「どうするの？」
「って言われてもなぁ～」
「無責任！！！」
　そう言ってハンマーで潰した。
　依頼はとある組織への破壊活動（警察が入り込みやすいように）。
　相変わらず冴子さんから来る依頼は恐ろしいほど、荒い物が多い。
　その分いろいろ見逃してもらってるから大きな事は言えないけれど。
　で、ほぼ依頼完了したのはいいんだけど……。
「ここまで多いって聞いてねえっつーの」
　その組織の下部組織があまりにも多くって、あたしと撩は現在足止め中だ。
　で、冒頭の会話に戻る訳だ。
「っつーか、逃げたい」
　そう言ってミニのハンドルに撩は顔を沈み込ませる。
「それ、あたしのセリフだから」
「冷たい事言うなよ。オレ達パートナーだろ？」
「………………こういう時だけパートナー面？」
「お前ねぇ」
　で、この状態に前日喧嘩してた事から入ってるからあぁもう、最悪。
「香～だいたい、こんな状況になったのもお前のせいもあるんだからなぁ」
「そんなぁ～だいたい、撩が！！！！！」
　状況としては警察が入り込みやすいと思う。
　って言うか、証拠とかも人とかも全部壊滅状態だ。
　でも、重要証拠は最初に忍び込んだ撩がここに置かれてた『耐火金庫』に放り込んだから、問題ない。
　それ以外の証拠は、まるで隠滅するように瓦礫となった組織の建物にある。
　瓦礫になったのはあたしのせいじゃない。
　と思う。
　喧嘩の原因は撩がかずえさんとでかけた事。
　あたしに内緒でね。
　そのせいであたしの機嫌は最悪。
　ちょっとぐらい火薬の量を間違ってもいいじゃない。
　壊滅、組織の建物破壊の分、あたしが先にやってあげたんだから。
「そういう問題かぁ～」
「………分かってるわよぉ～。このまま逃げたーい」
「じゃあ、逃げるか？」
　珍しく真顔で言う撩にあたしは何も言えなくなってしまう。
「…撩？本気？」
「さてね」
　そう言って撩は駐車していたミニのエンジンをかけ、アクセルを吹かし、その場から逃げるように走らせる。
「このまま雲隠れするか…、その為の資金も持ってきたしな」
　そう言って撩は後部座席に視線を移す。
　そこには組織からこっそりともらってきたジェラルミンケースが2ケース。
「何処でも良いわよ。この際だから、海外ってどう？」
「船に潜り込んで？」
「飛行機じゃない訳？」
「飛行機嫌いのオレにそれ言うかぁ？」
「この際克服するとか」
「船決定」
「うわ、横暴！！！」
　軽口たたきながら深夜の道路を爆走する。
　このまま新宿に戻るのか、はたまたどうなるかはその時の気分次第。