「見て、ロシュ。ロシュオール、凄いと思わない?」
まるで少女の様に感動するミアをオレは子供っぽいなと思ってみてた。
楽しそうに、嬉しそうに微笑むから……まさかミアがゴルドバの巫女だとは思わなかったんだ。
「ごめんなさい」
そう言って涙を流すミアを見て、何を謝っているんだろうとオレは見当違いの事を考えていた。
ゴルドバの巫女。
世界中の誰もが知る巫女。
世界の盾の中心。
そう、ミアは巫女だった。
だったら納得がいく。
スクードの森の神殿をいとも簡単に見つけてしまったこと。
そして神殿を起動させて、スクードの森を浄化させ、オレ達のように力のない一般の人が通れるようにしてしまった。
巫女だと分かってしまえば簡単な事だった。
だからあんなに浄化している姿が神々しかったんだ。
知ってしまったときはあまりのことに呆然とした。
憤りもした。
何故言わなかったんだ、なんて思った。
そうすれば……。
その時浮かんだ感情に首を振った。
オレは何に首を振ったのか分からないまま時間だけが過ぎてミアはオレの前で泣いている。
ミアの姉であるイスフィアからミアの事を聞いた。
生まれたときから巫女であると運命づけられていた。
誰もが巫女と敬い、家族ですら巫女であると言うことで対等に接することはできなかったのだという。
でもオレの中でゴルドバの巫女であるミアと、いろんな物を見て驚いたりしているミアとどうしても結びつかなかった。
浄化の姿を見ても、神殿を探し当てた時も。
何故だろうと疑問を持ちながらも、神官ならば可能だろうと勝手に想像していた。
ミアの力は神官の力を軽く越しているとは気づきもしないで。
その事をイスフィアに話したとき彼女は言った。
「何も知らないから、見せることの出来る表情っていう物はある……。ミアにとってあなたはそう言う人間だった。私たちはミアがそんな風に笑った所を見たことがない。だから、うらやましい」
ソレを聞いたとき憤っていたオレの感情は静かにないでいった。
ミアがオレに言わなかったのは、言えなかったのは、オレのミアを見る目が一神官であるミアからゴルドバの巫女に変わってしまうのを彼女は怖がったのだろう。
何度もその瞬間を多分見てきたのだと思う。
友人……そう言うのが居なかったのではないか。
そう問い掛けたらイスフィアはうなずいていた。
オレも似たような感情を味わったことがある。
スペルナイトマスターという地位は、簡単になったものじゃない。
なったらなったで親しかった人間はその地位を羨みしまいには離れていく。
オレはまだ短いときだけど、ミアは長い間、……それこそ気が遠くなる間ソレを繰り返し続けたのだろう。
だからオレは決めた。
オレは、オレのやり方で、ミアの側にいよう。
ミアが自分を出せる場所をオレが作ろう。
「ミア、泣くな。オレは…………」
オレは決めた。
ミアを守るために、ミアに涙を流させないために。
それは1つしかない。
ラティアが言っていた。
オレの道はゴルドバに続いていると。
ミアに出会ったのは終着であるゴルドバにたどり着くために必要だったことだ。
オレが決断するために。
なんかロシュオールにぴったりだ!!!
「あなたが望むのなら この身などいつでも差し出していい 降り注ぐ火の粉の盾になろう」
ここ。
ロシュオールの決心にぴったりだ!!!