負けたくなかった。
だから、私は望んだ。
だから、私は力を望む。
誰にも負けない力を。
そして願いを得ることの出来る力を。
「ルイセ、今だ」
彼の言葉に頷く前にあたしはカードを引き抜く。
「ルイセ・ケイ・エシルの名の下にマジシャン&ワンドキング。魔術師よ、その力において炎の王を呼び出せ。ブレストバーン!!」
カードが変化し魔術師が炎の王を呼び出す。
王は標的に向かい、全てを飲み込んでいく。
消えた後は消し炭しか残らない。
「はぁ〜」
あまりの惨状に驚いたのかマリーチは感嘆のため息をつく。
「さすが、ルイセ。黒の魔道士」
「好きでなった訳じゃない。その呼び方で呼ばないで」
「了解」
あたしの言葉にマリーチはすぐに引き下がる。
好きで呼ばれるようになった訳じゃない。
呼んで欲しいわけでもない。
「で、お前これからどうするんだ?」
そう、マリーチに聞かれる。
彼は行きずりで出会った召喚士だ。
行きずりのはずなのに何故かあたしは彼の仕事の手伝いをさせられている。
本当は、今は、一人で居たかった。
好きなように世界を見て回りたかった。
好きなように生きてみたかった。
どこで間違ったんだろう。
今のあたしは好きなように生きている感じがしない。
ただ何と言うことなしに世界を漂っている。
マリーチの手伝いだってそうだ。
進んでと言うわけでもなく、嫌々というわけでもなく。
ただ、言われたままに過ごしているだけだった。
「別に考えてない…」
「そっか。まぁ、オレと似たようなもんだよな」
似たようなもの?
そうだろうか。
よく分からないけれど、あたしとは違うような気がする。
「オレだってこの先どうするかなんて考えてない。今はこうやってギルドからの依頼を受けてるに過ぎない」
「目標ってないの?」
「まぁ、あると言えばあるしないと言えばない。オレの目標って言うか夢は途方もないから」
そう言ってマリーチは笑う。
「夢か……」
あたしの夢はなんだろう。
強くなりたいと思った。
誰にも縛られないぐらい強い力で、その力で願いを叶える。
「願いって何だ?」
「願い……」
分からなくって首をかしげる。
「困ったな」
「そうだね」
「でもさ、これから見つければ良いじゃん。お前がやりたいこと。したいこと」
「これから?」
見つける?
「あぁ、お前には力がある。魔法の力かなりのもんだぜ?ギルドに登録して見ろよ。一発でSS級もらえるぜ?」
マリーチの言うギルドは魔法を扱う国家法人が作り出した仕事依頼所の事だ。
魔法使いのほとんどはそこに登録し、仕事を得る。
小は個人から、大は国まで。
魔法使いに依頼をしたい者はそこに依頼を出す。
そうして登録した魔法使いはランクに応じて仕事を選ぶことが出来るのだ。
「それでさ、今度こそいろんな所に行くんだ。その場所に入れるか分からない。でもSSクラスの魔法使いならそれが可能になる。魔法ギルドは身分紹介所。自分の証明にもなる」
あたしの証明。
マリーチの言葉は魅力的に聞こえる。
「あたしが認められるって事?」
そう聞けばマリーチは大きく頷く。
称号がついてたって存在が認められなければ、居ることにならない。
「分かった登録申請してみる」
したいことやりたいこと、それは分からない。
小さい頃、力が欲しいと思った。
誰にも負けない力。
そうすればあたしの願いは叶うから。
「マリーチ、登録したよ、SS級だった」
「オレの勘大当たり」
「で、団体専用に登録したよ!!旅の賃金困らないね」
「お前さぁ、妙なところでしっかりしてるよな」
「偉い?」
「偉い偉い」
どうしても彼女を書きたいと思って…彼女『ルイセ・ケイ・エシル』にしました。 D5(仮題)の主人公です。
魔法使いです。世界最強の魔法使いです。
この話は絶対に書きます。その為にD3をおわしたんだから。