相関詞

エスペラントの相関詞は日本語の「こそあど」言葉にあたります。

    こ      そ      あ      ど

    これ    それ    あれ    どれ
    この    その    あの    どの
    こんな  そんな  あんな  どんな
    ここ    そこ    あそこ  どこ

英語でもこのような例がみられます。

    th-     wh-

    that    what
    then    when
    there   where



エスペラントではこの範囲を広げて体系化しました。

以下が相関詞の表です。英語と対比してみました。

 疑問詞関係詞指示詞
特定不特定全体否定
ki-ki-ti-i-c^i-neni-
代名詞 
全般 -o kio
(what)
なに
kio
(what)
〜のこと
tio
(that)
それ
io
(something)
なにか
c^io
(everything)
すべて
nenio
(nothing)
なにも〜ない
個別 -u kiu
(who)
だれ
kiu
(who)
〜の人
tiu
(that one)
そのひと
iu
(somebody)
だれか
c^iu
(everybody)
みんな
neniu
(nobody)
だれも〜ない
代形容詞 
指示 -u kiu
(which)
どの
kiu
(witch)
〜のもの
tiu
(that)
その
iu
(some)
どれかの
c^iu
(every)
すべての
neniu
(no)
どの〜も〜ない
性質 -a kia
(what)
どんな
kia
(as)
〜のような
tia
(such)
そんな
ia
(some kind of)
なんらかの
c^ia
(every kind of)
すべての
nenia
(no kind of)
どんな〜も〜ない
所有 -es kies
(whose)
だれの
kies
(whose)
〜の人の
ties
(that one's)
その人の
ies
(someone's)
だれかの
c^ies
(everyone's)
みんなの
nenies
(no-one's)
だれの〜も〜ない
代副詞 
場所 -e kie
(where)
どこで
kie
(where)
〜の場所で
tie
(there)
そこで
ie
(somewhre)
どこかで
c^ie
(everywhere)
どこでも
nenie
(nowhere)
どこにも〜ない
時間 -am kiam
(when)
いつ
kiam
(when)
〜の時
tiam
(then)
その時
iam
(ever)
いつか
c^iam
(always)
いつも
neniam
(never)
いつも〜ない
理由 -al kial
(why)
なぜ
c^ar
(because)
なぜならば
tial
(therefore,so)
その訳で
ial
(for some reason)
なんらかの理由で
c^ial
(for every reason)
全ての理由で
nenial
(for no reason)
どんな理由でも〜ない
様子,方法 -el kiel
(how)
どの様に、
どんな方法で
kiel
(as)
〜の様に、
〜の方法で
tiel
(thus,so)
その様に、
その方法で
iel
(somehow)
なんらか方法で
c^iel
(in every way)
全ての方法で
neniel
(in no way)
どんな方法でも〜ない
数量 -om kiom
(how many,much)
どれほど
kiom
(as)
〜のほど
tiom
(so many,much, as)
それほど
iom
(some)
いくらか
c^iom
(all)
すべて
neniom
(no)
まったく〜ない
-o には目的格語尾 -n が付きます。 -u と -a には複数語尾 -j と目的格語尾 -n が付きます。 kiun (whom) tiuj (those) c^i は ti- に付いて 近くを示す指示詞になります。 tiu (that) それ c^i tiu (this) これ tiuj (those) それら c^i tiuj (these) これら tie (there) そこ c^i tie (here) ここ ajn は i- に付いて 無差別の指示詞になります。 io ajn (anything) なんでも iu ajn (anybody) だれでも iu ajn (any) どれでも ie ajn (anywhere) どこでも iel ajn (anyhow) どのようにでも ajn は ki- に付いて 譲歩の関係詞になります。 kio ajn (whatever) なにが〜しても kiu ajn (whoever) だれが〜しても kiu ajn (whichever) どれが〜しても kies ajn (whosever) だれの〜が〜しても kie ajn (whereever) どこで〜しても kiam ajn (whenever) いつ〜しても kiel ajn (however) どのように〜しても これはザメンホフの最大の功績です。これによって、今まで、英語を学んでいて気付くこ とのなかったヨーロッパ語の本質を知ることができるのです。以下にその例を見ていきま しょう。 この表を見ると、今まで、ただなんとなく使っていた英単語の位置づけが明確になります。 たとえば、as、soは理由、様子、数量を表す指示詞と関係詞であることがわかります。 everは時間が不特定であることをあらわし、neverは時間がないことをあらわし ます。 英語では欠如しているような概念に単語を割り振ることができます。 たとえば、ial, c^ial, c^iel, nenial, neniel にはそれに該当する英語の単語はありません。 関係詞に関係形容詞、関係副詞と言う概念が新たに導入さています。 (英語の関係詞の概念では、who, whitch, that の関係代名詞しかありません。) それによって、いろいろな複雑な構文が関係詞構文で説明できるようになります。 関係詞構文とは一言でまとめると次のように言うことができます。 2つの文が先行詞と関係詞で結ばれている文。 先行詞を含む文と関係詞を含む文があり、先行詞の詳細内容を、関係詞を含む文が説明し ています。先行詞には主に普通名詞や指示詞(tiu tio等)が用いられます。 日本語の場合、指示詞の表す内容が、指示詞が出てくる前に出てきます。 エスペラントや英語の場合、後ろに出てくる場合があるのです。 関係詞構文がこれに当たります。これは、ヨーロッパの言葉の大きな特徴です。 次の文は一般的な関係詞の文です。 