フーリエシステムを用いて普通のCos級数からζ(4)、ζ(5)を求めた。
(1/(1^2・2)+・・)型Cos/Sin級数でζ(2)の2種類の積分表示を導出した。
「その1」でζ(2)、ζ(3)を求めたので、ここではζ(4)、ζ(5)を導出する。まずはζ(4)を求める。
[ζ(4)導出]
母関数
f(x)=cosx/1^4 + cos2x/2^4 + cos3x/3^4 + cos4x/4^4 + ・・・ ------@
を考える。右辺の係数1/1^4,1/2^4,1/3^4,・・がζ(4)=1/1^4 + 1/2^4 + 1/3^4 + ・・の各項になっていることに
着目する。
フーリエ級数の直交性を用いて、
1/1^4=(1/π)∫(-π〜π) f(x)・cosx dx
1/2^4=(1/π)∫(-π〜π) f(x)・cos2x dx
1/3^4=(1/π)∫(-π〜π) f(x)・cos3x dx
・
・
となることは容易にわかる。f(x)はコサイン級数だから、右辺は次のように書き換えられる。
1/1^4=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
1/2^4=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
1/3^4=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
・
・
さらに、右辺を部分積分する。f(x)は@であるから、簡単な計算から次となる。
1/1^4=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^3 + sin2x/2^3 + sin3x/3^3 + ・・)・(sinx/1) dx
1/2^4=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^3 + sin2x/2^3 + sin3x/3^3 + ・・)・(sin2x/2) dx
1/3^4=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^3 + sin2x/2^3 + sin3x/3^3 + ・・)・(sin3x/3) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて、
ζ(4)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^3 + sin2x/2^3 + sin3x/3^3 +・・)・(sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + ・・) dx -----A
ここでフーリエ級数の公式
sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 +・・=π/2 - x/2 (0 <x< 2π)
sinx/1^3 + sin2x/2^3 + sin3x/3^3 +・・=(π^3 - π^2x + (x-π)^3)/12 (0 <=x<= 2π)
を用いるとAは次のようになる。(これらの公式は、例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、岩波書店)を参照)
ζ(4)=(2/π)∫(0〜π) {(π^3 - π^2x + (x-π)^3)/12}・(π/2 - x/2) dx
右辺を計算して、
ζ(4)=π^4/90
を得る。
[終わり]
次にζ(5)を求める。
[ζ(5)導出]
ζ(5)=1/1^5 + 1/2^5 + 1/3^5 + 1/4^5 +・・
であるから、この形から関数
f(x)=cosx/1^5 + cos2x/2^5 + cos3x/3^5 + cos4x/4^5 + ・・・ ------@
を考える。右辺の係数1/1^5,1/2^5,1/3^5,・・がζ(5)=1/1^5 + 1/2^5 + 1/3^5 + ・・の各項になっていることに
着目する。
コサイン級数の直交性を用いて、
1/1^5=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
1/2^5=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
1/3^5=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
・
・
となる。さらに、右辺を部分積分する。f(x)は@であるから、簡単な計算により次となる。
1/1^5=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^4 + sin2x/2^4 + sin3x/3^4 + ・・)・(sinx/1) dx
1/2^5=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^4 + sin2x/2^4 + sin3x/3^4 + ・・)・(sin2x/2) dx
1/3^5=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^4 + sin2x/2^4 + sin3x/3^4 + ・・)・(sin3x/3) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて、
ζ(5)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^4 + sin2x/2^4 + sin3x/3^4 +・・)・(sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + ・・) dx
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^4 + sin2x/2^4 + sin3x/3^4 +・・)・(π/2 - x/2) dx ------A
途中で公式
sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 +・・=π/2 - x/2 (0 <x< 2π)
を用いた。
Aに部分積分を2回行って次を得る。
ζ(5)=(π^2/3)(1-1/2^2)ζ(3)
+ (2/π)∫(0〜π) {(sinx/1^2 + sin2x/2^2 + sin3x/3^2 +・・)}・(x^3/12 - πx^2/4) dx
