大橋巨泉いきなりの議員辞職というニュースは「はあそうですか」という感じで聞いたのですが、それに伴い次点王・ツルネン=マルテイが繰り上げ当選というのは盲点だった。というかすっかり忘れていた。
まるで往年の西本幸雄のように次点を繰り返していたこの人は、すくなくとも戦後では、帰化人初の国会議員ということになるはずです。同時にヨーロッパ社会で育った初の国会議員ということにも。変に国会に馴染まない存在になってくれたらと期待しています。
最終巻。祭りの終り。ここに至ってはもはやなにも言うことはありません。3年間、たのしうございました。
終始脇役に徹したキツネ=紺野みつねに、個人的には助演女優賞を差し上げたい心持ちです。このキャラクターで印象に残ってるのは、昼間から酒かっ食らってる場面や悪巧みしてニヤついてる場面ばっかりで、私事で思い悩んだりとか急にきれいに見えたりとか、他のキャラで多少はあったそういうエピソードが記憶にない。享楽的で刹那的な彼女が「ひなた荘」という場の維持に果たした役割は大きいのではないかと思っております。半分以上は自分の思いこみかもしれませんが。
あと、この漫画を14巻で終わらせたことは、高く評価されていいと思います。終わるべきときに終わるのは、とても大事なことだと思うので。
リンドグレーンの訃報を知ったのはスポーツ新聞で。ずいぶん長生きしたんだなあと思いつつ、自分にとってはピッピでもやかまし村でもなくエーミールかなあ、大どろぼうなんてのもあったんだ、あれ「泡沫の日々」でカッレくんって書いてるけどカッレくんって確かケストナーだったよな、間違ってるじゃん…
えー。言うまでもなく間違ってるのはおれの記憶のほうでした。名探偵カッレくんがリンドグレーン。エーミールと探偵たちはケストナー。20年近く経っているとはいえ、こういう基本的な記憶がだめになってるのは情けない限りです。
でも大丈夫。両方とも登場人物の名前もあらすじもほとんど覚えてないけど、それでも大丈夫。どちらも今の自分の血肉になってるのだけは間違いないから。
舞台は地球を遠く離れたオセアノという惑星。まだ全く文明の発達していないこの惑星の生物を衛星軌道上から見守り育てる、地球人類の若い男性が主人公。冒頭でやっと二足歩行を始めた生物たちが急速に文明化し、遠洋航海を行なうまでになったところでこの巻は終わっています。
かたや人類社会の行政官、こなた現住生物の育成役。その治める社会に住む者は違うけど、この本を読んでいて思いだしたのは、眉村卓の司政官シリーズでした。人間をサポートするのがどちらも人工知能(ロボット・アンドロイドと呼び名は違いますが)であることも共通点。「こちら郵政省特配課」という本も書いているこの作者は、珍しく行政権力側の人物を主人公とした小説を書く点でも、眉村卓に通じるところがある。そう言っていいかもしれません。
とはいえこの小説が司政官シリーズとうりふたつということでは、もちろんない。この巻の最後になってはっきり示された、主人公の属する組織の無謬でも一枚岩でもないありさまは、司政官シリーズでは描かれなかったものです。組織に属する人間の限界を描いた小説と、組織自体の限界を暗示した小説。そこに描かれた時代の社会−−特に官僚機構の評価の違いを見取るのは、少し安易に過ぎるかもしれないですが。
すごく後を引くところで終わっているので、できれば早く2冊めが出るとうれしいなあ。たぶん2巻では終わらず、全3巻か、もしかしたら4巻くらいになりそうかな。
新条高嶺「聖ふぐり大学日本校 八王子キャンパス」ですね >たぶん読書日記。いかにもなタイトルの漫画なのだがなぜか読んだ記憶がない。なんじゃこれと思ってすっとばしてしまったのかな。
この漫画は94年夏準入選だったようです。このときの四季大賞は荒巻圭子、四季賞は木尾士目と有川祐、準入選に安倍吉俊と音吉呉於、佳作には磯本毅(つよし)や三部敬やどうたか(堂高)しげるの名前が見えます。なんとも豪華なメンバーなんだけど、このなかで今でもアフタヌーンに描いてるのは木尾士目だけなのか…
