学習容易性

外国語を学習するとき苦労するのは、単語や文法事項等の覚えることが多いこと、
そして、日本語にはない発音です。

エスペラントでは、下記のような工夫によって、英語と比べると約10分の1の時間で
学習できるようになっています。

1.語彙を自然言語から採っている

エスペラントはほとんどの語彙をラテン語とギリシャ語からとっ
ています。ラテン語やギリシャ語は古代・中世ヨーロッパの共通
語だったので、ヨーロッパの各言語にその多くの語彙が引き継が
れています。ですから、エスペラントの単語の約4分の3は英語
の単語に似ています。中学、高校で英語をならった日本人にとっ
ては、エスペラントの単語を何も無い状態から覚えるよりも、英
語と関連付けて覚えるのが早道です。

単語集のページでは、英語に同じ意味の形の似た単語がある場合
には○を、関連した意味の英単語が似ている場合には△を付けま
した。

2.発音が簡単

1音素に1文字が割り当てられています。

    母音 a  i  u  e  o
    子音 k  g  h  ĥ (Bachのch)
         s  z  ŝ (shipのsh)   ĵ (visionのs)
         n  t  d  c (catsのts) ĉ (cheapのch)  ĝ (joyのj)
         m  p  b  f  v
         r  l  j(youngのy)  ŭ(wantのw)

    2文字で1音素をあらわしたり、(英語のchやsh等)
    1文字が幾通りの音素をあらわしたり(英語のmuch putのu等)
    しません。
    つづり通りに発音し、発音通りにつづります。
どの語もアクセントの位置は後ろから2番目の母音です。
母音が5つの単母音だけです。

    英語は二重母音等を含めると23あります。
thの音がありません。
LとRが区別が簡単です。

    Lの発音は英語と同じですが、Rの発音が違っています。
    エスペラントのRは舌を後ろにそり、舌先を上あごに弾いて音を出します。
    日本語のラ行の音(特に江戸っ子の巻舌のべらんめえ調)で充分です。
    LとRの区別が英語と比べて容易です。
話やすく聞き取りやすい発音です。

    英語のように発音があいまい化されたり省略されたりしません。

3.不規則変化が無い

冠詞
    不定冠詞(英語のa,an)はありません。
    定冠詞 la (英語のthe) は語形が変化したり、発音が変化
    したりしません。(theが「ザ」や「ジ」になるようなこと)
人称代名詞
    格変化が規則的です。
    目的格は -n  所有格は -a という語尾を付けるだけです。
    英語の I    my    me   は mi   mia   min
           we   our   us   は ni   nia   nin
           you  your  you  は vi   via   vin
           he   his   him  は li   lia   lin
           she  her   her  は s^i  s^ia  s^in
           it   its   it   は g^i  g^ia  g^in
           they their them は ili  ilia  ilin
名詞
    すべての名詞は o で終わります。
        例:muso(ハツカネズミ)

    複数形が規則的で、簡単です。
    -j という語尾を付けるだけです。
        例:musoj(ハツカネズミたち)

    英語の mouse mice のような不規則変化がありません。
    英語は一般的な複数語尾 s を付ける単語でも、
    母音や有声子音の後には「ズ」、無声子音の後には「ス」
    のように発音が変わります。
形容詞
    すべての形容詞は a で終わります。
        例:blanka(白い)

    級の変化が規則的です。
    比較級は形容詞の前に pli (英語の more)を
    最上級は la plej (英語のthe most)を 置くだけです。

    英語の場合は次のように一貫性がありません。
        beautiful , more beautiful , most beautiful
        tall , taller , tallest
        good , better , best
動詞
    時制、法、分詞の変化が規則的です。
    現在は -as 、過去は -is (英語の -ed)、未来は -os 、
    不定法は -i 、仮定法は -us 、命令法(意志法)は -u
    という語尾を付けます。
        例:mi faras.(私がする)(I do)
            li faris.(彼がした)(he did)
            ili faros.(彼等がするだろう)(they will do)
            fari.(すること)(to do)
            s^i farus.(彼女がすればよいのに)(she may do)
            ni faru.(しましょう)(let us do)