Mi vidis tiun , kiu kuris en parko. (私は公園で走っている人を見ました。) Mi vidis viron , kiu kuris en parko.(私は公園で走っている男の人を見ました。) tiu , viro が先行詞、kiuが関係詞です。tiuは「その人」という指示詞ですが、それが 指している内容がkiu以降に表されているのです。 比較構文も関係詞構文の一つのバリエーションです。 Mi estas tiom alta , kiom li. (私は彼と同じくらい背が高い) (英語)I am as tall as he. tiom (as) が先行詞で、まず仮に「それくらい」と言っておいて、「それ」のさす内容を 後で、kiom (as) と言う関係詞以降で表しています。 また次のような接続詞も関係詞構文と考えることができます。 Mi dormis (tiam) , kiam li venis. (彼が来たとき、私は寝ていました。) (英語) I was sleeping when he came. つまり先行詞 tiam が省略されていると考えるのです。 接続詞として使われる相関詞には次のものがあります。 kiam 〜する時 when kie 〜する所に where kiel 〜するように as kiom 〜するだけ as much as 間接疑問文も関係詞構文と考えることができます。 Mi scias (tion) , kiam li venis. (彼がいつ来たか、私は知っています。) (英語)I know when he came. 先行詞 tio が省略されていると考えます。 エスペラントで便利なのは、接続詞か間接疑問文かどちらかあいまいなときに、省略され ていいる先行詞を補うことで、あいまいさを解決できることです。上の例で言うと、tiam だと接続詞、tionだと間接疑問文だとわかります。 関係詞にke , c^u等も含むと考えると、次の文も関係詞構文と見なすことができます。 Mi estis tiom laca , ke mi ne iris al lernejo. (私は学校に行くことができなかったほど、疲れていた。) (英語)I was so tired that I did not go to school. tiom が指す詳細をke以降で説明しています。上の文は次ように直訳できます。 私はその程度疲れていた。「その程度」とは「学校に行けない程度」だった。 関係形容詞、関係副詞の構文には次のようなものがあります。 tia ... kia --- ---のような...だ such ... as --- tia ... ke --- ---するような...だ such ... that --- tial ... kial --- ---なので...だ so ... as --- tial ... ke --- ---するので...だ so ... that --- tial ke --- ---するので so that --- tiel ... kiel --- ---のように...だ as ... as --- (tiel) kiel --- ---のように as --- tiel ... ke --- ---するように...だ so ... that --- tiel ke --- ---するように tiom ... kiom --- ---ほど...だ as ... as --- (tiom) kiom --- ---ほど as much as --- tiom ... ke --- ---するほど...だ so ... that --- tiom ke --- ---するほど la sama ... kiel --- ---と同じ...だ the same ... as --- 英語のit ... that ... もエスペラントでは関係詞構文に当てはめることができます。 (英語) It is difficult that I use a computer. (エス) Tio , ke mi uzas komputilo , estas malfacila. (Estas malfacile , ke mi uzas komputilo. ともいう。) 私がコンピュータを使うのは難しい。 以上で述べてきたことすべてに共通なのは、先に仮に「それ」といっておいて、詳しくは 後で述べるという表現方法だと言うことです。エスペラントでは、これらを関係詞構文の 範囲にまとめているのです。 先行詞を後続の従属句が説明するという形は、上記で説明した関係詞構文のほかに、 次のようなものもあります。 先行詞 従属句 pli ... ol --- ---よりは、もっと...だ more ... than --- tro ... -i --- ---するには、あまりに...すぎる too ... to --- des pli ... ju pli --- ---であるほど、もっと...だ the more ... the more --- これらの形式を全部まとめて、相対句と呼びます。 相対句 = 先行詞 ・・・ 従属句(接続詞句、疑問・関係詞句) *補足 なぜ疑問詞と関係詞は同じ単語を使うのか 語源的にいうと、疑問・関係詞は、元は不定な事柄を表す言葉であったようです。 たとえば、英語の「you saw who」は、「あなたが誰かと会った」ということを表すものでした。 「誰か」を尋ねる文としては、「who did you see」にして、 「あなたは誰と会ったか」という意味で、疑問詞として使われるようになりました。 「誰か」を説明する文としては、「who you saw」にして、 「あなたが会った誰か」という意味で、関係詞として使われるようになりました。 不定の意味から、疑問、関係の意味が派生したと考えられます。 たとえば、「I know who you saw yesterday」という文は、 疑問詞的に、「昨日あなたが誰と会ったかを私は知っている」としても、 関係詞的に、「昨日あなたが会った誰かを私は知っている」としても、 意味は大きく変わりません。 日本語でも、「こそあど」言葉の「ど」系の語は疑問を表すとされています。 例)どれ、どの、どこ しかし、日本語の場合も、元は不定な事柄を表す言葉だったようです。 例)どれ → 疑問 どれか → 不定 どれでも → 無差別 不定の意味から、疑問、無差別の意味が派生したと考えられます。 「こそあど」の「そ」系の語は「特定」を表し、「ど」系の語は「不定」表す ことがわかります。この2つは対になっています。

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