帰れ』(寺越友枝 徳間書店)。横田さんの本にくらべるとかなり個人的な視点で書かれた本。ま、横田夫妻ができすぎなくらい、よくできた人だちなんだろうとあらためて思う。横田夫妻の場合はがっちりとした夫婦関係があるが、この人の場合はその辺もぐらついているから、時につっぱしった行動をとってしまうのも致し方ないのだろう。そもそも著者の息子だけは「拉致」を否定している都合上、被害者家族会に入れないという事情もあるし…。しかし年譜を見ると、多い年には3〜4回も北朝鮮に行っているのには驚いた。

10月17日(木)

『ホームレス失格』(松井計 幻冬舎)。『ホームレス作家』の続編。あー、出ると思ったよ。正編のほうは、差し押さえで団地を追い出された売れない小説家・松井計が、妻子を施設に預かってもらいつつ、自分ひとりでホームレス生活をする様子を生々しく描いたルポ。正編の途中くらいまではおもしろかったが、後半〜続編は、妻子を引き取りたいのに徹底的に行政から「あなたの元には渡せない」とはねつけられる話ばっかり。ま、そうだろな。この著者、ダメそうだもん。正編の印税が入るや、プリペイド式の携帯電話で月に9万使ったりとか、いちいち金の使い方がヘタすぎでイライラする。この続編を書くに至ったのも、8割方書きあげた小説がどうしても仕上がらない…という経緯のため。編集者に「松井さん、もう小説は書けないんじゃないですか?」と詰め寄られるシーンがあるけどまったく同感だ。ときどき、「私は社会不適応者なので、(と謙遜めいて実は自慢げに)○○(たとえば小説家)みたいなヤクザな仕事しかできないんです」という言い方をする人がいるが、傲慢極まりないね。この著者にはそんな匂いを感じてたまらん。

『夢の果て』(北原文野 ハヤカワSF文庫)マンガ。清原なつのがオビを書いてたのと、同シリーズのセレクションセンスを信用して購入。初出は「Wings」だから同人っぽさが許容範囲ギリギリだけど、まあおもしろかった。毎月1冊ずつ続きが出るらしい。はっ、マンガ文庫といえば『おぼっちゃまくん』の5巻をまだ買ってないや。あと、上原きみ子の『ハッピーまりちゃん』までが文庫化してる事実に驚愕。

10月19日(土)

『停電の夜に』(ジュンパ・ラヒリ 新潮クレストブックス)。短篇1つ読んで寝る。味わい深い。今の季節、しみじみ読むのにぴったりだ。クレストブックスの文字組みもいい。著者はインド系イギリス人。すげえ美しか人でごたる!

★10月14日(月)更新★★★★★★★

10月7日(月)

 電車の中で『戦後野球マンガ史』(米沢嘉博 平凡社新書)。資料としては一級。分析もなるほど…と思わせるが、70年代以降となるとかなりザックリしてる気も。新書だからこんなものかなあ。しかし最近、新書で気になる本が多い。競争厳しいからどこもがんばってるんだろうね。今日は車中で新書3冊読み終える予定だったが、寝っこけたりしたので挫折。

『自由恋愛』(岩井志麻子 中央公論社)。同級生の夫を奪うだなんだって話だから、もっとねっちょりしたものを期待してたのだけど、思ったより薄味。残念。週刊新潮の「黒い報告書」(注:実際にあった情痴事件を元に短編小説化するやつ)も、岩井志麻子が担当の回はいまいち出来がよくない。行間にエロっぽさが漂わないのじゃ! そういや友だちに『夜啼きの森』借りっぱなしでまだ読んでないや!

