BOOK BOOK こんにちは  2002.11月

我々はもしかして東京でいちばん読書量の多いバンドなのでは?

このコーナーは、3人の精鋭が日々読んだ本の感想を書いていくものです。

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       アオウ        コマツ       スヤマ

★11月25日(月)更新★★★★★★★★★★

 風呂では雑誌を読む。週刊誌。漫画雑誌。文芸誌。あと、タダでもらえる出版社のPR誌。今週は2000年11月号『群像』を読んでいました。富岡多恵子×松浦寿輝対談で、松浦が手加減されつつやりこめられてて痛快。富岡カッコイイじゃん!俄然興味がわいた。この号では宇野浩二についての項であった『転々私小説論』(多田道太郎)、おもしろい。もう本になってんのかな?  

11月17日(日) 

『100%』(柳沢きみお 双葉社)がおもしろくて声出して笑いながら読む夜。主人公の女子アナのブチキレ方が、普通のマンガで描かれるブチキレ範囲をはるかに凌駕しつつ魅力的で素晴らしい。男性陣がみな独自の下品ワールドを持ち、かつかわいいキャラでおもしろすぎ。

 風呂でマーガレット(かつて週刊、いま月2回刊)をマジメに読むが、あまりのつまらなさに呆然。

 おもしろい少女漫画を発掘せねばという猛然たる使命感に駆られ、新規開拓にいそしむ。表紙がキレイなので買った『まぶたと胸』『ラブ・ホリック』(もりひのと 集英社マーガレットコミックス)、ともにハズレ。

『骨董あなろ具屋』(山野りんりん 集英社りぼんマスコットコミックスCookie)、ハズレ。雑誌で読んだ時はもうちょっとおもしろく思えたが、まとめて読んだらつまらなかった。わたしゃ、10〜16Pくらいで終わるショートものは結構ストライクゾーン広いのだが、骨董屋の話にしては絵に味わいがなくてダミだこりゃ。

『敷居の住人』(志村貴子 エンターブレイン)1巻。まあまあ。今のところは、続きは読みたいけどマンガ喫茶で読もう…くらいの吸引力かにゃー。

11月18日(月)

 夕方、原稿書いてて資料の不足に気づき、街に出る。書店に『剛球少女』2巻がないぞ! あ、っと、資料探してたんだったっけ…。ややっ『樹里』1巻(佐藤宏之 秋田書店)、出てるじゃないのー、良かった良かった。このシトのこと、忘れてる人も多いかと思いますが奇跡的にバンド漫画を成功させた『気分はグルービー』の作者です。オビに「伝説の巨匠、覚醒!!!」って…すごいな、まあ寡作な人だしね。あと『蛮勇引力』(山口貴由 白泉社ジェッツコミックス)2巻。なぜか2巻だけ購入。そんで資料は…。

11月19日(火)

『ササメケ』2巻(ゴツボ×リュウジ・角川書店)あれっ、オビを羽海野チカが描いてるぞ。出版社違うのに。そういや、1巻の時にも羽海野チカっぽい絵がときどき出てくるなと思ったけど…アシストしてたのかな?クレジットないから、単におトモダチ?

 紀伊國屋書店でようやく『剛球少女』2巻(原作:田中誠一・絵:千葉きよかず 実業之日本社)発見。おもしろいわーん。主人公である女子選手にとって、しっかり厳しい現実が描かれていて気持ちいい。ためて読みたいので、最近週刊漫画サンデーの立ち読みは自粛しております。

『被差別部落の暮らし』(中山英一・朝日選書)、『杜甫の旅』(新潮選書)を購入。

 W氏に借りてる『SHOP自分』全6巻(柳沢きみお 集英社)を読みながら寝る。うじうじ男主人公が信条の柳沢漫画史上でも群を抜いたうじうじっぷりにイラつくが、次第におもしろくなってくる。不毛な紆余曲折をここまで執拗に描きこむことは、なかなかできない業だろう。

11月20日(水)

『FLASH』の電車の中吊りで、「ソニン・・・こぼれそう」(確かこんな感じ)というキャッチに目を奪われる。ソニン、かわいいよな。ぐふっ。コンビニでいそいそ『FLASH』を開くが、なんとなんとソニンのページは袋とじであった。けちんぼ〜。買おうかと思ったけど、やめた。

11月22日(金)

 やっぱりどうしてもソニンの肢体が見たくなり、『FLASH』購入。家でいそいそ袋とじを開く…が。むう〜、露出がたりねえなあ〜。ま、ちょっとずつ出していくもんだろうし、今後に期待。

11月23日(土)

『チャペック兄弟とチェコアバンギャルド展』を見るため鎌倉まで出かける。9才の時『長い長いお医者さんの話』(岩波少年文庫)を読んで以来のチャペック狂である私は、「私が見なきゃー誰のために開かれるんじゃ!」てなくらい沸騰してたのだが、出不精が災いして延ばし延ばしに。危うく見のがすところだったが、2日前、たまたま電話で話したKさんが「じゃ、いっしょに行きましょう」と言ってくれたおかげで救われたよ。彼女は静岡からやって来る。ありがたや。