    現在能動分詞は -ant-、(英語の現在分詞 -ing)
    過去能動分詞は -int-、
    未来能動分詞は -ont-、
    現在受動分詞は -at-、 (英語の過去分詞 -ed)
    過去受動分詞は -it-、
    未来受動分詞は -ot- という接尾辞を付けます。
        例:faranta(している)(be doing)
            farinta(した)(have done)
            faronta(するだろう)(will do)
            farata(される)(be done)
            farita(された)(have been done)
            farota(されるだろう)(will be done)

    英語のような不規則変化はありません。
        go , went , gone 等

    英語のような人称による変化はありません
        I am , you are , he is  等
品詞転換が規則的で簡単

    名詞は -o 、形容詞は -a 、動詞は -i 、副詞は -e
    という語尾をつけます。
    この語尾の付け替えで簡単に品詞転換ができます。

    英語のbeauty(美しさ:名詞) , beautiful(美しい:形容詞) は
    エスペラントでは belo , bela。

    品詞転換を助ける接尾辞があります。
        動詞
            -ig-  他動詞
            -ig^- 自動詞
            -ad-  状態動詞
            ek-   動作動詞
        名詞
            -ad-  動詞から抽象名詞を造る(動作)〜すること
            -ec-  形容詞、具体名詞から抽象名詞を造る(性質)
                  〜なこと
            -aj^- 具体名詞(物)〜な物、〜する物
            -ul-  具体名詞(人)〜な人、〜する人
        形容詞
            -em-  傾向  〜な
            -ebl- 可能  (他動詞に付く)〜されることができる
            -ind- 価値  (他動詞に付く)〜される値打ちのある
            -end- 義務  (他動詞に付く)〜されなければならない

    詳細
数詞

    1 unu  2 du  3 tri  4 kvar  5 kvin  6 ses  7 sep
    8 ok  9 nau~  10 dek  100 cent  1000 mil

    何十、何百という数は単純につなげるだけでできます。
        777 sepcent sepdek sep

    英語のeleven twelve のような不規則なものはありません。

    序数(何番目)は語尾 -a を付けます。
        unua  (first 1番目の)
        dua   (second 2番目の)
        tria  (third 3番目の)
        kvara (fourth 4番目の)

    倍数(何倍)は接尾辞 -obl- を付けます。
        duobla (double 2倍の)
        triobla (triple 3倍の)

    分数(何分の)は接尾辞 -on- を付けます。
        duono   (half 2分の1)
        triono  (third 3分の1)
        kvarono (quarter 4分の1)

    集数(何人組)は接尾辞 -op- を付けます。
        duopo   (duo 2人組)
        triopo  (trio 3人組)
        kvaropo (quartet 4人組)
        kvinopo (quintet 5人組)

    分配(何個づつ)は前置詞 po を付けます。

    詳細
語尾を見れば、品詞や時制がすぐわかるので、
文の意味を即座に捕らえやすいです。
英語の場合、単語の規則変化でも、語の終わりかたによって、
複雑な規則や例外があります。
エスペラントにはそのようなことがありません。

    英単語の規則変化

4.造語法が発達している

整理された接頭辞、接尾辞が用意されているので、少ない語根で多くの単語
を作り出すことができます。だから、覚える単語の量が少なくてすみます。

    mal-  反対を表す接頭辞
        varma 暑い     malvarma 寒い
        juna  若い     maljuna  老いた
        nova  新しい   malnova  古い

    -in-  女性を表す接尾辞
        patro 父       patrino 母
        bovo  雄牛     bovino  雌牛

    詳細

5.代名詞、代形容詞、代副詞が表に整理されている(ザメンホフ表)