10月8日(火)

 マンガ読みの日。表紙がもろ手塚治虫のパロディで、気になってた『神罰』(田中圭一)を買って読む。あ、この人って「ドクター秩父山」の人じゃん? 見事なまでの下ネタショート。しつこいほどの下ネタはおもしろいが、絵柄のパロディで勝負してるヤツが続くと、ちょっと飽きてくる。すっかり頭が下ネタモードになっており、コマツの先週の記述を読んで「ショーペンハウエルは小便しは(うえ)る?」(注:京都弁)というダジャレを思いついて一人で喜んでしまった。

『最弱ルーズドッグス』(片山まさゆき 講談社)は野球ものギャグマンガ。『イヴニング』連載時から、イマイチなのはわかってたのだが、片ちん先生にインタビューした時「野球ものなんか読みたいです」と口走ってしまった自分に責任の1000分の1くらいを感じて、後援購入。

 古本屋で『軽井沢シンドローム』(たがみよしひさ メディアファクトリー)、2巻だけを購入。たがみよしひさを買って読む日が来るとは思ってなかった。昔は、まず絵がダメだったもの。苦手なものがある日突然食べられるようになった気分。

10月10日(木)

 夜、有楽町にダンスを観に行く。本貸し借り友達の1人であるWが、またまたどっさり貸してくれた。帰り、JRが信号機の故障とやらでめちゃくちゃ遅れやがったので、『高円寺あたり』(西谷祥子 双葉社文庫 全2巻)を読み終わっちまったよ。Wが「内容意味不明」と言ってたが、その通りだった。自立した女性を目指して田舎から高円寺の親戚の家にやって来た女の子が主人公なのだが、出てくる男らは高校生のくせして「女は家庭を守るもの」とか言ってるし! 連載が80〜81年の割には、ずいぶんと古いなあ。

10月11日(金)

 ほとんど家にこもってた。息抜きに外でメシ。財布と『娘をかえせ 息子をかえせ -北朝鮮拉致事件の真相』(高世仁 旬報社)を片手に出かける。中身の濃い取材。しかも拉致事件の家族に対しての真摯な対応ぶり。拉致事件に関する本はこれからいっぱい出るだろうが、これほどの本はそうはないだろうと思う。

10月12日(土)

 曲作りに没頭。風景を変えるために街へ出ると、保育園のバザーに行き当たった。『菜の花畑のむこうとこちら』『母親の娘たち』(いずれも樹村みのり作品集 ヘルスワーク協会)を買う。1冊10円と言われて驚き、同作品集の残りの2冊も、持ってるクセして購入。これは古本屋に持ってったら1冊150円で売れた。せこい私。「素敵な奥さん」の素質あるかも。7歳の時からこづかい帳つけるの欠かしたことないしね。

★10月7日(月)更新★★★★★★★★

 近年、少女マンガは概ね決まった作者のものばかり読んでて新鮮みに欠けるので、心の中で「おもしろい少女マンガ家発掘キャンペーン」を開催。しばらくちゃんと見てない雑誌をチェックするため「デラックスマーガレット」読んでみた。白泉社系もひさびさに手を出してみるか。漫画喫茶で『フルーツバスケット』読んだら意外とおもしろかったしな。

10月3日(木)

 図書館から借りてきた『著者略歴』(ジョン・コラピント 早川書房)を読了。電車の中で読み、エジプト料理店でランチを食う合間に読み、明け方に仕事を終えてからしぶとくラストスパート。

 小説家志望の主人公が、事故死したルームメイトの小説原稿をパクッてベストセラー作家になってしまう…というのが導入。スリリングな設定がせっせとたたみかけてきて、先を急がせる。主人公に絡むキャラの存在感がなかなか良いので、陳腐なドタバタものにならないのだろう。

10月5日(土)

『戦下のレシピ 太平洋戦争下の食を知る』(斎藤美奈子 岩波アクティブ新書)

 戦時中の婦人雑誌をベースに、当時の食事情、特有のレシピなどを紹介するとともに分析している。本当に、米や食材が手に入らなくなってくるまでは「代用食作りも趣味っぽい」という指摘がおもしろい。今で言うと、趣味のエコロジーみたいな感じ? 巻頭のカラーページには、食べられる雑草などの解説が載っている。みみっちいこと好きの私の心をハードヒット!

