16条の文法

1:冠詞
  ・不定冠詞は存在しない。
  ・定冠詞として唯一 la が存在する。
  ・冠詞の形は名詞の性、数、格により変わることはない。

2:名詞
  ・名詞の形は「語根+語尾o」である。
      例:語根 patr 、la patro(父)
  ・名詞の複数形は「単数形+語尾j」である。
      例:la patroj.(父達)
  ・主格と対格の二つの格がある。
  ・主格は「語根+語尾o」である。
  ・対格は「主格+語尾n」である。
      例:la patron(父を), la patrojn(父達を).
  ・他の格については、前置詞を名詞の前に置く。
  ・deは属格(〜の)(of)。
      例: de la patro(父の)
  ・alは与格(〜へ)(to) 。
      例: al la patro(父へ)
  ・per は奪格(〜で)(by)。
      例: per la patro(父によって)
  ・その他、前置詞ごとの意味に従って用いる。
      例: kun la patro(父とともに)(with)
           por la patro(父のために)(for)

3:形容詞
  ・形容詞の形は「語根+語尾a」である。
  ・形容詞の「数」と「格」の表し方は名詞と同じにする。
  ・比較級は形容詞の前にpli(more)を置き、比較対象はol(than)の後に置く。
      例:pli blanka ol neg^o.(雪より白い)(whiter than snow)
  ・最上級は形容詞の前にplej(most)を置く。

4:数詞
  ・基本数詞は次の通り。語根であり、変化しない。
      unu(1),du(2),tri(3),kvar(4),kvin(5), ses(6),sep(7),
      ok(8),nau^(9),dek(10),cent(100),mil(1000).
  ・何十、何百までは基本数詞の組み合わせでいう。
      例: 583 = kvincent okdek tri.
  ・序数詞は形容詞語尾aを付加する。
      例: unua(1番目の)(first)
           dua(2番目の)(second)
  ・倍数を表すには接尾辞 obl をつける。
      例:triobla(3倍の)(threefold).
  ・分数を表すには接尾辞 on をつける。
      例:duono(半分)(a half)、
          kvarono(4分の1)(a quarter).
  ・組を表すには接尾辞 op をつける。
      例:kvarope(4つ組で、4人組で)(four together).
  ・分配を表すには前置詞 po を用いる。
     例:po kvin.(5こずつ)(five apiece)
  ・語尾oを付けて名詞、語尾eを付けて副詞になる。
     例:unue(最初に)(firstly)

5:人称代名詞
  ・mi  (1人称単数:私)       (I),
    ni  (1人称複数:私達)     (we),
    vi  (2人称:あなた)       (you),
    li  (3人称単数男性:彼)   (he),
    s^i (3人称単数女性:彼女) (she),
    g^i (3人称単数中性:それ) (it),
    ili (3人称複数:彼等)     (they),
    si  (3人称再帰:自身)     (self),
    oni (一般人称:人)         (one).
  ・所有代名詞は、「形容詞語尾a」をつける。
      例:mia(私の)(my,mine)
  ・対格には語尾nが付く。
      例:min(私を)(me)

6:動詞
  ・動詞は主語の人称や数により形が変わらない。
      例:mi faras.       (私がする)(I do.)
          la patro faras. (父がする)(the father does.)
          ili faras.      (彼等がする)(they do.)
  ・直説法
      ・現在時制は語尾asをつける。
          例:mi faras.(私がする)(I do)
      ・過去時制は語尾isをつける。
          例:li faris.(彼がした)(he did)
      ・未来時制は語尾osをつける。
          例:ili faros.(彼等がするだろう)(they will do)
  ・仮定法は語尾usをつける。
      例:s^i farus.(彼女がすればよいのに)(she may do)
  ・意志法は語尾uをつける。
      例:ni faru.(しましょう)(let us do)
  ・不定法は語尾iをつける。
      例:fari.(すること)(to do)
  ・分詞があり、形容詞ないし副詞として用いる。
  ・能動現在分詞は接尾辞antをつける。
      例:faranta, farante.(している)(be doing)
  ・能動過去分詞は接尾辞intをつける。
      例:farinta, farinte.(した)(have done)
  ・能動未来分詞は接尾辞ontをつける。
      例:faronta, faronte.(するだろう)(will do)
  ・受動現在分詞は接尾辞atをつける。
      例:farata, farate.(される)(be done)
  ・受動過去分詞は接尾辞itをつける。
      例:farita, farite.(された)(have been done)
  ・受動未来分詞は接尾辞otをつける。
      例:farota, farote.(されるだろう)(will be done)
  ・受動の文を作るには、動詞 est の各形態と受動分詞とを組み合わせる。
    動作を行っている主体は前置詞 de の後に置く。
      例:S^i estas amata de c^iuj.
          (彼女はみんなに愛されている。)
           (She is loved by everyone.)

7:副詞
  ・副詞の形は「語根+語尾e」である。
  ・比較級、最上級は形容詞の場合と同様である。
      例: Mia frato kantas pli bone ol mi.
           (私の兄弟は私より上手に歌う。)
            (My brother sings better than I.)

8:前置詞と格
  ・前置詞の後に来る名詞は主格である。

9:発音
  ・単語は書いた通りに読む。

10:アクセント
  ・アクセントは終わりから2番目の音節にある。

11:単語構成
  ・合成語は語根を単純に並べて作る。主な語根は最後にくる。
      例:vapors^ipo(蒸気船)はvapor(蒸気)とs^ip(船)とo(名詞語尾)。
  ・品詞語尾は独立の語根とみなされる。

12:否定語
  ・一文中に否定の語があれば、重ねて否定の語(ne等)を用いることはない。
      例:Mi neniam vidis. (私は見たことが無かった。)(I have never seen.)