ななな、なんだこりゃ。なんでいきなりこんなのが載ってるんだ。
(問)この漫画の絵は好みか。(答)好みだ。
(問)この漫画の絵はどれくらい好みか。(答)そりゃあもう。
思ったまんまを正直に言うなら、もう来週から毎週載せてほしいくらいです。これは一発読切8ページだから、実際にはこの続きというわけにはいかないけど。まずは別冊ヤンマガでいくつか、というのが現実的なんだろうけど。これは間違いなく原石だ。
給食係(女子)がにんじん嫌いの子(男子)にいきなり口移しで食わせようとするシーンにはたまげました。ここには恋愛感情はないのだ。いや少しはあるかもしれないけど、仰天させて赤面させて喜ぶ方が強いのだ。悪魔だ。なんてこったい。というわけでびっくりしたのは決して絵柄だけではないのです。
ダークなバンパイアものだった「Distopia」から一転して舞台は近未来、主人公はごく普通の女性。小説家志望のこの女性は、でも長く孤独で感情の起伏に欠けていて−というより自分の感情をあらわすことが下手で、このあたりはやっぱり前作と共通したものを感じます。テーマとキャラクターに合わせて、絵の個性はかなり抑えてあるけれど。
おはなしは主人公と、彼女のもとに送られてきた女性型ロボットとのやりとりを中心に進みます。モニターとして選ればれて送られたロボットとの2週間だけのつきあい。わかったようなことを言うロボットにいらだちながら、いつしか彼女に心を開く主人公。
「でも私は/それを悲しいと思うことも知らないんだよ」
「−−イイエ 忘レテイルダケデスヨ キット」
主人公とロボットのこのやりとりが、個人的にはものすごく印象的です。そしてこの言葉を裏打ちするようなラストは、ひとひねりしてある分よく効いている。こういう漫画を描く人なんだな、とあらためて確認した思いです。
読切がひとつふたつみっつよっつ、たくさん載ってる。巻頭フルカラーの「Wings Songs」 はこれはまたえらい人を持ってきたなあという印象。この作者の漫画を読むのは四季賞準入選の「VOICE」以来だから2年半ぶりで、今回のを見るかぎり、フルカラーにこそ本領のある人かもしれません。5月号から連載になるらしくて、連載もフルカラーでやってくれるならとても楽しみ。
「Virginal Knuckle」 は歴史物風味のスラップスティック、こっちはこっちで別の意味で−オーソドックスな漫画として−すごく上手い。以前どこかで読んだような気もするけど、もしかするとこの人のまんが読むのは初めてなのかもしれないです。「Preciouns Stone」 は女の子が癒しの手の持ち主という、文字どおり癒し系の恋愛もの。「『コンセント。』」 については前記のとおり。
連載陣では…といっても短期集中なんだけど「スパイダーズ・ウェブ」 かな。前作にくらべて軽いタッチなんだけど、今回の最後に来てなにやら主人公の過去を匂わせています。これが次にどうつながるか。
読切:「Wings Songs」(大本海図)、「Virginal Knuckle」(國津武士)、「『コンセント。』」(桂木すずし)、「Preciouns Stone」(一ノ矢香苗)
きのう飲んだ酒が残って宿酔の一日。吐いたり物が食えなかったり動けなかったりしたわけではないのだけど、根気が続かず頭がすっきりせず微妙にだるい。性能当社比70%という感じ。こういう一日はなんだかもったいないなあ。
生まれて初めてWebマネーというものを買いました。なんとなくWEB上での行為によりやりとりされる架空のお金みたいなイメージがあった(完全に地域マネーとごっちゃになってます)けど、ソフマップで買ったそれはプリペイドなスクラッチカードでした。これべつに磁気とかで記録してるわけじゃないんだよなあ。なんだかトランプのカードを変わらん雰囲気。
ちなみにこれ買ったのは「みずのかけら」をやるため。さっそく始めてみたのですが、途中でいつのまにか意識を失ってました。なんせ宿酔なもんで。
「ササメケ」 が続いています。永久連載決定だそうです。ここまで来たら正念場、ともすれば暴れ出す自分の中のあれやこれやは無理矢理押え込んででも、この漫画を描くことに全力投球してほしい。そう思います。