 斎藤美奈子の本はこれまでにもいくつか読んだ。『妊娠小説』『紅一点論』『モダンガール論』など。いずれも切り口はすごくおもしろいのだが、もうひとつ説得力がないなあ…という感想だったけど、新しいものほど良くなってる気がする。『文章読本さん江』『文壇アイドル論』も読みたし。しかし、斎藤美奈子って40代後半とは思えないくらいカワイイなあ。この年でカワイイって形容できちゃうタイプは、本来好きでないが、生意気カワイイ感じが許せてしまう。

 3日ほど畳仮眠の日が続いた。明け方ひさびさにふとんを敷いて寝ようとする。毛布から折れ曲がったモーム短篇集がころがり出した。そういえば昨日の仮眠時、1ページほど読んだ記憶が…。そこまで読書に執着せずにいられない自分がおかしい。

10月6日(日)

『こいつら100%伝説』(岡田あーみん りぼんマスコットコミックス全3巻)

 素晴らしいギャグマンガだ。出世作『お父さんは心配性』もおもしろいが、自分としてはこっちのがさらに好み。主人公の修行中忍者3人組の名前が、極丸、満丸、危脳丸(あぶのうまる)だもんね…。やっぱ、手元に置いておくべき漫画だ。あーみんって、今描いてる? どうしてんのかなあ。

★10月28日(月)更新★★★★★★★

・・・しばらくお待ち下さい・・・

★10月21日(月)更新★★★★★★★

 先週に続いて、孔子関連を読んだ。『孔子と教育』が面白かった。「孔子」は「学」という言葉を使う際、ほぼ100%、「好」という字をセットにして使ったらしい。これはたいへん興味深く印象的である。

「好」とは「考えるまでもなく、自然にそれを指向する」といった意味で(好色、とかね)、孔子が「好学の徒」として認めたのは、門下中で顔回のみだった、という。(モチロン孔子は孔子自身も「好学」としている)。孔子は、いわゆる「清貧」で「好学」な顔回をスゲーかわいがっており、やれ「オレより賢い」だの何だのとやたら持ち上げているが、顔回は結局は貧乏のあまり餓死(違うかも!)してしまうのだった(笑)。孔子はそれにガーン!とショックを受けている。

 孔子は、5年くらいは実際に政治に関わる官職を得た時期もあったが、基本的には不遇&浪人生活の生涯。名声ばかり高くって、もう困っちゃうって感じでしょう。弟子の方がどんどん職を得ちゃって、やや嫉妬、みたいな感じも容易に想像できる。だから逆に顔回みたいなタイプが好きだったのかもね。あと「顔」という家系は孔子の家系と同系らしい。これもポイントね(笑)。たぶんオレ思うに、孔子は超ポジティヴシンキングの自分大好き人間ですね。しかもとてつもない激情タイプだったっていうから、すごいウザい。そして「人を見る」男ですね。最晩年にしょうがなく「教育」に行ったのもわかる気がする。なのに、高弟たちは孔子より先に死んじゃうんだから超オモロすぎ(笑)。もちろん孔子には思想はあるが(スゲー事書いてるな)、しかしそれは構築された思想というよりも、天来の性質に寄る部分が大きいような気がオレはするな。『論語』その他をちゃんと読んでみたいんだけど、良い解説書がほしいなーと。

 他に読んでるのは、1『三つの物語』(フローベール)、2『エクリチュール元年』(三浦俊彦 海越出版社)、3『蛇を踏む』(川上弘美 文春文庫)。番号は面白い順。3は読み始めてすぐシラケてきたのでもう降参。読むのやめます。2はまあまあ。1は最高!これには書きたい事があるが、書いちゃうと味気ないのでやめます。おわり。

★10月14日(月)更新★★★★★★★

本を処分中。この数ヶ月あまり仕事をしてないヒマにかまけて毎日毎晩やってます。そして、ついに!我が家の全部の段ボール箱をあけ、すべてをチェックし終わった!!けっこう達成感あります。なんだかちょっとひっかかる本、ウチに置いておきたくない本、汚れがひどい本などをガンガンしばって山積み状態。変な話ですが、こういう事をやってる時の一番の誘惑は、本を読むことなのです。片づけ疲れて小休止、座り込みタバコを一服つけると手元には(というか、まわり全体に)本があるわけなのですね。読むまい、と思っても読む習慣があるもので(笑)読んでしまう。いや、まさに読書とは習慣です。本を読むことが素晴らしい、と思うひとは、すなわちそれを習慣にすればよろしい。ショーペンハウエルは、読書はじぶんで考えることを損なう、と初心者向けの言葉をのたまうが、しょーむない人の話を聞くよりも、ショーペンハウエルの話を聞くほうがまだマシだったりもするんじゃのー。死んだ人とはイタコでもなけりゃ話ができないが本はそれが出来ますよね。いやー、いい本書いてる人は、死んだ筈なのに、とても死んだとは思えない溌剌ぶりで、オレ、もうビックリです。一種の幽霊みたいなもんでしょうか。