右辺の後ろの項でさらに部分積分を行って、まとめると結局上式は次のようになる。
ζ(5)=- (π^4/30)・log2 + (π^2/4)・ζ(3) - (1/6)∫(0〜π) (x^3 - x^4/(4π))・log(sin(x/2)) dx ------B
あるいは、積分の箇所を変数変換して、次のようにも表現できる。
ζ(5)=- (π^4/30)・log2 + (π^2/4)・ζ(3) - (8/3)∫(0〜π/2) (x^3 - x^4/(2π))・log(sinx) dx -----C
途中で公式
cosx/1 + cos2x/2 + cos3x/3 + ・・=-log(2sin(x/2)) (0 <x< 2π)
を用いた。(この公式も、例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、岩波書店)を参照)
B、Cの右辺の積分部分は、さらに変形して「偶数ゼータの無限和」にまでもっていくこともできるが、ζ(3)と同様に
このままにしておく。
[終わり]
過程を追うと分かるが、フーリエシステムでは何度も部分積分を行って、既存の公式を使えるようにするところが
ポイントである。
ζ(3)と一緒にまとめる。
ζ(2)=π^2/6であるが、ζ(2)は奇数ゼータのような積分表示で表せるのだろうか。フーリエシステムを応用すると、
ζ(2)の積分表示を導出できたのでそれを示す。
いよいよ、ここからフーリエシステムの本領発揮といえる場面に入っていく。
[ζ(2)の積分表示の導出]
1/(1^2・2) + 1/(2^2・3) + 1/(3^2・4) + 1/(4^2・5) + ・・・ =ζ(2)-1 -----@
という式を利用する。
簡単だが、なぜこうなるかを示す。
1/(1^2・2) + 1/(2^2・3) + 1/(3^2・4) + ・・・
=(1/1^2-1/(1^2・2)) + (1/2^2-2/(2^2・3)) + (1/3^2-3/(3^2・4)) +・・・
=(1/1^2-1/(1・2)) + (1/2^2-1/(2・3)) + (1/3^2-1/(3・4)) +・・・
=(1/1^2 + 1/2^2 + 1/3^2 + ・・・) - {1/(1・2) + 1/(2・3) + 1/(3・4) + ・・}
=ζ(2) - {(1/1-1/2) + (1/2-1/3) + (1/3-1/4) + ・・・・}
=ζ(2) - 1
さて、@の形から関数
f(x)=cosx/(1^2・2) + cos2x/(2^2・3) + cos3x/(3^2・4) + cos4x/(4^2・5) + ・・・ ------A
を考える。
右辺の係数1/(1^2・2),1/(2^2・3) ,1/(3^2・4),・・が@の 1/(1^2・2) + 1/(2^2・3) + 1/(3^2・4) + ・・・の各項になって
いることに着目する。
Aのコサイン級数の直交性を用いて、
1/(1^2・2)=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
1/(2^2・3)=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
1/(3^2・4)=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
・
・
となる。さらに、右辺を部分積分する。f(x)は@であるから、簡単な計算により次となる。
1/(1^2・2)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1・2) + sin2x/(2・3) + sin3x/(3・4) + ・・)・(sinx/1) dx
1/(2^2・3)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1・2) + sin2x/(2・3) + sin3x/(3・4) + ・・)・(sin2x/2) dx
1/(3^2・4)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1・2) + sin2x/(2・3) + sin3x/(3・4) + ・・)・(sin3x/3) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて(左辺は@より)、
ζ(2)-1
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1・2) + sin2x/(2・3) + sin3x/(3・4) + ・・)・(sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + ・・) dx
=(2/π)∫(0〜π){(π-x)・(sin(x/2))^2-sinx・log(2sin(x/2))}・(π/2 - x/2) dx ------B
途中で公式
sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 +・・=π/2 - x/2 (0 <x< 2π)
sinx/(1・2) + sin2x/(2・3) + sin3x/(3・4) + ・・=(π-x)・(sin(x/2))^2-sinx・log(2sin(x/2)) (0 <=x<= 2π) -----C
を用いた。
Bより、形を整えて
ζ(2)=1 + (1/π)∫(0〜π){(π-x)^2・(sin(x/2))^2 - (π-x)sinx・log(2sin(x/2))}dx ------D
ζ(2)の積分表示が求まった。
最初に@の形を考えたことが、導出の過程で有効に効いていることを確認されたい。つまり、@をわざわざはじめに
考えたのは、Cのフーリエ級数を利用できるからである。
[終わり]
Dの右辺は、もちろんπ^2/6に一致する。(フリーの計算ソフトBearGraphで検証済み。)
「タットル彗星 その3」で偶数ゼータζ(2n)を「偶数ゼータの無限和」で表すことに成功したが、Dの積分表示はその
事実に対応していると考えられる。なぜなら、∫の中のlog(2sin(x/2)が「偶数ゼータの無限和」で表現されるものだから
である。例えば、「ゼータ関数のいくつかの点について」の「その4」を参照。
log(πx/sinπx)= 2{1/2・ζ(2) x^2+ 1/4・ζ(4)x^4 + 1/6・ζ(6)x^6 + ・・・ } ( 0 < |x| < 1 )
ここではAのCos級数を出発点として求めた。ではSin級数では同様に求まるのだろうか?
