■独立行政法人 水産庁総合研究センター 漁業調査船「若鷹丸」
■画像のカテゴリ:水産庁総合研究センター 漁業調査船
■撮影日時:2010.04.13
■撮影場所:横浜港 横浜港シンボルタワー
主要寸法 |
船舶番号 |
132240 |
信号符号 |
JQIX |
長さ(全長) |
57.73m |
長さ(垂線間) |
50.60m |
幅(型) |
11.00m |
深さ(型)上甲板 |
4.50m |
深さ(型)船楼甲板 |
6.85m |
満載喫水 |
4.456m |
総トン数 |
692トン |
乗組員 |
士官 |
6名 |
部員 |
12名 |
調査員 |
8名 |
その他 |
3名 |
合計 |
29名 |
容積 |
標本冷凍庫 |
20立方m |
燃料油槽 |
209立方m |
飲料水槽 |
60立方m |
雑用清水槽 |
30立方m |
脚荷水槽 |
110立方m |
主機関及び発電装置 |
主機関 |
ヤンマーT240-2 1,000PS×715rpm×2台 |
減速機 |
新潟コンバーターMRGCP220 ×1台 |
推進器 |
テクノナカシマXS-76/86 4翼CPP ×1台 |
発電機関 |
ヤンマーS165L-SN 540PS×1200rpm×2台 |
発電機 |
西芝NTAKL-VEK 450KVA ×2台 |
速力及び航続距離 |
試運転最大速力 |
13.64ノット |
満載航海速力 |
約12ノット |
航続距離 |
約6,000海里 |
工程 |
起工 |
平成6年3月17日 |
進水 |
平成6年12月6日 |
竣工 |
平成7年3月24日 |
建造所 |
三井造船株式会社玉野艦船工場 |
調査・観測環境- (1)観測作業
- 調査・観測・漁撈設備を全て船尾甲板に配置することにより、同甲板全体を見渡せる統合管制室にて、作業甲板の死角を補填するための4台の監視カメラをモニターしながら、観測作業の安全を確認しつつ観測用・漁撈用ウインチの遠隔操作を行うことができます。
同甲板には、船首尾方向の船体中央部に観測作業甲板を、船尾側にトロール作業甲板が配置されております。 - (2)研究室と調査機器
- 洋上に浮かぶ動く研究室としての機能を遺憾なく十分に発揮するため、水産研究に必要な幅広い調査内容と調査要求の多様化に対応し、目的と用途別に分離して使い易くした7つの研究室と、多くの調査機器が装備されております。
また、洋上のみならず陸上においても研究を継続できるように、特殊な調査機器を装備したコンテラボ2個が用意されております。本船に搭載できるのは1個ですので調査内容に応じて積み換えて使用します。船内から必要な給電、信号線等を接続して使用されます。
室名 |
写真 |
概要 |
研究室(ドライ) |
○ |
○ |
研究室(セミドライ) |
○ |
○ |
研究室(ウエット) |
○ |
○ |
飼育室 |
○ |
○ |
コンテナラボ(HRPT) |
○ |
○ |
コンテナラボ(DNA) |
○ |
○ |
標本処理室 |
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○ |
生物研究室 |
○ |
○ |
低温実験室 |
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○ |
標本冷凍庫 |
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○ |
(3)観測機器 水産研究に必要な幅広い調査内容と調査要求の多様化に対応した9台の観測ウインチと、2台のクレーン、3台のいか釣り機、ネット兼ラインホウラー等の他にも多くの観測機器・漁撈装置が装備されております。それらの仕様と概要を紹介します。
室名 |
写真 |
仕様 |
概要 |
8,000m汎用観測ウインチ |
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○ |
○ |
7,000mCTD観測ウインチ |
○ |
○ |
○ |
6,000m汎用観測ウインチ |
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○ |
○ |
4,000mモクネスネット観測ウインチ |
○ |
○ |
○ |
1,000mケブラーロープウインチ |
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○ |
○ |
左右分離型トロールワープウインチ |
