述語動詞の前にneを置くだけで、文の否定を行ないます。
英語では、次のように、ちょっとややこしいです。
助動詞の後ろにnotをつけます。
助動詞のない文では、助動詞doをつけ、
時制は助動詞に移り、述語動詞は原形にします。
文否定と語否定
述語動詞の前にneを置くとその文全体を否定します。これを文否定といいます。
例)Mi ne povas trinki bieron. 私はビールを飲むことができない。
その他の語の前にneを置くとその語だけ否定します。これを語否定といいます。
例)Mi povas ne trinki bieron. 私はビールを飲まないことができる。
Mi povas trinki ne bieron. 私が飲めないのはビールではない。
Ne mi povas trinki bieron. ビールを飲めないのは私ではない。
全否定と部分否定
c^i- 相関詞や kaj - kaj - が用いられている文では、
述語動詞にneを付けただけでは、全否定できません。
たとえば、Mi ne iras al lernejo c^iam. は、
「いつも学校に行かない。」という意味ではなく、
「いつも学校にいくということではない。」という意味です。
また、Mi ne vidis Taro kaj Masato. は、
「太郎と正人を(両方)見なかった。」という意味ではなく、
「太郎と正人を(両方)見たというわけではない。」という意味です。
このような否定を部分否定といいます。
上記の文を全否定したければ、c^i- の代わりの neni-を
kaj の代わりにnekを使います。
Mi iras al lernejo neniam.
Mi ne vidis Taro nek Masato.
または、
Mi vidis nek Taro nek Masato.
英語の場合もエスペラントと同様です。
(エス)c^i- -> neni-
(英語)every -> no
(英語)always -> never
(エス)kaj - kaj - -> nek - nek -
(英語)both - and - -> neither - nor -
ne はその語以降を否定する性格を持っているので、
c^i-の語をneの前に持って行くことによっても全否定になります。
Mi c^iam ne iras al lernejo.
しかし、全否定を明確に示すには、neni-の語を使う方が良いでしょう。
日本語は述語動詞に「ない」を付けると、述語動詞だけが否定されます。
「ない」ということが「いつも」。つまり全否定。
エスペラントでは述語動詞にneを付けると、文全体が否定されます。
「いつも」ということが「ない」。つまり部分否定。
否定を表す語
否定を表す語はne のほかにneni-の付く相関詞、nekがあります。
二重否定
二重否定とは、1文中に否定を表す語が2つ用いられる表現です。
例)Mi ne vidis neniam. けっして見たことが無かった。
これは2重否定といって、ヨーロッパの言語では、
否定の強調に用いられることがあります。
「否定の否定だから肯定だ」という意味で、
用いられているのではありません。
あいまいさをなくすために、エスペラントでは、
このような使い方はしません。
否定の語が2つある場合、エスペラントでは肯定の意味になります。
例)Mi ne povis ne iri tien.
そこへ行かないことはできなかった。
(そこへ行かざるを得なかった。)
弱い否定
英語には、弱い否定を表す語に次のような語があります。
hardly (ほとんど~ない)
scarcely(ほとんど~ない)
seldom (めったに~ない)
rarely (めったに~ない)
few (ほとんど~ない)
little (ほとんど~ない)
エスペラントにも apenau^(ほとんど~ない)があるにはあるが、否定の文である
ことをわかりやすくするために、preskau^ ne(ほとんど~ない)を用いるのが一
般的です。
副詞とne
preskau^ ne ほとんど~ない
ankorau^ ne まだ~ない
ne jam まだ~ない
jam ne もう~ない
ne plu もうこれ以上~しない
ne nur ~だけでなく
ne tre あまり~ない
ankorau^ ne = ne jam だが、ankorau^ ne が一般的。
未来のことについて、「もう~ない」は jam ne でなく、
ne plu を用いる。
devi と ne
deviは「~しなければならない」という義務を表す動詞である。
理屈からいうと ne devi は義務の否定なので、「~しなくてもよい」となるが、
実際は「~してはならない」という禁止の意味をもつ。
つまり、ne devi も devi ne も同じ意味を持つ。
Vi ne devas labori hodiau^. あなたは今日働いてはいけません。
誤解の無いように禁止を表したいときは、devi ne を使うのがよい。
Vi devas ne labori hodiau^. あなたは今日働いてはいけません。
働かなくても良いことを言いたい場合は、bezoni を用いる。
Vi ne bezonas labori hodiau^. あなたは今日働く必要はない。
これは、エスペラントの例外事項。民族語から影響を受けているようだ。
日本語でも、「~すべきだ」は義務で、「~すべきでない」が禁止になるのが、
これに似ている。
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