「済みません、もう一度言っていただけませんか」
「だから、キャロルがさらわれた」
「何を言ってるんですかあなたは!!!!!」
オレはヴィンス・ラングフォード。
ベラヌール聖道騎士団の一員である。
ベラヌール聖道騎士団といえば、聖術法の頂点に立つベラヌール法皇を首長とするベラヌール王国の誉れ高い騎士団であり、世界の盾で有られるゴルドバの巫女の従騎士を努めておられるランディール・バード・ハイリゲン様はベラヌール騎士団の団長だった方でもある。
オレは現在、ちょっと問題もある団長の側近として日夜、剣を振るっている。
そして、オレには恋人が居る。
彼女の名前は……キャロル・ミルトン。
法皇が居られる法皇庁で神官をやっている。
そのキャロルがさらわれたという。
「り、理由はなんですか!!!キャロルがさらわれた理由は」
「可愛いからじゃない?」
さも当然の様に団長の右腕(この人も問題ある)アニカ・ブレンドレル副団長は言う。
「た、確かに、キャロルは可愛いです。でもそう言う問題じゃありません。彼女は何故さらわれたんです、ドコに行ったんですか」
「探すの?」
何を言ってるんだ、この人はっ。
「なんでそんなに暢気なんですか。さらわれたんでしょう?何者か分からない輩に」
こんなことしてる間もキャロルは………どんな危険な目にさらされてるかと思うと……。
キャロル、今、助けに行く!!!
「じゃあ、行きましょうか」
はい?
どういう。
「ヴィンス、助けに行くんだろう?」
行きますよ、行くに決まってるじゃないですか!!
団長であるクラエス・ノルダール団長がオレに言う。
「向かいながら話す」
団長は既に身支度を調えている。
アニカ副団長も同意だ。
「ちょっと待ってください!!!」
剣を掴み先に出た二人を追う。
「この前、シスアードから連絡が来たの。ラショワの近辺で人身売買が行われているって。黒い事も闇の事も許可を取れることが出来るかもしれないのはシスアードの中だけって言うのは知ってるわよね」
法を守る守護者でもあるベラヌール聖道騎士団の一人としてそのくらいのことは当然の如く知っている。
シスアードでは当主の名の下にそう言うことが平然と行われている。
情報として全て当主に提示されているからこそシスアードの内部は行うことが可能なのだ。
当主の名の下に庇護されていると言っても良い。
見過ごせない物はもちろん、当主自ら制裁に出るという。
キャロルがさらわれたのは、まさか人身売買……。
「おしいな。キャロルは自分からその場に行ったんだ」
は?さらわれたってあんた言っただろうが!!!
「正確に言えばね、キャロルちゃんの友達がその現場を見ちゃったんだって。で、慌てて逃げてきてなんとか逃げ切れたんだけど、その現状を知ったキャロルちゃんがぁ」
そこにさらわれた振りして乗り込んだと。
「そう言うこと〜〜。まぁ、おとり?になりたいって言うから。ダメって反対したんだけど、飛び出しちゃったのよね〜〜」
キャロル……、キミは……何でそんな無茶を。
オレに一言言ってくれれば。
「無理でしょう?絶対反対するのは目に見えてるし?ねぇ、クラウス」
「そうだな。さて、そろそろおしゃべりもおしまいだ」
声を潜めるとあたりには異常な雰囲気が漂う。
『キャロル、無事でいてくれ!!!』
心でそう思い、オレ達はとっさに考えた作戦で動き出した。
結果、シスアードに連絡をしてあったのか魔道警察も出動し人身売買の組織は壊滅、キャロルも無事救出出来た。
「ごめんね、ヴィンス君、心配掛けて」
「いいんだ、キャロル、キミが無事なら」
もうこんなことはやめて欲しい。
と思うんだが……。
オレの廻りは問題がある人が多い。
団長はギャンブル好き、副団長は酒好き、キャロルは正義感を持って突っ走る……。
オレだけは、周囲を止めるまじめ人間で行こう。
そう思った。
「でもぉ、まじめ人間だけじゃつまらないと思うのよねぇ」
「それがヴィンス君のいいところですから」
魔王ゼオドニールの時代の騎士団にしようかと思ったのですが、結局現代です。
後で本当に年表作らないと……。