「ちびうさちゃん、誕生日おめでとう」
「ありがとう、みんな」
「今日で何歳?ちびうさ〜」
今日はあたしの誕生日。
みんながお祝いしてくれてるの。
「30世紀に帰らなくて良いの?」
「この後帰るよ。ねぇ、うさぎは?」
今日はあたしの誕生日だけど、うさぎの誕生日でもある。
みんなが祝ってくれるパーティーなのにその肝心のうさぎが居ない。
ついでにまもちゃんもいない。
「うさぎちゃんはね今日はまーもちゃんとデートなの」
でも、誕生日はみんな一緒にいたよねぇ。
「どうせなら、みんなで祝いたいなぁって思ったのよ」
みちるさんの言葉にあたしは首をかしげる。
みんなってどういう事だろう。
ここにはみんな居る。
亜美ちゃんもまこちゃんもレイちゃんも美奈ちゃんもほたるちゃんもはるかさんもみちるさんもそれからせつなさんも。
あ、わかった。
そう言うことなんだ。
「来週やることになったんだけど、ちびうさちゃんはどうする?」
「来て良い?っていうか絶対来るから!!!!」
みんなが祝ってくれるパーティー。
「でもレイちゃん仲良くなったの?まこちゃんはちゃんと好きって言った?亜美ちゃん、本の貸し借りだけじゃ進展しないよ?」
「ちょ、ちょっとドコまで知ってるのよっ」
「全部かなぁ?いろいろ聞いてたり」
だってあたし30世紀のプリンセスだもん。
全部知ってたりするんだよね〜〜。
「っ……絶対、仲良くなんてならないんだからっっ」
「レイちゃん……。未来でもあんな感じ?」
美奈ちゃんがこっそり聞いてくるけど、とりあえず、秘密?
「うさ、プレゼント何が欲しい?」
「え?だから何でもいいよって言ったよ?」
今日、逢ってからずっとそう聞かれてる。
いつもアレ欲しいコレ欲しいって言うからかな?
でも、今回はまもちゃんがくれるものなら何でもいいかなって思うんだよね。
「そう、言われてもなぁ……。何をあげて良いか悩むんだよ。大抵なものはあげてるしなぁ……」
「そうだね。結構いろいろもらってるね。ありがとう」
まもちゃんと会って4年。
その間誕生日だけじゃなく、クリスマスだってあったわけだし。
「嬉しかったんだよ。今日になってすぐにまもちゃんから誕生日おめでとうって言ってもらえたの」
それがね、すっごく嬉しかったの。
だから、何ももらわなくても全然平気になっちゃった。
まもちゃんが近くにいるって分かっただけで。
アメリカとかそんな遠くじゃなくって。
ギャラクシアと戦ってたときは誕生日とか全然関係なくって。
ただ寂しくて、ただ苦しくて仕方なかった。
「だからね今はまもちゃんが側にいるだけで幸せかな……」
「うさ……。一人にして済まない」
「謝らなくてもいいんだよ。まもちゃんがね居るって分かるだけでそれだけでいいから。アメリカに行ってもたまには帰ってきてくれたり、電話してくれたり、メールとか、手紙とかあと、うんと、」
ふぇ……。
考えると泣いちゃうよぉ。
「うさ、まだアメリカには戻らないよ。だから泣かなくたって大丈夫」
分かってるんだけどね、まだまもちゃんは当分日本にいるって。
でもアメリカの大学の新学期が始まる前には戻るわけで。
寂しいのはあたしだけじゃないよね。
「ごめんね、泣いちゃった。行くまで側にいて?」
「当たり前だろ?側にいるし、うさもオレの側にいて欲しい」
まもちゃんはあたしを抱きしめながらそう言う。
太陽みたいにまもちゃんはあったかい。
誰かが言ってたっけ。
まもちゃんは、太陽の守護を受けた王子様なんだって。
だからまもちゃんは太陽みたいなんだね。
月は太陽が無くちゃ輝けない。
太陽があるから地球にその淡い光を届けることが出来ない。
なんか不思議。
あたしはまもちゃんがいるから強くなれる。
強くなれるから守ることが出来る。
巡り巡るんだね。
「そうだ、ちびうさの誕生日プレゼント、どうしよう…。何も考えてない」
ふと思い出した。
今日はあたしだけじゃない、ちびうさの誕生日でもある。
「オレは考えてあるよ」
な、なんでぇ?
「あたしには頭悩ませて結局聞いてきて……」
「いや……悩んだんだけど……。アレが一番良いかなって」
アレって何よぉ。
「まぁ、うさも行こうか」
どこに?
「オレが居なくちゃ行けない場所」
まもちゃんが居なくちゃ行けない場所?
なんてあったっけ?
