Terricola

テリコラ

陸棲三岐腸類

オオミスジコウガイビル

 

 身近な三岐腸類、コウガイビル:

 コウガイビルは陸棲の三岐腸類の代表種です。彼らは身近な扁形動物で、クロイロコウガイビルは庭先の石の下などにいますし、オオミスジコウガイビルのように湿った森のなかを這い回る種類もいます。名前にヒルとついていますがヒルは環形動物でコウガイビルは扁形動物の仲間。ようするに全然違う動物で、身体が細長いという以外に大した共通点はありません(そういえばオオミスジコウガイビルを見た子供が”ヘビだー!!”って言っていましたが、これも多分、細長いという共通点から連想したのでしょう)。

 

 陸棲三岐腸類の分類:

 陸棲三岐腸類には以下の3科があるそうです(参考:「日本産土壌動物検索図鑑」東海大学出版会)

 リンコデムス科( Rhynchodemidae )日本の種類はごく少ない

 ゲオプラナ科( Geoplanidae )日本の種類はごく少ない

 ビバリュウム科(コウガイビル科:Bipaliidae )コウガイビルなど

以上の系統関係については現時点で情報がありません。

 

 ビバリュウム科について:

 日本でもっとも普通の陸棲三岐腸類を含むグループで、頭部が半月型、あるいは腎臓型であるのが科の特徴です。この科に含まれる種類、コウガイビルの名前もこの頭部の形に由来します。コウガイってのは半月型をした女性の髪飾りのことですね。私たちの身近には何種類かのコウガイビルがいます。全身が黒いクロイロコウガイビルはもっとも身近で見ることができる種類でしょう。はるかに大きくなるオオミスジコウガイビルは数十cmにもなる黄色いコウガイビルです。 

 以下、2種類のコウガイビルについて画像をリンクしました。

クロイロコウガイビル ( Bipalium fuscatum )

 

オオミスジコウガイビル( Bipalium nobile

グデ〜〜〜っとしているオオミスジくん

シャキっとしているオオミスジくん

食後のオオミスジくん  

 

 ビパリュウム科の特徴:

 すくなくともオオミスジコウガイビルは奇妙な匂いがして化学系の何かって感じがします。死ぬとあっと間に腐ってどろどろに溶けてしまいます。扁形動物は概してそういうものらしく、ダーウィンもビーグル号航海記の中で、

 ”そのはやさは、他に比べるものもないほどである。”

ビーグル号航海記(上)pp54~55 岩波書店 と書き残しています。

 さて、扁形動物は繊毛で移動するそうですけど、筋肉の力を借りずに動けるのだろうか?、と次ぎのような実験をやってみました。 

切断実験:断片でも動けるの?へ→ 

 

 ヒルとコウガイビルの違い:

 ヒルは環形動物です。環形動物とは身体が節にわかれ、それが連続している構造をもっている動物群で、ゴカイやミミズなどが含まれます。コウガイビルとヒル、ミミズ、節足動物、脊椎動物の類縁関係は次ぎのようになります。

________コウガイビル ←コウガイビルはプラナリアに近縁で扁形動物というグループを作る

 |  |___プラナリア

 |________ミミズ

   |  |___ヒル ←ヒルはミミズと近縁で環形動物というグループを作る

   |______節足動物

   |______脊椎動物

 

 環形動物は扁形動物と違い、口と肛門を持ち、消化管が身体を貫通しています。節にわかれた身体は頑強で、活動も扁形動物よりはるかに活発です。コウガイビルもそれなりに筋肉を発達させているらしいのですが、ぜい弱で、身体は容易にちぎれてしまいます。ミミズはもっと強いですし、ヒルは非常に丈夫です(北村が子供のころにやった悪ふざけからするとヒルってそう簡単には切断できないものだと記憶しています)。それにヒルやミミズは身体が丸いですね。これは扁形動物にはできない芸当です。扁形動物はあくまでも扁平。このあたりのことを詳しく知りたい人は「ゾウの時間ネズミの時間」 中公新書 1992 を参考にしてください。

 

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