 展示はカレルの兄・ヨゼフの挿絵原画、版画、装丁作品が中心。いや〜、行って良かった。堪能しました。ヨゼフのペン画は素晴らしい。なにげない線1本1本に本気が宿っているのに、実にさりげない絵に見せてしまうこなれ方が心を打つ。図録の装丁も美しく、読みでがありそうだ。

 行き帰りの電車では『下駄に降る雨・月桂樹・赤い靴下』(木山捷平・講談社文芸文庫)を。蜂に刺された“私”が、妻に患部に小便をかけろと命じる『裏の山』ラストシーンが好き。『「こら、早くしろ、今は一刻をあらそう時だぞ」「だって、出ないんです。困ったなあ。ちょっと待って……ウーン」とうとう家内は私の意にそうことが出来なかったが、そしておかげで私は三日ばかりびっこをひいて苦労したが、あの時家内はいまよりずっと若かったのである。そのふくよかでつやつやとした白い腿の色が、夢のように私の脳裡にうかんだ。」いいわー。

★11月18日(月)更新★★★★★★★★★★

11月12日(火)

 図書館に行き、資料をあさる。ハードカバー8冊はかなりの重量だ。その後浜松町に行く。行き帰りの車中で少女漫画を読みまくる。BBSでW氏が「買った?」と言ってたんでその存在を知った『少年少女ロマンス』(ジョージ朝倉 講談社KC別フレ)を一番最初に。ジョージ朝倉のマンガはたまに設定が極端に大げさになりすぎることもあるが、かつて少女漫画最大の見せ場であったはずの「告白」シーンがかっちり派手に描かれてるところが好き。

『彼女達のエクス・デイ』1巻(水城せとな 秋田書店プリンセスコミックス)。ええっ、学校爆破するですか!!!?途中でひよるなよ!がんばれ!続きが楽しみ。『問題のない私たち』1・2巻(原作・牛田麻希 木村文 マーガレットコミックス)別マを立ち読みする時、なんとなく気になってた作品。イジメを描く時の女子校らしいねちねちした空気がリアル。問題解決に臨む時、主人公が突如正義の味方に変身しちゃったりせず、抑えた感じでよかった。途中、駅の売店で、唯一毎月読んでるファッション誌『GINZA』(マガジンハウス)を買ったので、さらに荷物はずっしり。『GINZA』、定期購読にしようかな。

11月13日(水)

『パイロットの妻』(アニータ・シュリーヴ 新潮クレストブックス)。パイロットの妻の家を、深夜、一人の男が訪ねてくる。夫の操縦する旅客機が墜落したことを知らせに…。という内容を知ったら、航空機事故本マニアとしては読まねばなるまい。とはいえ、この本の焦点は事故の内容ではなく、夫の死後、身辺整理などをするうちに、これまで知らなかった夫の秘密がわかってくる…という部分なのです。魅力的な小説。

11月14日(木)

 古本屋で買い物。『タマス』(ビーシュム・サーヘニー 財団法人大同生命国際文化基金)。アジアの現代文芸シリーズと銘打たれたシリーズの1冊で、これはインド文学。めっけもん。『ネロ・ウルフの殺人交響曲』(ロバート・ゴールズボロ 二見文庫)。愛すべき巨漢美食安楽椅子探偵ネロ・ウルフはレックス・スタウトの生んだキャラクターで、本書はウルフファンが勝手に書いたもの。ホームズとかでもよくあるよね、こーいうの。買おうか少し迷ったが…ウルフものの未訳長編は何十作とあるっちゅーのに、ここんとこまったく新刊が出る気配がないので…心の中で小石蹴りつつ購入。以前、原書翻訳に挑戦したけど、10ページほどで断念したっけ。『スリップに気をつけて』(A・A・フェア ハヤカワポケットミステリ)以上100円コーナーでの買い物。 

 あと、『ぼくとホームラン』(王貞治 集英社)を1000円で。世界記録の756号ホームランを記録した年に出た、子ども向けの本。モノクロながら写真も満載でうれしい。この手の本、ちびちび集めてます。こういうの実家の本棚に眠ってるという方、売ってほしいなー。      

11月15日(金)

『800』(川島誠 角川文庫)。Nさんが貸してくれた。正確にはRさんがNさんに本書を貸し、次に私に貸すようにという「指名また貸し」で回ってきた本。陸上で800M走をやってる高校生男子の物語。いい。2人の主人公のモノローグが交互に配される形式も好き。青春小説と、なめたらあかんぜよ! 途中、何度も「ええ?」と思わされる展開に出会い、先が知りたく一気読み。

『待っていたのは』(ディーノ・ブッツァーティ 河出書房新社)ひさびさに再読。好きな作家は、と訊かれたら必ず名前をあげる作家。日常の中に巣くう不安を、なんと素敵に形にしてくれるのだろうと、読むたびに満足する。短篇集。

11月16日(土)