「忘れた?」
………。
「ちびうさの誕生日プレゼントとしては良いかなと思ったんだけど」
いたずらっ子の様にまもちゃんは言う。
「……良いの?」
「まぁ、うーん、軽く複雑だけど、一応当事者だけど、厳密に言えば当事者とまではいかないし」
何とも言えないような表情で悩むまもちゃんはどこか父親の顔してる。
「ちびうさ、喜ぶよ」
あたしは携帯でちびうさを某所に呼び出す。
多分、みんなと居るだろうからきっと連れてきてくれる。
「うさぎ、まもちゃんとデート中じゃないの」
案の定ちびうさはそんなかわいげの無いことを言う。
「デート中です。でも、今日あんたの誕生日でしょ?まもちゃんが誕生日プレゼントくれるって。後コレ、あたしから。付けてあげるからじっとして」
香水をしゅっと振りかけて小さな小瓶を渡す。
「あとコレも。あんたがほしがってたピアス」
そうちびうさの耳についてるピアスと持ってきたピアスを交換する。
「う、うさぎ、こんなに良いの?それにこれうさぎが気にお気に入りのピアスなんじゃ」
「今日はあんたの誕生日でしょ?」
「でもうさぎの誕生日でもあるわけでしょ?」
「ちびうさが居ることが……それで十分よ……」
あたしの未来にちびうさが居る。
それってまもちゃんと一緒にいれるって事だもん。
「……ママみたい……」
ぼそっと呟いた言葉。
ホントあたしもそんなこと思うなんて思いも寄らなかったわよ。
でも育子ママも同じ事思ってるのかな?
なんて思ったり。
「行こ、まもちゃんが待ってるよ」
ちびうさの手を引いてまもちゃんの待つ場所に向かう。
「う、うさぎっココっ」
噴水のある広場にたどり着くとちびうさが驚いたように周囲を見渡す。
「知ってるの?」
「知ってるもなにもクリスタルパレスにあるもん。地下の方だけど……良くパパと一緒に行くよ」
そう言ってちびうさは噴水に近寄る。
「まもちゃん、なんでクリスタルパレスにある噴水がココにもあるの?」
「うさ、説明してないのか?」
ちびうさの質問を聞いてまもちゃんはあたしに聞いてくる。
「まもちゃんが説明したほうが良いかなってあたしは思ったんだよ。まもちゃんしか開けられないんだし」
あたしじゃ開けられないんだし。
一回開けようと思ったことがあったんだけど……結局開かなくって。
「ちびうさ、ココには扉があるんだ」
「扉?ドコにもないよ」
ちびうさは噴水の周囲を回る。
「あるんだよ。オレからの誕生日プレゼント」
「ちゃんとおめかししたんだから。おしとやかにしてなさい」
「ちょ、どういう意味よっ。うさぎみたいにドジじゃないんだから。そんなこと無いんだから。ねぇ、何があるの?」
思いっきり不安なのかちびうさはあたしとまもちゃんの顔を交互に見上げる。
「ちょっとぉ、まもちゃん、うさぎっっ教えてよぉ」
「今教えるよ」
そう言ってまもちゃんは噴水に手をかざす。
「開け大地の扉。大いなる守護の元に」
すると扉が現われ静かに開いていく。
キラキラと輝く森と湖が扉の向こうに見える。
そして金色に輝く神殿。
「……エリシュオン?うそ、これエリシュオンの扉?」
ちびうさは信じられないモノをみたような目で扉の奥をみている。
「エリオスに逢っておいで。で、そしたら30世紀に戻ったらキングに内緒で扉開けちゃっても大丈夫だから」
「うさっ。何を言い出すんだ」
複雑な顔でまもちゃんは言う。
「いいの?逢ってきても」
「うん、逢いたくないの?」
「逢いたい……でも……30世紀までエリオスは……」
あたし達がいる時代とちびうさの時代は1000年の時間がある。
「これはルナに聞いたんだけどね、エリシュオンの祭司は眠るときがあるんだって。その時がもの凄く長いんだって、だから眠ってる間にきっと30世紀になってるよ」
「ホント?」
「うん」
………多分。
実は聞いてない。
適当に実は言ってみたんだけど。
「分かった。エリオスに逢ってくる」
「うん」
そう言ってちびうさはエリシュオンの中へと入っていく。
「適当な事、言ってたけど。ばれたらどうするつもりだ?」
で、でもアレはちびうさを不安にさせないためのものでぇ……。
「まぁエリオスがフォローしてくれるよね」
「オレはしないからな」
ま、まもちゃん……。
「ずっと長い間逢えなくてもいつか逢えるって思いながら、待ってるよ、オレは」
まもちゃんはエリシュオンを眺めながら言う。
「待っててくれるの?」
「うさは?」
「あたしも待つよ。いつか必ず逢えるって。だからあたしはまもちゃんと逢えた」
「そうだな」
風の音がさわさわと鳴る。
日の光が差し込む公園で、あたし達はそっとキスを交わした。
ポイントはまもちゃんは太陽の守護を受けた地球の王子様(15巻でネヘレニア様が言ってましたね)〜な下り。 巡り巡ってるんだなぁと思ってみた感じです。