緑が色鮮やかな美しい森の中で彼女に出会う。
ピンクゴールドの長く美しい髪。
長くとがった耳はエルフの証。
木陰に座り歌を歌う。
「キミは?」
と名でも問うてみようか?
「誰だ貴公は?ヒトに名を問うならば自分から名乗るが礼儀ではないのか?」
彼女は近寄ってきた男をにらみつける。
薄紅のマントに身を包み紫紺色の髪を長く垂らす。
瞳は髪と同じ紫紺色だというのに時折金色の輝くのは何故だろうか?
「コレは失礼いたしました、美しきエルフの女王」
そう言って男は恭しく頭を下げる。
「私はピエヌ・シャハガールともうします。一介の魔法使いとでも申し上げましょうか」
「私を謀るならば容赦はせぬぞ?」
「美しき女王を謀る術を私は持ち合わせてはおりません」
「女王と言うのはやめてくれ」
「何を仰いますか。あなたの美しきそのお姿はエルフ神族の証。そうではありませんか?」
そう言ってピエヌ・シャハガールは彼女を讃える。
長い金の髪は赤みがかかり、それが差す木漏れ日によって美しく輝く。
瞳は鮮やかな天上の青。
その美しさはエルフ神族の証。
彼はそう彼女に訴える。
「で、この場には何用だ?大した魔力のないモノではないようだな。私の張った結界に入り込んだのは、お前で二人目だ」
「この地が美しいと聞きまして」
「ヒトが入れるような場所ではなかったのだが?」
「迷ったあげく、魔法結界に気がつきました。ヒトがいればと思い開けてみたというわけです」
そうピエヌ・シャハガールは言う。
「迷ったあげくに開ける。随分と大胆というかふてぶてしいというか……。これではまるで何かを探しに来たように思えるぞ?」
「そんなことはありませんよ」
そう言い訳をするピエヌ・シャハガールから目を彼女は離し遠くを見る。
「魔力は放出せぬ方が良いぞ?それから剣も抜かぬ方がよい。死にたくなければな」
「何をいきなり仰るのでしょうか?」
本気で言っているのか冗談なのか。
どちらともとれる、とれない言い回しに彼女は笑う。
「試してみるか?お前が見たがっていたモノが見れるかも知れぬぞ?」
退屈していたところだ。
長い年月を生きるエルフ神族。
その年月は不死であるゴルドバの3人には及ばずとも気の遠くなるほどの長い年月を生きる。
ならば多少のことは起きても問題ないだろう。
「剣を抜いてみよ。このところこの近辺を歩き回っていた男の話聞いているぞ?薄紅のマントに紫紺の髪。目的は何だ?私か?お前の目的が宝珠ならば私は必要だろうな?私はラルドエードの神娘ハイファ・ガワールなのだから」
「やはり、巫女は現存のモノか。これは面白い」
そう笑ってピエヌは纏っていた穏和な空気を捨て寒々しい空気を纏う。
そこに混ざっているは殺気。
「そうだ、言うのを忘れていた。殺気も出さぬ方が良いぞ?もう遅いかもしれぬが」
そうハイファが言ったときだった。
一陣の風が舞い上がったと思うと彼女の目の前に一人の男が立つ。
金色の髪に青い瞳。
その色はエルフ神族の王家につながる色。
「殺気を感じ何事かと思えば、お前は結界の外で私にラルドエードの事を聞いた男ではないか。随分と気配が違う。何者だ?」
エルブスダガーを構え彼はピエヌ・シャハガールに問い掛ける。
「っ、。成程、巫女の側に守護聖騎士ありというのも正しい事だったか」
「ほう、随分落ち着いている。オレを見ても驚かないって言うことはただ者ではないと言うことか。さて、死にたくなければこの場から潔く立ち去るが良い。オレも神娘の前では無駄な殺生というモノはしたくない」
「ではこの場は退散させていただきましょう。またお会いできたらいいですね」
そう言ってピエヌ・シャハガールは踵を返しその場から立ち去る。
ココからは魔力での転移が不可能だと知っていたのだろうか。
ここは約束の地ラルドエード。
「無駄な殺生とお前は言うが…私は気にしては居ないぞ?セジェス。旅をしていた頃はさんざんやっていた癖に」
ピエヌの姿が見えなくなりハイファは改めて自分の前に立った男、セジェス・アクレイアにそう言う。
「さすがにお前が神娘の位置に着いたのだ。出来るわけが無いだろう?」
「エルフの神娘がそう言うものではないとお前は知っているだろう?」
「では単純にオレがお前に見せたくないだけだと言えば分かってくれるか?」
「お前がそのような言葉を吐くとは思わなかった。ジェスやリリーに言ったら大笑いするだろうな」
ハイファはそう楽しそうに笑う。
「それだけはやめてくれ…ハイファ」
その光景が浮かんだのかセジェスは本気で抵抗する。
「それより…問題はあの男……だ……後々の災いの元にならなければ……」
「気のせいだと……残念だが言うことは出来ない。オレも同じ事を感じた。あの男の魔力は暗黒に近すぎる…」
セジェスはピエヌが居た位置に目を向ける。
彼の魔力の残存はない。
「何も起こらなければいいんだがな……」
いつになく気弱なセジェスの言葉にハイファも同様にうなずいた。
COLORSだからね…色にこだわってみました。
ピエヌ・シャハガール、最初は髪の色銀青だったんだけど、こいつに銀青はもったいないと言うことでやめました。