 ひさびさに本棚の整理をして、不要な本を若干ふるい落とすことに成功。しかし根がみみっちいので、より分けた後も「あと1回読んだら処分しよう」などと考えてしまう。奥から出てきた『100%』(柳沢きみお 双葉社)につい読みふける。しかし、ウチには全巻そろってないのよねー。

 『ゼブラ』(ハイム・ポトク 青山出版社)をパラパラ読む。が、たんたんとした短篇集好きの私にとっても、あまりにたんたんとしすぎていて挫折。

★11月11日(月)更新★★★★★★★

11月4日(月)

 スタジオに入る前、「まんがの森」で『ハチミツとクローバー』2巻(羽海野チカ・集英社クイーンズコミックス)を購入。W氏から1・2巻を借りているというのにだ。自分のが欲しくなったのよ。1巻は売り切れのままで、来年に出る重版待ち。正直この作品を自分がそれほど好きになると思ってなかったし、誉めるキーワードもまだ見つからないので、へんだなへんだなと思いながら、夜、蒲団の中で2巻だけを読んだ。たぶん4回目。現在、話の中で三角関係(未満?)なグループが2つある。これがどう進んでいくか。彼らが友人どうしだけに間違っても「アイツになら譲ってもいい…」みたいな普通のイイ話になりませんように。

11月5日(火)

 近所の古道具屋の古本コーナーがまた充実している。『暗黒童話』(乙一・集英社)『山田風太郎ミステリー傑作選8 階段部屋』(光文社文庫)を各50円で購入。あんまり安いのでいっぱい買いたくなって困るよ。最初は4冊持ってたけど、減らした。乙一は、今まで読んだものはハズレなし。『GOTH』はどうなのかにゃー?

 すっごくひさびさに「花とゆめコミックス」を買った。『あのこにもらった音楽』(勝田文・ 白泉社)。カンで買ったんだけどまあまあ良かった。最近、W氏と少女漫画を語る際の一大問題として挙げられている「なぜ近頃の少女漫画のオトコはキャラが薄いのか」という点においては、しっかりひっかかるが。音楽をモチーフにしてるマンガって、作者にそれなりの思い入れがないと描けないから、まずまずのクオリティーに達してるのが多い。しかし、音楽ものでも『キス』(マツモトトモ・白泉社)はいただけなかったなあ。コレはなんかカッコいいから音楽もの描いてみました…って感じしか受けなかったしね。

11月6日(水)

『暗黒童話』(乙一・集英社)、期待を裏切らぬおもしろさ。乙一の小説はラストがビシッとキマってていい。そしてロマンティック。途中までは盛り上がって読めるのに、最後で「あれは夢だったのだろうか、それとも・・・?」的にお茶を濁すホラーにすべりこけたことは二度や三度ではないのじゃあ〜!

『夜の音楽』(ベルトラン・ピュアール 集英社文庫)。2作続けて、人の眼球がくり抜かれる話を読んぢまった、と驚く。猟奇連続殺人が起こるも、刑事の描き方がほどよくユーモラス。ミステリとしては謎解き度は低いが。ビートルズ好きは楽しめるだろう。

 すんごく眠くてたまらないのに、ふとんの中で『光る風』(山上たつひこ・ちくま文庫)上下巻を読了。救いのないラストが好き。

11月7日(木)

 仕事で『整形美女』(姫野カオルコ・新潮文庫)を読む。スタイル抜群の美女が、胸は脂肪吸引で減らし、ウエストは寸胴になるように。パッチリ二重を豆つぶのような目に、鼻筋の通った鼻を低くて先が上向いた鼻に整形する話。ありがちな説教くさい結末にならず、楽しめた。

11月8日(金)

 雑誌『創元推理21』2002秋号を読む。おや、秋号…ということは、季刊になったんか。おめでとう。巻頭の短編『別れてください』(青井夏海)は、“助産婦探偵シリーズ”。近年、シロウト探偵もので「ナントカ(なるべく意外な職種を入れるべし)探偵」と名乗るの、多いな。でもコレ助産婦探偵っつうか、単に「お客のトラブルに首つっこみたがる野次馬助産婦」。主人公はこれから自宅で出産が始まるという客人の家に駆けつけるはずが、途中で別の客のダンナの浮気現場を目撃し、誰にも頼まれないのに張りこんだりしちゃうのだ。ひどい人…そのひどさたるや、著者のペンネームのセンス並み。『幽霊の処方箋』(矢口敦子)は、「死んだ人が倒れた時に腕時計が壊れたらしく、その時間で時計が止まっていて…」というネタの古さにこっちが倒れそうになった。後の謎解きがアクロバティックにキマってれば見直せたけど。地味地味地味。創元推理評論賞受賞作として掲載の『80年代、ネオ・ポラールの射程』(フランスミステリについての評論)はおもしろかった。ブックガイドとしておおいに参考になる。

11月10日(日)

 楽器店に、修理に出してたベースを取りにいく。2か月半ぶりの再会。おかえりなさ〜い! 古本屋に行き、3冊100円コーナーで『火星年代記』『華氏四五一度』(ともにブラッドベリ)『SUDDEN FICTION 2 超短編小説・世界篇』(文春文庫)を。この短篇集は前から読みたかったのでうれしいなー。ブラッドベリはどっちも一度は読んだはずだけど、内容思い出せないので。レジ前でカルヴィーノの大変珍しい本を見つけ、心拍数上昇するが平静を装って「これ、値段ついてないんですか?」と訊くも、日米野球を見ていた店主は「ああ、まだなんですよ」。くやしい〜読みたい〜!

