「亡国を復興させようと渡り歩いている姉妹の姫をカリィは知ってる?」
「知ってる、会ったことがあるぞ。姉妹の境遇に私も同情をせずには居られなかった。お二方にとって同情はして欲しくないだろうが。姉姫がミファリナ・ルテス、妹姫がリュテナ・クーティと言ったかな?。確かアンペール王家で国は……ドコだったか……。私の国があった大陸ではないというのはおぼえてるんだが……」
「そうか……カリィは知ってるんだね」
カリィの言葉に思い出すかのようにアシュレイは俯く。
「アシュレイ?」
その様子にカリィは訝しがる。
「って何お前笑ってるんだ!!」
「いや、カリィは知らないんだなぁって」
「何をだ〜〜〜」
「ではクレイ、参りましょうか?」
「ドコにですか?リュテナ姫」
「クレイ、私は敬語はやめて下さいなと言ったはずですわ」
「ですが、あなたは姫で僕はあなたに仕える騎士です」
「何を……仰ってますの。私の国はもう亡いものと同じですわ。だからこうしてクレイと旅をしているようなものですわ。だから私は姫ではありません。ただの旅の歌姫ですわ」
「了解しました。歌姫」
「それにクレイ。見て下さいな。こんな所で敬語は似合いませんわ」
とリュテナは浜辺を歩く。
強い日差しが二人を照りつける。
この地域は赤道直下年中夏真っ盛りの土地である。
「元気だねぇ、リュテナ姫は」
「人の事、あなたも言えないんじゃないですか?フェリクス」
「そうかな?まぁ、温室育ちの君はこの日差しはきついか。ミファリナ王女?抱きかかえてあげましょうか?」
「余計なお世話です!!!フェリクス・デ・バルトーク。私は、一人で歩けます」
「へいへい」
リュテナとその隣を歩くクレイのかなり後方に日差しに参ったのかかなり呼吸があらい、ミファリナとフェリクス・デ・バルトーク。
彼等は冒険真っ最中である。
ダークピンクの髪に青い瞳の妹姫リュテナ、異母姉妹であるダークブラウンの髪と瞳の姉姫ミファリナ。
本人達は一応自分たちの亡くなった国を再興するために各国を渡り歩き支援を募っている。
つもりなのだが、なにぶん城から出たことのない二人なので護衛の騎士が二人着いている。
黒髪に藍色の瞳クレイ・ヤカールはリュテナの幼なじみの騎士。
そして金髪碧眼のフェリクス・デ・バルトーク。
たとえ王国の精鋭と呼ばれた騎士(滅びかけてるが)とはいえ、世間知らずの姫が二人いるのだから、単なる支援を募る旅にはならない。
どちらかと言えば姉妹姫の珍道中という所か。
本人達は過酷な旅と考えているのだが……、そうは行かないというのが王女たるゆえんか。
「ミファリナ姉様、おいしそうな所を見つけましたわ。そちらでお休みいたしましょう?」
「そうね……というか、さっさと宿について休みたい……」
「姉様は暑いのが苦手でしたのね」
「私も初めて知ったわ……。あつい〜〜〜。フェリクス、何とかして」
「んな、無茶苦茶な。だからやめろって言ったんだ」
「そう言うわけに行かないの!!!あいつらに目に物見せてやるんだから」
「そうですわ、『ぎゃふん』って言っていただきましょう?本当にそう言うか見てみたいものですもの」
「そうね。それは良い案だわ」
何が良い案だ。
と、ミファリナとリュテナの会話にフェリクスとクレイはツッコむ事をしない。
というよりツッコムのもやめている。
二人の会話は次元がどこか違うのだ。
王宮に住む人間と、たとえ幼なじみとはいえ臣下の身分である自分たちとは違う。
フェリクスとクレイの二人はそう強く思っている。
「リュテナ、少し元気が出てきたわ」
「その調子ですわ、ミファリナ姉様」
二人は暑い日差しにも負けずフェリクスとクレイをおいて先へとさっさと進む。
「……フェリクスさん、王国は復活するんでしょうか」
「…………二人次第だろ?」
「ですね……」
強い日差しに考えを放棄しクレイとフェリクスは二人を追いかける。
王国は復興したのか……。
それは………。
「王国はどうなったんだっけ?」
「どうなったんだい?」
「……アシュレイ、お前知ってるだろう?教えろ!!!」
「思いださなきゃ意味がない」
「どうなったんだっけ?」
珍道中はどこまで続く!! で……亡国はドコよ(笑)?