我が身が縛られ動けなかったことを悔やむ。
これから先も悔やむだろう。
ならばそのようなことが無いように我らは彼の姫に願う。
だから、今度は、今度こそは……。
「うさぎ、今日この後暇?」
「ごめーん、美奈P、今日はまもちゃんと会う約束してるの」
「もしかして、大学まで行く?」
「うん、行くけど?」
「だったらあたしも行くっ」
「美奈Pも?」
「もう、邪魔しに行く訳じゃないんだってばぁっ。かえで君がまーもちゃんと同じ大学なのっ」
「かえで君って美奈Pの彼氏さん?だよね」
「そそそ〜。カッコいいんだから」
「まもちゃんの方がカッコいいもん」
「何を〜〜〜」
「うさぎも、美奈ちゃんも……自分の彼氏自慢やめなってばぁ。どっちにしたってカッコいいんでしょ?美奈ちゃんも面食いだもんね」
「さすが、なるちゃん。というわけで、うさぎ行くわよ」
「うん」
まもちゃんの大学に美奈Pと来る。
……制服のまま来ちゃったから出てくる人がみんなあたしと美奈Pを見てる。
「あ、うさぎ、あの人カッコいい」
「ホントだぁ、モデルさんかなぁ?」
「うさぎっ新人アイドル君だよっ」
「ホントだぁ、美奈Pすご〜い」
「いけるかな?でも行っちゃまずいかな。どうかなうさぎ」
「えぇでも〜〜」
みんな見てるけどあたし達はカッコいい男の人が通る度きゃーきゃー言ってる。
だから余計に目立ってるのかも?
「賑やかな女子高生が居るって聞いたからまさかって思ったけど、やっぱりお前か美奈」
とさわやかなんだけどちょっと硬派な感じな人が美奈Pの頭をこづく。
「かえで君、授業終わったの?」
「終わってるけど……目立ってんだよ、お前」
「だって、さっすがKOよねカッコいい人ばっかり」
「はぁ……」
美奈Pの勢いに飲まれてる気がするこの人。
かえで君って言うからこの人が美奈Pの彼氏さんかぁ。
うん、美奈Pがカッコいいって言うのうなずいちゃうぐらいカッコいい。
「美奈P、美奈P、カッコいいね彼氏さん」
こそっと彼氏さんに聞こえないぐらいの声で美奈Pにささやく。
「まぁね。当然でしょ、っとかえで君、紹介するね。あたしの大事な友人、うさぎちゃんよ」
「えっと、月野うさぎです。いつも、美奈Pがお世話になってますっ」
あいさつするのも、どきどきしちゃう。
「キミがうさぎちゃん?」
「え、はい。そうです」
そう言うかえで君はあたしのことをじっと見つめてくる。
な、何だろう。
「キミが……。キミのことは美奈から聞いてるし……それに……」
それに……何だろう。
そう思ったときだった。
「うさっ」
と声が遠くから聞こえる。
その方を見てみれば驚いた顔でまもちゃんがこっちに走ってくるのが見えた。
「やっほ〜まもちゃん」
美奈Pは突然あたしの腕に絡んでまもちゃんに手を振る。
「美奈も一緒だったのか」
「あたしはかえで君に用事があったの」
「あぁ、だから楓もいるのか」
「悪かったな。衛と美奈の大事なお姫様に挨拶してたんだよ」
え?かえで君とまもちゃんって知り合いなの?
「そうなの、あたしも聞いて驚いちゃった。かえで君とね、まもちゃんって高校まで一緒だったんだよ」
うそうそ、知らなかった〜〜。
かえで君も元麻布だったんだぁっ。
すご〜い。
「じゃあ、この辺でお邪魔虫なあたし達は退散しましょう?じゃあ、またねうさぎ」
そう言って美奈Pはかえで君と一緒に帰って行ってしまった。
ダブルデートなんてしてみたかったんだけど、でも二人っきりの方がいいしなぁ。
うーん、いろいろ考えちゃう。
でも、美奈Pに彼氏出来て良かったよね。
うんうん。
「オレ達も行こうか」
「うん」
まもちゃんと帰る道。
高校の時は待ち合わせしてたけど、まもちゃんが大学に入ってから出来なかったことが今できてなんか楽しい。
「でもビックリした。美奈Pの彼氏のかえで君とまもちゃんが高校も一緒だったなんて」
「オレはそれ以上にうさが大学まで来たのに驚いた」
え、来ちゃまずかった?