『夢の果て』2巻(北原文野 ハヤカワ文庫)。1巻よりトーンダウンした感じ。次が最終巻なので結末のまとめ方に期待。

★11月4日(月)更新★★★★★★★

10月29日(火)

『ごめん』(ひこ・田中 偕成社文庫)小学生6年生の男の子が夢精して、中学生2年の女の子にひと目ぼれしてジタバタする話。これまで、小学生男子の生理をここまであからさまに書いた話があっただろうか? 物語だけど、小学生男子がチンチンの勉強をするためのガイドとしても、とっても親切な内容だと思う。

 地下鉄文庫でまたまた本を収穫。

10月30日(水)

きのう拾った『中村うさぎ 人生張ってます〜無頼な女たちと語る〜』(小学館文庫)を読む。対談集。登場するのは岩井志麻子、西原理恵子、斎藤綾子、花井愛子、マツコ・デラックス。副題にもある通り、対談の内容は「自分がいかに人間のクズであるか」ということをひたすら競いあったもの。「税金払ってるヤツは馬鹿」とか「借金は踏み倒すもの」みたいなことを無頼気取って言う人はくだらない。たとえ、へ理屈でも思わず人を黙らせるような威力のある主張ができるなら別だが。「無頼」と、厚顔に、オヤジっぽく振る舞うことをいっしょくたにしている。文化系の女性には、「オヤジ」になりたがる人が多いな。それによってオバさんになることを回避しているつもりなのか。どうかと思うね。

岩井志麻子の対談が一番おもしろかった。それは彼女が、自分の趣味や自分の指向を正直に「ヘン」と認識して語っているからだろう。「ヘン」を意識しつつも「これって普通じゃないですか?」と相手に突っ込みやすくする安易なボケ方は、テレビ的で嫌いなのだ。花井愛子の写真が竹村健一×和田勉みたいで恐ろしかった。せめてぶっとい黒ブチの眼鏡をやめればいいのにな。

古本屋に寄る。先日Nさんから借りていた『子どもの詩の園』(スティーヴンソン 光琳社)をゆっくり見ずに返してしまったのを後悔してたら、古本屋で発見。あまり普通の本屋に置いてなさそうな本なので喜んで購入。元値2400円が800円なのは買いものでしょう。スティーヴンソンって、「宝島」のスティーヴンソンなんだよねー。驚き。

10月31日(木)

『あかい花』(中脇初枝 青山出版社)。きのう古本屋で100円コーナーで買った本。青山出版社は最近、地味だけどなかなかいい本を出していると思う。これは、初潮をテーマにした短篇集。やっぱり精通のあとは初潮でしょーな、と。変にエキセントリックぶってるところがなくておもしろかった。

11月1日(金)

新刊で出たばっかの『消されかけたファイル』(麻生幾 新潮文庫)『殺ったのはおまえだ』(新潮45編集部・編 新潮文庫)を買う。そういえば漠然と「Yonda Club」でなんかもらおうと、新潮文庫の三角マークを貯めている。前には、川端康成の腕時計を手に入れたっけ。

 

11月25日(月)更新★★★★★★★★★★

『臨床哲学』(養老孟司 哲学書房)を読んでたら居候ライフの小川てつオさんがやってきた。しばしトーク。「なんかユルイかんじだね」とオレの身の回りでも代表的なユルイ人(笑)に言われてしまった。が、自分でもそう思う。小川さんは料理が好きだそうで、ビンボー料理のレシピノートが2冊になるという。コピーでいいから本にしてほしいと言ったら、ノート10冊くらいになったら、とのこと。オレも引っ越ししたら料理復活しよう!

あ、『臨床哲学』おもしろかったよ。ヨーローさんは自分でものを考えようとしてるからスキ。言いたいことをどんどん言えるのは普段から死に接している人の強みだね。まあ、ほんとはみんな一緒なんだけどね。

 

『つげ義春1968』(高野慎三 ちくま文庫)

は軽い読み物だった。もっとドロドロネチネチとしたものを期待してたんだけど。著者がさっぱりとした人なんだろうなあ。つづいて、その時代のものを読みたくなって。

『ラブ・ゼネレーション』(早川義夫 シンコーミュージック)

以前読みかけて途中で投げてたものを拾って今度は読み終えた。前だって面白くなかったワケじゃない。だけど、気分じゃなかった。そして今回もやっぱり、ちょっぴり気分じゃなかったのだ。ここに書かれているのは著者の個性であると同時に「青春」である。著者の考え方や態度は素晴らしく共感できるし、まさにカッコイイからしびれてしまう。が、「青春」のほうにつまずくオレ。概念化した青春でなく、「年齢や肉体的にそうだったあの頃」の事が何故かいまオソロシイのです。それはたぶん、ほんとに遠くなってしまったという事なんだろうな。そして、いまは自由だ。

