「ターナ様、殿下が帰ってこないのですが」
「…っ…分かりました。探します」
「申し訳ありません」
こうやってカルロを探しに城下を出るのは何度目だろうか。
カルロの放浪癖は相変わらず直らない。
窮屈なのも分かる。
彼は一定年齢までこのハーシャではなくトゥルーラにいたのだから。
自由奔放でガラは悪いけれども誰彼にも等しく話しかける彼はハーシャの王位継承者として相応しいだろう。
でもその反面、反感を買いやすいのも事実だ。
現に彼は中枢にいる者達に疎ましく思われている。
だからこそ、城を窮屈と感じ外に飛び出す、彼等に悪い心証を与える、そして、窮屈を感じる。
悪循環になっていることをカルロは分かっていない。
いや、分かっているんだろうと思う。
だからわたしは彼の側にいるしこれからも居たいと思う。
20そこそこの私がシャナ・カムイの代表を務めているのはひとえにカルロのためだ。
その昔栄えた魔道王国聖古グラフィス。
その五大王家の血を引くカルロと私。
だからこそその地位にいるのだと思われたくない。
「なに、走り回ってんだ」
とある一角で息を整えたときだ。
当たり前の様に隣から聞こえてくる。
「誰のせいだと思ってるの?」
「オレのせいかよ」
「カルロしか居ないじゃない」
「ワリィ」
強く言った言葉に弱い言葉が返る。
隣を見れば銀色の髪にアイスブルーの瞳。
「カルロ、探したの」
「ワリィ……」
「私だけじゃなくって他の人も」
「知ってる」
知ってたなら帰ってきてと言おうと思ったけれども言えなかった。
「何かあったの?」
いつも自信たっぷりな笑顔を見せている顔が今日は少しだけ寂しそうに見えたから。
「コニ・カルルス」
あぁ、カルロは知ったんだ。
あのことを。
出来うることならば知らせたくなかったし、私も知りたくなかった。
でも、それは事実で覆させることが出来ない。
「心配すんな。オレは無茶はしない。じじいどもはわかんねーけどな」
「カルロがちゃんと居てくれれば大丈夫」
言葉の奥にたくさんの思いを入れてカルロに伝える。
じっとあたしの目を見てカルロはフッと息を吐いて言う。
「しゃあねえからな。城にいるのはメンドーだが、お前がいるシャナ・カムイなら構わねえぜ」
あぁ、伝わったらしい。
「ダメよ。あなたは王位継承者なんだからちゃんと王城にいなくちゃ。シャナ・カムイの本部だって王城にあるのだから問題ないでしょう?」
こうでも言わないと、カルロはまた行方をくらますから。
ソレのための予防線を張っておかなくてはね。
と思ってみたりしてます。