「そんなんじゃなくって制服で来てるのが見えたから…何かあったらどうしようと思ったんだよ」
あたし、そんなに心配?
「って言うか、心配性になってるのかも。離れてたからその分って感じかな?美奈が一緒だって分かって安心したけど」
「そっか……今日はね、美奈Pが一緒に行こうって言ったんだよ。美奈Pもかえで君に逢いたかったみたいだし」
「……それだけじゃないと思うけどね」
「どういう事?」
「…さて……?そう言えば、前うさがはるか達と行った場所ってどんなとこ?今日行きたいって言ってなかったっけ?」
さりげなく話変えられちゃった気がしないでも無いんだけどそうだよ、その公園。
今いる場所からだと近いかも?
「無限地区の跡地か…。どんな公園なんだ?前教えてくれなかったよな」
そうまもちゃんは聞いてくる。
最初に言ったとき秘密にしちゃったんだよね。
あそこは大切な場所。
あたし達にとって。
だから、あの場所に着いてから言いたいの。
「まぁ、着くまで楽しみにしてようか」
うん、楽しみにしてて。
はるかさん達と来たときは真夜中に近かった公園。
でも今の時間はまだ昼間から夕方の時間。
空には太陽に反射している白い月が浮かんでいる。
子供の声が遠くからして、でも人が少ない。
人が少ないから物騒だなんて思うような場所じゃなくって、少なくても問題ない静かな雰囲気のある朔望公園。
「こんな公園が出来たのか……」
「うん。この奥のね、噴水がまたステキなの」
あたしはまもちゃんを引っ張ってそこに向かう。
早くそこに行きたくて、早く教えたくて。
「ここだよ」
噴水のある広場の入り口であたしは立ち止まりまもちゃんに教える。
「ここに、はるかさん達が連れてきてくれたの。真夜中だったんだよ。その時は今日みたいに月が空に昇ってて……その時は夜の月で今は昼の月だね……。すごく、嬉しかったの」
「ここは……あぁ、そうか……ここは」
まもちゃんはあたしが言わなくても気付いたんだ。
「エリュシオンの入り口」
「なんで言わなくても分かっちゃうの?あたしはほたるちゃんに聞いて初めて分かったんだよ」
「一応、地球の王子なんですけど」
「なんか、ずるいよ」
「なんで、月のお姫様」
そう言われたら何も言えなくなっちゃうよ。
「おいで、うさ」
まもちゃんが手を出してあたしはその手を取る。
少しだけ昼の月が光った気がして……そして噴水の所にクリスタルで出来た扉が現われる。
「何?」
「だから、言ったろ?エリュシオンの入り口だよ。でも開けたつもりはないんだけど」
じゃあ、誰かが出てくるの?
もしかして、エリオス?
静かに扉が開き、その扉から思った人物が現われた。
「プリンス・エンディミオン、そしてプリンセス・セレニティ、お二人ともお久しぶりです」
「エリオス元気そうだな」
「はい。お二人のおかげで今は平穏に過ごしています」
久しぶりのエリオス。
彼を見てデッドムーンと戦っていた時を思い出す。
ってついでに余計な事って言うか。
ちびうさの事(お願い)も思い出しちゃったんだけど。
「エリオスに逢ったら、あたしがいつか必ず逢おうねって言ってたって言ってね」
ってまぁ、いっか。
なんか言える雰囲気でもないし。
「今日は、王子、あなたにお知らせしたいことがあります」
「知ってるし会ってる」
「もうお会いになっていたんですか?」
「あぁ」
「私もその事は気に掛けていました。この星の守りは外部つまり、月の力だけでは弱いと…地球の内部の力を必要なのだと…」
どういう事?