と、自分の世界に入っちゃって、この文が終わっちゃいそうになったけど、もうちょっと書くと、著者は同時代のフォークシンガーたち(しばしば友人でもある)に歯に衣着せぬ批評を加えていて、それがとても楽しい。なんか、人がひとりそこに存在する、ってことはこんなにも温かいのか、って気さえしたのだから、今の時代って相当さむいんだろうなー。

中川五郎さんの解説も素敵だった。すごく大事な友人関係だという事がよくわかる。五郎さんのこういう文章を読むとちょっぴりドキッとすると同時に親しみを感じるなあ。

 

 

『夜に動く』(川上宗薫 ケイブンシャ文庫)

ポルノで有名な著者だがこれはミステリー短篇集。色っぽい場面にやっぱりちゃんと工夫があって嬉しい。やっぱりその場面も大事に書かないと、もったいないとよく判る。電車の中だけと決めて読んでるンだけど、すごくイイ。夜の小田急線を乗りすごしちゃって遠くの知らない町まで来ちゃったけど平気、って感じですね。

 

 

『がなり説法』(高橋がなり infobahn)

もひとつエロ。かと思ったら違った。著者は年商40億を稼ぐAVメーカーの社長さん。内容は、ズバリ、人生の負け犬が敗者復活戦で勝つための指南書、ですね。著者の写真を見ると、よい顔してる。きっといい人なんだろうなあ。敗者がいなきゃ勝者はいない、なんて御託はいわずにテッテ的にやるべきです!ほんとボクたちは。

ユルみすぎちゃって困ってる現在のオレにはとてもタメになりましたが、実際のところを言うならば、やるヤツは自分でやるし、やらないヤツはやらない、という現実世界がながながと横たわっております。この本の真の読者はどこにいるのか、という問いがいま頭の中を駆けめぐりました。

もしかするといないかも?

★11月18日(月)更新★★★★★★★★★

ライブでやる新曲の歌詞がなかなか書けず、先週は本を読む時間が一切なかった。しかも話好きの友人の話し相手にものすごーくなっていたような気がする。オレも話好きか?そんな気もするし、ぜんぜんそうじゃない気もする。

まったく話し相手をもたない生活をしている人の本を読んだ。「山谷崖っぷち日記」大山史朗(角川文庫)。開高健賞受賞作、オビには「現代の方丈記!」とすごい感じだが、ちょっと印象はちがった。著者は山谷のドヤに住む知的な日雇い労働者。かつては会社勤めもしていた。が、社会に馴染もうとすると、過剰適応してしまい、ムリがたたってある日急にパンクしてしまうのだ。日雇いの山谷ぐらしを否定するのでなく、自分にとってのある種の天国だと諦観もまじえながらも達観している。たしかにちょっと変わった人である。人を見る視点も面白い。特に教育のない人間の限界を語る部分はタメになった。知識を得る過程において人間は教養を得て、それが人格形成につながる、と著者は語る。この過酷な状況下のレポートのなかにあると納得させられるものがあった。しかしどこまでも疑り深いオレ。この著者が今後も作家として成り上がって(?)いくなら、逆にこの本を信用できるのかもしれない。オレも日雇い労働者だしよ。

現在,カバンに入っているのは「悪の恋愛術」福田和也(講談社現代新書)、「凶気の桜」ヒキタクニオ(新潮文庫)、「なぜカルト宗教は生まれるのか」浅見定雄(日本基督教団出版局)の3冊。「悪の〜」はイヤな観点から読んでいる。なにか拾い物があれば、と。「凶気〜」はアオウに映画試写に連れて行ってもらい、興味が出た。映画の翌日、新宿中央公園フリマでお兄ちゃんより50円でゲット。さらに翌日、友人に誘われ原宿のモリハナエビルで「BE GOOD CAFE」というイベントを覗いたら、主催者の名前がヒキタだという事を知った。同一人物だったらオモロイよなあ。横浜アリーナの「w-1」を見るために会場を出たら、表参道を右翼の街宣車がいっぱい走ってたよ。

ついでに。「W-1」のボブ・サップVSグレート・ムタ戦は面白かったよ!ドス・カラス・ジュニアも良かった!

もう一個ついでに。「BURST」っていう雑誌が仕事場にあって毎月楽しみに読んでたんだけど、今号で編集長が替わるらしい。内容はドラッグ、タトゥー、ピアス、Jヒップホップ、ハードコアパンク、あとアナーキーやらパンタ等の連載もあって、完璧にオレ苦手な分野なんだけど(笑)、なんかオモロかったのよ。これきっと編集長がオモロイ人なんだよね。残念だあー。これでハードコアな世界とはきっとお別れね(涙)。

★11月4日(月)更新★★★★★★★

すいませーん!前回、原稿落としました(涙)。ドエライ風邪と睡眠不足、そして仕事が久しぶりにはじまったのも重なって、ほとんど死んでました。頭痛いと、もー本なんかとても読めーん。といいつつフランス書院文庫(ポルノね)3,4冊と中村真一郎の書評2冊は読んだのですが。