相変わらず読切があちこちに載っていて、その中のひとつ「ステップアンドステップ−ときめきメモリアル3−」 がいいです。ときめも本体と比べて云々はさっぱりわからんけど、この漫画は単体でしっかり読める。絵もいいし構成もいいしカケアミ使ってるのも好みだし、294ページの朗読シーンなんか開放感が素晴らしい。これからが楽しみなひとです。唯一気になるのは西川魯介と同じ雑誌で「めがね外した方がかわいい」というネタやってること。ええんかいな。
その「なつめヴルダラーク!」はこれ、隔月連載なのかな。今回は主人公の人狼娘そっちのけで眼鏡っ娘が暴れてます。いや別に暴れちゃいないが。
読切でもうひとつ「強襲揚陸学園」 、こちらはテンションの高いひでえギャグ漫画。これでハメはずしてないんか…と一瞬ツッコミかけたけど考えたら確かにこんなもんじゃないか。このひともいろんな雑誌に描く人で、一般誌で読んだだけでも赤/青BUTA、アニマル、マガジンZとこれで4つめです。確かヤンマガ本誌にも描いてたらしいし。
連載陣ではインターミッションっぽい「低俗霊DAY DREAM」 が悲しい話。このへんの緩急自在なところはあいかわらず見事です。いっこうにテンションの落ちない「Dr.リアンが診てあげる」 は次号とうとう巻頭。恐怖にかられて調べた結果、エースの表紙は巻頭作品でないほうが多いことを確認しました。でもここまで来たら時間の問題だな…
新連載:「ランブルフィッシュ」(川下寛次+三雲岳斗)
隔月連載:「なつめヴルダラーク!」(西川魯介)
読切:「ジジメタルジャケット(おためし版)」(泉昌之)、「ステップアンドステップ−ときめきメモリアル3−」(大岩ケンヂ)、「坂物語り」(たなか友基+大倉らいた)、「強襲揚陸学園」(祭丘ヒデユキ)
南太平洋の小さな国が舞台のSF。とりあえず上巻を読んだ限りでは、ミクロネシアの常夏の島の雰囲気やそこに住む人と主人公とのやりとりがいろいろ興味をそそる内容で、地球外生命の侵略を示唆するSF的な仕掛けより、むしろそっちのほうがおもしろいくらい。もっともまだ設定のほうがいろいろ謎ぶくみで、仕掛けの全貌が明らかにはなっておらず、だからSFとしてどうという話は続きを待った方がよさそうです。
この作者の本は始めて買ったのだけど、きっちりした小説を書く人だという印象をまずは受けました。下巻も出たら買います。
バンケルクホーベン、バンメイル、バルガーレン、デフランドル。おとといの日刊スポーツに載ってた、サッカーベルギー代表のDF陣の名前です。なんだか不必要に強そう。
ちなみにGKはデブリーゲル。ベルギー人の名字ってこんなのばっかなんだろうか。
不定期連載「苺ましまろ」 は禁煙を誓う16歳女子の話。別に煙草吸う女の子は好みでもなんでもないけれど、自動販売機の前にたたずみ涙を流す姿がたいへんに男前です。ここまできたら単行本ももう少し、これと「魔法遊戯」 が本にまとまるのがこの雑誌関連の最近の楽しみ。あ、もうひとつあった。なんだかページ数が増えてきた「一撃殺虫ホイホイさん」 だ。
こちらはひとあし先に単行本化が決まった「ニニンがシノブ伝」 、内容ははいつものとおり。この人のまんがの20回に19回は「いつものとおり」で済むような気もするけどまあいいや。「あずまんが大王」 はとうとうセンター試験。そういやこいつら受験生だったのか。もしかして次号あたり合格発表なんかあるんでしょうか。
シリーズ連載:「苺ましまろ」(ばらスィー)
このあいだ夜寒くてしょうがないことがあったとき、気まぐれに紅茶にウイスキーをどぼどぼ入れてハチミツを山ほど溶かしたよくわからない飲み物を作って飲んでみました。とりあえず適当にあったまって適当に酔っぱらったのだけは間違いない。
なんで紅茶かというと、紅茶が好きだから。なんでハチミツかというと、ハチミツが好きだから。なんでウイスキーかというと、ウイスキーも好きだから。まるでワインに砂糖を入れて飲む子供のような発想です。全部混ぜちゃえ。