あたし達だけじゃダメって事?
「プリンセス、外を守る力は十分にある。それはあなたのおかげです。でも内部の回復する力は過去に暗黒の力によってズタズタにされてしまいました」
クイン・メタリアにって事?
「そうです。元に戻りつつある。幻の銀水晶やゴールデンクリスタルが目覚めたのもその証です。内部の力はこの地を中心に目覚めました。プリンセスは四方の守りの意味を知っていますか?」
え?え?え?どういう事?
「四つの方位を守ってる神様の事だよ。東には青龍、南は朱雀、西は白虎で、北は玄武。そしてその中央を麒麟がいるんだ。麒麟は彼等の王様だったかな?」
へぇ。
初めて聞いた。
「うーん、ニュースとかでもやってたんだけどなぁ」
そんなの初めて聞いたよ、そんな話。
「ニュースぐらい見とけよ、エリオスに笑われるぞ」
「そんなことないですよ」
って言いながら笑ってるわよ、エリオスっ。
「では話続けますね。今王子が言ったとおり四つの方位を守っている神が居ます。。彼等は王子の従者を務めていました。プリンセスの四守護神と同様に。そして彼等は四守護神と対になっています。東、青龍はジュピターと、南、朱雀はマーズと、北、玄武はマーキュリーと。そして」
「西の白虎はあたし〜」
ちょうど西の方向……あたし達が居るところから右を見ると、そこには美奈Pとかえで君がいた。
「やっほ〜、うさぎ。紹介するわね、西のクーちゃん。白虎のかえで君ことクンツァイトよ」
えっとどういう事?
なんで美奈Pとかえで君がいるの?
っていうかかえで君がクンツァイト??
「美奈、いきなり言っても理解できないんじゃないのか」
「そっかかえで君そうだよね。あのね、うさぎ。あたしも正直言って驚いてるの。あのダークキングダムのクンツァイトがまもちゃんっていうかプリンスの従者だったなんて!!本気でビックリしてるの」
うん、うん、美奈Pがおどろいてるのは分かった。
でもね、それ以上に美奈Pがなんでココにいるの〜。
「あたし達はたまたま。かえで君ちがすぐそこなの」
と西にあるマンションを指す。
「オレの部屋にあった石は彼等の名前を持つ石なんだ。クンツァイト、ゾイサイト、ジェダイド、ネフライト。全部石の名前。ベリルですらそうだよ。あれの緑がエメラルドで青がアクアマリンになる…。彼等の意識は…その石に封じ込められていた」
「でもプリンセスが触ったことでオレ達は本来の自分に戻ることが出来た。四天王のリーダーとして礼を言わせてもらう。では、改めてオレはマスター・エンディミオンの四天王リーダー、クンツァイト。まぁマスターと同じ大学に通っている斉藤楓だ」
そうかえで君が言う。
あたしが触った事……。
「まもちゃん、だからあの時もういいんだって言ったの?」
あたしが触ってしまったから彼等は石から離れた。
それが良かったことなのかあたしには分からない。
「オレ達は石に存在する意識としてマスターの側にいた。でも意識だけではマスターの助けにはならない。それが正直歯がゆかった。キミのおかげなんだから悩む必要はない」
「気にしてたのか?」
うん。
「気にすること無いって言ったの忘れたのか?」
「忘れてないけど……」
「全部自分のせいって考える必要ないんだからな。これは必要だったんだよ」
必要……。
「そうです、プリンセス、このことは必要な事だったのです。内部の力が強くならなければこの地、地球に安息は訪れないのです」
って事はいくら守っても無駄って事?
「言い方は悪いかもしれませんが、その通りかもしれません。内部から浸食される事もあるのです」
デッドムーンの様にって事ね。
「そうです。外部から来るならばすぐにわかる。地球から遠く離れた土星、天王星、海王星、冥王星の守護者がそれをすぐに察知する。この地は銀河より選ばれた場所。だから強いクリスタルを持つ。銀河を統べる強大な力を」
その為に必要な事。
「そうです」
あたしの言葉にエリオスはうなずく。
「まぁ、うさぎは気にしないでいつもの様にいればいいのよ。それよりさぁ、うさぎ覚えてる?むか〜し、あたしに言ったこと」
むか〜し?
