たとえば、彼女に何も見せないで、何も聞かせないで。
自分以外見せないでおけば。
そんなたとえ話。
二人して合意するのはどこかおかしい。
シェリーは幼なじみで。
家が隣同士で、親同士が仲が良い。
ただ問題はオレの親は魔道士協会の会長で、シェリーの両親は高名な占い師で、世界中に顧客を持つ。
それこそゴルドバの巫女のように王族から民間人まで。
金さえ払えば誰でも…というわけではないけれど。
ある程度優遇はされているのだろう。
だから占ってもらえない人は、シェリーを狙う。
誘拐という手段でシェリーを連れ去り、両親を時にはオレの親まで脅すこともあった。
3歳以降、シュウのおかげで魔法の才能を目覚めさせた(ほとんどはシュウの才能だが)オレはシェリーの護衛をするようになるまで時間はかからなかった。
「ゼンとシュウはあたしが護るから」
そう力強い表情を見せられると俺たちはどうすればいいか分からなくなる。
護っていたのはオレでありシュウであったのに。
両親から受け継いだ占いではなく魔法を選んだ彼女はオレとシュウを護ると言っている。
そんなことしなくて良いのに。
なんて言ったら
「何で?シュウとゼンはあたしのこと護ってくれてたじゃない。今だってそうだもの。あたしだって護れるぐらいにはなりたい」
その決意をシェリーは動かさない。
「シェリー、ここにあなたを連れてきたのは私たちです。貴方を護るのは当然でしょう?」
「そうだけど。でも、ついてきたのはあたしよ」
会話は平行線のまま。
だから何もシェリーには知って欲しくなかった。
魔法使いになりたいと言ったとき。
反対しようと思った。
でも父さんやシェリーの両親は断固反対。
オレやシュウまで反対したらシェリーには逃げ場がなくなってしまう。
甘いって言われるかも知れないけれど。
オレはシェリーにとってそう言う場所で居たかった。
楽だから…なんて言われそうだけど。
シェリーは大切な娘。
オレの中のシュウを知っても驚かなかった。
それだけでもう充分だと言うのに。
「シェリー、無茶だけはやめてください」
「シュウ」
あぁ、結局シュウの奴は折れちまった。
「ゼン……怒ってる?…」
はぁ、そうやって小首かしげて聞いてくるなよ。
「オレもシュウと同意見。無茶だけはするなよ」
そのせいでオレも折れる羽目になった。
「シェリー、オマエはオレとシュウが怪我するのがやだっていうけど。オレ達もオマエが怪我するのがやなんだからな」
「分かった。気をつける」
ホントに分かってるんだか。
「心配してるって分かってるよ」
だったら良いんだけどさ。
結局オレとシュウはシェリーに甘い。
ディル達やクゼル王が聞いたらなんて言うかな。
そんなこと考えて思わず笑ってしまった。
シェリーの小さい頃の話、出しちゃったけどまぁ、特に問題ないのでいいでしょう。
ちなみにシェリーは皆口祐子さん、ゼンは緑川光さん、シュウは子安武人さん。です