Sin-L(s)母関数テイラーシステムで、3π/4代入を行うことで、L1(7)、L1(5)、L1(3)、L1(1)を導出した。
L1(1)とディリクレの類数公式の値を比較。L1(8)、L1(6)、L1(4)、L1(2)を導出した。
< L1(s)をL(s)で表現する >
< まとめ >
「その3」では、
f(x)=(sinx)/1^s - (sin3x)/3^s + (sin5x)/5^s - (sin7x)/7^s +・・・ -----@
のSin-L(s)母関数を考え、2π/3代入を行ってLB(s)ゼータが出た。
「その4」は、
f(x)=(cosx)/1^s - (cos3x)/3^s + (cos5x)/5^s - (cos7x)/7^s +・・・ -----A
のCos-L(s)母関数を考え、2π/3代入を行ってL(s)ゼータが出た。
この「その6」では@のSin-L(s)母関数に3π/4代入を行うとどうなるかを調べる。
結論から述べると、L1(s)ゼータが出現する。L1(s)ゼータがL(s)ゼータで表現されることになる。
L1(s)ゼータとは次のものである。
L1(s)=(1 - 1/3^s - 1/5^s + 1/7^s ) + (1/9^s - 1/11^s - 1/13^s + 1/15^s ) + ・・・
L1(s)ゼータも、ディリクレのL関数L(χ,s)の特別な場合である。
ディリクレのL関数L(χ,s)は
L(χ,s)=χ(1)/1^s + χ(2)/2^s + χ(3)/3^s + χ(4)/4^s + χ(5)/5^s + χ(6)/6^s + ・・・・
で定義される一般的なゼータである。L1(s)ゼータは、
「a≡1 or 7 mod 8-->χ(a)=1、 a≡3 or 5 mod 8 -->χ(a)=-1、 それ以外のaではχ(a)=0」というχ(a)をもつ。
L1(s)は実2次体Q(√2)に対応する。
またL(s)は
L(s)=1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + ・・・
というゼータ関数であり、虚2次体Q(√-1)に対応する。
まず現代数学で不明とされるL1(7)、L1(5)、L1(3)、L1(1)を求めていく。
まずL1(7)から。
[L1(7)導出] Sin-L(s)型[ s=7, 3π/4代入,πテイラー]
f(x)=(sinx)/1^7 - (sin3x)/3^7 + (sin5x)/5^7 - (sin7x)/7^7 +・・・ ------@
という母関数を考える。
@でx=3π/4を代入すると
f(3π/4)=(1/√2)/1^7 - (1/√2)/3^7 + (-1/√2)/5^7 - (-1/√2)/7^7 + (1/√2)/9^7 - (1/√2)/11^7
+ (-1/√2)/13^7 - (-1/√2)/15^7 + (1/√2)/17^7 - (1/√2)/19^7 + (-1/√2)/21^7 - (-1/√2)/23^7 +・・・
=(-1/√2){1/1^7 + 2/3^7 + 1/5^7 - 1/7^7 - 2/9^7 - 1/11^7
+ 1/13^7 + 2/15^7 + 1/17^7 - 1/19^7 - 2/21^7 - 1/23^7 + ・・・}
=(1/√2){(1/1^7 - 1/3^7 - 1/5^7 + 1/7^7) + (1/9^7 - 1/11^7 - 1/13^7 + 1/15^7)
+ (1/17^7 - 1/19^7 - 1/21^7 + 1/23^7) + ・・・) }
=L1(7)/√2 ----------A
となりL1(7)が出現した。
次に、@の右辺をx=πの周りでテイラー展開すると、簡単な計算により次となる。
f(x)=-L(6)・(x-π)^1 /1! + L(4)・(x-π)^3 /3!
- L(2)・(x-π)^5 /5!+ L(0)・(x-π)^7 /7!
- L(-2)・(x-π)^9 /9!+ L(-4)・(x-π)^11 /11!