「おい……コラァ/これはなんだ!?」「それは/たぶんクリームシチューですっ」「クリームシチューは黒いのか!?」「いえっ」「とぐろを巻くのか!?」「はいっ/1年もたつと……」「このイクラはなんだ!?」「ごはんです−−」「このキノコは!?」「洗濯物ですっ」「これは?」「わかりません!」…「ふぎゃーっ ブラジャー!」「はぎゃーっ パンツ!」「甲子園の土!」/「だまってろ!!」
のっけから失礼しました。
音楽大学でピアノを学ぶ千秋真一は実は指揮者志望。バイオリンもピアノも難なくこなす彼にはまわりが馬鹿に見えてしかたがない。ほんとうは海外に出たいのだが飛行機が怖くて果たせず、教授とも折り合い悪く、鬱屈した日々を送っている。
そんなある日彼が耳にした、てんでデタラメだけどすごくうまい不思議なピアノの音。そのピアノを弾いていた、実は隣の部屋に住んでいた少女・野田恵は、楽譜どおりに弾く能力はまるでないものの、その耳とピアノの音には確かに天賦のものを感じさせた。だがしかし。だがしかぁし。
ピアノの下にはさきいかの箱、上には林立するペットボトル。ゴミ溜めの部屋で暮らしろくに風呂にも入らぬ、好きなようにしかピアノの弾けない女の子。こんなとんでもないキャラクターをあたかも実在するように生き生きと動かすことができるのは、いったいまたどうしたわけなのか。
その答えはたぶん明白で、ナチュラルにとんでもないことをやらかす人間が実際どんな具合なのか、この作者の場合は自分を見ればたちどころにわかってしまうからに違いありません。なんだかひどいことを書いてる気もしますがあんな本(平成よっぱらい研究所)出しといていまさらひどいもないもんだ。だいたいこれはほめているのです。
冒頭のシーンを通勤電車の中で読んだのは失敗でした。少女まんがみたいな本を読みながら笑いをこらえる勤め人の図。傍からみるとさぞや不気味だったろうと思います。
実はこの本が出たのを知ったときには、それほど強く買おうと思ったわけではありませんでした。それが実際に本屋で見た瞬間、内容も知らないこの本を、なぜかは知らねど買わければいけないような気がしだしたのです−それこそまるで電波の指令を受けたように。直感とはときに恐ろしいものです。
朝の通勤電車でぼんやりと扉の横の予備校の広告を見ていたら、どうも見覚えのある名前が。講師の一人が高校の同級生だった。カリスマ英語講師だって。へえ。
今日は今日でやっぱり高校の同級生のサイトを見つけてたまげる。なぜたまげたかというと、それがhpの社員として作ったサイトだったから。日本hpではありませんでした。
15年も経つといろんなところでいろんなことやってるもんだなあ。
やあめでたい、これが作者の初コミックスになります。少年ガンガン連載作。
禁断の技に手を出した報いで片手片腕を失い、いまは鋼の義手義足を身につける兄と、身体をなくして空ろな鎧のみの存在となった弟。兄弟の錬金術師が主人公のたぶん長くなるだろう物語の、この1巻はその立ち上げ部分です。まずは名刺代わりというところでしょうか。
つねづねこの作者はしんどい話を正面から描ける人だと思っていて、この漫画にもそういう意味での期待をついしてしまうけど、こんな個人的な思いこみはほっといて、描きたい話を描いてもらえればそれでいいと思っています。とにかく楽しみ。できればこれまで描いた読切ふたつも、いずれ単行本に収録してもらえるとうれしいな。
なんかちょっと大変なことになっています。この雑誌の編集方針は自由放任なのか。
大変その1「恋愛ディストーション」 。夢の中とはいえいきなりチェーンソーで片手片足を切り飛ばすシーンにはたまげました。しかも返り血まみれの描写が異様にリアル。どどどどどうしたんだろういったい。
大変その2「果てしなき絶望の果てに」 は完全に守備範囲外なんで感想は割愛しますが大変なのだけは太鼓判ものです。大変その3「パスタの海で」 は久々に全開モード。自由自在のコマ割りに踊る手書き文字、むせるほどにあふれるにおい、そうだよこれがあめかすりの漫画だ。祝復活!