13:移動を示す対格
  ・場所を表す名詞や副詞に「対格の語尾n」をつけると、その場所への移動を示す。
      例:Kien vi iras?   (どこへ行くか?)(Where are you going.)
          domon.(家へ)(home)
          Londonon.(ロンドンへ)(to London)

14:前置詞jeと対格
  ・前置詞には各々、定まった不変の意味がある。
  ・適切な前置詞がない場合は、定まった意味を持たない前置詞 je を用いる。
      例:g^oji je tio (そのことで喜ぶ)(to rejoice over it)
          ridi je tio (そのことで笑う)(to laugh at it)
          enuo je la patrujo  (祖国を懐かしむこと)(a longing for one's fatherland)
  ・誤解の生じる恐れがない場合には、前置詞 je のかわりに、前置詞なしで、
    対格語尾nを付けることができる。

15:外来語
  ・いわゆる外来語、つまり、多くの言語で同じ語源から取り込んでいる語は、
    エスペラントでもそのままでエスペラントの正書法に沿って取り入れる。
  ・基礎的な語根から派生語ができる場合は、基礎的な単語だけを取り入れて、
    派生語は、エスペラントの規則に従って作る。
      例:teatro(劇場)、teatra(劇場の)。
          theatricalという語があっても、teatricalaにはしない。

16:アポストロフィによる省略
  ・名詞の語尾oと冠詞の母音aは、音調を良くするために、省略されて、
    代わりにアポストロフィ(')がつくことがある。
      例:S^illero が S^iller' に、
          de la mondo が de l' mondo に。
解説

・16条の文法はエスペラントの文法のすべてを網羅している訳ではなく、
  守らなければならない必要最低限の指針である。つまり、変更してはならな
  い文法事項である。

・ここにあがっていない品詞としては、接続詞、相関詞(人称代名詞以外の代名詞、
  代形容詞、代副詞の集まり)、本来副詞(語根eが付かない副詞)がある。

・第12条について
  Mi ne vidis neniam. けっして見たことが無かった。
  これは2重否定といって、ヨーロッパの言語では、
  否定の強調に用いられることがある。
  否定の否定だから肯定だという意味で用いられているのではない。
  エスペラントではこのような使い方はしない。

・性
    ・文法上の性であり、実際の性とは違う場合がある。
      たとえば、フランス語では、船が女性だったりする。
      冠詞が性によって変わるので、たとえ性に関係ない無生物でも、
      名詞は文法上の性を区別しなければならない。
    ・男性、女性、中性、無性の4種類がある。

・数
    ・単数、複数がある。

・格
    ・文中の名詞の役割を表す。
    ・主格、対格、等がある。
    ・エスペラントは主格と対格の二つだけであるが、ラテン語では6つある。
      主格(〜が)、呼格(〜よ)、属格(〜の)、与格(〜へ)、
      対格(〜を)、奪格(〜で)

・人称
    ・1人称:話し手
    ・2人称:聞き手(話し相手)
    ・3人称:話題にしている人、物事
    ・一般人称:特に話題にすることもない人

・法
    ・直説法:特に話し手の主観が表に出ない叙法
    ・仮定法:実際の動作ではなく、話し手の仮定・弱い意志を表す。
    ・意志法:命令や強い願望など、話し手の強い意志を表す。
    ・不定法:その動詞を文の中心にしないで、名詞に準じて扱う。

        現実世界           非現実世界
        --------   意志法  ----------
        |直説法|<----------| 仮定法 |
        --------           ----------

        現実世界について述べているのが直説法、
        非現実世界について述べているのが仮定法、
        非現実世界から現実世界への移行について述べているのが意志法

・時制  その動詞がその話しをしている時に対してどうかを示す
    ・現在形:その話しをしている時に動作が始まっていて終わっていない
    ・過去形:その話しをしている時には、動作が終わっている
    ・未来形:その話しをしている時には、動作が始まっていない

・分詞
    ・能動現在分詞:話題の時点で、動作が始まっていて終わっていない
    ・能動過去分詞:話題の時点で、動作が終わっている
    ・能動未来分詞:話題の時点で、動作が始まっていない
    ・受動現在分詞:話題の時点で、動作を受け始めていて受け終えていない
    ・受動過去分詞:話題の時点で、動作を受け終えている
    ・受動未来分詞:話題の時点で、動作を受け始めていない

・ヨーロッパの言語では、各品詞の単語は、性、数、格、人称、等によって、
  語の形を、変化させる。エスペラントでは、不必要と思われる語形変化を
  なくしてある。そのことが、この16条の文法に書いてある。簡単にまと
  めると次のようになる。下の表の「エ」とはエスペラントの語形変化する場合、
  「ヨ」とは一般的なヨーロッパ語が語形変化する場合である。

              性      数      格      人称    級      法      時制
  冠詞        ヨ      ヨ      ヨ
  名詞                ヨエ    ヨエ
  人称代名詞  ヨエ    ヨエ    ヨエ    ヨエ
  形容詞              ヨエ    ヨエ            ヨ
  動詞                ヨ              ヨ              ヨエ    ヨエ
  副詞                                        ヨ


エスペラント
ホーム