なりふり構っていられないと気づいたのはいつだったのだろうか。
「いくつ?」
と聞かれ答えると、一様に驚かれる。
好きでやってるわけじゃないと答えるのも簡単だけど。
案外好きだなんて言うことに気づいた。
「……いらっしゃいませ。今日のご予定は?」
仏頂面で、人一人が割り込める隙間を作って、この人は私の隣にいる。
「別に特に予定はねぇ、今日は飲みに来ただけだ」
と素っ気なく言う。
「沖田さんや、ゴリラはご一緒ではないのですか?」
いたらどうしよう。
いたら居たらで別に構わないのだけど。
店の売り上げ(っていうか私の成績?)が上がるだけだから別に構わないのだけれど。
「連れてきて欲しかったのか?」
なんて言う言葉が意地悪く聞こえるのは、この人は私を試しているのかしらとでも思わず勘ぐる。
「そうね、店の売り上げのためにはたとえゴリラだろうと我慢しようと思うわ」
「あんたのその態度が局長を喜ばせてんだな」
「お客様は神様ですって言葉ご存じかしら?」
「神様ね…。結局は店のためだろ?」
「確かに、お客様は神様ですって言うのは建前でしかないわね。ひいてはお客様の為って言うけれど、結局はその逆のお店の為ね」
「普通は隠すんじゃねえのか?」
「隠す意味がある?貴方に対して」
「それはオレが客じゃないっていう意味か?」
「そうして欲しいのなら、たたき出すわよ」
「静かに酒ぐらい飲ませろ」
「最初からそのつもりならそう言ってちょうだい」
「言ったじゃねえか!!」
「すぐ瞳孔開かせるのはどうかと思うけれど?」
「誰のせいだ、誰の!!!」
そう言ってようやく黙り込んだこの人に、飲み物を作って出す。
飲み干す様を思わず見つめてしまって、なんだか妙な気分だ。
「なんだ」
「別になんでもないですけど」
そう言って自分の分を好きに作って飲む。
思えば、この人が個人的に来るのは初めてのことだ。
「今日は、どうするんですか?この後」
「別に考えてねえ。明日は非番だしな」
「珍しい、真撰組に非番なんてあるんですか?年中無休だと思ってた」
「年中無休は無休だが、人は年中無休じゃねえよ」
「ロボットの集まりだと思ってた」
「勝手に奇人変人の集まりにするんじゃねえ」
「そこまでは言ってないわ。仲間をそう思っていらっしゃったのね、ひどい人ね副長さんって」
「てめぇが最初に言ったんじゃねえか」
「そうかしら」
「とぼけてんじゃねえよ。ったく、てめーといると調子が狂う」
そう言って深くソファに沈む込む。
「で、この後の予定は」
「特にねえ」
そう投げやりに言う。
「あなたがここにいるって事はゴリラはどこかに行ってるの?」
「気になるのか?」
「そうね、ストーカー被害に遭うか遭わないかって言う瀬戸際だから」
「……近藤さんのストーカーの件はこっちでも考えておく」
「檻に閉じこめるとかしてくださると助かるんだけど。ペットは野放しにしておくものじゃないわ」
「局長はペットじゃねえ!!!」
「あら、ゴリラにちゃんと答えるからてっきりペットかと思ってた」
「あんたがゴリラって言うのは局長しかいねえじゃねえか」
「そんなこと無いわ。じゃあ、このあと特にないんだったらつきあって欲しいんだけれど」
「あんた、急に話戻すな……」
「だって、土方さんが話を脱線させるんだもの、それにいろいろと都合があるの」
「都合があるのはわかった。でも、脱線させてるのはてめえだ」
「あら、土方さんも同じだわ」
「あぁ、この後どうしたいんだ?」
「そうね」
他愛もない会話を延々と続けて、この人を拘束したいなんて思うぐらい、眼光鋭いこの人とは結構逢うことが多い。
それほど逢いたくないような、それとも、逢いたいような気がするのは初めて逢ってから九ちゃんの一件があってからだから、結構たってるような気がする。
「貴方のことが……」
なんて、まだこの人に対してはそう思えないのかも知れないけれど。
それでも、また逢いたいと思うのだから。
普通に生きていたらなかなか逢えないこの人とこういう風に会えているのだから、水商売も悪くないなんて思える。
金づるとしてはちょっと弱いけれどね。
甘くしようとすればなるんだと思う。
土方さんに頑張って貰うしか無いのかも知れません!!!
姉御からじゃ無理だ!!!