大変その4「ヨル☆ノビル」 は上記3つにくらべると一見大変ではないけど、よく考えるとやっぱり大変。夫の身体が伸びる(蛇のように)。伸びて伸びて夜空に星を取りにいく(長い長い蛇のように)。素晴らしい。ここんところのこの雑誌に載るこのひとのまんがはとてものびやかで、単行本にまとまったときのことを考えるとわくわくします。早く読みたい。
巻頭の「水底の天国」 も少年十字軍がテーマの読切という時点でかなり不思議なまんが。このひとのまんがで人が死ぬのもまた初めて見るような気がする。ほかにも「エビアン・ワンダー」 がひとくぎりとか「S and S」 が最終回とか「妄想戦士ヤマモト」 が3本だてとか。そのうえ来月号から増ページ。いったいどうなるんだろうこの雑誌は。
最終回:「S and S」(西村竜)
シリーズ連載:「果てしなき絶望の果てに」(あびゅうきょ)
読切:「水底の天国」(どざむら)、「fake」(嶺本八美)、「パスタの海で」(中前英彦)、「ヨル☆ノビル」(山名沢湖)、「思い出し日記」(石田敦子)
書こうと思いながらまだ書いてなかった。いぬいとみこが亡くなったそうです。1月16日死去、77歳。
このひとの童話がなくても今のおれはほとんど今のままだったろうけど、このひとの童話から得たものがいまの自分のごく一部、もしかしたら大事な一部を構成しているのは間違いない。「木かげの家の小人たち」「くらやみの谷の小人たち」の2冊はいまでも忘れません。ありがとうございました。
失踪HOLYDAYがまるで合わなくて二度とこの作者の小説は買うまいと思ったけれど、もう一度試してみることにしました。その感想をあてにしている人に、この人の小説を高く評価している人が何人もいたので。もう一度だけ、これでだめだったらもう買わない。そのつもりで。
結論からいうと、買ってみてよかったです。こちらの方がはるかに自分には合いました。それでもおはなしの組み立てはきれいだけどややきれい過ぎるし、ずいぶんと抒情的だし、好みかと言われると好みではないかな…と思いながら読み終えて、ふと自分が物悲しく穏やかな気持ちになっていることに気づいてびっくりする。この作者の小説が一種独特のインパクトを持っているのは、なるほど納得がいきました。
どの短編もどこか懐かしい雰囲気の漂う−けなしてるのではなくあまり現代的でない感じ(ほんとに現代的でないのかどうかはここでは措きます)がするのですが、とりわけ「華歌」にその傾向が顕著です。とっさに太宰修を連想したのはあまりあたっていなそうだけど、新潮文庫の100冊に入ってそうな、大正から昭和前半あたりの小説(これという具体名がどうしても思いだせないのですが)に、この小説はとても近いように思います。こういうの読むとヤングアダルト/ライトノベルというジャンル分けの無意味さを痛感します。純文学じゃいけないのかなあ、これ。
やっぱり1冊だけではわからないこともある。これをいい教訓にします。
「脱兎さん」 がいい。主人公は大学中退してふらふらしてる23歳の女性。住まいは築25年のボロアパート、隣には変な浪人生。なぜか周りに頼られてしっかりされてると思われて、中退したのもはずみで宣言したらみんなに納得されてあとに引けなくなって。以前バンドでギターやってたライブハウスを見に行ったらつぶれてて、そこでかつてのバンド仲間と会って。
行動だけでなく、顔もあえてかわいくなく描いてあるこの主人公がたいへんよいのです。こういう世間からずれてしまった人はずれたまんまたくましく生きてってほしいと心から思うし、だから楽天的なこのラストもいいと思います。「宇宙からコンニチハ」以来9ヶ月ぶりの登場になるけれど、今年あたりたくさんまんが描いてほしい人のひとりです。まだ21歳かそこらの若い人だったはず。
「FADE OUT5」 は切ない内容を正攻法で。「仕方ない」という言葉はときに自分を甘やかす逃げ道にもなるけれど、この言葉でやりすごすしか「仕方ない」ことはたしかに世の中にはたくさんあるのです。そういうお話。2本立て「吼えろペン」 はほとんどやけくそな内容だけど、この人の場合やけくそが芸になるのだ。得な作風…なんてうっかり口にしたら、ここに至るまでに流してきた血と汗と涙についてこんこんと説教されそうなのでやめときます。つうか実際そうだと思うし。
シリーズ連載:「ジャジャ」(えのあきら)、「FADE OUT5」(いけだたかし)
読切:「脱兎さん」(浅野いにお)
何から書けばいいんだろう。
