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南を見れば、先程よりも高度が上がった分、黒法師岳、バラ谷の頭がかなりせり上がってきている。
ただ、天候の方は下降気味で、時々東側からガスが上がってきてこれらの山を隠す。
しかし、それにしても不動岳登山口に駐めてあったマウンテンバイクの持ち主はどうしたのであろう。
不動岳頂上までの間に会うだろうと思ったのに、会わないまま頂上に着いてしまった。小生がササ原を彷徨している時にすれ違ったか、
あるいは鎌崩の頭から鎌崩の方に進んでいたのかもしれない。まさか、六呂場山に向かったということはなかろう。 |
一人 頂上の石に腰掛け、鎌崩の頭方面を見ながら握り飯を頬張り、
『 遠くまできたものだ 』 と感慨に浸る。
12時55分、頂上を出発。
出発前に千頭山の会が立てた不動岳の標柱を眺める。今まで
黒法師岳やバラ谷の頭などの頂上にも立てられていたものと同じであるが、
よく見ると、柱の部分が 2つに分解できるようになっており、山名を表示している部分と合わせて 3つの部分で構成されている。
持ち運びを考えてのものと思うが、感心してしまった。他の山の標柱も持ち運びのための色々な工夫が為されているのかもしれないが、
詳細に見たのは今回が初めてであり、少々驚いた。
ササの斜面を下る。この頃になると、太陽は雲に隠れてしまい、本当に時々顔を出す程度になる。 | |
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13分程下ってきて不動岳を振り返る。
右半分が黒々とした木々の樹林帯、左側はササの原と立ち枯れという 2つの全く異なる面を見せている。ササ原の緑は美しいが、
この木の墓場はやはりちょっと異常である。
下ってくる場合は、やはり視野も広くなるためであろう、ササが煩い所も、
どこを進むべきかよく分かる。登りに比べて非常にスムーズである。
帰りはテープを辿りながら、鹿ノ平の西側の高みをそのまま進む。所々にヌタ場があり、鹿の存在を意識するが、
足下の糞などは黒バラ平の方が圧倒的に多かったように思われる。 |
途中で高みから左に折れて倒木の脇から鹿ノ平に入る。
目の前に広がる鹿ノ平はやはり素晴らしい。残念ながら鹿ノ平の向こう側、つまり東側は雲が湧いており、全く山が見えないが、雲がなければ、
朝日岳やさっきまで見えていた
前黒法師岳が見えるはずである。
鹿ノ平の縁に近づき、鎌崩の頭を眺める。これからまたあの斜面を登り返さねばならないかと思うと少々ゲンナリする。
地形図を見ると、鎌崩の頭を巻く道が作れそうだが、鎌崩の頭からの下り斜面から鹿ノ平、不動岳を見渡した時の感動を考えると、
このままで良いのかもしれない。 | |
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苦しいかと思った鎌崩の頭への登りも思ったほどはきつくなく、道に生えているコバイケイソウをキチンと躱す余裕もある。
高度を上げて振り返れば、ザクッと削り取られたような崩壊地と、
その向こうに鹿ノ平、そして不動岳が見える。とにかく素晴らしい光景である。
遠かったが、来て良かったと思いながら斜面を登る。
そして、鎌崩の頭には 13時51分に到着。
そのまま鎌崩は見に行かず、右に折れて下山する。 |
鎌崩の頭からの下り斜面も、
登りの時はササが煩く苦労したが、下りでは はるかに効率よく進む。
途中、左手には鎌崩の荒々しい斜面が見える。登りの時は逆光気味だったので、その山肌がよく見えなかったが、今の時間だとよく見える。
ネットによれば、真ん中辺に見える高みのところが通行困難らしい。
順調に下り、1,863mのガレ場の縁は 14時17分に通過。
1,424mの図根点には 14時50分に到着。その後、モノレールと作業小屋のある場所を 15時9分に通過し、
不動岳登山口には 15時26分に着いたのだった。 | |
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登山口近くに駐めてあったマウンテンバイクはなくなっている。やはり、どこかですれ違わねばならないはずだが、
うまい具合に遭遇しないことになったらしい。お陰で、山を独占した気分に浸ることができたので、偶然に感謝である。
長い林道歩きを前に、休憩小屋近くの水場で顔を洗いノドを潤す。林道は水を飲みながら歩こうと思い、ペットボトルに水を詰め、手に持って進む。
急ぐことはないと思いゆっくりと歩き、ゲートに着いたのは 16時53分であった。林道途中で別々に 2人とすれ違ったが、
それよりも最後に嬉しい遭遇が待っていた。ガード脇にニホンアナグマ (と思う) がいたのである。
初めて見る動物だけに感激。素晴らしい山行にさらにおまけが付いたのであった。 |