とうとう冥王星までやってきました。太陽系の果てまで長い旅をしてきたものです。「クロネッカーの青春の夢」ならぬ
「私の夢」という問題をだします。ゼータの卵ζ(0),L(0)から、ゼータ関数が発生する不思議な現象について言及しま
した。
ゼータ惑星をたびする内にある予想問題が生じてきましたので、それを述べます。
予想とするにはかなり抽象的ですので、「クロネッカーの青春の夢」にちなんで「私の見果てぬ夢」とつけました。
まず、なにはともあれ「ゼータ惑星」で到達した最も重要な予想L-4を書いておきます。いつもこれが中心です。
上に関して色々なことを考えているうちに、あることを思い描くようになってきました。
その”あること”は昨年の5月にある人にメールで示唆していたものですが、それを書いてみます。
******私のメール******************************************************************
壮大すぎて、ちょっと恥ずかしいですが、その予想を述べます。
ディリクレのL関数L(χ,s)は一次のゼータ関数です。 そして、例の中心母等式から、たくさんL(χ,s)特殊値が湧き出してきました。 さて、 ラマヌジャンのゼータは2次のゼータ関数です。 このゼータ特殊値が湧き出してきくる、三角関数の中心母等式があるんじゃないか? という予想です。 ラマヌジャンの2次ゼータは保型形式のものに属するはずですが、一般の保型形式の
たくさんの2次のゼータが様々なmπ/nを代入してある三角関数の中心母等式を重回積分して、
どんどん出てくるのではないか?
それがどんな式はわかりませんが、いま考察しているのと類似の(初等的な)三角関数の
式があるはずと思います。
そして、保型形式のゼータは、さらに3次、4次、・・とあるようですが、それぞれに対応する中心
母等式というものが存在して、重回積分してmπ/n代入することで、3次なら3次でたくさん
のゼータが、4次なら4次でのたくさんのぜータが・・と次々と出てくるのはないか?
と思うのです。 谷山・志村予想は、すべての楕円曲線にはモジュラー形式(保型形式)のゼータが付随する、
というものですが、上の予想は、すべての保型形式のゼータには、それぞれ固有の三角関数の
中心母等式が付随する、というものです。
これはある意味で、三角関数の中心母等式と楕円曲線までが一本の線でつながっている
のではないかという予想でもあります。
私は、専門知識がないので全く見当ちがいの可能性もありますが、なんとなくそんな気がする
のです。
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註:少し修正した箇所があります。
これはまだ上の予想L−4に到達する前のもので、やや茫漠としていますが、「海王星 その10」の
「保型形式との関連 その2」のことを考えるにつけ、ますます「やはりそうなのではないか・・」という
想いがつよまってきました。
上のメールの内容をもう少し述べます。
ディリクレのL関数L(χ,s)は1次の保型形式にともなうゼータ関数です。L(χ,s)は1次のゼータですので、
つまり「1次のゼータには、ある1次の保型形式が付随する」ということです。
そして、加藤和也さんの「解決!フェルマーの最終定理」(日本評論社)によれば、「2次のゼータには、
ある2次の保型形式が付随する。また3次のゼータには、ある3次の保型形式が付随する。そしてまた・・」と
えんえんと「n次のゼータがn次の保型形式に対応づけられる」ということです。
一般に、上半平面上の保型形式f(z)は、
f(z)=ΣAn・e^(2πinx) -------B
(n=0〜∞)
と定義されます(じつはf(z)にはある保型性を満たす条件があるのですが略します)。
そして、このf(z)に対応するゼータ関数をBのL(f,s)とおいて、これをその保型形式fのゼータ関数
と呼びます。
L(f,s)=ΣAn・n^(-s) ------B
(n=1〜∞)
加藤さんの本には、2次の楕円曲線のゼータ関数などが中心にのっていますが、1次の保型形式も3次の
保型形式も、4次も・・・おそらく@の形に似たものにちがいない。
とすると、「保型形式との関連 その2」でも考察したように、冒頭の予想L−4の中心母等式などとBが密接に
関係しているということです。
これは複素平面上のBの裏には、実平面上の@やAの類のフーリエ展開式が厳として控えているということです。
よって、これを拡大して解釈すれば、どんな保型形式の式にももっと素朴な実平面内で定義されるフーリエ展開
式(sin級数とcos級数で2種類?)が控えているにちがいない。
Bのような保型形式の式は、もっと簡単な(実平面内の)二つの中心母等式に還元して考えることができるはず
という壮大な予想が成り立つのです。
そして、ここまでくれば、予想L−4の類似からその二つの中心母等式を重回積分-重回微分という初等的な
方法を用いることで、現代数学で全く未解明の特殊値が自然に求められるのではないか?
それのみならず、予想L-4の類似予想がすべての保型形式でも成り立つのでないか?
と思われてくる。
予想L-4は、すべての保型形式の原型的なものとなっている可能性があるのです。
このことはメールの最後で述べたことにもつながります。
加藤和也さんによれば、方程式のゼータ関数が現代数学でもっともよくわからない難しいものなのだそうです
が、その難解な方程式のゼータが、もっとやさしい保型形式のゼータと一致しているはずだ!というのがラング
ランズ哲学です。
結局、ここで言いたいのは代数的な方程式ゼータが、保型形式をとびこえて実平面内の超初等的なフーリエ
展開式にまで還元されてしまう、という驚くべきことが成り立っているのではないかということです。
読者のみなさんは、どう思われるでしょうか?