- L(-6)・(x-π)^13 /13!+ L(-8)・(x-π)^15 /15! -------B
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、ここでL(s)の関数等式
L(1-s)=π^(-s)・2^s・Γ(s)・sin(πs/2)・L(s)
を利用するとL(-2),L(-4),L(-6),・・は、
L(-2)=-2!・(2/π)^3・L(3)
L(-4)=4!・(2/π)^5・L(5)
L(-6)=-6!・(2/π)^7・L(7)
L(-8)=8!・(2/π)^9・L(9)
L(-10)=-10!・(2/π)^11・L(11)
・
・
となるから、Bは次のように書き換えられる。
f(x)=-L(6)・(x-π)^1 /1! + L(4)・(x-π)^3 /3!- L(2)・(x-π)^5 /5!+ L(0)・(x-π)^7 /7!
+ 2!(2/π)^3L(3)・(x-π)^9 /9!+ 4!(2/π)^5L(5)・(x-π)^11 /11!
+ 6!(2/π)^7L(7)・(x-π)^13 /13!+ 8!(2/π)^9L(9)・(x-π)^15 /15!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
xに3π/4を代入して、次のようになる。
f(3π/4x)
=-L(6)・(π/4)^1 /1! + L(4)・(π/4)^3 /3!+ L(2)・(π/4)^5 /5!- L(0)・(π/4)^7 /7!
- 2!(2/π)^3L(3)・(π/4)^9 /9!- 4!(2/π)^5L(5)・(π/4)^11 /11!
- 6!(2/π)^7L(7)・(π/4)^13 /13!- 8!(2/π)^9L(9)・(π/4)^15 /15!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
整理すると、次のようになる。
f(3π/4x)
=-L(6)・(π/4)^1 /1! + L(4)・(π/4)^3 /3!+ L(2)・(π/4)^5 /5!- L(0)・(π/4)^7 /7!
- (π/2)^6・{(2!/9!)(1/2)^9・L(3) + (4!/11!)(1/2)^11・L(5)
+ (6!/13!)(1/2)^13・L(7) + (8!/15!)(1/2)^15・L(9)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ } ------C
AとCは等しいから、
L1(7)/√2=L(6)・(π/4)^1 /1! - L(4)・(π/4)^3 /3!+ L(2)・(π/4)^5 /5!- L(0)・(π/4)^7 /7!
- (π/2)^6・{(2!/9!)(1/2)^9・L(3) + (4!/11!)(1/2)^11・L(5)
+ (6!/13!)(1/2)^13・L(7) + (8!/15!)(1/2)^15・L(9)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ } ----D
L1(7)が、L(6)、L(4)、L(2)、L(0)と、L(2n+1)無限和で表現できた。
念のため、検証しておこう。Excelでの数値計算よりL1(7)=0.999531316・・より(4千項、これで十分)、
Dの左辺=(1/√2)L1(7)=0.70677537・・ ------E
となるから、これが目標である。
右辺では、
Dの右辺1項まで=0.78436553・・・
Dの右辺3項まで=0.70679382・・・
Dの右辺5項まで=0.70677537・・・
このように急激な速度でEに収束していく。
以上。
同様にしてL1(5)、L1(3)、L1(1)を求めると次のようになる。これらも収束は速い。
L1(5)/√2=L(4)・(π/4)^1 /1! - L(2)・(π/4)^3 /3!+ L(0)・(π/4)^5 /5!
+ (π/2)^4・{(2!/7!)(1/2)^7・L(3) + (4!/9!)(1/2)^9・L(5)
+ (6!/11!)(1/2)^11・L(7) + (8!/13!)(1/2)^13・L(9)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ }
L1(3)/√2=L(2)・(π/4)^1 /1!- L(0)・(π/4)^3 /3!
- (π/2)^2・{(2!/5!)(1/2)^5・L(3) + (4!/7!)(1/2)^7・L(5)
+ (6!/9!)(1/2)^9・L(7) + (8!/11!)(1/2)^11・L(9)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ }
L1(1)/√2=L(0)・(π/4)^1 /1!
