「生きていく上で必要なのは何だと思う?」
そう問い掛ければ彼の姫は何と答えるだろう。
「愛ではありませんか?」
なんて至極当然の様に答えそうだ。
隣で、データベース見てうんうんうなってる彼女は言いそうもないけれど。
「なぁ、ルイセ。お前生きてく上に必要なのって何だと思う?」
「………知識?」
さすが魔法使い。
色称号である黒が着いてるだけある。
「いきなりなんで?そんなことマリーチが聞くとは思わなかったけど?」
「まぁ、ちょっとしたことでね」
街で見かけた風景。
なんてことのない風景。
見慣れたと言うほど見かけては居ないけれども、船着き場では良くある恋人同士の別れのシーン。
恋人の片方は遠方に向かい、片方はこの地に残る。
いつか、そのうち、早めに、等と付けその後に迎えに来る、戻ると続ける。
片方は待っているとか、すぐに行くとか、状況に応じて変わるけれども内容はさほど変わらない。
両方とも再会を願う言葉だ。
だが、ソレも叶うのはそれほど多くはない。
たとえば新しい地で、新しい恋人が出来るとか。
案外簡単で。
永遠の愛なんてないよな、なんて。
その時だけで愛を囁けばソレで済むはずだと、オレは思ってたんだけど……。
「そんなこと聞くなんてどういう心境の変化?マリーチらしくない」
データベースに夢中のまま、気に入った物はメモを付けながらルイセは言う。
オレとルイセは結構長いつきあいになる。
いわゆる仕事仲間だ。
ドライなつきあいだと思う。
それ以上発展させようと思えば出来るのだろうけど、ルイセがそう言う雰囲気にさせようと思わせない。
あくまでも仕事でのつきあい。
そんなことに気を使うよりも最初に答えたように知識を増やしたり仕事をしたりする方が好きなようだ。
そうやって何かを吹っ切っているというか……そう言う楽しみを覚えたというか。
ルイセの中に恋愛という文字はないような気がする……。
って前は、断言できたんだけど。
「ん〜やっぱりエカルマに行った影響?」
「なんでそこでエカルマが出てくんだよ」
「王女様可愛かったよねぇ。ちょっと……、世間知らずなとこあるけど。ちょっとどころじゃないか?」
ちょっと前まで滞在していたというか、今世話になってるところがエカルマの王城だ。
オレ達はそこで客員として招かれている。
仕事も兼ねて。
「さすが、ラヌーラ王家、今までの団体様より報酬が高いよねぇ」
ルイセは……オレと付き合うようになってから金に執着しだした。
「お前に必要なのは知識と金だな」
「当然でしょ。って話そらさない。あたしより、マリーチでしょ?」
「え?オレっ?」
何がだよ。
「そのうち、マリーチ言いそうよ。生きていくのに必要なのは他でもない、愛だ!!なんて王女様に片膝着いて言いそう」
笑いながらルイセは言い出す。
っつーかウケすぎだ…。
「ん?マリーチよりさぁ、案外キザな台詞言い出すレムネアの方が合うかな?」
あぁ、もうどうでもいいや。
こんなこと考えたオレが悪い。
「おし、これでいっか。結構報酬高いし、色称号着いてるからいろいろプラスしてくれるかなぁ〜」
そう言ってルイセは依頼受け付けの手続きを始めた。
そんな後ろ姿を見ながら、思わず彼の姫を思い出したオレは本気でルイセが想像した『キザな台詞』を言い出しそうだとため息をついた。
もうちょっと書いてから本編に入りたいなぁと思います。
色称号ってなんだって言われる方のために。
D5とunderの世界では各職業の最高峰と呼ばれる人物に『色』がつきます。
魔道士は黒。聖道士は白、魔法剣士は赤、聖騎士は銀、竜騎士は青、召喚士は緑、騎士は金。
という感じです。
underの世界で赤の魔法剣士と銀の聖騎士は既にロシュオールとランディールに付けられているので誰も付けることは出来ません。
ちなみに竜騎士も絶滅したので同じです。