 疑問詞関係詞指示詞
特定不特定全体否定
ki-ki-ti-i-c^i-neni-
代名詞 
全般 -o kio
(what)
なに
kio
(what)
〜のこと
tio
(that)
それ
io
(something)
なにか
c^io
(everything)
すべて
nenio
(nothing)
なにも〜ない
個別 -u kiu
(who)
だれ
kiu
(who)
〜の人
tiu
(that one)
そのひと
iu
(somebody)
だれか
c^iu
(everybody)
みんな
neniu
(nobody)
だれも〜ない
代形容詞 
指示 -u kiu
(which)
どの
kiu
(witch)
〜のもの
tiu
(that)
その
iu
(some)
どれかの
c^iu
(every)
すべての
neniu
(no)
どの〜も〜ない
性質 -a kia
(what)
どんな
kia
(as)
〜のような
tia
(such)
そんな
ia
(some kind of)
なんらかの
c^ia
(every kind of)
すべての
nenia
(no kind of)
どんな〜も〜ない
所有 -es kies
(whose)
だれの
kies
(whose)
〜の人の
ties
(that one's)
その人の
ies
(someone's)
だれかの
c^ies
(everyone's)
みんなの
nenies
(no-one's)
だれの〜も〜ない
代副詞 
場所 -e kie
(where)
どこで
kie
(where)
〜の場所で
tie
(there)
そこで
ie
(somewhre)
どこかで
c^ie
(everywhere)
どこでも
nenie
(nowhere)
どこにも〜ない
時間 -am kiam
(when)
いつ
kiam
(when)
〜の時
tiam
(then)
その時
iam
(ever)
いつか
c^iam
(always)
いつも
neniam
(never)
いつも〜ない
理由 -al kial
(why)
なぜ
c^ar
(because)
なぜならば
tial
(therefore,so)
その訳で
ial
(for some reason)
なんらかの理由で
c^ial
(for every reason)
全ての理由で
nenial
(for no reason)
どんな理由でも〜ない
様子,方法 -el kiel
(how)
どの様に、
どんな方法で
kiel
(as)
〜の様に、
〜の方法で
tiel
(thus,so)
その様に、
その方法で
iel
(somehow)
なんらか方法で
c^iel
(in every way)
全ての方法で
neniel
(in no way)
どんな方法でも〜ない
数量 -om kiom
(how many,much)
どれほど
kiom
(as)
〜のほど
tiom
(so many,much, as)
それほど
iom
(some)
いくらか
c^iom
(all)
すべて
neniom
(no)
まったく〜ない
詳細

6.文法が簡単

文法事項がたった16条にまとめられています。

    詳細
冠詞
    エスペラントには不定冠詞がありません。
    定冠詞は、使い方に自信が無い場合、使わなくてもよいことになっています。

    詳細
助動詞がありません。
    
    助動詞の制限(分詞、不定詞がないなど)を考えなくてすみます。

    英語のように、疑問文、否定文を作るとき、助動詞 do を使わなければならないと
    いう面倒な規則もありません。
無意味な語形変化がありません。

    英語の動詞のような人称によって動詞の語形が変化することがありません。

    例)I am , you are , he is
        I have , he has

    冠詞の形は名詞の性、数、格により変わることはありません。
時制の一致がありません。

    英語では従属節と主節とで時制の一致を行なわなければなりません。
    そのため次の例では、過去のさらに過去を表すため過去完了が用いられます。
    エスペラントでは、このような時制の一致を行ないませんので、過去完了
    というややこしい時制を考えなくてもよいです。

    例)(英語)She said  that she had seen me.
        (エス)S^i diris ke   s^i vidis    min.
                彼女は彼女が私を見たといった。

        (s^i:彼女 diris:言った ke:〜と vidis:見た min:私を)

    詳細
疑問文の作成が簡単です。

    文頭にc^uをつけるだけです。

    例)(エス)C^u via kato mang^is mian muson?  <-  Via kato mang^as mian muson.
        (英語)Did your cat eat my mouse?        <-  Your cat eated my mouse.
                あなたの猫が私のねずみを食べましたか?

