乗鞍岳はずっと気になっている山である。
今年に入ってからも、御嶽頂上から見たその姿は、
雪を多く残す北アルプスの精鋭達を後方に従えて 先頭に立つリーダーのような迫力があったし、また奥穂高岳に登った際には、
御嶽から見た時とは全く違って、伸びやかで優美な姿を見せてくれ、小生を魅了し続けている。
無論、そういう魅力的な山であるから 1999年にその頂上 (剣ヶ峰) に立ってはいるのだが、
3,000mを越すその堂々とした山容に対して、あまりにも短い登山行程に、登頂の喜びよりはむしろ罪悪感を覚えたのであった。
その時は、上高地から焼岳に登って中の湯温泉に下山し入浴。
その後、釜トンネル前からバスに乗って畳平まで行き、その日は肩の小屋に宿泊して翌朝 剣ヶ峰に立ったのであった。
しかし、先に述べたように、登山という観点から見ると、この時の登山は距離、登った標高差 (300m程)とも大変物足りないものであり、
加えて畳平から肩の小屋までは ガスで全く視界が利かず、しかも車道のような道であったことで、全く満足していないのである。
折角、3,000mを越す標高、雄大な裾野を持つ山でありながら、僅かな部分しか触れることができなかったのは心残りであり、
一方で 乗鞍岳と対峙する御嶽の方は、結構 その懐に飛び込んだ登山ができたと思っているので、
いつかこの山と真摯に向かい合いたいと、ずっと思っていたのである。
せめてもの慰めは、乗鞍岳頂上から下の乗鞍高原観光センタまで 歩いて下山したことである。その時、
いつかこの逆コースを登ってみたいと思ったものの、それから 13年、未だその気になれないでいる。
というのは、このコースは途中何回も車道を歩いたり、横切ったりせねばならないからであり、そして苦労して肩の小屋まで登ったとしても、
そこには畳平からの登山者に加え、観光客に近い方もおられ、ガッカリさせられるのが目に見えているからである。
そこで、ここ数年考えていたのが西側の乗鞍青屋登山道を登り、千町ヶ原 (せんちょうがはら) を越えて乗鞍岳に登るルートであるが、
こちらは距離が長く、山中一泊は必至。そうなるとこちらもなかなか挑もうという気になれない。
こういうモヤモヤがずっと続いていたのだが、先日ヤマレコを見ていたら、
乗鞍岳から 中洞権現 (畳石原) 経由で中洞権現ノ尾根を下った登山記録が掲載されていたのである。
早速 地図で調べてみると (2011年の山と高原社の地図)、そのルートは破線で表示されており、
草木の刈り払いが為されていない可能性がある との記載がある。
確かに、この中洞権現ノ尾根ルートをネットで検索すると、藪こぎの記録がかなり出てくる。しかし、先のヤマレコの記録では、
森林限界より下はササの刈り払いがしっかり為されていた とのことであり、森林限界より上はハイマツに苦労するもののテープは明瞭との記載がある。
もしそうであるのならば、このコースを使って乗鞍岳の日帰りが可能である訳で、俄然乗り気になったのであった。
そして 3連休の中日にあたる 9月16日、早速トライすることにした次第である。
夜中の 2時過ぎに横浜の自宅を出発。
何時も通り八王子ICから中央高速道に入り、ナビに従って伊那ICで下りる。
ナビには目的地として南乗鞍オートキャンプ場を指定してある。
伊那ICからは、権兵衛トンネルのある お馴染みの権兵衛街道 (国道361号線) に入り、やがて中山道に合流して、
御嶽や南駒ヶ岳の時と同じように中山道を南下する。
中山道を暫く進んだ後、木曽大橋の所で右折して開田高原を目指す (この道は同じく国道361号線だが、
こちらは木曾街道)。開田高原を抜け、かなり長いドライブの後、高根乗鞍湖と野麦川の合流点に架かる 高嶺大橋を渡った所で道を右折する。
この道は野麦峠で有名な野麦街道である。
その後、暫く先で ナビに従って左折してオートキャンプ場を目指す。今は閑散としているオートキャンプ場を通過し、
さらに先に進む。道はオートキャンプ場まで舗装道だったものの、それ以降はかなり 凸凹がある未舗装の林道となる。
林道の延長工事をしているらしく、平日は工事車両が通るので道は荒れ気味 というところであろうか。