中島敦からの流れで「孔子伝/ 孔健」(河出文庫)を読みました。著者は孔子の直系になる人で、やっぱり「論語」丸暗記教育を受けてたらしい。孔家では伝統的に家庭教師がついて四書五経をみっちりやるそうです。イヤだね(笑)。ちょっと前からオレはなんだか孔子が気になってたんです。孔子ってなんか永遠の浪人生みたいじゃないですか。なんか滑稽で、その人生はなんとも無常感が漂ってイイ。知識とか教養って一体ナニ?それって人生のどの瞬間、どの場面で発揮すんの?という事を考えるにはよい本でした。モチロン孔子の場合は圧倒的に死後だったワケです。すなわち本としてですね。我々には「本を美しいと思う人がいる」という曲がありますが(谷岡ヤスジトリビュートライブでやった)この文の最後にお聴かせできないのが残念でありマス。

 

★10月7日(月)更新★★★★★★★

10月6日(日)

 本を処分するため、下北の駅前(マックの向かい)でフリマをやってます。きのう、友達とレコード&CDを売ったら、意外に売れたので、こりゃいいや!と今日は本も持ってきたのです。いきなり『江戸へようこそ』が売れました。大人しそうな感じのいい女のコでした。初期パンクが好きだ、という女のコはアナログ3枚買ってくれたので、『トパーズ』(村上龍)をオマケであげました。

 シュガーフィールズ原さんも通りがかって、『一休』(水上勉)を購入。原さん、今,坊主にしてて「一休」はタイムリー(笑)。『与謝野晶子歌集』をオマケとしてムリヤリあげました。いやー、街に座るとふだん見てる風景がいつもと違って見えるのが、スゴーク面白い。この原稿を取りに来たアオウは『オコナー短篇集』『日本の星』(野尻抱影)『夢を走る』(日野啓三)『年刊SF傑作選5』(ジュディス・メリル編)を買ってくれた。オコナーは次回くらいお隣に出るでしょう。

今日はこれからパラダイスガラージを見に行く。おっ、豊田さんが来た! ムリヤリ『宮沢賢治詩集』をあげたよ!

 

えーと、何、読んでたかなー。覚えてるのをてきとうに・・・。友達と話してて話題に上った「李陵・山月記/中島敦」「読書について/ショーペンハウエル」を。再読だけどン十年も前なので懐かしい。「名人伝」はホラ話。いま読むとまるで少林サッカーだね。オレはアーチェリー部だったンだけど、矢がどんどん矢尻に突き刺さって自分のとこまで来ちゃうってのはスゴイと思う(笑)。ちょっと挑戦してみたい気も。あ、そういえばタマちゃんってまだいるのかな?フィールドアーチェリーの標的にはもってこいだよね(笑)。やっぱそんな事したら非難囂々かね?べつにいいと思うけどなー。法律には触れるのかね?どうかね?

ショーペンハウエルもたぶん読書感想文かなんかで読んだ。ま、普通にうなづける内容。モノは自分で考えろ、と。いまじゃヤザワがCMで言いそうな(笑)。

「中世の罪と罰/阿部謹也」ほとんどゾンビの世界。オレはホラー映画が大好きなんだけど、ゲルマン民族にとってああいった物語はごくフツーなんだな、と納得。謎に満ちた不可解なお話しが満載で、しかもまるで実話みたいな語られっぷりがすごーくヤな感じ(笑)。お薦め。

あと「吾が輩は猫である」のキャラクター分析本も読んだ。オレは漱石は好きでだいたいのは読んでると思うけど、たぶん「猫」は読んでないような気がする。小学生の時に読みかけておもしろくなくて途中でやめたような・・・。なんでだろ?この本を読んでもやっぱりピンとこなかった。でもそのうち読んでみよう。モノスゲー面白かったりしてね(笑)。

 

★10月28日(月)更新★★★★★★★

土曜日はランチとフォトと惰眠

歳をくうにつけ,食い意地が張ってきた.西荻「長崎亭」で皿うどん+餃子セットにしよう!と思ってキリンビールを注文したところ,ザーサイもつき出しで!有難い.しかしなんか足りん.

