「今日はいつの話をするんだ?」
カリィは期待をこめた顔でアシュレイを見つめる。
「楽しみになった?」
「まぁな。お前の話は面白いし。昨日の話はアレで終わりだろう?」
「そうだね」
寝転がっているカリィの側に座りながらアシュレイは言う。
「じゃあ、色の称号というのを知ってる?」
「知っている。黒の魔道士、白の聖道士、後なんだっけ?」
「有名で対極的なのはその二つだ。あとは銀の聖騎士、青の竜騎士、緑の召喚士、赤の魔法剣士、金の騎士……」
「銀の聖騎士はベラヌールの聖騎士団団長の証。赤の魔法剣士はハーシャのスペルナイトマスターの証。だったな。間違ってるか」
「あってるよ。今日はその二つでもない。……今日は今は存在しない称号。青の竜騎士の話をしよう」
「竜騎士は数が少なかったと聞いたことがある。手なずける事の出来る竜が少なかったって」
「そう……」
カリィの言葉にアシュレイは静かにうなずいた。
「あら?私は自由に生きているわ」
彼女はそう微笑む。
黒みがかった緑の髪に茶色の瞳。
それがとても美しい。
「だから、一緒に来てって言ってるの」
旅は道連れとは言ったもので、彼女とはイゼナ・モトブの街角で出会った。
ギルドが多数並ぶ場所の片隅で、喧嘩をしていた彼女。
助けに入らなければ。
そう思ったのもつかの間、彼女は相手を簡単に伸してしまった。
だが相手の仲間が後から出てくることに驚いた彼女は突然、オレの元へと走ってきたのだ。
そしてみていたオレを巻き込んで逃げ出した。
「簡単に他人と喧嘩をするな」
走りながらそういさめてはみたが
「ふっかけてきたのは向こうだもの。私じゃないわ」
町人風情というかギルドを活用するもの風情な姿をしているがその話口調はどこか高貴な気配が漂っていた。
広い、イゼナ・モトブの中を走っている間に奴らを巻いたらしい。
さすがに息が上がったが、彼女はどうだろうとみてみれば座り込むほど疲れ切った様子もなく、騎士であるオレと同じように呼吸を整えていた。
「騎士?よね」
「一応」
「でも二つ帯剣してる人始めてみた。ロングソードとショートスピア。もしかして、竜騎士?」
オレは彼女の眼力に驚いた。
騎士でも槍を好んで使う人間はいる。
オレを見て竜騎士だと判別した人間は今まで居なかった。
オレのクラスは竜騎士。
カルパードラゴンと言う小型の有翼竜を馬のように乗りこなす騎士。
それを竜騎士という。
だがカルパードラゴンを手なずけることの出来る人間は少ない。
オレの家は代々竜騎士の家系だった。
だが家系だからといって竜を手に入れられるわけではない。
長命の竜、それなりの魔力が無くては乗りこなすことが出来ず、竜騎士としては生きていくことが出来ない。
自分だけの竜。
オレはそれを探してイゼナ・モトブまでやってきた。
ここのギルドならばカルパードラゴンの住処の手がかりを得ることが出来るからだ。
彼等は、人との契約で人を乗せる変わり、住処は教えない…と。
代々竜騎士の家系であるオレですら教えてもらっていない。
こうやって探すしかないのだ。
「成程ねぇ。カルパードラゴン探し……か。で、分かったの?ギルド行ったんでしょう」
彼女は知らない。
オレが
「まだ、ギルドに入る前だったんだ」
ということを。
「う、ごめん」
そう彼女はうつむく。
「戻るの?」
「一応そのつもりだが」
彼女は着いてくると言うのだろうか。
「だったら私も行くわ。情報ギルドなら知り合いも居るもの。Sランクの情報だって手に入れることが出来るわよ」
そう彼女はオレに言う。
逢ったばっかりの人間にしかもオレが彼女に巻き込まれたような状態の今の中で彼女に世話になろうとは思わない。
「あのなぁ」
「あなたがギルドに入れ損なったのは私のせいだわ。この街中をさんざん走り回ったのも、私のせい。そのくらいのお詫び分にはなるとは思わない?」
勝ち誇った様に言う彼女にオレはため息をつかざるを得ない。
「じゃあ、良いのね。行きましょう?」
オレは彼女に引っ張られギルドに戻る。
さっきまで居たところからさほど遠くなかったこのギルドで彼女は受付の女性と話している。
「彼よ?」
そして彼女はオレを紹介してくれる。
「じゃあ、まず名前を教えてくれるか?」
「レムネア・クラブ・ジード」
「竜騎士の家系のクラブ家……か。情報は簡単のしかあげられない。カルパードラゴンは絶滅保護種だからな」
受付の男性の言葉にオレはうなずく。
竜騎士もオレの家だけの人間…父とオレだけになった。
カルパードラゴンと契約が難しい以上にカルパードラゴンが絶滅の危機に遭っているからだ。
「彼等の生息地はファーレンの王家が管理している。ファーレンの王族に逢うと良い。クラブ家の人間だと言えば逢うことが出来るだろう。証は?」
「持っている」
クラブ家の人間だという証はロングソードに刻まれ、竜騎士だという証拠はショートスピアに着いている。
「じゃあ、健闘を祈る」
うなずいてオレは外に出る。
「待って、レムネア」
彼女が追いかけてくる。
「私の名前言ってなかったわよね。私はリア・シェイ・サテラ。私もレムネアと一緒に行っても良いわよね?ファーレンなら案内できるわ。私の家もファーレンにあるの」
「……何故オレに付いてくる」
つきまとっているという言葉がココまで来ると似合う気がする。
「あなたが気に入ったからじゃだめ?旅は道連れって言うじゃない?」
「ココまで何で来たかオレは知らない」
オレの住む所からハイリアへは定期便がでている。
だが、オレはハイリアまで歩いてきた。
その間魔物と多数出会い倒してきている。
何度も命の危機が訪れた。
正直言えば彼女を守ってファーレンまで行く余裕が無い。
「大丈夫、私は強いから。それに一応聖武道士だし」
……武道士?
身一つ戦うことの出来る者を言う。
聖道士の派生型だと聞いたことがある。
「癒しの呪文使えるから、助けてあげられるわ。魅力的でしょう?」
そう彼女は微笑む。
「……危険な目にあっても知らないぞ」
「大丈夫」
そう返事する彼女はとても自信に満ちあふれていた。
「これからよろしくね、レムネア」
「あぁ、こちらこそよろしく、リア」
差し出された手をオレは握る。
『あたしは大丈夫よ』
どこかで何かをみたような気がした。
「レムネア?どうしたの?」
「いや、何でもない。日がある内に次の街に行きたい。それは無理か?」
「そんなこと無いわ。いける」
「行こう」
オレの言葉にリアはうなずいた。
カルパードラゴンを得るためにオレはファーレンに向かう。
森と水と山の国。
神秘的の国でオレを待ち受けていたのは数々の試練だった。
このリアとレムネアの話は多分書かないんだけど、なんかこの歌聴いてたらこの二人の出会いが書きたくなって……。