このゲームはマルチエンディングのアドベンチャーゲームなので、たくさん用意されたシーンと、途中で分岐していくシナリオと、いくつかのエンディングがあります。それをぜんぶ目にすることがゲームをやりおえることとするなら、このゲームはまだ全然終わっていません。シーンの半分くらいはまだ見てないし、エンディングはひとつだけ。
エロゲーの多くがそうであるように、このゲームにはヒロイン−つまり主人公の相手となる女性−が複数存在します。メインヒロイン(この言葉を使うことにさえ抵抗を感じているのだけど)がふたり、その他数人、でも率直に言って、その他数人のそういうシーンは見たくないと思っています。興味がないんじゃない、どっちでもいいのではなく、積極的に見たくない。これも他のエロゲーと同様に、エンディングにはハッピーエンドとバッドエンドがあるけれど、バッドエンドは絶対に見たくない。現実で不幸な目に遭いたくないのと、へたをすると同じくらい。
つまり、おれはこのゲームとの距離のとり方に失敗しているのです。ゲームとプレイヤーという関係を保ちながら、そこで描かれる出来事をフィクションとして受け取る…他のゲームやまんがや小説や映画で普通にできることが、なぜかこのゲームではできません。
最初にエンディングを見てから数日後の今日、もう一度ゲームをやり始めようとしたのですが、起動するのが怖かった。やっとスタートして、分岐点で前回と違う選択肢を選んで、まだ見ていないシーンを見ていって、でも途中でやめてしまった。今の自分にはこういう遊び方はできない。いままでこんなことはなかったのに。心動かされたゲームはいくつもあって、それでもこんなに抵抗を感じることはなかったのに。
漫画や小説はマルチエンディングではない。お前がさっきたどりついた結末以外のラストが実はたくさんあるんだよ、そういわれたらたいていの読者は怒るでしょう。マルチエンディングというシステム自体が不自然なものなのだ。そういう言い方はもしかしたらあるかもしれません。
体調の悪いときにぶっとおしでプレイして、幸せな回想シーンとつらい現実のシーンをさんざん繰り返し行き来させられて揺さぶられてもう勘弁してくれと悲鳴をあげ続けて、そのあとようやく、ゆっくりと事態が収拾してラストへ向かっていく、その道行きにたどりつく。これはセミナーなどで使われる洗脳手法に似ていて、だからおれはこのゲームで自分で自分を洗脳してしまったのかもしれない。そうであっても不思議はないほど、このゲームをやりおえた後の自分の状態は異常でした。その状態の異常さに、翌日になるまで気がつかなかったほどに。
だとしたらまだその洗脳は解けていません。いや、それともこれは洗脳などではないのかもしれません。単に、そこに描かれていることが自分にとってはあまりにもリアルに感じられる、それだけのことかもしれません。どちらかはわかるはずもありません。
なぜこんなことになっているのか、自覚している理由はすでにいくつかあります。ふだんはすっかり忘れているけれど、30年以上も生きていればそれなりに、しんどい思いをした過去がいくつもある。そういういろんな記憶が−事実そのものよりそのときの感情の記憶が、このゲームをやってるうちに一気にぶり返してしまったというのが、原因の一つとしてはありそうです。生の感情の記憶だから強烈だけど、一晩寝たら元に戻る。でもそういう感情が蘇った記憶はまだ新しく残っていて、だからこのゲームをやるのがこわい。
いずれにせよ、このゲームとは時間をかけてつきあうことになりそうです。だからこれは途中経過報告です。もしかしたらずっと洗脳が解けないまんま−あるいはそれに近い状態のまま、結局決着をつけずに放置したままになる、そういう可能性もあるとは思っています。
どういうゲームかという内容の説明がぜんぜんなくて申し訳ないです。しないんじゃなくてできないんです。興味のある方はほかのサイトを探してみてください。たぶん、詳しく内容を解説したサイトがいくつもあるはずです。
なんだか寒気がするなあまた風邪かなあと思ったら、ほんとに寒い一日だったのか。でも頭痛もするしなあ。お茶飲んだりココア飲んだりして身体を温めようとしてもちっともあったまらん。風呂入って寝るのが一番かなあ。
そういやこないだアスキーの出してるネットワーク(ETHERNETとかTCP/IPとかのほう)の雑誌を見ていたら、「熱闘番長」という羽生生純の連載漫画が載ってました。内容はよくわからんかったけど、とりあえず番長が出てきたのは確かです。ついでに雑誌の内容とはあまり関係なかったのも。