西荻「鞍馬」で蕎麦を食ったのはその直後のことだ.すべての蕎麦湯を飲んでしまえ.しかし冷酒はやめておこう.原稿書けなくなっちゃうからね.

なのに帰宅したら毛布の中で寝息たてていた.困っちゃうなーと呟いていたらTELが鳴る.「お部屋ご購入のご予定はありませんか」「いんやー今,人んち間借りして住んでるもんですし」「お仕事はどのような?」「いんやー今,職業がないんですよ」「そうなんですかー.ご実家は?」「うんもー,東北のほうなんですよ」「はあー,おいつくでいらっしゃるんですか?」「……」「いま,井荻のほうでお部屋のご紹介してましてね」「へえ,もうすぐ40になるんですよ」「あら,もっとお若いと思いましたよ.声のかんじでは….それではまた.お電話いたしまして失礼いたしました」

若い女の声だった.電話が切れてしまっては次の暇つぶしを考えなくてはならないな.(しかし年齢だけは真実を告げてしまったのはなぜかしら)(それにしても40って言ったら途端にそそくさと受話器をおろすとはどういうものであろうか)

そこで先ほどから読んでいた本を再び手に取る.神蔵美子『たまもの』(筑摩書房)である.三角関係自己暴露写真集である.

やっぱりオンナはキレイなほうが良いなあという気がしてくる.べつに神蔵さんはそれほどブスではないのだが,坪内祐三と末井昭という稀代の才能をまたに掛けて色恋の三角境に遊びしかも写真集まで出すにはもうすこしキレイでもいいのではないか.いやしかし末井氏のアバタ面はすごい迫力で,しかも大股広げてベッドの上で倒れており,その様を撮影した写真のキャプションは「セックスばかりしている 方南町Sマンション 1997年」

ちんちんの部分がうまい具合に黒い影に覆われており,公表することを可能にしている.先ごろ,わしの同僚が末井氏にインタビューしたそうで,「とても気配りのこまやかな,いい人」だったそうだ.わしは白夜書房の本にはほとんどお世話になっていないが,この同僚は目下『写真時代』がエッチ文化を席捲してた80年代をテーマにした本を作成中である.『「写真時代」とその時代』というタイトルになる筈で,たぶん今年中には出るであろう.前述の末井昭インタビューの原稿起こしをしたのは,他ならぬアオウこずえの実姉である,あおうすなお様である.すべての我々関係者および我々愛好者はこの本を購入することが期待される.(白水社刊)

ところでやはりオンナはキレイなほうが良い,という話に戻るが,日本でいちばんキレイな女は誰か,というテーマについて考えをめぐらしてみよう.そう思って,今,西荻の喫茶店「物豆奇」にてブラジルを一杯目の前にしている.

「うーむ,やはり青木マリであろう」

まあソレについては後日あらためて,ということにしたい.

神蔵さんの写真集の中に,森村泰昌さんも写っていた.この人の本も好きだなあ,わし.もちろん写真も大好き.合田雄一郎を真似て,白いスニーカーでヴァイオリンを弾いてるセルフポートレートは出色であった.

写真集ということでは,加護亜衣には可能な限り単体で写真集を出すことを希望する,とだけ述べて,本稿の結語としたいと思う.

次回は,山口百恵著『蒼い時』を取り上げる予定である.

★10月21日(月)更新★★★★★★★

ミスターロンリー雑感(第2回)

高円寺“かきや”でレバニラを食べながらビールを呑んでいると,拉致された5人の日本人のニュースのせいで西脇順三郎を読むことができない.

駅前でギターかきならす若者は,

数少ないコードしか知らないにちがいない.

『すし屋の女房・お客さま控帳』という講談社文庫の新刊が気になる.

吉祥寺のペンタスタジオで一人,私は20歳年下の人々に囲まれている.やはり西脇順三郎にとって池田マスオもそういう存在だったのだろう.

芦花公園から荻窪へは関東バスが通じている.高井戸にも通じていて,そこで私は世田谷文学館へ赴き西脇順三郎展に入場し,原稿のせめてものネタにと.