答えは、Yesである。次に、それを求める。
Sin級数からζ(2)の積分表示を導出する。
[ζ(2)の積分表示の導出]
1/(1^2・2) + 1/(2^2・3) + 1/(3^2・4) + 1/(4^2・5) + ・・・ ------@
=ζ(2)-1
という変形を利用する。(なぜこうなるかは一つ上を参照)
@の形に着目して母関数
f(x)=sinx/(1^2・2) + sin2x/(2^2・3) + sin3x/(3^2・4) + sin4x/(4^2・5) + ・・・ ------A
を考える。
サイン級数の直交性を用いて、
1/(1^2・2)=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sinx dx
1/(2^2・3)=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sin2x dx
1/(3^2・4)=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sin3x dx
・
・
となる。さらに右辺を部分積分する。f(x)は@であるから、簡単な計算により次となる。
1/(1^2・2)=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1・2) + cos2x/(2・3) + cos3x/(3・4) + ・・)・(cosx/1) dx
1/(2^2・3)=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1・2) + cos2x/(2・3) + cos3x/(3・4) + ・・)・(cos2x/2) dx
1/(3^2・4)=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1・2) + cos2x/(2・3) + cos3x/(3・4) + ・・)・(cos3x/3) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて、
1/(1^2・2) + 1/(2^2・3) + 1/(3^2・4) + 1/(4^2・5) + ・・・
=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1・2) + cos2x/(2・3) + cos3x/(3・4) + ・・)・(cosx/1 + cos2x/2 + cos3x/3 + ・・) dx
=(2/π)∫(0〜π){1 - ((π-x)・sinx)/2 - 2(sin(x/2))^2・log(2sin(x/2))}・(-log(2sin(x/2))) dx
=(2/π)∫(0〜π){-1 + ((π-x)・sinx)/2 + 2(sin(x/2))^2・log(2sin(x/2))}・log(2sin(x/2)) dx ------B
途中で公式
cosx/1 + cos2x/2 + cos3x/3 + ・・=-log(2sin(x/2)) (0 <x< 2π)
cosx/(1・2) + cos2x/(2・3) + cos3x/(3・4) + ・・=1 - ((π-x)・sinx)/2 - 2(sin(x/2))^2・log(2sin(x/2)) (0 <=x<= 2π)
を用いた。
@とBより結局
ζ(2)-1=(2/π)∫(0〜π){-1 + ((π-x)・sinx)/2 + 2(sin(x/2))^2・log(2sin(x/2))}・log(2sin(x/2)) dx
である。
形を整えて、
ζ(2)=1 + (1/π)∫(0〜π){-2 + (π-x)・sinx + (2sin(x/2))^2・log(2sin(x/2))}・log(2sin(x/2)) dx ------C
ζ(2)の積分表示が求まった。
[終わり]
このようにSin級数からも、また異なった表示としてζ(2)が導出された。
Cの右辺は、もちろんπ^2/6に一致する。(フリーの計算ソフトBearGraphで数値計算的にも検証済み。)
Cos級数での結果と合わせてまとめておく。
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