そう、メガネをかけて眺めた世界はとても美しいのです。しばらくはずしてからかけてみるとよくわかる。連載2回目「エマ」 のこのシーンにはすごく共感しました。
「BAMBi alternative」(カネコアツシ)、「ウルティモ・スーパースター」(須田信太郎)とカムバック組の新連載が2本。「100万円!ベガスくん」(肉柱ミゲル)が復活していて「グリグリ◎」(市橋俊介)が載っていて、何だか今月号は同窓会のようです。3ヶ月ぶり「期末試験前也」(新谷明弘)は護り神のおはなし。護り神はぼくたちわたしたちの細胞でできているのです、だから身体の一部を提供のこと。
「よみきり▽もの」(竹本泉)は「目も流れるみたいな」という粗暴で涙腺の弱い女の子の話。涙腺の強弱(?)にどうしてこんなに個人差があるのかは、本気でやるのは大変だろうけど、研究テーマとしておもしろいような気もします。年とともにゆるくなるのは経験が増えていろんなものが弱くやわらかくなるせいかな。「道」なんかいま見たらけっこうやばそう。
新連載:「BAMBi alternative」(カネコアツシ)、「ウルティモ・スーパースター」(須田信太郎)
シリーズ連載:「期末試験前也」(新谷明弘)
読切:「鏡」(谷弘兒)、「デンドロ・ロリータ」(小林哲也)、「100万円!ベガスくん」(肉柱ミゲル)、「グリグリ◎」(前編)(市橋俊介)、「トレーディング番長」(中嶋教介)
出ました。うれしい。とにかくうれしい。
この世で一番好きなものは、この漫画の第1話と第2話…とついあらぬことを口走ってしまうくらい、とにかくこの1話2話は大好きです。まだなにものでもない中学生の数井も、自分の守りたいもののために全身で踏んばっていたアッ子さんも、愛おしくてしかたがない。この2話はこの漫画のスタート地点であって、もしかしたらそれと同時に、この漫画はここに帰ってくるまでの過程を描いている漫画なんじゃないだろうか。そんなことを思ったりもします。
本にしてほしい短編はたくさんたまっているけど、まずはこの初めての単行本が出たことを素直に祝いたいです。このあと2巻の3話目か4話めくらいにもこの世で一番好きなシーンがあるので、2巻が出るのもまたとても楽しみ。願わくはこの漫画が、作者が思い描いていたラストにたどりつくまで、どうか無事続きますように。
このところ勘と記憶で適当に雑誌を買っていたのですが、気がついたら買いもらしてた雑誌が山のように残ってました。やれやれ。
前月号で松本剛と坂井恵理、今月号はこうのこうじが新連載。来月号ではついに森拓真が連載開始。なんて素晴らしい雑誌なんだ。もう一生ついていきます。
新連載「カラコカコ〜ン」 は「何をやっても中途半端なダメな奴」である主人公が、ボーリング場でアルバイトを始めたところから物語が始まる。初回を読んだ限りでは、この主人公がボーリングの快感に目覚めてはまっていく…という話になるように見えるけど、この作者のこれまでの読切はひとすじなわではいかないのばっかりだっただけに、この連載も油断は禁物。用心しいしい読むことにします。
ともに連載2回目の「甘い水」 と「ラブホルモン」 。前者は初回のテンポでそのままお話を進めた感じ。後者は登場人物たちがしばしば見せる表情が示すとおり、思ったよりまじめな漫画になりそうです。やっぱりこの人の描く人物の眼はいい。「六本木リサイクルショップ シーサー」 、今回はフィクション版ガタピシ車というような内容でした。
新連載:「カラコカコ〜ン」(こうのこうじ)
最終回:「超能力者 鈴木文子」(藤枝奈己絵)
シリーズ読切:「念力密室」(後編)(太田まさのり+西澤保彦)
「No Smoking」 がいい。オゾン層の消失で破滅に向かう地球上で、なおも前向きに生きようとする女性と、そのヒモである主人公と、主人公がファミレスで会ったウェイトレス。一見ふつうの日常とみまがうスタートから、最期のささやかな希望までも打ち砕くラストまで、きっちり組み立てられた物語はかなり完成度が高いです。このひとはいままでもこの雑誌に描いてたと思うけど、これだけ印象に残ったのは初めてだった。覚えとこ。
「みのりちゃんジャンプ!」 は前回の「らくがき」の300年後のおはなし。「恒星船のほとんど全てが蓑里章子のクローン、あるいはその子孫の描いたらくがきの発生させる空間異常を使って飛躍」するそうです。こんな設定だけど内容はいつもどおりというのもいつもどおり。いつもどおりといえば「ゴング・ショウ」 もいつもどおりSFエロ。彼女のお父さんがかませ犬プロレスラーというこの内容なら、地球上で完結されることもできるのになあ。なぜかリングは木星軌道上。