ニシワキは画をたくさんモノするのだ.押し花も大好きだった.

それでも昨晩(深夜)

『昭和文学アルバム』を見ていて

片岡鉄兵という男はジャニーズみたいだなあと

頬づえついてスパチュー啜って呟いた.

『ジョー&ヒューマ』は10日と24日発売.夜ごと夜ごとの淋しき.

西脇はラテン語で卒論をモノする青年で英国人と結婚した.

ジョーは台東区でサンドバッグを破っている.シラキヨーコはジョー以外のboxerと結婚した.

そうして私は高円寺で背脂を見つめ,サイバラリエコのようにカツ丼を食べたいと」(鳥頭紀行くりくり編)

吉祥寺の哀しき

かきならすギターの哀しき

穂村弘は

流星群を夜空に仰ぎながらチョコバーを食べ続ける ベッドの中.

私は教養不足のためにdiarrheeだ.

ホムラくん ホムラくん

虹色に塗り分けられた人生はやりきれない.

後悔に割り振る時間ならミナミカラスヤマのトンカツ・スタンドの380円のカツ丼セットで省くことについやすべきだろう.

ホムラくん

ホムラくん

穂村弘は私だ もしも

マダム・ボヴァリーはギュスターヴだったなら.

 

★10月14日(月)更新★★★★★★★

ミスターロンリー雑感(第1回)

 秋晴れの日が続いています.こういう天気の日には,仕事もしたくないし本を読む気 にもなりませんな. 今日も,須田町でカレー食った後,カフェにて本を読むつもりだったんですが,止め て,散歩にしました. ただ,それでもトイレなどでは,読んでいます. 昨日,同僚に借りた本.穂村弘『世界音痴』(小学館).著者は39歳の歌人,総務課部長代理の地位にあるサラリーマン,シングル.恋愛不可能症気味.ここまではほぼわしと同じ境遇だが,どうやらパラサイトの人らしい.母親が登場して食卓でみそ汁をよそったりする.それなのに,次のように大変にココロを打つ一文を書くことの できる人なのである.

「赤ちゃんの写真を見ても,ぴんとこないせいか,特に微笑ましい気持ちにはならないし,公園で家族が微笑んでいる写真を見ても,この者たちに幸あれ,という気持ちにもならない.いや,どちらかというと,家族の写真を見ると,運命の嵐よ吹け,吹いて,この者たちをばらばらにせよ,と思ったりする.・・・たぶん,そういう性格 だから家族ができないのだろう」これは,家族の写真をあしらった年賀状についてのコメント.最後の「こういう性格だから云々」にはとても共感した.

 穂村さん,ならば一人暮らししなくっちゃ!おかあちゃんにメシ作ってもらっているうちは,「恋が 出来なくなった,やる気は満々なのに出来なくなった・・・ネジが馬鹿になるように 心が馬鹿になってしまったのかもしれない」とか書いても,リアリティーないわよ. それとも,おかあちゃんのみそ汁飲んでる境遇だから恋できなくなっちゃったのかし ら.回転寿司屋がお好きな様子だが(わしも好き)どうせなら恋なんか止めちゃって一人きりでメシと対座しようよう.とにかく,まだ全部読んでないんだけど,2002年を生きる独身ダメオトコのエッセイとして,わし,かなりの傑作とふんでい る.トイレに行くのが楽しみで仕方がない.

 しかし,ホントに,最近カネ使わなくなったよ.さっき,自分の担当した本がまだ平積みになってるかどうか確認しに三省堂へ行って来たんですよ.で,ついでにいろんなフロアで本をアレコレと立ち読んだり眺めたりしたのね.ぱっと見て,「あっ,わ し,あとでこれ買うな,きっと」と思う本は何冊かあるんですよ.でも,何秒か経つ と「いや,いらんな」と思い直す,というか,「いらん」理由をいろいろ考え始めるのである.「今すぐは,どうせ読まんしな」「古本屋で見つかりそうだしな」「昔, ちょっと読んだしな」そういう調子で,何度か手に取りつつも買わずに書棚に戻した本:ハンナ・アーレント『人間の条件』(ちくま学術文庫)著者名忘れた『女は男の どこを見ているのか』(ちくま新書)『コイソモレ先生』(ちくま文庫)・・・ありゃ〜ん,全部筑摩じゃんよ.

