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展覧会の紹介
北浦晃 自選による油彩画展 テーマ別・1・「人物」 |
2004年12月4日−12日 美唄市民会館 |
北浦さんは1936年、栃木県生まれ。39年に赤平、41年に美唄に移り、67年以降は室蘭に居を定めています。 室蘭の短大で教鞭をとっていましたが、たしか昨春辞められ、悠々自適で絵筆をにぎっておられると思います。 近年の作風は、写実的な風景画ですが、一見、山を清澄な色彩でそのまま描いたかのように見えて、その実、画面を構築するつよい意思を宿した作品は、見ていて心が洗われる思いです。 今回から、3回に分けて、人物、静物、風景の順に、代表作を紹介していくそうです。 で、今回感じたのは、こんなことを書くと北浦さんにしかられそうですが、油彩33点のうち(ほかにデッサン5点出品)、自画像が2点あるほかは、すべてわかい女性がモティーフなんですよ。やはり会場には、女性像ばかりならんだときらしい、そこはかとない色気といいますか、エロティシズムのようなものが漂っているように感じられました。 それは、もちろん、わいせつとか、エッチとか、そういうことではありません。ただ、健康な男性が、ふつうに若い女性や少女を描けば、そういう薫りがないほうが、どうかしているのではないかと思います。 この点ばかりあまり強調すると、 「そういう、見ているおまえがロリコンなのだ」 みたいな指摘を受けそうですから、このくらいにして…。 ところで、とくに1970−80年代の作品の、背景の処理に注目しました。 細い線描が、人物の背後を埋め尽くしているのです。 独立美術の会員になったばかりのころの輪島進一さんが、やはり細い線の集積で画面をつくっていたのを思い出しました。ただし、北浦さんは、メーンのモティーフには、その線描を用いていません。 その線の濃くなるところが、ぴったり10センチおきに置かれた点のように見えます。 これらの点が、画面に正方形のリズムを生むとともに、背後の空間をいわば「虚の空間」にしています。 この技法は、90年の「座像E」からしだいに消えてゆき、その後は、絵の外周(すなわち、額縁のすぐ内側)に色の違う部分(余白、といったほうが適切か)を設ける処理に変わっていきます。 さきほど「虚の空間」と書きました。 北浦さんは、現代の画家です。ただ写真のように1つの視点から外の世界を見てキャンバスにうつすという旧来の絵画のありかたを、なんとかして乗り越えようという意思をはっきりと持っているのだと、筆者には感じられるのです。 考えてみれば、モティーフ以外の空間(背景)というのは、なんとやっかいな代物でしょう。 東洋画は、それを「描かずに済ます」という手で乗り切ってきたのですが、本来、キャンバスが「この世にありえない空間」なのだとしたら、固定された背景なんてものは、いっそうありえないものなのだとはいえないでしょうか。 背景をぶった切ってしまったのが、ステラですね。 また、「春の日の終わりに」などは、ひとりのモデルの顔を、3方向から描いています。 発想としては、キュビスムと共通するものがあると思います。 北浦さんは自作をこう解説しています。 人物に対する虚像として鏡面を描いた最初の作品である。だが、鏡は顔を映すというよりここでは顔の動きと変化を表しており、時計などとともに、ゆったりとした時の流れを表現している。複数の時間、ということも、モダニスムの西洋絵画が排斥してきたものでした。 北浦さんは、複数の空間や時間を、キュビスム以降の絵画のように、抽象に近づくことによって組み入れるのではなく、リアルな描写で画面にしているといえないでしょうか。 むつかしいことはぬきにしても、白いブラウス、輝くハンドベルの質感の描写など、うならされます。 もちろん、そういう方角からばかり絵を見ていても、つまらない。 鏡によって前や横から同時にとらえられた少女たちは、胸の奥に抱いている不安や希望などの感情を、通りいっぺんの肖像画よりもいっそうよく表しているともいえましょう。 むしろ、ひとつの角度から描いたときの絵のほうが、審美的だといえるように思います。 「不安や希望」なんて、ことばにするとおもしろくもなんともありませんが、繊細なタッチで描かれた少女の表情は、見る者に、ふかい共感をいだかせると同時に、ついにたどりつくことのできない「何か」でもあるのです。 つまり、少女ばかり描いているというのは、作者の「永遠の憧れ」の表出なのではないかと思われるのです。 どうにもうまく文章にできませんでしたが、作者が、ただ女性美を追い求めるといった次元で絵画空間をつくっているのではないことは、わかってほしかったのです。 ■北浦晃自選による版画100選(03年10月) ■03年8月の北浦晃個展 |
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