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○ |
○ |
トロールネットウインチ |
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○ |
○ |
トロール用3,000mネットレコーダウインチ |
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○ |
○ |
ネット/ライン兼用ホウラー |
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○ |
○ |
ギャロス付き電動ホイスト |
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○ |
○ |
CTDセンサー移動用ホイスト式台車 |
○ |
○ |
○ |
CTD嵌脱装置付き中央観測用クレーン |
○ |
○ |
○ |
船尾観測クレーン:HIAB-EFFER 25000-3S |
○ |
○ |
○ |
油圧開閉式フィッシュハッチ |
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○ |
○ |
油圧開閉式フラッシュハッチ |
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○ |
○ |
転落防止用油圧起倒式船尾舷檣 |
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○ |
○ |
自動いか釣り機 |
○ |
○ |
○ |
(4)減揺装置 本船の減揺装置は、上甲板船尾の標本冷凍庫の左両舷側に、船体の横揺れ周期を計測しながらコンピューターで必要な移動水量を算出して、移動水のダクト面積を変更させるダンパーを油圧で制御する「受動制御型減揺タンク」方式が採用されております。
この減揺装置の他に、船底両舷ビルジ部には幅700mm×18mの長さのビルジキールが取り付けられております。また、船首尾中心の船底には13mの長さのソナードームが装備されていることもあり、これらによる減揺効果は非常に大きく、ほとんど横揺れは感じられないくらいで、調査・観測の作業性向上に役立っております。
その代わりに船の長さが東北海域のうねりの周期に良く合うためか縦揺れが目立ちます。この縦揺れをを抑えることは非常に困難で、針路を変更するか船速を変更して対処するしか方法がないのはハイテク船としては誠に残念な現象です。 居住環境- (1)個室化
- 乗組員全員、調査員室2室及び士官予備室の3室、計21室を個室化し、調査員室1室はソファーベッド方式で通常1人で使用し2人でも使用できる方式とし、2人室は調査員室2室及び部員予備室の3室に抑えられております。
また、床面積は最低でも7uという十分な広さが確保されております。 - (2)居室室内装備の充実
- 各居室には、袖引き出し付き机、高級椅子、テレビデオ、冷凍冷蔵庫、電気保温ポット、トイレットキャビネット付き洗面台、本箱、ワードローブ、物入れ、靴箱、高級内装材とカーテン等充実した備品が装備され、長期航海においても快適な船内生活が過ごせる設備が装備されております。
職長級以上の居室は上甲板以上に配置され、舷窓とソファが追加装備されております。
また、調査員室のベッドは、外国人調査員の乗船にも対応できるように他の居室のベッドより100mm長い2,100mmの長さが確保されております。
機関部乗組員全居室には、機関延長警報盤が装備されており、機関データロガーにより感知された異常が警報音にて伝達され、何時でもトラブルに対処できるよう省人化対策が施されております。 - (3)衛生設備
設備名 |
写真 |
概要 |
便所 |
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○ |
汚水処理装置 |
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○ |
シャワートイレ室 |
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○ |
浴室 |
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○ |
洗濯装置 |
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○ |