で、今週も病癒えず、しかも近づくライブで披露する新曲4つの歌詞を考えねばならず、読書の秋はムナシク流れて行くのでした。トホホ・・・。カバンに入れたままの『ゲッタウェイ』(ジム・トンプソン 角川文庫)も結局ひらかぬままだったぜ、チクショー。でもなんか読んだかな・・・。「宮本輝対談集」読んだなー。いったい、いつどこで読んだんだろう?わかんないな。

という訳で、今回は読んだ本でなく、ある日のオレの買い物を公開してお茶を濁しましょうかね。

1「投手・桑田真澄の青春/石川好」

2「インド・パキスタンの独立〜今夜、自由を/D・ラピエール&コリンズ」

3「脱がいでか/花登筐」

4「フグとメザシの物語 ああ童貞の巻/花登筐」

5「西脇順三郎 変容の伝統/新倉俊一」

6「季刊NW-SF」 2号

やー、どれもいいねー。

 いまオレ桑田に注目してるのです。こないだ読んだインタビューがすごいオモロかった。本人曰く、武道をピッチングに取り入れたことによって投げ方が180度変わった、もう60歳ぐらいまで投げられるし投げるつもりだ、と。素敵!来年は桑田登板の時だけ巨人戦、見に行こうかな。3,4は関西のテレビシナリオライターとして有名な人。「どてらい奴」面白かったなあ・・・。オレのヒーロー花紀京は彼の家に若い頃下宿していたはず。5(西脇順三郎)は学者で詩人。たぶんオレがはじめて親しんだ詩人です。ムツカシイんだがこれまたステキなのね。6は別役実のエッセイと須永朝彦の創作が載ってたのでゲットしましたー。

こんなん書いてるうちになんぼでも読めるがなー、とムジュンを抱えつつ、また来週!

★11月25日(月)更新★★★★★★★★★★

無頼も,けっこうつらいのよ

「オトコとおんなが ただよいながら 堕ちていくのも 幸せだよと」 「ふたり冷たい 身体 あ〜わせるぅぅぅ」 そんなきれいごとばかりではない,と『太宰治 弱さを演じるということ』(安藤 宏,ちくま新書)の著者は言うておるのだ. いわゆる「無頼」のディスクールには飽き飽きしたと.「捨て鉢な振る舞いと作風で世相に反逆を企てる」イコール無頼という常套解釈は, もううんざりだ,と.「負の殉教者」というクリシェはもう封印しようと.

 で,どうなるのかというと,「他者とのディスコミュニケーションが成立しない場では,モノを書けない作家,太宰治」ということになるらしい. 太宰はとにかく「滅び」を描く作家である. 人は自分一人では「滅ぶ」ことができない.他の誰かとの共生を通じて,人間は「滅ぶ」. ゆえに,太宰は「滅び」を指向するとき,他者を必要とする. ひいては,他者との「距離・へだたり」が,「敵意」が,肝要となる. そのとき,太宰はひたすら「へりくだり,弱さを演じ続ける」.自分より強い兄貴を絶えず求め続ける,「弱い弟になりたがる」のだそうだ.

 この本で,一番面白かったのは,「世の中が平和なときは自殺ばっかりしてて,戦争中になると健康な生活を送るという奇妙な倒錯」が太宰にはあった,という指摘であった. 太宰の作風が最も安定し,佳作を次々に生み出すのも,戦時中であった,と. つまり,国家主義体制という「強い兄」が厳然と成立している時代には,「弱さ」を演じすぎて自滅してしまうこともなかった,と. 太宰にとって,大東亜戦争は「ああ,兵隊さんは偉いなあ,それに比べて,このオレときたら・・・.」と嘆くだけで,簡単に弱い人になれる幸福な時代だったのである. このあいだ,誰だったか,「道徳の授業で,小学生のころ『走れメロス』を読まされた.なんで太宰は,あんな泣きの入ったハナシ書いたんでしょうねえ須山さん」という人がいた. 実は『メロス』は,戦争たけなわの頃に書かれた,「健康」系列の作品だったのであ る. 太宰は崩壊を描くことで作家たりえたのであり,ともに滅びゆく対象(階級,国家, 社会)を戦後に失ったことで作家として十全な力量を発揮できなくなった,というのがこの本の結論である.

 とすると,わしなんかには「ああ〜ん? やっぱり無頼派じゃ〜ん,それじゃ」という気がしなくもない.ていうか,いわゆる「無頼派」にな (りさが)ったことで,太宰はホンライの太宰であることを止めた,というのが,著者の言いたいことなんであろうか. 太宰は,「無頼」ではなく,ホントはいろんなことに「頼って」いたんだと.

