草原を走る風の音に混ざって砂浜に波打つ音が聞こえる。
もうすぐで夜明けを迎える。
久しぶりに会う。
……相手は夢の中だけど。
この神殿に帰れたのは本当に久しぶりで。
リグリアのレグダルにあるスタジオから姿を消してから、あちらこちらに引っ張り回されていた僕達は、まともに神殿に戻っては来なかった。
だからって、何で彼女は僕の部屋で眠ってるんだろう。
疑問に思って首をかしげる。
起こさないようにベッドに腰掛けて、布団から出る手に少しだけ触れればすぐに絡ませてくる。
寂しかったよな……。
彼女の本分は海の神ラテスに使える巫女。
寂しいなんて言ってらんないのが本当の所だろう。
でも、僕はいつも一緒にいられない。
一緒にいてあげたいと一緒にいたいと思う。
「……」
夜目が利いているのか、それとも、朝になりつつあるのか、フッとシェラが目が覚めて僕のことをじっと見ているのが分かる。
「おはよう、マレイグ」
まだ眠っている声でシェラが言う。
どうしてココにいるのなんて聞いてこない。
ココが僕の部屋だって言うことを彼女はちゃんと理解している。
「シェラ、僕の部屋で寝ているのはどうして?」
彼女に顔を近づけて聞いてみれば、顔を布団の中に潜らせようとする。
残念ながら僕は甘くないよ?
「寂しかった?」
耳元でささやいてみる。
「うーうー」
眠いのかそれとも別の意味なのかシェラがうなり始める。
面白くって声も立たせずに笑ったら、睨まれた。
「まれいぐのばか」
そう言う声はまだ眠そうだ。
何も言わずに黙ってシェラの顔を見てれば今にも眠りそうで。
「眠い?」
そう聞けば、当たり前のように頷いてくる。
「隣いい?」
って聞けばもう一度頷く。
隣に潜り込んで空の色が変わってきた窓の外を眺める。
「朝?」
「そう」
静かに明けていく夜。
眠ったのかと思った瞬間、ぎゅっとすがりついてきた。
「シェラ?」
「いま……だけ……こうさせて」
眠りに落ちていくシェラに僕は頷く。
「いいよ。シェラ、もう少しおやすみ?」
小さくささやけば、シェラはゆっくりとうなずき
「…う…ん………」
そうして小さな寝息を立てる。
まだ、こんな朝が毎日続けられないことは、僕はもちろんシェラも分かっている。
だからシェラは僕にしがみつく。
「いつか、こんな毎日が続けられたらいいね」
そう思って鳥が鳴く寸前に眠りについた。
いつか鳥が鳴いて目が覚める毎日が来ることを願いながら。
「寂しかった?」耳元でささやいてみる。 このシーンをウツの声で再現してみましょう。
想像したら倒れましたよ……(汗)