+ (π/2)^0・{(2!/3!)(1/2)^3・L(3) + (4!/5!)(1/2)^5・L(5)
+ (6!/7!)(1/2)^7・L(7) + (8!/11!)(1/2)^11・L(9)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ }
以上をまとめておく。
上でL1(1)が求まったが、じつはこれはディリクレの類数公式からも導出できる。それを使えばディリクレのL関数L(χ,s)
のs=1の値、L(χ,1)を導出できるのである。本ページのL1(s)ゼータの場合は、L1(1)が求まることになる。
「ロニオス彗星 その3」でも見たが、類数公式を再度示すと次のようになる。
***************************
実2次体と虚2次体にはそれぞれ「ディリクレの類数公式」というものがあり、2次体Q(√m)とL(χ,s)の関係において
重要である。Kを2次体とすると、次が成り立つ。
Kが実2次体なら、---> L(χ,1)=h・logε・2/√N ------A
Kが虚2次体なら、---> L(χ,1)=h・2π/(w√N) ------B
これらをディリクレの類数公式という。
ここで h はKの類数、L(χ,1)はKに対応したL(χ,s)のs=1での特殊値。ε は実2次体Kの基本単数であり、w はKに
含まれる1のべき根の個数。N は Kの導手でありこれは「ゼータ惑星」でもよく出てきた。
類数や単数の意味については、数学書や雑誌「数学のたのしみ No.17」で加藤和也さんの解説を参考にされたい。
****************************
さて、冒頭でも述べたが、L1(s)ゼータは実2次体Q(√2)に対応するゼータ関数である。
実2次体Q(√2)の類数hは1であり、導手Nは8であり、そして基本単数εは(√2+1)であることが現代数学でわかって
いる。つまり、h=1、N=8、ε=√2+1であるので、Aより
L1(1)=1・log(√2+1)・2/√8=log(√2+1)/√2
となる。すなわち次となる。
L1(1)=log(√2+1)/√2 ------@
さて、一つ上で次式を導出していた。
L1(1)/√2=L(0)・(π/4)^1 /1!
+ (π/2)^0・{(2!/3!)(1/2)^3・L(3) + (4!/5!)(1/2)^5・L(5)
+ (6!/7!)(1/2)^7・L(7) + (8!/11!)(1/2)^11・L(9)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ } ----A
@、Aより次を得る。(π/2)^0・=1とした。
log(√2+1)/2=L(0)・(π/4)^1 /1!
+ {(2!/3!)(1/2)^3・L(3) + (4!/5!)(1/2)^5・L(5)
+ (6!/7!)(1/2)^7・L(7) + (8!/11!)(1/2)^11・L(9)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ }
ここでlogはもちろん自然対数である。
テイラーシステムと類数公式を結びつけることで面白い式が得られたわけである。
まとめておく。
余談だがワイルスが1994年に350年間の未解決問題であったフェルマー予想を解決(1994年)したが、じつは
その証明にもこの類数公式は関係している。
L(χ,s)とは別種のゼータ関数を考察し、フェルマー予想をディリクレの類数公式の発展版を証明するという形に帰着して、
難攻不落の予想を解いたのであった。
その辺の状況は、当サイトで何度も登場する
「解決!フェルマーの最終定理」(加藤和也著、日本評論社)
にくわしく述べられている。現代数学の最高レベルが解説されているだけあって、私は半分も理解できないのだが、
加藤和也さんの日本昔話などをまじえたわかりやすい解説、きれいな日本語、独特の語りですばらしいものとなって
いる。美しいとしかいいようのない書物である。ぜひ手にとっていただきたい。
次にL1(2)、L1(4)、L1(6)、L1(8)を求める。
まずL1(6)から。
[L1(6)導出] Sin-L(s)型[ s=6, 3π/4代入,πテイラー]
f(x)=(sinx)/1^6 - (sin3x)/3^6 + (sin5x)/5^6 - (sin7x)/7^6 +・・・ ------@
