エルフ族。
世界中に散らばる民族。
だが、彼らはこの世界では迫害されている。
そして人より魔力が高く、見た目も綺麗なので人身売買の格好の餌食となっていた。
彼女は、エルフに寛容なこの国で生まれ育った。
彼女にあったのはまだ彼女が小さかった頃。
エルフの特徴を表すとがった長い耳が珍しくて(ラプテフはエルフ人口は多い方だけど。他に比べたらってぐらいで)思わず遊んでしまったら。
火が付いたように泣き出して。
クロンに怒られたことを思い出した。
「変なこと思い出すのはやめてよね!!」
「ごめん、シェラ」
シェラと居るといつも彼女を怒らせて僕は謝っている気がする。
「それ気のせいじゃないから。って言うか、マレイグが私を怒らせるようなことばっかりするんでしょう」
シェラがそう怒ってしまう。
僕たちの関係は彼女が大人になっても変わらない。
最初は妹で、そのうち愛おしくなって。
単なる兄の様な感情だと思ってたんだけどな…。
「私はちゃんとマレイグの事好きよ?これ、結構、誰にも言えないんだけど」
そう言ってシェラはうつむく。
俯かないで顔を上げて。
「だから、耳つまむのやめてよぉ〜」
顔を真っ赤にして彼女は耳を押さえる。
別にエルフ(彼女はクォートだけど)族は耳が弱いという訳じゃない。
もうシェラの特徴。
「特徴っていうかずっと小さい頃からマレイグが触ってきたから敏感になっちゃったの!」
敏感ねぇ…。
「普通なれない?」
「なれないわよ!!マレイグのせいで悪化したんだもん。おかげで内緒話だってできない」
誰と内緒話するの?
耳に口を近づけて話せば、シェラは真っ赤な顔して僕から離れる。
「シェラ?」
「マレイグ!!遊ばないでよ!」
耳を隠して真っ赤な顔をそのままに抗議するシェラはとても可愛い。
「遊んでないよ。楽しんでるだけ」
「遊んでるんじゃないのよぉ」
シェラをからかってるのは楽しい。
「楽しまないでよ」
そう言ってますますシェラは僕から離れていく。
「シェラ」
名前を呼べば顔だけ向けて。
「おいで」
呼んでもすねたような顔を見せるだけで近寄ってこない。
しょうがないから。
僕は立ち上がって、僕の歩幅なら3歩でシェラを捕まえて腕の中に閉じこめた。
「何よ」
「怒ってる?」
「マレイグが耳をつまみさえしなければ怒らないわよ」
エルフの血を色濃く写すその耳が彼女はコンプレックスだから僕の行為はとても嫌なのだろう。
「これからは控えるよ」
「控えるじゃなくってやめて」
「善処する」
「善処じゃなくってやめて」
「努力する」
「しないつもりのくせに」
会話の応酬の最後の言葉には僕は笑って誤魔化した。
「絶対やめてよね」
僕の腕の中でシェラは身動きしない。
彼女の声が、僕の体を通って僕の耳に届く。
それはとても心地よくって、僕はシェラを放す気にはなれなかった。
モデルとしてはマレイグはウツですが、声は置鮎龍太郎さんです。ついでに、シェラは半場友恵さん。