「そ、まだ月にいた頃の話〜」
何を?
あたし、なんか言ったっけ?
ヴィーナスに言ったこと?
ん〜?
『興味本位なんかじゃないわ』
「その後よ」
その後……。
えっと……
『興味本位なんかじゃないわ。ヴィーナスなんか本気でヒトを好きになったことないくせにっ。わかんないよ、あたしの気持ちなんて』
だっけ?
「そ、そんなこと言ってくれたわよねぇ。あの時」
「美奈P?」
………えっと……。
もしかして。
「え〜〜〜〜もしかしてそうだったの?」
美奈Pと……っていうかヴィーナスとクンツァイトってそうだったの??
「さぁね」
知らなかった………。
ヴィーナスって誰にでもきゃーきゃー言ってて(今と変わんない)すぐヒト好きになっててすぐ飽きちゃってたヴィーナスがぁ?
「うそぉ〜〜」
「あたしだけじゃないわ、みんな恋してたのよ」
みんな?
みんなって……みんな?
マーキュリーも?ジュピターも、マーズも?
「うそぉ……」
「そりゃあ、気がつかないわよねぇ。王子様に夢中なお姫様は」
「そ、そんなこと無いもんっ」
そんなこと無かったもん。
それだけじゃなかったもん……………たぶん。
「まあね、あの時は、あたしもダメって言ってる手前、隠そうってずっと思ってたわけだし?他のみんなもそうだと思うわよ?あたしだけじゃなくってさ」
月の住人と地球のヒトは恋しちゃダメ。
それは月の掟だったんだもんね。
「今はどうなのかな、美奈Pはかえで君と一緒にいるけど?」
「あたしは全員知ってるけどね」
え?
「美奈、全員知ってるのか」
「そ、かえで君を問い詰めてみました」
さすが美奈Pすご〜い。
「楓………すまない」
「衛が謝る事じゃないし……もう分かってるし……」
「なにかえで君ため息付いてるの?」
「誰のせいだと思ってるんだよ、お前は」
「かえで君の苦労性のせい」
「お前なぁ」
そう言ってまたかえで君はため息をつく。
かえで君ってもしかして、美奈Pにしかれてる?
「もしかしても、その通りだろ」
あたしの疑問にまもちゃんは苦笑いしながら言う。
そう言えば、前にまもちゃんが言ってた『気になること』ってこのこと?
「そう、このこと。だから言ったろ?つらいことじゃないって」
確かにつらいことじゃない。
「でもなんか楽しいことだと思うよ?」
「楽しいだけじゃない大変な事でもあるけどな」
あたし達があたし達の世界を守るために必要なこと。
楽しいだけじゃなくってつらいこといっぱいある。
だから大変な事でもある。
「残りの三人も紹介してね」
「あぁ」
陰陽五行という言葉をご存じでしょうか?
この五行がですね、木水土金土の5つでまぁ西洋のエレメントと対をなすといいますか。これがそのままこの四方のいわゆる青龍、白虎、玄武、朱雀という四神につながるわけでして。(このことは高松塚古墳の保存でテレビに出てきたと思いますが。 ふしぎ遊技とかでも出てきましたよね。 これに28宿とかね。)
で五行は惑星もたとえられてまして、青龍が木星、白虎が金星、玄武が水星、朱雀が火星と。
で、中央の麒麟さんが何かって言うと実は土星さんらしいんですけど。
でも麒麟さんって中国の神話で行くとこういう神獣達の王様なんですね。
せっかくですし、この場は土星さんより王様の方に譲っていただくとして王様キングの登場となっていただきました。
ちなみに季節も五行に当てはめることが出来ます。
春は青龍、夏は朱雀、秋は白虎、冬は玄武(青春、朱夏、白秋、玄冬といいますよね)。(麒麟は土用になります)
四天王の名前は季節にちなもうとしています。草史は春、華広は夏、楓は秋、雪人は冬。
とまぁこんな感じで。