何かを見て、感じて、思い出して。
逢いたくなるのは仕方ない。
自覚しよう。
私は、彼が好きなのだと。
きっかけは、結局の所分かっていない。
私は唐突に気がついてしまったのだ。
何かを見たり、何かを感じたりすると思い出すことを。
考えないようにしても結局今も思い出している。
ドコが好きなのか?
と尋ねられても分からないと答えるしかないだろう。
警視庁の特捜室が有る場所は結構上階で。
そこからは周辺の景色を眺めることが出来る。
東京は秋の気配が濃くなり紅葉をはじめ、色とりどり鮮やかに世界を染め上げている。
春のサクラの季節とはまた違った景色がそこら彼処に見られる。
彼と出会ったのはそんな季節だった。
だから、そんなことを考えるのだろう。
「坂下警部補、そこで何をやっているの?」
本庁にいきなり転属となり配属となった場所は姉の凪がいる特捜だった。
有能だから配属されたと聞かされても凪の力もあるような?
彼女は警視だし。
てっきり捜査は凪と組むものだと思っていたら、相手は彼だった。
日渡湊警部。
名前は『みなと』と読むのだと思っていたら『そう』だと訂正された。
初対面で聞かされている。
あっけにとられていたら凪が
「湊は名前間違えられるのが嫌いなの」
って言ってた。
凪は間違ったことがあるらしい。
「坂下警部補。…………月」
「凪……なんでそこにいるの?」
「それはあたしの台詞。ずっと呼んでいたんだけど」
そう言えば……凪の声がしたような気がする。
「大丈夫?もしかして疲れてる?」
返事をしなかったことに対して逆に心配をかけてしまったみたいだ。
「凪…じゃなかった、坂下警視、大丈夫ですよ」
「休憩から戻ってないって日渡警部が心配してたわよ」
「え……警部が?」
思いもかけない凪の言葉に私は焦った。
表には出てないかな?
「月、大丈夫なら、どうしてここで立ち止まってたの。何か見える?」
「ただ、綺麗だなって」
誤魔化すように私は窓の外に目を向ける。
「まぁね、随分紅葉したわよね……。あたしはてっきり湊のこと考えてるんだと思ったけど……。ま、そんなことより部屋に戻りましょうか」
さりげなく言った凪の言葉にぎくりとなる。
……………なんで分かったんだろう。
顔に出てたっけ?
「あんたは顔に出る前に態度で分かるのよ。まぁ時々目で追ってるのあたしは知ってるけどね」
め、目で追ってる?
そんなこと記憶にない……。
「まぁ、気付いてるのはあんたの姉である、あたしだけなんだけどね。湊はかなりのシスコンだから手強いと思うよ」
知ってるけど、別にそう言うこと考えてないし。
って言うか、凪に知られてしまった……。
誰にも知られたくなかったのに。
「頑張りなさい」
凪の励ましに小さくうなずく。
気付いてしまった。
彼が好きだと言うことを…。
気付かない方が良かったなんて思わないように、後悔しないようにしよう。
私はこの想いを大切にしたいから。
いわゆる警察の面々。階級はとりあえず適当。
メインのキャラクターは高校生探偵s。湊は彼等の中の一人日渡奏のおじさんです。
兄妹じゃない。
ちなみに、月と凪は双子じゃありません、年子?か2コ違うかな?