  さて,今週のお買い物の時間です. 深夜,コンビニで酒を買いにいく途中,ふらっと自宅そばの古本屋に入ってしまって買った本です. 『一個その他』(永井龍男,文芸春秋新社→こういう社名だった時代があるのね!) 『六本木随筆』(村上元三,中公文庫) 永井龍男は一度も読んだことがなかったんだけど,滝田ゆうが漫画化したことのある 作品が載ってて,わしはいたくその一編が気に入っておったもんで. 村上元三にいたっては,「なんでわしが?」と自分でも思ったのだが,「ムカシ,東京のあのヘンはこんなんなってて,こんな人が,こんなことを・・・」という内容の本には,著者が 誰であるかに関わらず,ついつい手がのびてしまう. ちょっと読んでみた. 六本木という地名の由来は,「上杉,朽木,青木,高木,片桐,一柳」と,それぞれ 木にちなむ姓の6大名の屋敷があったから,とか,甲州街道第一の宿場は江戸初期には高井戸にあって,それじゃあ遠いのでもっと日本橋に近いところに新しい宿場をつくった.それが新宿・・・とかいうハナシ,わしは結構好きなんである.

★11月18日(月)更新★★★★★★★★★★

about the end of an affair

11月14日. 前回、読み切れなかった、『蓼喰う虫』(谷崎潤一郎、新潮文庫)を、本日読了した. 四年前に読んだときよりも、はるかに実感として迫るものがあった. 最高の反・恋愛小説であろう.別れを決めたあとの男女の関わり合いというのはまことに愛おしいものであると思った. 誰もが経験あることと思うが、血も凍るような憎しみあいと罵りあいと嫉妬の果てに、「もうオシマイね、わたしたち」となったあとの男女には、それ以後、言うも妙なるすがすがしさが生ずるものである.

この作品には、そうなってしまった後の男女の姿がある.実際はもう何でもあり・・ ・オトコをつくろうが外人娼婦と遊びまくろうがヤリ放題なのに、二人はさっぱりと 夫婦関係を断ち切ることへのためらいから逃れられない. なぜためらうのか? 「そうなってしまった」ことのすがすがしさゆえにである. わしは、いったん関係を清算したはずの男女が、行き会うたびに(セックスこそしな いとしても)楽しげに談笑し、食事まで共にし、恋愛中であったときよりも親密になっていく光景を、幾度となくこの目で目撃してきた. そう、むしろ恋愛中の男女こそが、いさかいの渦中にあるのである.

この小説でも、それまで寝室を共にするのも苦痛だったのに、とある情夫の存在を妻が夫に告白したとたん、わだかまりなく一緒に眠れるようになった、という経緯が語られる. そして「別れなくては、ただちに、別れなくては」とことあるごとに二人はおたがい確認しあう.しかし、別れない.どころか,キッパリとした、大きな抗いがたい契機 がおとずれ、むりやり二人を引き裂いてくれないものか、とまで思う. なぜなのか. すがすがしいのである.つかえていたものが除かれた、その開放感と、安堵である. 妻には情夫があるという.そして、夫とは離別し、そのオトコと一緒に暮らすという.しかし、そのオトコとの日々に妻は十全な信頼をもって身をまかすことができない.

ふたたび、そのオトコとの恋愛に於いて、いさかいと口論、言われなき嫉妬の応酬が繰り返されるかも知れないことへの怖れが、彼女を阻んでいるのである. おな、おそるべきかな、恋愛. そういったものから、限りなく遠ざかっていたい. そして,この書を、今、離婚係争中であるすべての男女に捧げたい. 来月、2002年もはや師走. 「ああ、ことしはあの人が離婚したなあ・・・」 わしは毎年、年の瀬に必ずそのように感慨に耽る. こころから「おめでとう」を伝えたいからである.

さて、今月のお買い物2点. 池上岑夫『SE考 ポルトガル語のSEの正体を探る』(大学書林)159ページ、3000 円小熊英二『単一民族の起源 <日本人>の自画像の系譜』(新曜社)450ページ、 3800円  6800円も費っちゃった.前者は、「絶対、重版しなさそうだから、いまのうち買っておこう.」後者は「なんだか重い本が読みたい」、というのが購入の動機.

★11月11日(月)更新★★★★★★★★★

渋谷にて,井の頭下りを待ちながら

 鞄をさぐったが,ない.

 今週ずっと読んできた,谷崎の『蓼食う虫』がない.

 しょうがないなー.家に置いてきたらしい.これでは原稿が書けんなー.(言い訳じゃないのよ.)しかも今日は高橋トシユキのレコーディングで,神奈川県の子安まで行くのをいいことに,京急の車中でラストまで読み切ろうと思ってたのに.

 しかたないので,昨日買った本のレポートをします.(あ,電車来た.)

『太宰治 弱さを演じるということ』(ちくま新書)

『もっとソバ屋で憩う』(新潮文庫)

 いま,“憩う”という字を書いてて,“憩”って“舌”+“自”“心”で構成されてるのね,と気付いた.私は一人でメシを食うのが好きだが,特にソバ屋ではそうねー.そういうときのアティテュードとしては,まさに“自分の舌で心をみたす”かんじね.誰にも邪魔させないわよ.

 太宰についての本は,たまたま1万円札しか持ってなくて,ソバ本(620円)だけだと本屋にオツリ貰うのがワルイかなーと思って,その辺にあったのをひっ掴んでレジに持ってっただけです.