という母関数を考える。
@でx=3π/4を代入すると
f(3π/4)=(1/√2)/1^6 - (1/√2)/3^6 + (-1/√2)/5^6 - (-1/√2)/7^6 + (1/√2)/9^6 - (1/√2)/11^6
+ (-1/√2)/13^6 - (-1/√2)/15^6 + (1/√2)/17^6 - (1/√2)/19^6 + (-1/√2)/21^6 - (-1/√2)/23^6 +・・・
=(-1/√2){1/1^6 + 2/3^6 + 1/5^6 - 1/7^6 - 2/9^6 - 1/11^6
+ 1/13^6 + 2/15^6 + 1/17^6 - 1/19^6 - 2/21^6 - 1/23^6 + ・・・}
=(1/√2){(1/1^6 - 1/3^6 - 1/5^6 + 1/7^6) + (1/9^6 - 1/11^6 - 1/13^6 + 1/15^6)
+ (1/17^6 - 1/19^6 - 1/21^6 + 1/23^6) + ・・・) }
=L1(6)/√2 ----------A
となりL1(6)が出現した。
次に、@の右辺をx=πの周りでテイラー展開すると、簡単な計算により次となる。
f(x)=-L(5)・(x-π)^1 /1! + L(3)・(x-π)^3 /3!
- L(1)・(x-π)^5 /5!+ L(-1)・(x-π)^7 /7!
- L(-3)・(x-π)^9 /9!+ L(-5)・(x-π)^11 /11!
- L(-7)・(x-π)^13 /13!+ L(-9)・(x-π)^15 /15! -------B
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、ここでL(-1)、L(-3)、L(-5)、・・は全て0であるから、Bは次のように書き換えられる。
f(x)=-L(5)・(x-π)^1 /1! + L(3)・(x-π)^3 /3! - L(1)・(x-π)^5 /5!
xに3π/4を代入して、次のようになる。
f(3π/4x)
=L(5)・(π/4)^1 /1! - L(3)・(π/4)^3 /3! + L(1)・(π/4)^5 /5! ------C
AとCは等しいから、
L1(6)/√2 =L(5)・(π/4)^1 /1! - L(3)・(π/4)^3 /3! + L(1)・(π/4)^5 /5! ------D
L1(6)が、L(5)、L(3)、L(1)で表現できた。
ここでL(s)はもちろん
L(s)=1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + ・・・
というゼータ関数である。
念のため、検証しておこう。Excelでの数値計算よりL1(6)=0.9985739720・・より(4千項、これで十分)、
Dの左辺=(1/√2)L1(6)=0.706098427・・ ------E
となる。
ここで、L(5)=5π^5/1536、L(3)=π^3/32、L(1)=π/4である。Dにこれらを代入すると、Eに一致する。
OKである。
以上。
同様にしてL1(8)、L1(4)、L1(2)を求めると次のようになる。Dを含めて書く。
L1(8)/√2=L(7)・(π/4)^1 /1! - L(5)・(π/4)^3 /3!+ L(3)・(π/4)^5 /5!- L(1)・(π/4)^7 /7!
L1(6)/√2=L(5)・(π/4)^1 /1! - L(3)・(π/4)^3 /3!+ L(1)・(π/4)^5 /5!
L1(4)/√2=L(3)・(π/4)^1 /1!- L(1)・(π/4)^3 /3!
L1(2)/√2=L(1)・(π/4)^1 /1!
ここでL(1)=π/4であるから、例えば、一番下の式より、
L1(2)=√2π^2/16
とわかる。すなわち、
(1 - 1/3^2 - 1/5^2 + 1/7^2 ) + (1/9^2 - 1/11^2 - 1/13^2 + 1/15^2 ) + ・・・=√2π^2/16
とわかる。
以上をまとめておく。
この規則性で、いくらでも上のL1(10)、L1(12)、L1(14)・・・を機械的に導いていくことができる。
本頁のL1(1)〜L1(8)をまとめて書いておく。
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