飲料水専用蛇口 |
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○ |
- (4)公室
- 本船にはサロンはありません。業務優先の思想から、使用頻度の低い空間は極力排除されているからです。公室としては、船長公室、会議室、事務室、食堂があります。
室名 |
写真 |
概要 |
船長公室 |
○ |
○ |
会議室 |
○ |
○ |
事務室 |
○ |
○ |
食堂 |
○ |
○ |
- 統合管制室
航海船橋甲板に設けられた本船の頭脳にあたる部屋です。
甲板部、機関部及び無線部が1つの部屋で当直を行う本格的な高度機能集約型船橋システム(IBS)が採用され、調査業務においても船尾作業甲板全体を見渡せる同管制室後部のウインチ制御区画にて、4台の死角補填用監視カメラをモニターしながら、観測作業の安全を確認しつつ観測用・漁撈用各ウインチの遠隔操作と操船を行うことができます。
この統合管制室は、船首側に航海・操船区画、右舷側に海図・観測区画、左舷側前部に無線区画及び後部に機関制御区画、船尾側にウインチ制御区画の5区画に分けられておりますが、仕切の壁は全くなく四周視界が確保されております。
この視界を確保するために、分電盤、自動気象観測装置、無線装置等の背の高い機器については、高さを1,300mmに抑え、壁付け用の機器については集合分電盤に組み込むか、計器台の上または下部に、また、操作のいらないインターフェースや小型のスイッチ類は天井に埋め込み配置するなどの工夫をして装備されております。これらの数多くの計器類やコンソール、分電盤等の配置については、事前に造船所にてモックアップや3次元CADを作製して検討し、ほぼ計画通りに配置されました。
また、統合管制室には全部で22個の大型の窓が設けられ、船首側と船尾側の全ての窓には熱線入りのガラスが使用され、外側には洗浄用清水・温水配管と電動ワイパーが装備されております。熱線入りのガラスの厚さは12mmと5mmの合せ強化ガラス、その他は10mmの強化ガラスが使用されております。
船首側には、中央に幅1,200mm×1枚、1,140mm×2枚、その両側に755mm×2枚、1,205mm×2枚の計7枚が配置されています。
船尾側には、左舷側に1,155mm×1枚、中央にはウインチ操作時の後方視界を良好にする目的で特に幅広の1,750mm×1枚が配置されております。
右舷側には、縦長の幅750mm×高さ1,250mm×1枚、右舷斜め後方に幅630mm×高さ1,250mm×2枚の窓が配置され、観測機器の舷門及び海面付近の状況を観察しやすく装備されています。
その他の角窓は高さが650mmに統一され、左右舷ともに各5枚が配置されております。
- (1)航海設備
- 航海計器及び航海支援設備として、磁気コンパス、ジャイロコンパス×2、自動操舵装置、音響測深機、ARPA付きレーダ×2(Xバンド、X/Sバンド各1)、超音波式速度計、水晶時計、GPS航法装置×2、ロランC航法装置、左右70゚までの大角度転舵が可能なロータリーベーン式舵取装置、シリング舵、深度表示器、航海情報表示装置(トータルナブ:電子海図使用が可能)、自動気象観測装置、波高計、気象衛星受画装置(ひまわり、NOAA)、システム操船装置、海図台、航海・操船コンソール、船内情報指示装置(船内LAN)端末パソコン等が装備されております。
また、両舷ウイングには、船速、舵角、CPP翼角、バウスラスター翼角表示器が設けられております。
航海・操船区画には当直用回転式固定椅子3脚が装備されております。 - (2)機関設備
- 少人数の機関部乗組員の作業低減を図る目的から、JG及びNKの機関区域無人化に適合する最新設備が装備されています。
機関は2機1軸ディーゼル推進方式が採用され、歯車装置を介して4翼可変ピッチプロペラ及び油圧ポンプ装置(バウスラスター及び観測/トロールウインチ駆動用)が駆動されます。また、主機関及び主発電機関は低騒音対策仕様が採用されるとともに、防振支持をして振動の低減及び船体への固体伝播音の低減が図られています。
機関の運転は、本船の操船目的に応じてモードを選択し、機関制御区画の機関制御盤に装備されたタッチパネル操作により、あらかじめ定められたシーケンスに従って主機関、CPP、補機の発停、弁の開閉をはじめ各種機器を遠隔制御するシステムである統合制御システムにより行われます。機関制御盤のカラーCRTにより各部温度、圧力、液面等の監視を行うとともに、機関データロガーに接続されている数多くのセンサーにより、異常を感知した場合に警報を発するシステムになっており、この警報は同時に機関部乗組員全室と公室の機関延長警報盤に感知された異常が警報音にて伝達され、何時でもトラブルに対処できるようになっております。