参考までに述べますと、現代数論で非常に重要なラングランズ哲学は、
「代数的な方程式のゼータ関数が、解析的な保型形式のゼータ関数に一致するはずだ」という哲学です。
ワイルスがおおきな部分を解決した谷山・志村予想は
「有理数体上の楕円曲線のゼータ関数は、上半平面上の重み2のある保型形式のゼータ関数である」
という予想ですから、これはラングランズ哲学の中に含まれる予想となっています。
難しい楕円曲線の方程式のゼータがもっと簡単な保型形式のゼータでとりおさえられるという予想なのです。
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----@ (0 < x < 2π)
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -------A
(0 < x < 2π)
@、Aはシンプルそのものであり、これ以上さらに変形しようとは普通は思わないでしょう。
しかし、私は、Aはゼータの心で見れば、次のようになっているに違いないと以前より思っていました。
(リーマン・ゼータ関数のs=0での特殊値ζ(0)は、ζ(0)=-1/2ですから)
ζ(0)=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -------B
これが真の姿なのではないか・・。
これまでゼータの「美と調和」を好む性質を多く体験してきたため、きっとそうなのだと直感されます。
そして、これがそうなら、@も次のようになっているのかもしれないと思えてきました。
@は次のように変形できますので、
(1/2)・cos(x/2)/sin(x/2)=sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・
よって、
L(0)・cos(L(0)x)/sin(L(0)x)=sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・ ------C
こうではないのか?と、こちらはかなりばくぜんと想っていました。
(L(s)の特殊値L(0)は、L(0)=1/2ですから)
少しくわしく述べますと、ζ(s)もL(s)もどちらもディリクレのL関数L(χ,s)の一種のゼータ関数です。
ζ(s)は、全てのaに対しディリクレ指標χ(a)をχ(a)=1としたときのL(χ,s)に一致します。 L(s)は、a≡0, 1, 2, 3 mod 4に対しそれぞれχ(a)=0, 1, 0, -1としたときのL(χ,s)となります。 B、Cは茫漠としていて、そうなんだろうか・・と根拠もなく考えていただけでした。
昨晩、風呂にはいりながら、つらつら考えているとある秩序に関して少し確信めいたものがひらめきました。
そして、風呂からあがり、2次体Q(√m)とζ(s)とL(s)の関係をしらべてみました。
「やはりそうなのだ・・、BとCが真の姿なのだ」と確信に変りました。
これまでのあいまいな状態が、根拠が見つかったために確信に変貌したということです。
その根拠とは次のようなものでした。
冒頭で示した予想L-4は、L(χ,s)の全ての特殊値を正確に算出するとともに、2次体Q(√m)との関連を予言し
ます。予想L−4より、次のことが言えるのです。
[A]
ζ(s)は実2次体Q(√1)に対応する。
L(s)は虚2次体Q(√-1)に対応する。
じつは現実には2次体Q(√1)というのは存在しないものです。√1=1ですから、Q(√1)=Q(1)となって、通常の
有理数体に一致してしまうからです。しかし、ゼータの心で見ると、「人間世界ではたまたま√1=1となってしまって
2次体にならないだけであり、ゼータは2次体Q(√1)を一生懸命構成しようとしているのだ」との見方が成り立つと考え
られます。
ちなみに、L(s)は・・の方はちゃんと現実でも成り立っています。
上の[A]はじつに素晴らしい対称性を示している。
Q(√-1)は虚2次体Q(√m)で|m|が最小のものであり、また仮想のQ(√1)は実2次体Q(√m)で|m|が最小の
ものです。
そのことに着目するとQ(√-1)は虚2次体の中でも特別なもの、Q(√1)は実2次体の中で特別なものと考え
られるのではないか。そして、いまQ(√-1)にL(s)が、Q(√1)にはζ(s)が対応している事実に注目したい。
すなわち、予想L-4をつきつめて考えれば、
[B]
L(s)は虚2次体の根本的なことに関わっている
ζ(s)は実2次体の根本的なことに関わっている
ということを主張していると考えられるのです。
B、Cをもう一度書きましょう。
ζ(0)=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -------B
L(0)・cos(L(0)x)/sin(L(0)x)=sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・ ------C
これは、「ζ(0)がコサイン級数を生み出し、L(0)がサイン級数を生み出している」と読みとれるように思えます。
さて、また別に、予想L-4は次の驚くべきことを主張している。
[C]
実2次体はコサイン級数より生み出される。
虚2次体はサイン級数より生み出される。
これは予想L-4の後半の部分ですが、例えば、@(B)の右辺を偶数回だけ微分or積分をしたり、またA(C)
の辺を奇数回だけ微分or積分をするとコサイン級数が出ますよね。それらはみんな実2次体に関係しているのだ!
ということを言っているのです。
「@とAは、じつはBとCなんだ!」と考えると、じつにつじつまが合うということなのです。
Bではゼータの卵ζ(0)から、すべての実2次体ゼータの元であるコサイン級数が生まれている。
Cではゼータの卵L(0)から、すべての虚2次体ゼータの元であるサイン級数が生まれている。
こんな信じられないような事実を表している。虚と実で見事な対称性が成り立っているのです。
[B]と[C]を考えると(これが先に述べた根拠)、@とAはじつはBとCなのだとしか私には思えない。
それにしてもゼータの調和を好む性質はいったいどこまで究極的なのか、その凄さに唖然としますが。
2次体に関する様々なL(χ,s)ゼータがζ(0)とL(0)という卵から生まれてくる・・
ゼータはやはり命をもった生命体でした。
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