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PCの水冷化 -概要

Update:2010.12/13

私のメインで使用しているPCは1999年ぐらいから冷却に一部水冷を導入しています。具体的な導入事例は別のページで用意してあるので、このページでは冷却という物の基礎知識を。

よく、「水冷のほうが空冷に比べて冷える」という認識をされる場合が多いのですが、それは正確ではありません。私が思うにPCの水冷というものは、

これだけだと思います。私の場合は「騒音の低減」を主目的として導入しています。

なぜ水冷にはこのような特徴があるのかを知る為には、空冷と水冷の仕組みをある程度理解する必要があります。

ヒートシンクとファンによる空冷とその強化方法

空冷の概念図

一般のPCが発熱量の多いチップを冷却する場合は、ヒートシンクとファンを使用して冷却を行ないます。そのプロセスは、

と言う感じです。ヒートシンクが効率よくCPUの熱を吸収する為にはCPUとヒートシンクとの接触面積は可能な限り広くとりたいのですが、CPUの形は決まっているので表面積を簡単に広げる事はできません。よって、その決められた面積の中で可能な限り広い接触面積を得る為にヒートシンクとCPUの間に粒子の細かいシリコングリスを入れて金属表面の凹凸さえも吸収させています。
チップの熱を吸って高温になったヒートシンクを効率よく冷やす為にはヒートシンクと周辺空気との接触面積はなるべく多い方が良いので、ヒートシンクは大きくイガイガした形状になっています。
PCのケース内はケースファンや電源ファンによってある程度の空気の流れが起きているので、その流れでヒートシンクの冷却も行なう事ができるのですが、それではまだ冷却が追いつかないということで、ヒートシンクの直近にファンを設置して強力な風を当てて熱交換を促進させています。

また、PCに搭載されているCPUは処理能力の向上に合わせて発熱量も上がっていくので、より強力な冷却能力が必要となっていきます。上記の空冷システムで冷却能力を上げる為には、

という方法しかありません。材質を変更する場合は、一般的に使用されているアルミからより熱伝導率の高い銅や銀に変更する事になりますが、ヒートシンクは基板やCPUに固定されるので、そんなに重い材質を使用する事はできないし、そもそもこれらの金属は非常に高価です。銅製のヒートシンクなどもありますが、そのコストや重量の関係であまり大型化も好ましくありません。ヒートシンクを巨大化させるにもPCの中を見れば分かるように既にヒートシンクは設置可能なスペースいっぱいまでの大きさで、さらに大きくすると言ってもそれほど劇的に大型化させる事は物理的に不可能です。

同じヒートシンクに同じだけの空気量を当てても、より低い温度の空気を当てた方が熱交換の効率は良くなるので、CPUの冷却ファンが吸う空気の温度を下げようという試みも行なわれています。PCケースの側面にパッシブダクトを付けたりしているのはCPUに直接PCの外の空気を当てる為の対策です。
最後に残った冷却ファンの大型化、高回転化を行なう事になりますが、大型化についてはヒートシンクと同様にPC内の限られたスペースではそれほどの大型化は見込めず、ファンをヒートシンクより大きくしてもヒートシンクに風が当たらなければ意味がありません。よって最後に残った冷却ファンの高回転化を行なうわけです。ただし、ファンの回転速度を上げるという事はそのまま騒音の増加に直結します。

このように、現状の空冷方式では冷却能力の強化が困難な状態になってきています。

水冷方式の構造と原理

では私などが導入している水冷とはどういった物なのかというと、

水冷の構造図

という物になります。図で表すと右のような感じです。

要するに、CPUの熱にその場で風を当てて冷却させるのではなく、水を使って熱を別の場所まで運びそこで冷却させるという事です。

結局風を当てて冷却を行なうというのは空冷と一緒です。ではなぜ、こんな面倒な事をして冷却を行なうのかというと、以下のようなメリットがある為です。

熱を吸収する部分と放熱する部分を分離する事で構成の自由度を上げられるのが最大の特徴になります。

どんな構成が良いのか

水冷の導入を考えるときに一番のデメリットとなるのは何よりも水漏れのリスクを背負うと言う事だと思います。この恐ろしいリスクを背負っても余りあるだけのメリットを得る事ができる構成にしなければ、わざわざ水冷にする事はあまり勧められません。

具体的には、より巨大なラジエーターや冷却ファンを使用して空冷より遙かに高い冷却能力を得るとか、放熱面積(ラジエーター)を大きくしてファンを低回転にする事で空冷より騒音を低くするといった事が、水冷で目指す物だと思います。

今日ではPCのケース内に収まるようなコンパクトな水冷のキットが販売されていますが、これらはどうでしょうか。構造的には間違いなく水冷システムなのですが、ラジエーターはケース内に納める為にあまり大きな物にはできず、最近の空冷システムの巨大なヒートシンクと比べるとあまり差はありません。当然冷却ファンも同程度の物となり、冷却にケース内の空気を利用するので、同じ冷却能力を得る為には冷却ファンの回転数も同程度になってきます。もちろん多少の差はありますが水漏れのリスクを背負うほどの価値があるとは個人的には思いません

と言う事で私はこういったキットの導入はあまりお勧めしません。

やはり水冷で組むからには冷却部分と加熱部分が分離できるという特徴を活かす為にも、私はラジエーターをケース外に設置する構成を勧めます。そうする事でラジエーターの大きさの制限は一気に緩くなり、ケース内には収まらないような巨大なラジエーターを使用する事ができます。さらにPCケース内の生暖かい空気で冷やすのではなくPCケース外の空気で冷却を行なうので、同じラジエーターを使用したとしても冷却効率を上げる事ができます

また、私の構成のように水を一時的に溜めておくサービスタンクを設置すれば、水の絶対量を増やす事が可能になり、水自体の自然放熱も期待する事ができるようになります。私は約30リットルのタンク(というか水槽)を使用する事で、真夏以外はラジエーター無しで運用できています。冷却能力は余り高くはないですが、それでも空冷以上の冷却能力はあり、ラジエーターの冷却ファンさえないので騒音は飛躍的に低減されています。このシステムでCPUと同時にGPUも冷却させているので、ビデオカードの冷却ファンの騒音も無くなりました。

どうせ手間と金とリスクを背負って水冷を導入するなら、そういった構成にする方がいいと私は思います。

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