以上のことから従来設けられていた機関部当直室が廃止されました。 - (3)無線設備
- 従来の無線設備に加え、1999年から完全実施されるGMDSS(全世界的な海上遭難安全システム)に対応した最新の設備が装備されております。この制度では無線室の他に航海船橋に設備の二重化が義務づけられているため、余分な配線量を減らすことも考慮し、従来の無線室を廃止し、統合管制室に二重化設備を設けました。
本船との連絡は、沿岸船舶電話や衛星通信の電話、ファックス、データ通信を利用して24時間常時可能です。(詳細) - (4)調査・観測設備
- 統合管制室に装備されている調査・観測機器は次のとおりです。
航海・操船区画:バイオテレメトリー追跡装置。
(受波器はソナードームに昇降式にて装備されている。)
- 海図区画:GPSブイ受信装置。
(受信情報は専用パソコンを介して船内LANに取り込むことができる。)
- 観測区画:計量魚探副制御装置、海底地形探査装置、曳網漁法用ディスプレー装置、高出力魚探、カラースキャニングソナー、気象衛星受画装置(ひまわり及びNOAA)、各機器間接続インターフェース及びプリンター等。
- ウインチ制御区画:トロールウインチ操作盤、観測ウインチ操作盤、高出力魚探記録器、オッターレコーダ表示器、ネットレコーダ表示器、
ネットソナー制御・表示器、船尾甲板監視カメラ制御器、深海用精密音響測深機、レーダアダプター、潮流計、システム操船装置、リモートパネル及びトラックプロッター等。
機関統合制御システム
本船の機関統合制御システムにはいくつかのモードがあり、実際に運航する上で必要なモードと機関運転の状態、推進制御方法、システム操船時の機関運転状態、付加機能は、下記のとおりです。
- (1)機関統合制御モードと機関の使い分け
- 油圧ポンプ駆動用の主機の回転数は680rpmの定速回転で運転されます。油圧ポンプは4台あり、2台(2号、3号)はバウスラスタ、他の2台(1号、4号)は観測ウインチの駆動用です。トロールモードの場合は1号油圧ポンプは右舷ワープウインチ駆動用で、4号油圧ポンプは左舷ワープウインチ及びネットウインチ駆動用になっております。
- (2)推進制御方法
- 推進制御は、コンビネータハンドル制御とダイヤル制御に分けられます。
- コンビネータハンドル制御
- この制御方法は、各ノッチに対応したあらかじめ定められたコンビネータカーブ設定に従って、最良の組み合わせの主機回転数とCPP翼角がコンピュータで制御されます。
- ダイヤル制御
- この制御方法は、ダイヤルで主機の回転数を手動制御し、ハンドルでCPP翼角を手動制御します。
ダイヤルによる回転数、ハンドルによるCPP翼角の設定は、コンビネータハンドル制御と同じ範囲ですが、任意の位置に設定できます。 - (3)システム操船
- システム操船は、プロペラ、舵及びバウスラスタの3つのアクチュエータを利用して操船するためのもので、この場合、主機の1台は推進用、他の1台は4台の油圧ポンプ駆動用に使用されます。
推進用のCPPの使用範囲は、1機推進時のコンビネータハンドル制御と同じですが、推進用主機回転数と油圧ポンプ駆動用主機回転数は680rpmの定速回転で運転されます。 - (4)付加機能
ALC
(Automatic Load Control) |
主機関への燃料供給量を計測しつつ、負荷が増大するとコンピュータ制御によりCPP翼角を下げる機能。 |
ASC
(Automatic Speed Control) |
航海情報表示装置から送られてくる船速信号と、ダイヤルで設定した船速値との偏差を検出して、コンピュータ制御により主機回転数を変化させる機能。 |
船内情報指示装置及び調査データ処理システム
上記の通り無線室を廃止することにより、そのスペースが船内に張り巡らした船内LAN通信回線の頭脳ともいえるホストコンピュータ及びサーバーの設置場所として確保されました。統合管制室の下の船首楼甲板に、電気機器室兼計算機室が設けられ、これらが設置されると同時に、多くのエレクトロニクス関連機器と機器間のインターフェース類が設置されました。
本船の船内LANシステムは、イーサネット及び光トークンリングによるサーバー/クライアント・システムで、船内情報指示装置及び調査データ処理システムの2つのLANにより構成され、別記の機能を有しております。