        (c^u:〜か via:あなたの kato:猫 mang^is:食べた mia:私の muso:ねずみ)

    詳細
否定文の作成が簡単です。

    否定したい語の前にneをつけるだけです。

    例)(エス)Mi ne povas trinki akvon.
        (英語)I can not drink water.
                水を飲むことができない。

        (エス)Mi povas ne trinki akvon.
        (英語)?
                水を飲まないことができる。

        (エス)Mi ne volas trinki akvon.
        (英語)I do not want to drink water.
                水を飲みたくない。

        (mi:私 ne:〜ない povas:〜できる volas:欲する trinki:飲むこと akvo:水)

    詳細
強調文の作成が簡単です。

    強調したい語を文の先頭にもってくるだけです。
    これは、対格(目的語)の語尾があるため語順が比較的自由だからです。

    例)(エス)Min vi vidis.
        (英語)It was me that you saw. (Me you saw. とはいえない。)
                私ですよ、あなたが見たのは。

        (min:私を vi:あなた vidis:見た)
進行形や完了形は一般に使いません。

    進行形は現在で表します。
    完了形は過去で表します。

    継続か現在か、完了か過去かの区別は副詞等で行います。
        j^us たった今 (just)
        jam  もう既に (already)
        nun  今       (now)
        iam  かつて   (ever)
        de   〜以来   (since)

    厳密に表現したい場合は、複合時制(esti と 分詞)を用いることができます。
    (表現が重くなるのであまり使われない)
        進行形  esti -anta
        完了形  esti -inta
単純未来、意志未来、近接未来の区別がありません。

    英語の場合、単純未来のばあい、willを使い、意志未来の場合、be going to
    を使うことになっているようです。しかし、willで意志をあらわすこともあ
    ります。

    また、be going to は近い未来(近接未来)を表すことになっていますが、
    willでも近い未来を表すようです。

    たとえば、次のように、その場で生じた意志の場合、意志的で近い未来であっ
    ても、be going toは使えません。

        "The telephone is ringing." 
        "I'll get it."
        「電話が鳴ってるよ。」
        「ぼくがとる。」

    このような使い分けは非母国語として身に付けるのは困難です。
    エスペラントでは未来はすべて未来時制の動詞語尾 -os で表します。

    明確に意志を表現したい場合には、エスペラントでは、未来時制ではなく、
    意志法(動詞語尾 -u )で表現することができます。

    近い未来を厳密に表現したい場合は、複合時制(esti と 分詞)を用いること
    ができます。(表現が重くなるのであまり使われない)
        esti -onta
仮定文の作成が簡単です。

    動詞の語尾を -us にするだけです。

    例)(エス)Mi estus birdo.  <- Mi estas birdo.
        (英語)I were bird.     <- I am bird.
                私が鳥なら良かったのに。

        (mi:私 estus:〜であったら birdo:鳥)

    エスペラントの仮定法には時制はありません。すべて -us で表現します。
    英語のように、未来や過去の仮定を述べたいときには、副詞で区別します。
        en estonteco(将来) antau^e(以前に) 等

    厳密に表現したい場合は、複合時制(estus と 分詞)を用いることができます。
    (表現が重くなるのであまり使われない)
        過去  estus -inta
        未来  estus -onta
命令文(意志法の文)の作成が簡単です。

    動詞の語尾を -u にするだけです。

    例)(エス)estu silenta.  <- Vi estas silenta.
        (英語)be silent.     <- You are silent.
                黙りなさい。

        (estu:〜であれ silenta:静かな)

    2人称だけでなく、1人称や3人称にも用いることができます。
    (英語では、そのままでは現在形と区別ができないので、単純に表現できない)

    例)(エス)C^u mi dancu ?
        (英語)Shall I dance ?
                (私が)踊りましょうか。

        (エス)Mi dancu.
        (英語)Let me dance.
                (私が)踊ります。

        (エス)C^u ni dancu ?
        (英語)Shall we dance ?
                (私とあなたで)踊りましょうか。

        (エス)Ni dancu.
        (英語)Let us dance.
                (私とあなたで)踊りましょう。

        (エス)Li dancu.
        (英語)Make him dance.
                彼を踊らせよ。

        (c^u:〜か mi:私 dancu:踊ろう ni:私たち li:彼)

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