「コテコテ」 はいつもどおりブラック。「Body Language」 もいつもどおり4ページで幸せ。こうしてみると芸達者の多い雑誌だ。
先月号です。途中まで読んだまま山に埋もれていました。失敗。
「ササメケ」 はちゃんと2回目も続いてます。ここまできたらこのまんがが正念場、このまま本が出るまで続けるしかないでしょう。それはそうと登場人物の名前が滋賀県の地名ばっかり。河瀬稲枝とか近江マイコとかとかけっこうまともな名前もできるのねと妙に感心してます。「Dr.リアンが診てあげる」 はとうとうリアンがつっこみに回らないと手が足りなくなってしまった。ラストページで大笑いしてしまったのはしんそこ不本意だった。
最終回:「キュー・バ!!」(短期集中)(玉山大吾)
シリーズ読切:「雨の音が聞こえる」(前編)(やまさきもへじ+大塚麻巳子)
読切:「.hack」(依澄れい)、「魔法少女四号ちゃん」(丸川トモヒロ)、「さかなのな」(佐伯淳一)
「イヌっネコっジャンプ!」 、最終回。もうすこし話を動かしてまとめるかと思ったけど、最後までなんにもおきませんでした。想像していた以上に。
結局このまんが、スタートとラストでほとんどなにも変わらなった。オズがグラウンドで再び跳ぶこともなかった。でももしかしたら、ほんの少し変わったオズの表情やユウキや和月との関係や、それこそがこのまんがが描こうとしたものだったのかとふと思います。変化はすこしずつ、そしていつのまにか。最後まで楽しかったです。
2号とも後ろから5番目に載ってる「WE ARE THE 惨歌」 。ギャグの領域をなかば踏み外してただよう情けなさは相変わらず。正直この漫画を喜んで読んでる人はあまりいないような気もするけど、その数少ない(だろう)人間としては、この場所でいいからしばらく載り続けてくれと祈るばかりです。「春よ、来い」 はまたもやエロモード。無限ループまんがだなこれ。
【3号】シリーズ読切:「ほぐし屋 捷」(村田ひろゆき)
読切:「CANDY」(山口かつみ+大川俊道)
【4号】最終回:「イヌっネコっジャンプ!」(はっとりみつる)
読切:「殺人者たち」(神崎将臣+押井守)、「実録24時」(野村潤)
創刊号です。激漫の後継誌だけどエロまんが誌ではありません。とりあえずラインアップを。
激漫からひきつづいての作者がけっこう多いせいか、なんとなくノンアルコールビールを連想してしまったというのが第一印象。気は抜けてないからまずくはない。でもなんとなく、やっぱりアルコール入りの方がいいかなあというような。まあ、雑誌なんて号を重ねればどんどん変わるものだし、のんびり構えて読んでいくつもりです。
創刊号に載ったなかでは、ショートギャグの「魔法法律事務所コイコイ」が一番おもしろかったかな。「機械」はこのひとの持ち芸のひとつであるサイコホラー(だと思いますこれは)。次号はイダタツヒコによる夢枕短編の漫画化が載るとか。楽しみです。
年が明けてからどうも更新がコンスタントにできてないのは、小さな風邪を連続してひいたり、飲み会が多かったり、はてはエロゲーやってて人格崩壊起こしたりしてるからです。なんだったんだろういったい。
ストーリー全体の中で、この巻は重要な転換点になりそうです。ぐらつきながらもおのれの悪の力に依り続けていた主人公・統兵衛が、初めてはっきり、自分を受容してくれる存在としていつきとその家族を認める。同時に受容「されてもいい」存在として自分を認める。ようやくここまできたか、という感じです。
ここから後半戦でしょう。108個の咎を狩ることを条件に地獄から現世に戻った主人公が、はたしてこれまでと同じく悪人を狩り続けるのか。同じ理由で狩り続けるのか。これまでと違うなら、どこに自分の行動のよりどころを見いだすか。まだまだ着地点は見えません。これから。
原作の小説は読んでません。SF仕立てのミステリとでもいったらいいのか、世界設定やストーリーも正直そんなに好みではありません。スズキユカの初コミックスがようやく出たというその一点で、この本が出たのがとてもうれしいです。
10ヶ月かけたという作画はさすがにみごとです。うまいというのともちょっと違う、ひとつの世界を精巧に慎重につくりあげたような、完成品としてのみごとさがあります。これはこれでいいなと思います。さすがだなとも思います。
だから、次はオリジナルストーリーでのコミックスが読みたい。「南の島の冬」を筆頭に、このひとの漫画はこのひとのつくったストーリー込みで好きなのだから。描きおろしでも連載でも別にどっちでもかまわないから。期待します。