** キミがいれば:music by 伊織 / 名探偵コナン
「大丈夫?」
傘を差してかざす。
「大丈夫」
そう答える声はどこか弱々しかった。
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事件は解決。
でも、彼は険しい顔をしている。
どうしたのと問い掛けたい。
でも、きっと立ち入らせてくれない。
わたしのこと忘れないで。
わたしはココにいるの。
キミの側にいるの。
それを叫びたい。
それはできない。
コナン君……新一は隠している。
知っているの。
気付いてしまったその事を。
違うと思いたかったその事を。
理解するまでに時間がかかった。
最初はさっさと白状するかと思ってた。
でも誤魔化されて、もう一度違うって思いこまされて。
彼の中で正当化しているのかもしれない。
わたしがそれを知ることでわたしが危険な目に遭う。
って。
多分、きっとそうだろう。
でも、キミはどうなの?
「コナン君、かえろう?」
雨に打たれてうつむいているコナン君にわたしは傘を差し出す。
一本しかない。
「有り難う」
そう言って振り向くコナン君はとてもつらそう。
「帰ろう?」
もう一度言って手を差し出す。
「うん」
その手を受け取ってコナン君は傘に入る。
「新一、わたしはちゃんと側にいるから」
小さな声でそっと呟く。
ハッとコナン君がわたしを見上げたけれど、気付かないふりをする。
「悩み事があるのならちゃんと言ってね」
今度は聞こえるぐらいの声で言う。
「……分かった」
その返事はどういう意味なのだろう。
でも意味を問うことをやめた。
ただ、わたしが側にいる。
それを分かって欲しい、気付いて欲しい、だけだから。
冷たい雨が降る。
でも一人じゃないことが分かるように握った手に少しだけ力を込めた。
**後書き:蘭ちゃんは新一=コナンって気付いているけど、気付かないふりをしている。
という私的思いで書きました。
という私的思いで書きました。