 そういえば,カレーを食べながら読んだ本もちくま新書で,『さびしい男』諸富祥彦著.まだ読み始めなので,一般論の段階だが,前述の 『世界音痴』に比べて,その「さびしみ」が共有できない.妻子持ちの中年男性の 「さびしみ」を中心にハナシが展開しているせいであろう.思えば,ヒトリモノのオトコのさびしさには,ある種のダンディズムとヴァガボンディズムが漂うのでそれほど悲愴感はないであろう?「リストラ・単身赴任・セクハラおやじ呼ばわり」を軸にした「さびしいオトコ」論は,ひたすら社会的に追いつめられた男性像を追求するので,逃げ場がなく,ちょっと息が詰まるし,結局,家庭生活しちゃった自分がワルい んじゃん,ソレ,愚痴だよ,という感想をもって,ハイ,終わり〜なのですね.さ あ,もっともっと,ガッツ入った寂しさの実存,わしは生きたいんだよっと!(この 項,続く)

★10月7日(月)更新★★★★★★★

ある日,タルくて・・・

 ホント,物事にたいして無関心になってきました. というより,世の中が完全に停滞しているので,興味をひく対象がないんですね. それに,もともと,自分にだらしのない,厳しくない,目標のない人間でしたよ. 探検とか,お金儲けとか,「かっちょいい仕事して海外を飛び回る」こととか,考え ただけでも全身脱力ですねえ. 努力を重ねて,もし報われなかったらイヤなので,いろいろと労力を払わねばならな い作業はしないことにしています.

 さて,「辞書を引く」ことはどうでしょう.努力ですねえめんどくさいですねえ. 辞書引きながら本を読んだりします? しないでしょ. でも外国語を読むときは,コレ,しょうがないんですよねえ. 今は職場復帰してるんですけど,さっきまでタリーズ・カフェでコーヒー飲みながら 辞書引いてたんですよ.  でも何で,「タリーズ」なんてネーミングなんでしょうか. ただでさえ,自分に厳しくない日常をおくってるうえに,「タリー」ですからねえ. やる気失せますって.まったく.

 辞書引きながら読んでた本は,フェルナンド・ペソア『不安の書』の原書です.ポル トガル語ですねえ. こないだリスボンで買ってきたんですよ.36ユーロでした. もちろん,ちゃんと分かって読んでるのかどうか,自分でも自信ないですよ(すごく 分厚いし). なんとなく解読したかんじでは,こんな調子です. <有用性も真実らしさもない,大いなる混乱 そこでは,駅のフォームのベンチに縮 こまって,私の軽蔑が失望の外套のなかで眠っている> ああ,直訳すぎて,なんだか分かりませんねえ,やっぱり. でも,「ああ,この人もきっと,目標も意欲もない,自分に甘い性格なんだろうな あ」と思えました. <僕たちは何も実現しない.僕たちはふたつの深淵 空を見つめるひとつの井戸のよ う> う〜ん,どうしたらいいんでしょうねえ.

 抄訳ですが,翻訳もでてますよ.みすず書房から(澤田直訳).カバーのうたい文句 が良くて:<ずいぶん昔から,私は私ではない> 自分が大好きで,「オレってすげえ」と思ってて,「いつの日か,オレ,はばたく ぜ」と夢見てる人にぜひ読んでほしいですよ. そういう人に読んでほしい,もう一冊の本:ウラジミール・ジャンケレヴィッチ『イロニーの精神』(紀伊國屋書店).ユーモアのない=ココロに余裕のない=ストレー トな物言いしかできない,そんな人にはなりたくない.べつにイカしたジョークの連 発ではないんです.「イロニカルであること」は,へだたり・違い・"同じでないこと"こそが,他者をいたわり自分を守るために大切なのよとわかってる,その態度のことなんですねえ.「オレがいてオマエがいて,そして二人はぜんぜん違う.だから ニヤリとしていましょうよ.議論は不毛さ.」自分の意見を言うだけならいいんです けど,ついつい相手をやりこめようとする人(のコトバと態度),イヤですもんね え. はい,では今回はコレくらいでね.