ζ(2)、ζ(3)の値を新手法フーリエシステムを用いて求めた。
テイラーシステムとは異なる、フーリエ級数を用いる方法でゼータ関数の特殊値を求めたので紹介したい。
フーリエ級数を用いる方法はいくつか知られているが、今回従来手法とは異なった経路をたどってζ(s)値を求めること
ができたのでその方法を示す。次の母関数から出発するのは、テイラーシステムと同じである。
f(x)=cosx/1^s + cos2x/2^s + cos3x/3^s + cos4x/4^s + ・・・
または
f(x)=sinx/1^s + sin2x/2^s + sin3x/3^s + sin4x/4^s + ・・・
これらはフーリエ級数の形をとっている。私は、かなり前から「フーリエ級数なのだからフーリエ級数の理論を用いて
面白いことが出るのではないか?」と漠然と思っていたのだが、今回、研究して興味ある方法を発見できた。
フーリエシステムと名づけたい。簡単に奇数ゼータ値が求まり、応用性が広い。
早速リーマン・ゼータζ(s)値を求めたいが、まずはζ(2)から行う。手法の簡潔さを味わっていただきたい。
ζ(2)を求める。まずはこの具体例でフーリエシステムの典型的な形をみていただきたい。
[ζ(2)導出]
母関数
f(x)=cosx/1^2 + cos2x/2^2 + cos3x/3^2 + cos4x/4^2 + ・・・ ------@
を用いる。右辺の係数1/1^2,1/2^2,1/3^2,・・がζ(2)=1/1^2 + 1/2^2 + 1/3^2 + ・・の各項になっていることに
着目する。
フーリエ級数の直交性を用いて、
1/1^2=(1/π)∫(-π〜π) f(x)・cosx dx
1/2^2=(1/π)∫(-π〜π) f(x)・cos2x dx
1/3^2=(1/π)∫(-π〜π) f(x)・cos3x dx
・
・
となることは容易にわかる。
f(x)はコサイン級数だからその性質を用いて右辺は次のように書き換えられる。
1/1^2=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
1/2^2=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
1/3^2=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
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さらに、右辺を部分積分する。f(x)は@であるから、簡単な計算から次となる。
1/1^2=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + ・・)・(sinx/1) dx
1/2^2=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + ・・)・(sin2x/2) dx
1/3^2=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + ・・)・(sin3x/3) dx
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これらを縦に足し合わせて、
ζ(2)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 +・・)・(sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + ・・) dx
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 +・・)^2 dx ------A
ここで公式
sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 +・・=π/2 - x/2 (0 <x< 2π) ------B
を用いるとAは次のようになる。(この公式は、例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、岩波書店)p.71を参照)
ζ(2)=(2/π)∫(0〜π) (π/2 - x/2)^2 dx ------C
右辺を計算して、
ζ(2)=π^2/6
と出る。
[終わり]
次に、ζ(3)を導出する。
いよいよζ(3)を求める。
[ζ(3)導出]
母関数
f(x)=cosx/1^3 + cos2x/2^3 + cos3x/3^3 + cos4x/4^3 + ・・・ ------@
を用いる。右辺の係数1/1^3,1/2^3,1/3^3,・・がζ(2)=1/1^3 + 1/2^3 + 1/3^3 + ・・の各項になっていることに
着目する。
コサイン級数の直交性を用いて、
1/1^3=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
1/2^3=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
1/3^3=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
・
・
となる。さらに、右辺を部分積分する。f(x)は@であるから、簡単な計算により次となる。
1/1^3=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^2 + sin2x/2^2 + sin3x/3^2 + ・・)・(sinx/1) dx
1/2^3=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^2 + sin2x/2^2 + sin3x/3^2 + ・・)・(sin2x/2) dx
1/3^3=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^2 + sin2x/2^2 + sin3x/3^2 + ・・)・(sin3x/3) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて、
ζ(3)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^2 + sin2x/2^2 + sin3x/3^2 +・・)・(sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + ・・) dx
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^2 + sin2x/2^2 + sin3x/3^2 +・・)・(π/2 - x/2) dx ------A
途中で公式
sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 +・・=π/2 - x/2 (0 <x< 2π) ------B
を用いた。
Aに再度、部分積分を適用する。簡単な計算により、
ζ(3)=(2/π)∫(0〜π) {-(cosx/1 + cos2x/2 + cos3x/3 +・・)}・(πx/2 - x^2/4) dx
=(2/π)∫(0〜π) log(2sin(x/2))・(πx/2 - x^2/4) dx
=∫(0〜π) (x - x^2/(2π))・log(2sin(x/2)) dx ------D
途中で公式
cosx/1 + cos2x/2 + cos3x/3 + ・・=-log(2sin(x/2)) (0 <x< 2π) ------E
を用いた。(この公式は、例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、岩波書店)p.71を参照)
Dを計算して、
ζ(3)=(π^2/3)・log2 + ∫(0〜π) (x - x^2/(2π))・log(sin(x/2)) dx ------F
となる。あるいは、積分部分を変数変換すると次のようにも表現できる。
ζ(3)=(π^2/3)・log2 + 4∫(0〜π/2) (x - x^2/π)・log(sinx) dx ------G
ζ(3)が求まった。
右辺の積分部分は、さらに変形して「偶数ゼータの無限和」にまでもっていくこともできるが、それは
「ゼータ関数のいくつかの点について」他で十分にやりつくしているし、それほど本質的なことでもないので、
このままにしておく。
[終わり]
このようにζ(3)が求まった。今回は途中でBとEの二つの公式を用いた。(ζ(2)ではBのみであった)
オイラー(1707-1783)は、ζ(3)の式として、
ζ(3)=(2π^2/7)・log2 + (16/7)∫(0〜π/2) x・log(sinx) dx
を出している。FやGと比べていただきたい。
さて、フーリエシステムでζ(2)、ζ(3)を出したわけだが、どのように感じられたであろうか。
テイラーシステムとフーリエシステム、どちらもゼータの値を求める手法だが、両者を比較してみたい。
●テイラーシステムは、任意のsのζ(s)値(のみならず任意のL(χ,s)値)を求めることができるという卓越した働きをもつ。
一方のフーリエシステムは整数点sの値しか求まらないのではないか(現時点では)、と思われる。
●テイラーシステムでは、途中でゼータの関数等式を用いる。一方、フーリエシステムは途中でフーリエ級数(公式)を
用いる。
●テイラーシステムは微分の方向である。フーリエシステムは積分の方向である。
●どちらのシステムも
f(x)=cosx/1^s + cos2x/2^s + cos3x/3^s + cos4x/4^s + ・・・
または
f(x)=sinx/1^s + sin2x/2^s + sin3x/3^s + sin4x/4^s + ・・・
の母関数を用いる点で共通している。出発点は同じである。(下方の母関数も後ほど登場する)
以上。
現時点で、気づいた点を述べた。
フーリエシステムははじめたばかりであり、今後どのようなことが飛び出すかわからない。
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