見つけてしまった。
彼女の事を。
その笑顔を。
誰もが無茶苦茶だと言うかも知れない。
でもけどさ。
それだけのために生きても良いかもしんないって思ったんだ。
「えっと誰?あんた」
目の前の彼女は赤毛を外側にカールさせ、藍色の瞳。
その瞳がとてもキュートで、オレは一目に恋に落ちてしまったと言っても過言じゃない。
とは言っても、彼女はオレの事をにらみつけているけど。
「オレは、大魔法使いデュナウス・エーベルト!!」
俺の名前を知らない奴は居ない。
そんな奴いたらお目に掛かりたいぐらいだぜ。
「知らない」
………目の前にいたぜ、がっくり。
って言うか、オレのこと知らないってどういう事だよ。
「君も魔法使いだろ?オレの名前ぐらい聞いたことあんじゃねぇの?」
「知らないわよ、デュナウス・エーベルトなんて!」
「あぁ、1つ聞いて良い?」
うっかり忘れてた。
「何よ」
「君の名前何?」
「…………バカじゃない」
え?
吐き捨てるように言葉を言った彼女は、呆然としてるオレをよそにどこかへと向かっていく。
「ま、待って君の名前」
さっき聞いた後に言ったのは 名前じゃないよなぁ。
当たり前だけど。
「あたし、あんたみたいな脳天気な人間大っ嫌いなの」
の、ノー天気って……。
オレそう見えるのかなぁ……。
そう言えば、アシュレイにも、イルヴィスにも……特にイルヴィスにはお前は何でそう脳天気なんだって言われてたっけ……。
「別にオレは君の名前を知りたいって言うだけだって」
「じゃあ、最初に言った、アレは何?」
最初に言ったアレ…?
オレは街角で彼女を見かけた。
見つけた……そう思って彼女に。
「好きだ」
って言ったんだっけ。
「バカ?あんた……」
「いや、バカじゃないけど」
「初めてあった人間に好きだなんて言う?」
「言う、オレは言う。一目会ったその日からって言う言葉だって有るだろう?オレは、君に一目惚れしたんだよ」
「それを脳天気だって言うのよっ。今がどういう状況だって知ってるの?」
ココはシスアード、世界の情報が集まる場所。
そして今一番の関心事は魔王ゼオドニール軍がエルフ神族の王国ラルドエードを攻めていると言うこと。
ラルドエードが負ければ人の世はほぼ滅びる。
魔族が横行する世界になる。
盾はあるけれど、それでも人の世を再生させるには途方もない時間がかかる。
「好きだ嫌いだなんて言う状況じゃないの分かってるわけ?」
「そんな状況だからじゃないか。未来は明るい物にするべきだ。たとえ今がつらくても明るい未来は訪れないなんて悲観しちゃいけない。そうじゃなきゃ、未来は明るくなんてならない」
「…………」
「そう思わない?オレが君を好きだって言うのは、君と一緒にいればカナシイ未来が来たとしても明るく乗り越えられるって思うからだよ」
オレの言葉に彼女は何かを考えてる。
あぁ、オレらしくないこと言ってる。
格好良くないよなぁ。
なんかチョー恥ずかしい?って感じ?
「あんた、結構いろいろ考えてるのね」
「まぁ、一応大魔法使いだしね」
「大だけ、余計な気がするわ」
あはは、まぁ大がつくにはいろいろと理由があるわけだし〜〜。
「で、君の名前教えてくれる?」
「………アルミア・ハーヴェよ。じゃあね」
名前を言っただけで彼女は颯爽と俺の前からかけだしていく。
あぁ、逃げられるつもりも逃がすつもりもない。
オレの本性、君に見せるつもりはない。
とりあえず今は、人の力で追いかけてみよう。
空間を繋がない限り会えない友人達はオレと同じ思いをしているのだろうか。
……まぁ、アシュレイは苦労しそうだけど。
「とりあえず、追いかけますか」
気合いを入れて彼女が曲がった路地をオレは彼女の気配を探しながら抜けていく。
近いうちに彼女を捕まえよう。
そして太古の遺産の所へ彼女と一緒に冒険しにいこう。
きっと楽しみだ。
逃げられるはずなのにエーベルトといるアルミアと彼女の気を惹こうとしてせっせと贈り物をしているエーベルト。
その二人ってどんな出会いだったんだろうと……。
…デュナウス……こんなこと考えてるんだ。