会う度に挨拶を交わす。
たった一言でもそれでも良かった。
「どんなに忙しくってもおはようとお休みは必ずママとパパは言ってくれるんだよ」
「良かったじゃん」
「うん」
嬉しそうにちびうさは言う。
たまあに30世紀からこの時代にやってきてはうさぎちゃんやあたし達を振り回す、ちびうさ。
それでも可愛いと思ってしまうのは、やっぱり母親似でどこか父親に似てるからかな?
うさぎはそんなことないって言うけれど、ね。
「まこちゃんは今好きな人居ないの?レイちゃんも、亜美ちゃんも、美奈Pも、なんか気になる人がいるみたいってうさぎが言ってたよ?」
泊まりに来たちびうさからの質問。
……気になる人?
みんなそういう事情あったんだ。
レイちゃんは不機嫌そうで、美奈は楽しそうで亜美ちゃんはいつにも増して図書館通いしてる。
ってそう言うこと?
「ねぇ、まこちゃんはどうなの?」
「うさぎから聞いて来いって?言われた?」
「違うよ、うさぎからね、そう言う話聞いてどうなのかなぁって思ったんだ」
ちびうさはじっとあたしを見つめる。
「何か、知ってるのかい?」
まもるさんが留学する時、見送りに行ったあたし達はちびうさとまもるさんが妙な共通点で会話しているのにあたしだけじゃなく全員気付いていた。
亜美ちゃんだけは怪訝な表情してたけど。
「知らないよ」
なんてちびうさは笑ってそう答える。
「やっぱりなんか知ってる。そうだ、ちびうさちょっと待ってて。あたし、ちょっと届けなきゃならないんだ」
「何を?」
「ご飯のおかず。作ってって頼まれちゃってさ」
「どんな人」
……突っ込まれるとは思わなかった。
「え………」
「え?!!!まこちゃん、もしかして〜まこちゃんが気になってる人?」
「な、なんで」
気付かれたの?
「ダメだよぉ〜さらりと言ってるんだからさらりと流さなきゃ〜」
う……そうだよね。
「行く?すぐなんだ。2部屋となりの人」
「行く行く!!まこちゃんが気になってる人、見てみたい!!!」
「………別に、そう言う訳じゃないけどね。一人暮らしだって言うし、あたしも一人暮らしだしさ。料理ってさぁ、一人分作るより、二人分作った方が楽なんだよね。だから、ついでみたいなものだよ」
なんか言い訳じみてる気がするけど、兎も角準備していた物を持って2部屋隣の部屋に向かう。
『はい』
「まことです」
『今、開ける』
インターフォン越しの会話。
さっき、ちびうさにからかわれていたから顔は紅くなってないかな……。
「こんばんは」
「あ、あぁ」
短い挨拶を交わす。
いつも、この人……三条院草史さんはあぁって言う返事だけだけど。
「どうぞ、コレ」
そう言って作ったおかずを渡す。
「いつも済まない」
「そんなこと言わないでください。いつも言ってますよね、一人分作るより二人分作った方が楽なんだって。料理作るのが好きだから、たくさん作っちゃうんだって。余らせるのもったいないから」
「まこちゃんの料理はホントにおいしいんだから遠慮せずに食べればいいのに」
足下でちびうさちゃんがそう草史さんに言う。
「彼女は…」
「あたしの友達の……む、妹です」
娘って言いそうになった……。
こっちにいる間は、娘じゃなくって妹だよね。
「………」
あたしと草史さんの会話も気にせずちびうさは草史さんをじーっと見つめる。
「ふ〜〜〜ん」
納得したようにそう頷く。
なんなんだろう。
「じゃあ、お皿はまた明日受け取りに来ますね」
「ありがとう」
「いえ」
「お休み」
「はい、お休みなさい」
そう言ってあたしはドアを閉める。
言葉は少ないけれど、草史さんはお休みとその言葉だけは言ってくれる。
「まこちゃん、なんか幸せそう」
「……そ、そうかな……」
案外自覚してないかも知れないけれど、幸せなのかな?
「まこちゃん、お腹すいちゃった」
「そうだね、あたし達もご飯にしよっか」
「うん、まこちゃんのご飯大好き!!」
「ありがとう」
部屋に戻ってちびうさと夕ご飯。
30世紀のこと、ちびうさの恋のこと、あたしのこと、いろんな話をする。
「まこちゃん、まもちゃんからもらった石持ってる?」
「まもるさんからのあぁ、持ってるよ」
「ならいいんだ」
そう言ったちびうさの言葉の意味は分からないけれど。
よく考えてみれば、彼女はあたし達の未来から来たんだよな。
だから、あたし達の未来を……知ってるわけで……。
もしかして何か意味あるのか?この石が。
なんて思わず手にとって見つめて……。
さっきのこと思い出して、そう言えば遠い昔も……。
なんて前に思い出したことを、思い出した…様な。
明日はおはようって言えるのかな?
なんて朝会えることを期待してみたり。
名字はアニメから。名前はオリジナル。
やっぱり寡黙って言うイメージしか浮かびません。
何故でしょう……。