 ただ,「太宰論の大転換」てオビにうたってるからもしかしたら面白いかも.ああ,でも谷崎を読むのが先決だわ.4年前に読んだっきり,内容をだいぶ忘れてたから(あっ下北に着いた).

★11月4日(月)更新★★★★★★★

ももえとの再会・平成篇

ももえ. ももえのベスト選曲集2枚組で踊る夜. 初期のももえの曲はほとんどがマイナー・キーだ. デビュー曲をのぞいて,すべてが. なぜ,デビュー曲だけが「乙女の,初恋の予感にふるえるヨロコビ」で, あとにつづく曲すべてが,愛と性の重圧と苦悩に耐えるオンナの歌なのか.これは,ちあきなおみの辿った道程とは正反対といえる.ちあきは「もう死んでしま いたい 落ち葉のように」と歌ってデビューしたが売れず,『四つのお願い』でブリ ブリブリッ子(死語)して,ようやくアイドルの道への端緒をつかんだ.

  ある春の深夜. わしは高橋敏幸くんのバンドのメンバーたちと共に,ニシオギの住宅街をさまよって いた. ライブ後,終電を逃し,行き場を失った者たちが,目的もなく歩んでいたのである. すると,道ばたに,引っ越し間近でゴミをまとめたのであろう.本やらヌイグルミや らが堆積したかたまりが,行く手にあらわれた. わしらはその堆積に近づき,袋の中をあさりはじめた. すると高橋くんが,「須山さん,ももえですよ」と言って,わしに一冊の文庫本を手 渡した. 山口百恵・著『蒼い時』であった. それから一年半が経過し,わしはついにこの本を繙くにいたった. 神保町の中華料理屋「徳萬殿(とくまんでん)」にてニラレバを食うため,店の階段 を上っていたとき,有線のスピーカーからももえがわしの耳に響いてきた.「かっこかっこかっこかっこ かっこばかり先走りぃ〜」 おお,なんたる偶然であろう.本日のランチタイム・ブックとして,わしは『蒼い 時』を携えていたのだった.

わしは無知であった. ももえに関して,あまりにも無知であった. 彼女の父親が,彼女の家庭以外にも,すでに養うべき家族をもつ人物だったこと. 母親と,安アパートの共同風呂で入浴していたところ,父親の「別妻」があらわれ母 親と口論になり,ももえは母親と一緒になってその「別妻」に浴槽のお湯をかけま くったこと. ももえが少女歌手としてスターとなったとき,父親は,金と地位のおこぼれに与ろうと,マスコミに家族関係がらみのいろんなネタを提供していたこと.

これらのことを同年の某女性に語ったところ, 「ホント,須山くんてテレビとか週刊誌とか見ない子だったんだねー,きっと」 と,嘲笑されてしまった.わしの年代の者なら,そのくらい誰だって知っている,と も言いたげに. そうなのか? 「そうよ.」 「百恵ちゃんが女性自身を相手どって,中傷記事書かれたことで告訴して裁判所で口 頭弁論したこと」についても,この人は語ってくれた. なるほど,『蒼い時』にも,その顛末については一章を割いて詳述されている. なんでも,その記事によると,「乱交パーティーで,山口百恵が森進一にフェラチオ をしていた」ことになっているそうだ. ンなことするわきゃねーだろが,ももえがよ. と,わしは憤慨した.「鳥肌実が松浦亜弥にクンニをしていた」場合とはワケが違う のである. ももえは団塊の世代にとっては,なにしろかつて「菩薩」とあがめられたお方である. 今でも国立にいるのだろうか? 「いるんじゃない?」 そうか.けっして手の届かない場所にいるのではないのだな. 「子どもが幼稚園に入るとき,群がる報道陣にビンタをした,っていうハナシは知らない?」 知らん. 少年時代のわしにとって,ももえとの,ある程度コシを据えたつきあいといえば,唯 一,『伊豆の踊子』であろう. わしは11歳であった.小松左京原作『エスパイ』を見に行ったのだが,なぜか『長島茂雄 栄光の背番号3』とこの『伊豆の踊子』との3本立てであった. 『蒼い時』では,終始「彼」という代名詞で語られる,三浦友和との初共演作である. そしてその後,わしとももえとの関係はふっつりと途絶える. わしが,病的なまでに歌謡曲を嫌悪する,洋楽ロックオタクになってしまったからである.

さて,高橋敏幸は,言うまでもなく,神奈川県・横須賀市が生んだ天才である. ももえも,幼少期から,「スター誕生」でデビューするまで,横須賀に住んでいた. 高橋くんが,あの春の夜,ゴミ溜めから『蒼い時』を拾い上げてくれなかったとした ら? わしの,ももえについての認識は,はるかに矮小なものであり続けたであろう. おもえば,「横須賀」の地霊のようなもののパワーが,高橋くんをして『蒼い時』に まで誘導し,わしの手にその書をもたらしたのかも知れない. このように,人は書物と出会うときがあるのである.

最後に. わしのナンバーワン・ももえフェイヴァリットは,なんといっても『美・サイレン ト』である.